2010年12月19日

図書室で待ちぼうけ 11

相原さんのお部屋は、玄関から二つ目のドアのところでした。
相原さんがドアを開けると、最初は中が薄暗くてよく見えませんでした。
カーテンが閉じているせいでしょう。
パチンという音とともにあかりが灯り、お部屋の奥にある、可愛らしい淡いピンク色の大きめなロココ調ベッドが目に飛び込んできました。

相原さんのお部屋は、10帖くらいの洋間で、壁紙がクリーム色、カーテンはフリフリがたくさん付いたレース、絨毯は明るいグリーンっていう、何て言うか、ファンシーで可愛らしい感じでした。
お部屋のあちこちに、大小とりどりなカエルさんのぬいぐるみやお人形が飾ってあります。

「へえー。なんだか意外・・・」
「えっ?何が?」
「えーっと、私、相原さんってクールな感じのイメージを持ってたから、もっとこう、お部屋も渋い感じなのかなあ、って思ってた」
「クールって、ただ単に無口だったってことだけでしょう?わたし、可愛らしいものやカラフルなの、大好きなの」
「それに、中三女子の部屋が渋い感じっていうのも、それはそれで問題ない?」
相原さんは可笑しそうに笑いながら、CDコンポをリモコンで操作しています。
それもそうかな・・・
やがて、モーツアルトのピアノ曲が壁の四隅に吊ってある小さなスピーカーから低く流れてきました。

「カエルさんが好きなの?」
「うん。すごく小っちゃい頃に初めて買ってもらったぬいぐるみがカエルだったんで、それの刷り込みかな?カワイイのがあるとスグ買っちゃう」
「でもカワイイの限定、ね。リアルな形なやつはパス。あと色は、絶対ミドリ系。それ以外はパス」
「私が今、一番気に入ってるのは、この子」
タオル地みたいなちょっとザラザラした感じのキミドリ色の布で出来た、全長30センチくらいでとぼけた顔のクッタリした感じのカエルさんのぬいぐるみを、私に手渡してくれます。

「それじゃあまず、森下さんにネットを見せてあげる。こっち来て」
お部屋の片隅にある、レトロな感じな木製の勉強机の上に置いてあるノートパソコンを開きながら、相原さんが手招きします。
立ったままパソコンを少し操作した後、キャスターの付いた背もたれのない丸椅子みたいのを引っぱってきて、私をパソコンの前に座らせました。
「あっ、軍曹さんだっ!」
机の上に置いてあった、お腹に黄色い星のマークを付けた深夜アニメのキャラクターのお人形をみつけて、私は思わず声を上げてしまいます。
「森下さんもあのアニメ、見てるんだ。面白いよね、あれ。わたしもあのアニメに限れば、ミドリ系じゃないカエルも許す。黄色いのがけっこう好き」
相原さんが嬉しそうに笑います。

「このマウスのクルクルするとこを回すと画面が下に下がるから。上げたいときは逆向きに。あと、ページを読み終わって次に行くときは、次へ、をクリック。戻るときは、戻る、をクリックして。一番最初の目次を見たいときは、ここをクリック」
私の背後から覆いかぶさるようにからだを押し付けて、私の右手にマウスを握らせて、その上から自分の右手をかぶせて、操作方法を丁寧に教えてくれました。
私のブラウスの背中に、布一枚だけ隔てた相原さんのやわらかい胸の膨らみを感じます。

「このホームページ、かなりえっちなのが多いから、森下さん、びっくりしちゃうかも」
「ちょっとしばらく、それ読んでいて。その間にわたし、リビング片付けてきちゃうから」
相原さんは、私の背中からからだを離し、ドアを開け放したままお部屋を出て行きました。
私は、クッタリしたカエルさんのぬいぐるみを自分の膝の上に座らせて、そのホームページに書かれている文章を読み始めました。

そのページは、女の人が自分でえっちなことをしたときのことを、そのページの主である男の人にメールか何かで報告する、という趣向のようで、すべて一人称の告白調な文章でした。

最初に読んだのは、女子高生の女の子が通学のバスで、一番後ろに座って、スカートのポケットに手を入れてこっそりオナニーしてみた、というものでした。
それに対して、そのページの主の男性が、次はノーパンで乗ってポケットにも穴を開けといて直接さわりなさい、なんて命令しています。

その次に読んだのは、子供もいる人妻の人が両方の乳首を糸できつく縛ってからノーブラに薄いTシャツを着て、ミニスカートを穿いて、ご近所のあまりお客さんが来ない八百屋さんの下品なおじさまに見せつけに行く、っていうのでした。
この告白は長くて、その人妻さんも、やめようやめようと思ってもやっぱり見てもらいたくて、そのうち八百屋のおじさまも人妻さんが露出好きのヘンタイだってわかってきて、ノーパンにさせたり、他のお客さんのいるところでアソコを弄られたり、もっとひどい命令をされるようになる、というものでした。

