2010年9月26日

また雨の日にカクレガで 17

カズキくんは、私のおっぱい目がけて飛び込んで来て、すかさず右の乳首を口に含み、ちゅーちゅー吸い始めます。
だけどもう私は、えっちな気分にはなりませんでした。

「カズキくんは、おっぱいが本当に大好きねえ」
「うん。ママの次になお子お姉さんのおっぱいが好きっ!」
そう元気に答えたカズキくんは、また、私の右おっぱいにしゃぶりつきました。
しばらくそうしてから、カズキくんが顔を離しました。
すかさず私は、カズキくんの小さなからだの両脇をつかみ、雨空に向かって高い高いをしてあげました。
カズキくんのからだは、思っていたよりも拍子抜けするくらい軽かったです。
「どう?カズキくん、気持ちいいでしょう?」
激しいけれどやさしい雨が、私たちを洗い流してくれています。

「そろそろ、本当に帰ろうか?」
私は、カズキくんを地面に下ろし、しゃがみ込んで目線を合わせて、ニッコリ微笑みます。
「うんっ!」
それから、ぎゅっと手をつないでカクレガに戻りました。

カクレガの軒先で私はまず、ずぶ濡れの髪を両手で軽く絞って、お風呂上りのときみたいに頭の上にヘアピンでまとめました。
それから、雨の日のお散歩から我が家にやっと帰ってきたワンちゃんみたいにブルブルっとからだを震わせて、からだに付いた水滴をはらい落とします。
私のおっぱいも、ぶるぶるっ、と激しく揺れます。
それを見ていたカズキくんも、私のやったことをそっくり真似しました。

カクレガの中に入ってから、ちょっと迷った後、使わなかったもう一枚のフェイスタオルで丁寧にからだを拭きます。
何度か絞りながら、すみずみまで丁寧に拭きました。
拭き終わったら、なんだかすごくサッパリしています。
私のからだも、心も。

カズキくんは、ずぶ濡れの服のまま、また私のそんな姿をじーっと見ていました。
「カズキくん、だいじょうぶ?寒くない?」
「うん。ぜんぜんだいじょうぶ」

吊るしておいたブラウスとブラとスカートは、どれも生乾きでした。
これからまた、雨降りの中、あの草ぼうぼうの山を下りるのですから、いくら傘をさしたとしても、また着衣が多少なりとも濡れてしまうことは確実です。
一瞬、オールヌードのまんまで、なんて考えがよぎってゾクゾクしましたが、今は早く帰ることを第一に考えたほうが良さそうです。
結局、ブラウスとスカートだけ身に着けることにしました。
スカートは、きれいな雨にあたって私のえっちなおシルが洗い流されたほうがいいし。
おっと、その前にさっさと後片付けしなくちゃ。

「カズキくん、ここに雑巾、ある?」
「えーっと、たぶん、ない。ごめんなさい」
「ううん。だいじょぶ。いいよっ」
言いながらウエットティッシュのボトルを取り、さっき私のお潮が直撃した本棚の側面を拭き始めます。
「カズキくんは、出したお道具をお片付けしてね。お医者さんごっこのお道具とか、バトンとか」
「はーい」
元気よく答えて、カズキくんもてきぱき片付けを始めます。
本当にこの子、素直ないい子です。
そして、私の欲しいものリストに、バトン、が加わりました。

本当は、使った椅子や机とか、一つ一つのお道具も丁寧に拭ってからしまったほうがいいのでしょうが、もうあんまり時間がありません。
今、このカクレガには、私という女のすけべさ、いやらしさを凝縮させたようなにおいが、強烈に充満していることでしょう。
ごめんなさい、本当にごめんなさい。
でも、この雨と、たくさんの木々の清らかさが、たぶん数日で消してくれるではずです。
その数日の間、ここに誰も近づかないことを、今は祈るだけです。

本棚の側面とベッドの上だけ入念に拭いてから、びしょ濡れのバスタオルとフェイスタオルをスクールバッグに入っていた大きめのコンビニ袋に押し込んで、厳重に封をしました。
使った大量のウエットティッシュも一緒に押し込みました。
私がここにいた痕跡は、残り香と思い出以外、何一つ残してはいけない・・・
そんな気がしていました。

