2015年7月12日

オートクチュールのはずなのに 11

 自宅のベッド以外で目覚めると、決まっていつも軽いパニック状態に陥ります。
 あれ?ここはどこ?私は誰?なんで裸で寝ているの?
 だけど、首周りにまとわりつく異物感に右手が思わず伸びてそれに触れ、自分が置かれている状況を即座に思い出しました。
 見慣れないお部屋を見回しているうちに全身がワクワク感に包まれ、眠気があっさり吹き飛びました。

 枕元に置いた携帯電話の時計を見ると、午前9時10分。
 んーーっ、って大きく伸びをして、立ち上がりました。

 お姉さまは、お昼ごろまで起きないつもり、っておっしゃっていたっけ。
 それまでに家政婦として一仕事、やっつけてしまいましょう。
 その前に洗面所をお借りして、顔を洗って歯を磨いて。
 リビングルームのドアを開け、洗面所に向かいました。

 洗面所の大きな鏡に、赤い首輪を嵌めた裸の上半身が鮮やかに映し出されます。
 首輪を嵌められている、イコール、私はお姉さまの所有物、飼い主とペット・・・
 そんな連想をした途端に、鏡の中のふたつの乳首がみるみる背伸びを始めました。

 歯を磨きながら、午前中の段取りを考えます。
 リビングのお掃除、お洗濯、お姉さまが起きる頃を見計らってブランチの用意。
 とりあえず、そのくらいかな。
 時間があったら、バスルームとおトイレもお掃除しちゃおう。
 それで午後は、お姉さまとゆっくり過ごせたらいいな。

 リビングに戻って、ソファーを元通りに直しました。
 真っ白なカーテン越しにでもわかるくらい、降り注ぐ陽射しがお部屋中を明るく照らしています。
 今日はすごく良いお天気ぽい。
 そう思って無意識にカーテンを開こうとして、ふと気づきました。

 私は今、全裸。
 カーテンを開いて、もしもお向かいにも窓があって誰かいたら、裸を視られてしまいます。
 お姉さまのお部屋の窓から裸の女が見えた、なんてご近所のウワサになったら、私はいいとしても、ここに住んでいるお姉さまにご迷惑がかかってしまいます。
 そう言えば私、ここが何階で、周囲がどんな状況か、ぜんぜん知らないことに、今気がつきました。

 気を取り直して、カーテンの境目から恐る恐る顔だけ出して、お外を覗いてみました。
 窓のすぐ外は広くて奥行きの有るベランダ。
 そのフェンスの向こうは大部分が青空で、遥か遠くにここより高そうな建物が見えました。
 そして、大きな5枚のガラス窓は完全な素通しで、カーテンを開けたら横長のスクリーンのように、お外から室内全体が丸見えになる、ということがわかりました。

 けっこう高い階のお部屋みたいだな。
 顔を引っ込めてから考えました。
 今見た感じでは、窓は大きいけれど、近くの建物から覗かれちゃう心配は少なそう。
 だけど・・・

 もしも、このお部屋をお掃除するとなると、窓を開けて換気をしながら、ということになりそうです。
 昨夜は気がつきませんでしたが、昼間の明るい光の中で見ると、やっぱり家具の上やお部屋の隅にうっすら埃が積もっているので、ダスターをかけて埃を床に落としてから、のほうが効率的なので。
 となると、お姉さまにお伺いを立ててからのほうが良さそうです。
 カーテンはそのままにして、バスルームのお掃除から始めることにしました。
 せっかく裸なのだし。

 バスルームとおトイレを一時間くらいかけてピカピカにしてから、次はお洗濯。
 お洗濯ものはそんなにたくさんはなく、タオル類と私のワンピース、それにお姉さまと私の下着類くらい。
 置いてあった説明書を読みながら洗濯機にはタオル類とワンピースを任せ、下着類は手洗いしました。
 
 出張中に溜め込んだのであろう、色とりどりのお姉さまの下着を手洗いしながら、ふと気がつきました。
 これらのお洗濯物を干すとき、否が応でも私は、あのベランダに裸で出ることになることを。
 からだの奥がキュンと疼きました。

 洗い終えた洗濯物はとりあえず放置して、お料理に移ります。
 お姉さまからのリクエストはホットケーキ。
 油を使うので、昨夜お姉さまから唯一許された着衣として託されたエプロンを広げてみました。

 一見すると真っ白な可愛らしいフリルエプロンなのですが、お姉さまがおっしゃったとおり、お下劣な細工が施してありました。
 バスト部分と腰周りだけ、ビニールみたいな透明な素材で見事にシースルーなのです。
 自分のからだにあてがってみると、尖った乳首が滑らかなビニールにペタッと貼りつきます。

