2010年12月5日

図書室で待ちぼうけ 05

おばさまたちの声が聞こえなくなるまで、私は息を殺してその場に固まっていました。
「ね、ねえ、相原さん?こんなことしてるとこ、誰かに見られちゃったら、きっと大変なことになっちゃうよ・・・」
私は、再び激しくなってきたどきどきに心とからだを翻弄されながら、小さな声で言いました。

「だいじょうぶ。わたし、運はいいほうだから」
相原さんは、全然気にしていない様子で桜の木から背中を離し、パッパッとスカートの裾を払いました。
「それよりも、暗くなってしまわないうちに、もう一回だけつきあって、ね?」
そう言うなり、再び私の手を取り、今度は象さんのスベリ台のほうに連れていかれました。

象さんのスベリ台は、クリーム色で全体に丸まっこいカワイらしい形で、お鼻のところがすべるところ、お尻のほうが階段になっていて、公園の入口のほうにお鼻を向けて建っています。
前肢から胴体を経て後肢までの部分が立体的なアーチ状に開いていて、大人でもからだを小さく屈めればスベリ台の下に潜り込めます。
相原さんに手を引かれ、そこに二人で潜り込みました。

スベリ台の下も全体がクリーム色、直径2メートルに満たないくらいのまあるいスペースになっていて、カーボンが何かで出来ているらしいドーム状の天井は、一番高いところで私たちの背ギリギリくらいの高さ、必然的に屈んだ体勢になっています。
足元にも天井と同じ面積だけ、まあるく赤茶色のレンガが敷き詰められて、すべるほうの側と階段のほうの側の壁から、子供が二人ずつくらい向き合って座れるようにベンチみたいな突起が出ています。
夕方なので、中はけっこう薄暗いですが、なんだか妙に居心地がいい空間です。
小さな子供なら、ちょっとしたカクレガ気分を味わえることでしょう。

「頭をぶつけないように気をつけて」
相原さんは、階段側の、そのベンチのような突起に腰を下ろしました。
「森下さんは、そっちのベンチに座ってて」
そこに座ってしまうと、ちょうどアーチ状になった側面の壁が私たちの姿を隠し、外からは足元くらいしか見えないようです。

相原さんは、いつのまにかブラウスのボタンを全部はずしていました。
ブレザーごとブラウスを左右に開いて、今度はおっぱいを対面に座っている私に見せつけてきます。
「見て。わたしのおっぱい、よーく見て。森下さん」
私の目をまっすぐ見つめながら、自分のおっぱいを左右の手で下から持ち上げています。
乳首がツンって尖っています。
私はまた、魅入られたようにじっと目を凝らしてしまいます。
心臓がどきどきどきどき波打ってきます。

相原さんは、はだけた胸をこちらに突き出したまま、じりじりと両膝を左右に開いていき、両膝がほぼ180度に開いたとき、両手でバサっとスカートをめくり上げました。
「ほら。ここももうこんなになっちゃってる・・・」
つぶやいた後、上にめくり上げたスカートの裾を自分の口にくわえてから、右手を右内腿に、左手を左内腿に置き、パックリと綴目が開いたアソコを更に自分の手で押し広げました。
薄暗がりの中でもヌラヌラぬめっているのがはっきりわかりました。
相原さんは、スカートの裾をくわえたまま、顎を上げて上を向き、何かに耐えるようにギュっと目をつぶっています。

公園の横の道を通ったのでしょう、バイクのエンジンの音が近づいて来たと思ったら遠ざかって行きました。
そう、ここはお外なんです。
誰もがいつでも入って来れる公園なんです。
私は、その音を聞いてビクっとしましたが、相原さんは微動だにしませんでした。

しばらくそうしてから、ふいに相原さんの口からスカートが離れました。
大きく広げられたアソコの上に、スカートが舞い降ります。
相原さんは顎を下げ、赤いハンカチで口元を拭いてから、私にトロンとした色っぽいまなざしを投げかけてきました。

「ねえ、森下さん。こっちに来て」
「となりに座って、わたしのからだ、さわってくれない?」
ビクンとして、私は思わず立ち上がりかけました。
でもすぐに思い直し、また腰を落として、うつむいて力無くイヤイヤをします。