全裸のまま一通り片付けをして、もういいかな、と思い、私は、服を着始めました。
ラップスカートを腰にあてがい、巻きつけてからホックを止めます。
ノーブラのままブラウスを着ました。
乳首のところだけ、ツンと布地を押し上げています。
裾は出したたままです。
ふと、カズキくんの姿を探すと、いつのまにか椅子に座ってまた、そんな私の姿を、じーっと見つめていました。

「おっけー、準備完了」
私がつとめて明るくそう言うと、カズキくんは、ガタっと音をたてて椅子から立ち上がります。
私に飛びついてきそうな気配を感じて、あわてて付け加えます。
「カズキくん、もうお外、ちょっと暗いよ。懐中電灯とかある?」
夏至も過ぎた初夏の夕方ですから、雨で曇り空と言っても、そんな大げさな話ではないかもしれませんが、木々の生い茂る林の中がどのくらいの暗さなのかは、私にはわからないし。
カズキくんは、ちょっと得意げな顔になって明るく答えます。
「あるよ。さっきタンスの中から出しておいた」
なんて気が利く男の子でしょう。
「ちゃんと点くかな?」
「あ、うん、ちょっと待って」
カチっ、という音がして、まぶしい光の輪が広がりました。
「ありがとう。じゃあ、それを持って、なお子を神社まで、送ってくれる?」
「うん。もちろん」
カズキくんは、黄色いレインコートを着ながら、頼もしく答えてくれました。

飲み残していたスポーツドリンクとオレンジジュースを二人で持って、
「カンパーイ」
って大きな声で言ってから、二人でゴクゴク飲み干しました。
もうすっかり生温くなってしまっていましたが、体力使った後なので、それなりに美味しい。
空きボトルもバッグに詰め込みました。

忘れ物がないのを確認して、私がカクレガの電気をパチッと消しました、一瞬、薄暗闇になって、カズキくんが懐中電灯の手元のスイッチをカチッと点けます。
光の輪に、しきりに降る無数の雨粒たちが浮かび上がります。
外は、さっきと同じ勢いの雨。

おのおので傘をさして、ベニヤ板の道を滑らないように慎重に下ります。
私は、なるべくブラウスを濡らさないように、低く傘を持っています。
カズキくんは、そんな私の胸元をチラチラ見ながら、また頼もしいことを言います。
「えーとね。下りのほうが、すべりやすくてあぶないの。雨の日だからとくに」
「だから、ボクは先に行くんじゃなくて、なお子お姉さんを守りながら、ちょっと先を歩く」
「だから、なお子お姉さんが傘をさしてて。ボクはこの傘で、杖みたいにするから」
カズキくんが傘をたたんで、私に寄り添ってきました。
私は、言われたとおりに傘を右手に持ち替え、スクールバッグを左肩にかけます。
バッグは完全に傘の外に出てしまうけど、仕方ありません。
その上、左肩にかけたバッグの紐が、ブラウスをひっぱり、布に浮いていた乳首をさらに強調させますが、それも仕方ありません。
カズキくんは、私の右側にいて、左腕をしっかり、私の腰にまわして、私のからだをがっちりとつかんでいてくれます。
「じゃあ、行こう、なお子先お姉さん」

相合傘で林の中に分け入ると、視界は、かなり暗くなりました。
幾重にも木の葉が折り重なっている場所では、雨をさえぎってくれる代わりに、木の葉からしたたる大きな水滴が、何粒もバラバラと大きな音をたてて、私たちの傘を叩きます。
カズキくんは、右手に懐中電灯と傘を一緒に持ち、その傘で、これから歩く地面を、座頭市のように、あちこちたたき、たまに懐中電灯であちこち照らし、私が滑りそうになると、左腕にぐっと力を入れて、やさしくエスコートしてくれながら、ゆっくり、ゆっくり、斜面を下ってくれました。

今まで、私をこんなに大切に扱ってくれた男の人って、いません。
女の人を含めても、父と母とバレエの先生を除けば、いません。
そんなことを考えていたら、私は、なぜだか泣きそうになってしまいました。


また雨の日にカクレガで 18

1 件のコメント:

  1. 初めて読ませてもらいました。
    旨いですね。
    情景が浮かびます。
    続きはよりハードなんですか?
    他の小説も読ませて頂きます。

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