 いやん、えろい。
 お姉さまったら高校のとき、こんなのをアユミさんていうかたに着せて愉しんでいたんだ。
 お会いしたこともないアユミさんが羨ましくて、ちょっぴり嫉妬してしまいます。
 首と背中の紐を結ぶと、とくに視ていただきたい部分だけがスケスケの、いかにも露出狂そのものな裸エプロン姿になりました。

 コールスローを作り、ホットケーキミックスをかき混ぜます。
 腕を動かすたびに、乳首がツツツとひきつるようにビニール地を擦り、ますます硬くなってしまいます。
 その感触でアソコの、いえ、剥き出しマゾマンコの奥もウルウル。
 お姉さま、早く起きてこないかなー。
 
 ホットケーキを、あとは焼くだけ、の状態にして、食器類をダイニングテーブルに並べ始めた頃、リビングのドアが開きました。

「おはよう」
 ざっくりしたシルエットでゆるふわな濃紺のマキシワンピース姿のお姉さまが、近づいてきました。
「あ。おはようございます、お姉さま。お早いですね?まだ12時前ですよ。ゆっくりお休みになられましたか?」
「うん。いつもだったらまだまだ寝ているのだけれど、直子がいると思うとワクワクしちゃって、早めに起きちゃった。あ、でも、昨夜はぐっすり眠れたから問題なし、よ」
 お姉さまが歩くたびに、柔らかそうな生地にからだのラインが浮き上がります。
 たぶんお姉さま、素肌にそれしか着ていないみたい。

「すぐにお食事にされますか?ホットケーキは、もう焼くだけになっていますけれど・・・」
「うん、そうね。って、直子、そのエプロン、やっぱり似合うわね」
 目の前に来られたお姉さまが、私の透けているバスト部分をまじまじと覗き込みました。
「赤い首輪ともよくマッチしている。えっちビデオのタイトルっぽく言うと、ヘンタイ肉奴隷マゾメイド直子、って感じ」
 そのお下品なお見立てが、私のマゾ心をゾクゾク煽り立てます。

「直子のほうがアユミよりおっぱい大きいから、尚更卑猥な感じ。乳首がペッタリ貼りついて、ひしゃげちゃってる」
 布地越しに私の右乳首を無造作につまんでくるお姉さま。
「ああんっ」
「相変わらずコリコリね。朝っぱらからサカっちゃって、いやらしい子」
 
 不意に私の唇が、お姉さまの唇で塞がれました。
 でもすぐ離れて、お姉さまが、んーーって、伸びをひとつ。
 お姉さまからのモーニングキスは、微かに歯磨き粉の香りがしました。

「あら直子?どうしてカーテン開けないの?」
 ふと窓のほうに目を遣ったお姉さまが、訝しげに尋ねてきました。
「あ、それは・・・」
 私がご説明しようと言葉を探しているあいだに、お姉さまはスタスタと窓際に行かれ、ザザーッとカーテンを全開にされました。
「あーっ!」
 お姉さまを追っていた私は、お部屋の中間あたりで、それ以上進めなくなりました。
 素通しガラス5枚分の陽射しで、お部屋の中が一段と明るくなりました。

「うわー、いいお天気だこと!まさに五月晴れだねー」
 のんきにはしゃぐお姉さま。
「直子も来てごらん、空が真っ青だよ」
「あの、えっと、大丈夫ですか?」
「何が?」
「私、今、裸ですから、えっと、その、ご近所さんとか・・・」
「ああ、それを気にして開けなかったんだ。大丈夫。いいから来なさい」
 最後はご命令口調に変わっていましたから、行かないわけにはいきません。
 腕で胸を庇う格好でおどおど近づきました。

「ほら見て。この窓の向こうは学校で、今日はお休み。その奥はずっと神社の森。おまけにここは坂の途中で高台のほうだから、この窓を覗ける建物なんて周りにないのよ」
 お姉さまのお言葉に勇気を得て、思い切って窓際まで行き、お外を覗いてみました。
 
 おっしゃる通り眼下には、ここより低い建物と校庭らしき敷地、その奥には緑がつづいていました。
 そしてお空は抜けるようなライトブルー。
「ね、わかったでしょ?だからおっぱい、隠さなくていいの」
 いつの間にか背後に来ていたお姉さまに、胸を庇った左腕を無理矢理剥がされました。
 腕に弾かれた乳首がプルン。