「相原さん・・・もうやめよう・・・私、やっぱりこういうの、怖い・・・」
うつむいたまま小さな声で、やっと言いました。
「誰かに見られたら、大変だもん。相原さんが学校に来れなくなっちゃうよ。だから・・・」
泣きそうな声になっていました。
私は、この状況に心底びびっていました。
でも、乳首とアソコが正直に反応しているのも事実でした。

しばらく無言のときが過ぎました。
やがて、衣擦れのような音が聞こえてきたので、おそるおそる顔を上げてみます。
相原さんがゆっくりとブラウスのボタンを下からはめているところでした。

「森下さん、ごめんなさい。見てくれる人がいるの初めてだから、わたし、コーフンしすぎて、ついつい、調子に乗っちゃった・・・」
相原さんは、ブラウスのボタンを上から二番目まできっちりはめて、ブレザーの前をかき合わせてから私の顔を見て、本当にすまなそうに弱々しく笑いました。
儚げで、なぜだか切ない気持ちになる笑顔でした。
「わたしのこと、イヤになった?」
「ううん」
私は、顔を左右に小さく振った後、相原さんをまっすぐに見つめます。
「ステキだと思う」

「良かった。ありがと」
相原さんの顔がゆっくりと嬉しそうな顔に変わっていきます。
「それじゃあ、今日はもう遅いから、ここから出ましょ」
腰を屈めてスベリ台の下から出て行きます。
私も後を追いました。

「今までにも何回か、同じようなことしてるの。一人で」
再び住宅街の道に出て、並んでゆっくり歩きながら相原さんが話し始めました。
「もちろん、誰にも見つからないように、細心の注意を払ってる、つもり・・・」
「わたしの場合、誰でもいいからわたしの裸見てー、なんて気持ちはまったく無い。そういう露出狂じゃない、つもり」
「学校で言ったみたいに、誰かに見られちゃうかもしれない、っていうスリルが好きなの」
「でもやっぱり今日みたいに、見られてる、ってわかってると、コーフンの度合いが全然違うんだ、ね」

「だけど本当に、たとえば先生や他の生徒に目撃されちゃったら、学校でもウワサになっちゃうし、すっごくマズイことになっちゃうんじゃない?相原さんが・・・」
私は、真剣に心配して相原さんに問いかけます。
「うん。それはそうだと思うんだけど・・・わたし、あんまり深刻にそういう心配は、してなかった、かな?」
「わたし、結局、中学の二年間で友達、作らなかったから・・・」
「ううん。それは卑怯な言い方・・・友達、出来なかったから・・・」
「小学生の頃は、これでも人並みくらいには、お友達いたんだけどなあ」
相原さんが珍しく寂しそうな声で言います。
私は、何て言ったらいいかわからなくて、黙っていました。

「中一の最初の頃にね、同じクラスの男子と女子数人で、わたしの陰口してるの、偶然聞いちゃったことがあったんだ」
「あの相原って女子は、いつもなんだか人を小馬鹿にしたような顔してて、ツンとすましててナマイキだ、って」
「そんなこと言われてもさあ・・・わたしは生まれてからずっと、こんな顔なんだし・・・」
「でも、確かに気持ち的にそういう傾向があるのも本当。ガキっぽくてバカな男子とか、本当うんざりしてたもん。心の中で」
「そういうのが知らず知らず、顔に出ちゃってるんだろうなあ、って」
相原さんがクスっと笑います。

「私は、そんなこと無いと思う。相原さんの顔、すっごく綺麗だと思う」
私は、本心からそう思っています。
「うふっ。ありがと。森下さんがそう言ってくれるなら、わたし、他にはもう友達なんかいらない」
相原さんは冗談めかして、私に抱きついてきました。
ノーブラの胸の柔らかい感触が、私の二の腕に押し付けられます。
私は、うっとりしてしまいます。

いつも間にか、商店街の入口まで来ていました。
すれちがった買い物客らしいおばさまが、びっくりした顔で私たちのほうを振り返りました。


図書室で待ちぼうけ 06

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