えっちな言葉やいやらしい言葉、下品な言葉が次から次にたくさん出てきて、文章もうまいから情景も浮かんできて、私は思わず引き込まれてしまい、どきどきしながら真剣に読んでしまいました。
ただ、おじさまの下半身の描写になったとき、急に我に返って、あわてて、戻る、をクリックしていました。

いったん目次に戻って、女の子同士っぽいのを探しました。
女子高生がいじめにあって、プール授業のあと下着を隠されてノーパンノーブラで授業を受けた後、屋上に呼び出されて裸にさせられて、数人の女の子にさんざんイかされてから、その子たちの奴隷になることを誓わされた、っていうのがありました。
このお話も長くて、その女の子はその後、夏休みの合宿でノーパンでテニスをやらされたり、文化祭でワザと肩紐が切れやすく細工された衣装をノーブラで着せられて、みんなの前で劇を演らせたりもしていました。

私は、どきどきしながらも夢中になって読んでいたので、いつの間にか相原さんが背後にいることに気がつきませんでした。

「どう?面白い?」
急に頭の後から囁くように声をかけられて、私は激しくドキンとなり、前屈みになっていたからだをのけぞるように起こしました。
その拍子に私の背中に相原さんのからだが密着しました。
私は、後ろを振り向いて見なくてもわかりました。
相原さんは、前開きのワンピースのボタンを全部はずしています。
布越しではない、相原さんの素肌のやわらかい感触と生々しい体温が私の着ているブラウス越しの背中に感じられます。

「な、なんて言うか・・・す、すごい・・・ね・・・・」
文章を読んでいるときから、私のからだはポカポカと火照っていましたが、今の感触で、より一層カーっと熱くなってきました。
知らず知らずに、膝に置いたカエルさんのぬいぐるみの首のところを、両手でギューっと力を入れて締めていました。

「そうでしょう?えっちな気分になってきた?それじゃあ次は画像、ね?」
相原さんがまた私の背中に覆いかぶさってきて私の右手を掴み、一つのフォルダーをクリックしてから、左のほうにマウスを動かしました。
「スライドショー、スタートっ!」

パソコンの画面いっぱいに裸の女性の写真が映し出されます。
紙芝居みたいに10秒くらいで次の写真に切り替わります。

何人ものキレイな女の人が、いたるところで裸になっていました。
駅のホームで、コンビニで、学校で、電話ボックスで、駐車場で、遊園地で・・・
映画館で、、海水浴場で、バーガーショップで、神社で、公園で、電車の中で・・・
バスの中で、タクシーの中で、ファミレスで、屋上で、ゲームセンターで・・・
写真の中には、目のところをモザイクみたいのでぼかしているのが何枚かありました。
あと、アソコのところをぼかしてないのが何枚もありました。
自分の指で開いていて、ピンクな中味まで鮮明に見えちゃってるのも。
こういうのって、いいの?・・・かな?

相原さんは、私が画像を見ている間中、背中越しにからだをピッタリ密着させていました。
相原さんの心臓の鼓動を私の背中で感じています。
私は、本当に実際にこんなことをやっている女性がこんなにたくさんいるんだ、って唖然としながらも画面から目が離せませんでした。
恥ずかしそうにしている人のほうが多いけれど、中にはニッコリ笑ってピースサインをしている人もいました。
私も相原さんが言っていたように、恥ずかしがっている写真のほうがえっちぽく感じました。

10分くらい、そうしていて、ふいに相原さんのからだが背中から離れました。
あれっ?と思っていると、画像が終わって元のパソコンの画面に戻りました。
と同時に、お部屋の電気がスーっと暗くなり、豆球一つくらいの薄暗がりになりました。
パソコンのモニターの付近だけ、やたらと明るく照らし出されています。
お部屋のドアを閉じるパタンという音がしました。

私は振り向いて、相原さんの姿を探します。
薄暗がりにぼんやりと、オレンジ色のワンピースの前を完全に開いて、その隙間から白い裸身を露にした相原さんが見えました。
相原さんはゆっくりと私のほうへ近づいてきて、また私の背中に素肌を密着させながら両腕を伸ばし、ノートパソコンのモニターをパタリと倒して閉じました。
それで本当の薄暗闇になりました。

スピーカーからは小さく、トルコ行進曲が流れ始めました。
相原さんは、伸ばした両腕をそのまま私の胸の前で交差して、私を背後からギュッと抱きしめてきました。


図書室で待ちぼうけ 12

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