「向かいの学校はね、けっこう有名な名門女子高なのよ。幼稚園から大学までのお嬢様学園。大学だけ別のところにあるらしいけれどね」
「あたしがここに来るのは、たいてい休日か夜中でしょ?たとえ窓を開け放しでも、いつもしんとしているの。平日の昼間がどのくらいかまびすしいのかは知らないけれど、あたしにとってここの印象は、とても居心地のいい閑静な住宅街なのよ」

「このお部屋は、何階なのですか?」
「えっ?覚えていないの?そう言えば直子、スーパー出てからは、ずーっとボーッとしていたものね、なんだかやり遂げちゃった感じで」
「ここは8階。このマンションの最上階。ここを覗こうと思ったら、たとえば、あのビルからだったら.・・・」
 遥か遠くのビルを指さしてつづけます。
「かなりの高倍率の双眼鏡が必要なはずよ」
 そこまでおっしゃって、お姉さまが何かに気づかれたようなお顔になりました。

「そっか。そういう観点で見たことが無かったから気づかなかったけれど、ここって、直子の趣味にぴったりな部屋だったんだ!」
「まっ裸で窓辺に立とうが、ベランダに出ようが大丈夫っていう、裸になりたがりの露出狂にはうってつけの物件だったのね」
「それならさ、ブランチはベランダでしない?こんないいお天気だし、きっと気持ちいいから。確かガーデンテーブルが物置に入っていたはず」
 みるみるテンションが上がり、愉しそうなお声をあげたお姉さまが次々に窓枠のロックを外し、ススススーッと三面分開きました。
 お外の爽やかなそよ風がふわふわっとお部屋に侵入してきて、私の裸のお尻を優しく撫ぜました。

「あれ?直子はあんまり愉しそうじゃないのね?あ、そうか。誰も覗いてくれないって分かっているから、スリルが無くてつまらないのか」
「いえ!そんなことないです。視られないほうがいいですっ!」
 あわてて否定する私を、ニヤニヤ笑いが迎え撃ちます。
「あらあら、また嘘つき直子に戻っちゃったか。昨夜のスーパーでは、あんなに素直だったのにね?」
 お姉さまのからかうようなお声に、そのときの一連の恥辱が一気によみがえり、全身の体温が数度、カッと跳ね上がりました。

「ベランダのほうはあたしが用意しておくから、直子はパンケーキを焼き始めて」
 浮き浮き声のお姉さまの号令で、女子高の校庭を見下ろしての青空ブランチ開催が有無を言わさず決定しました。
 
 私がキッチンでパンケーキを焼いているあいだ、お姉さまは何度も、ベランダとリビングやキッチンのあいだを往復されていました。
 やがて、焼きあがったパンケーキをお皿に盛ってダイニングテーブルへとひとまず置いたときには、さっき私がテーブルに用意した食器類などはすべて消え失せていました。

 ホカホカのパンケーキを積み上げたお皿ふた皿とシロップ類をトレイに乗せ、しずしずとベランダに向かいます。
 だけど今の私は、赤い首輪におっぱいと下腹部だけスケスケの裸エプロン。
 いくら地上8階で周りから覗かれる心配の無いベランダとはいえ、そんな姿で青空の下に出るには、かなりの勇気を必要としました。
 フローリングから窓枠のレールを跨ぎ、ベランダのコンクリートへと片足を下ろす、その一歩に躊躇してしまいます。
「ほら、何しているの?早く早く」
 お姉さまからの非情な一言で、思い切ってコンクリートに足を着けました。

 横長長方形のベランダは、目隠しフェンスまでの奥行きが3メートルくらいと、かなり広め。
 空間の半分くらいが庇で覆われています。
 エアコンの室外機とフェンスのそばにお洗濯物用のパイプが通っている以外、他に装飾はありません。
 ベランダ中央付近に、大きくて真っ白な日除けパラソルが立っていました。
 その下に、キャンプで使うような木製のテーブルが置かれ、折りたたみの木製椅子が2脚。
 その片方にお姉さまが、優雅に腰掛けていらっしゃいました。

 テーブルには真っ白なクロスが掛けられ、私が作ったコールスローと、氷が詰まったワインクーラーに埋まった白ワイン一本。
 何枚かの取り皿とグラス、ナイフとフォークが奇麗に並べてありました。
 真ん中の空いているスペースにパンケーキのお皿を置きます。
「アーッ、気持ちいい。なんだかいいわよね?優雅な感じで。こんなことになるならもう少し、このベランダも飾っておけばよかった。観葉植物とかで」
 お姉さまがワインのコルク栓をグリグリしながらおっしゃいます。
「あ、でもあたし、めったに帰らないから世話できないか。それじゃ植物がかわいそうだわね」

「このアウトドアセットはね、確か一昨年、河原でみんなでバーベキューすることになって揃えたのよ」
「行きがかり上、保管はあたしに押し付けられて、邪魔って思っていたけれど、捨てなくてよかった」
「会社のみなさまとしたのですか?」
「そう。まだ、たまほのが入る前のことね」
「社員全員でご旅行とか、されるのですか?」
「うーん。とくに決まってはいないけれど、気が向けばね。去年は温泉に行ったな。全員が休めるようにスケジュールが取れればね」
「あ、でも今年は直子も入ったし、ぜひ行きたいわね、秋頃にでも」
 そうおっしゃって、なぜだかパチンとウインクをくださるお姉さま。
 そのときが、私のパイパンがみなさまにバレる日となるのでしょう。
 
 パンケーキを置き終わって、恐る恐る目隠しフェンスのそばまで行ってみました。
 高さは私の肩のちょっと下くらいで、茶色い金属の密なメッシュ状になっていました。
 これなら確かに、たとえ、ここと同じくらいの高さの建物が近くにあったとしても、フェンスの中は覗けなそう。
 唯一覗くことが出来るとしたら、ここより高い位置からだけ、という結論に達して見上げてみれば、近くにそんな建物はひとつもありません。
 ようやくずいぶんホッとして、テーブルのほうに戻りました。

「まだ向こうの部屋から持ってくるものある?無ければ早く席について」
「はい。もう大丈夫です。お待たせしました」
「休日って、昼間からお酒飲めるのも醍醐味よね。眠くなったら寝ちゃえばいいのだから」
 お姉さまがワイングラスにワインを注ぎ始め、私は向かい側に座ろうと椅子を引きました。
「だけど今日は寝るわけにはいかないのよね、直子をいっぱい虐めてあげなくちゃ。だからまあほどほどにしとく。そっちにお水とジュースも入っているから」
 私の足元に置かれたクーラーボックスを指さされました。

「それではカンパイということで」
「はい」
 腰を下ろしながらグラスを持ちました。
「あ、ちょっと待ちなさい」
 椅子にお尻が着く寸前、お姉さまからヒヤリと冷たいお声がかかりました。

「せっかくこうセレブの休日、っぽい雰囲気なのだから、あくまでも優雅にいきましょうよ。直子がエプロンしたままじゃ、ご主人様と使用人のブランチだわ。エレガントさに欠けるでしょう?」
 ドキン!
「えっと、つまり、エプロンを取れ、と・・・?」
「うん。だってそのエプロン、おっぱいが貼りついちゃって卑猥すぎるもの。優雅なブランチには似合わないわ」
 作ったご本人のお言葉とは思えません。
「わ、わかりました・・・」

 下ろしかけた腰を戻しグラスを置き、お姉さまの前で首の紐から解き始めました。
 胸当てがペロンと外れ、さらけ出されたおっぱいに五月の太陽が降り注ぎます。
 つづいて背中側。
 皮膚に触れていた布地一切が取り払われました。
 外したエプロンを折りたたんで置き場所に迷っていると、お姉さまの右手が伸びてきて取り上げられました。

 青空の下、丸裸。
 しかもこれで終わりではありません。
 これからゆっくり、お食事をしなければならないのです。
 全裸のままで、しかも優雅に。

 あんなにお下劣な薄っぺらエプロンでさえ、有ると無いとでは大違いでした。
 からだを覆う布が無くなった瞬間に、周囲からの音が大きくなっていました。
 遥か下を走る自動車の音、時折聞こえてくる誰かの小さな話し声や足音、鳥のさえずり、遠い木々のざわめき・・・
 そういった日常にありふれた喧騒のボリュームが格段に上がり、私の背徳感を煽ってきます。
 おまえはなんでこんなところで裸になっているんだ?と、喧騒たちが私を責め立てているように感じていました。

「うん。いい感じになった。それじゃあ、またひとつ、露出マゾレベルが上がった森下直子さんにカンパーイ!」
 イジワルイお言葉でたたみかけてくるお姉さまをニクタラシク思いながら、ワインのグラスをクゥーッと空けました。

「うん。美味しい。直子のパンケーキは絶品だね」
 本当に美味しそうに頬張りながら、合間合間に私のおっぱいをじーっと見つめてくるお姉さま。
 今の私には味なんてぜんぜんわかりません。
「コールスローも美味しい。これ、明日も作っておいて」
「今夜はパスタにしてね。カルボナーラ。あと夜食用にサンドウィッチも作っておいて欲しいな、チーズとハムのやつ」
 
 お食事のあいだはずっと、屈託の無いお姉さまの笑顔とおしゃべり。
 ご機嫌なご様子のお姉さまを見つめつつ、グラスワイン2杯のほろ酔いで、やがて私も少しづつ、リラックスしてきました。
 私もお腹は空いていたみたいで、パンケーキもけっこうな枚数、食べちゃいました。
 お皿が空になると、お姉さまはまだワイン、私はグレープフルーツジュース。

「西洋の名画とかでさ、ピクニックか何かなのか、着飾った貴族っぽい人たちが森で食事している絵画とかがあるじゃない?」
「ああ。はい・・・」
「ああいうのになぜだかひとりだけ、裸のご婦人とかが混ざっていることがあるけれど、それってつまり、その時代の直子みたいな趣味のご婦人なのかな?」
「そ、そんなの、知りません・・・わ、わかりません・・・」

「直子、今、どんな感じ?こんなところで全裸に首輪で」
「えっと、そ、それは、恥ずかしいです・・・すごく」
「でも、さっき言ったように、ここ、誰にも覗かれないよ?」
「で、でも、お外ですし・・・」
「気持ちいいんでしょ?乳首勃ってるよ?」
「・・・」
「濡れてる?」
「・・・はい・・・」
 もうっ!イジワルなお姉さまが戻ってきちゃった・・・

「あー美味しかった。ワイン3杯も飲んじゃった。ごちそうさまー」
 心底愉しそうなお姉さまがそうおっしゃったとき、下のほうから何か管楽器を合奏する音が小さく聞こえてきました。
 これはたぶん、コパカバーナかな?

「へー。休日でも部活の練習とかするんだ、あの学校も。あっ、そうか。午後一時開始だったのかな」
 お姉さまがふらりと立ち上がり、音のするほうに歩いていかれます。
 たどたどしい感じで曲が進み、ワンコーラスくらいで中断しました。
 音が消えて興味を失ったのか、すぐに戻ってきたお姉さまは、ご自分の席に着かず私の背後に立たれました。

「立って、直子」
「あ、はい」
 何をされるのか、ビクビクしながら立ち上がりました。
 間髪を入れず後ろから抱きつかれました。
 お姉さまの左手は私の胸元に、右手は股間へと。

「あふぅんっ!」
「うわっ、本当にグッショグッショ」
「あっ、あっ、あんっ!」
「だめよ!直子」
 私の右おっぱいを揉みしだき、マゾマンコをさすっていたお姉さまの両手がピタリと止まりました。

「ここは、覗かれはしないけれど声はだめ。前にも教えたでしょう?そういう声って意外と通るのよ?」
「下まで聞こえちゃうかもしれないし、すぐ両隣にだって住んでいる人がいるのよ?もし窓が開いていたら丸聞こえのはず」
「うちの左隣は、上品そうなイギリス人ご夫妻。右隣は知らないな。あたし、あんまり帰ってないから」
「今、お隣さんがいるかどうかわからないけれど、とにかく、あたしに恥をかかせないように、出来る限りがまんなさい」

 おっしゃりたいことだけを私に耳打ちしたお姉さまは、私の返事は待たずに、再び両手を動かし始めました。
 左手は右乳首をぎゅっと潰し、右手の二本の指がズブリと膣口に突き挿さりました。
「んんむぅーーっ!!」
 真一文字に口をつぐんで、必死に悦びの声を抑え込みます。
 私の両手はいつの間にか、後頭部にまわっていました。
 下のほうから再び、合奏の音が聞こえてきました。

「吹奏楽部の無垢なお嬢様たちには、自分たちが一生懸命練習している同じときに、まさかすぐ向かいのマンションのベランダで、素っ裸になった元お嬢様がマゾマンコからだらだらスケベ汁垂らして、いやらしい喘ぎ声を必死にがまんしているなんて、想像も出来ないでしょうね」
 
 とことんイジワルなお姉さまの残酷な囁きが、耳の奥深くに流し込まれます。
 クチュクチュクチュクチュ・・・
 お姉さまが動かす指が、コパカバーナのリズムに乗っています。

 どうか止めないでお姉さま・・・このままイかせてお姉さま・・・声は絶対がまんしますから・・・焦らして寸止めだけは勘弁してください・・・
 心の中でそうお願いしながら、お姉さまからの乱暴な陵辱に身を任せます。

「んっ、んゅ、んぐぅ、ぐぬぅー・・・」
 容赦なくどんどんどんどん高まってくる快感で、歓喜に震えそうになる声帯。
 下唇をギューッと噛みしめ、死に物狂いでそれを封じ込みながら、やがて私のからだは、五月の澄み切った青い空の高みへと、溶け込んでいきました。


オートクチュールのはずなのに 12


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