2015年11月29日

オートクチュールのはずなのに 26

 翌朝からまた、お仕事の日々が始まりました。
 会社内は、あと一ヶ月少しに迫った新作発表イベントに向けて、とてもあわただしい雰囲気となっていました。

 オフィスには連日、数組のお客様が入れ代わり立ち代りお見えになり、すべて早乙女部長さまがお相手をされていました。
 営業の間宮部長さまは、ほとんどお顔を拝見出来ないほど、日本各地を飛び回っているご様子。
 ほのかさまも朝はオフィスへ出社されますが、すぐにどこかへお出かけになり、夜遅くにお戻りになるのがザラでした。
 リンコさまとミサさまは、デザインルームにこもりっきり。
 もちろんお姉さま、いえ、チーフも外出がちで、お話出来るのは一週間に一度あればいいほう、という状態。

 そんな中で私はと言えば、午前中に通常の業務を終わらせ、午後からは、5月末の決算に備えて当期過去分の必要書類や数字の再点検というお仕事を任され、社長室に遅くまで閉じこもる毎日でした。
 
 なので、ずっとオフィスに残っている私と一番頻繁にお顔を合わせるのは、早乙女部長さま。
 その早乙女部長さまもたいていお客様のお相手をされていたので、実質私は、ひとりきりみたいなもの。
 誰かと無駄話もたまにしか出来ず、孤独にパソコンのモニターとにらめっこする毎日がつづきました。

 お休み明けすぐの頃は、久しぶりのお仕事ということもあり、心身を引き締めて余計なことは一切考えずに、ひたすらお仕事に没頭しました。
 一週間くらい過ぎると通常業務の要領も思い出し、余裕が出てきました。
 余裕が出てくると、どうしても思い出してしまうのが、連休中の出来事。
 お姉さまとの濃密な三日間で、私の中の何かが、確実に変わっていました。

 実を言うと私のムラムラは、連休明け以降もずーっと継続していました。
 オフィスにいるあいだは我慢していましたが、帰宅してエレベータを降りるとすぐ、お姉さまからいただいた赤い首輪を嵌めました。
 首輪はずっと通勤バッグにしのばせ、持ち歩いていました。

 首輪がもたらす首筋の異物感が、妙に心を落ち着かせてくれるのです。
 首輪を嵌めている、イコール、離れていてもお姉さまと一緒にいる、ような感覚。
 首輪をしている自分こそが本当の自分、とさえ思うようになっていました。
 それから当然のように全裸になり、リードを付けて鎖を素肌に絡ませ、満足するまで自分を虐めました。

 思い浮かべる妄想にも変化が起きていました。
 それまで、私を妄想の中で虐めてくださるお相手は、今まで私を虐めてくださった知っているお顔の誰か、だったのですが、それがお姉さまに固定しました。
 そして、いつも周りを不特定多数のギャラリーが囲むように変わっていました。
 以前なら絶対に思い浮かべない男性の姿も、虐められている私を蔑む視線として自然に思い浮かびました。

 虐められる場所も、人通りの多い街中ばかり。
 交差点とかレストランとか公園や電車の中とか。
 そういった場所で首輪にリードで全裸の私は、四つん這いやM字姿で、お姉さまの手により徹底的にイカされるのです。
 大勢の見知らぬ人たちが、好奇の視線で見守るその前で。

 つまりは、あの三日間にお姉さまからされたこと、それがもっとエスカレートすることを、私は望んでいるようでした。
 そんなこと出来るはず無いと、イキ疲れて理性が少し戻った頭でなら、臆病者の私が思うのですが、次の日、また自分のからだを虐め始めると、同じ妄想に身を焦がすくりかえし。

 首輪を着けたまま眠りにつき、翌朝、出勤のために首輪を外すときに感じる一抹の寂しさ。
 私の激しいムラムラ期は、生理を迎えてさえ鎮まることなくつづいていました。

 お休み明けに出社したとき、社長室の応接テーブルの上に、一本の乗馬鞭が箱を開けて中身が見える状態で無造作に置かれていました。
 オレンジ色の箱の中、一際目立つ鮮やかな赤色の持ち手とベロ、その他の棒部分はお上品なクリーム色というオシャレな乗馬鞭。

 社長室に入ってロールカーテンを開けようとしたときにそれをみつけ、私の心臓はドキンと跳ね上がりました。
 お姉さまが私のために誰かから譲っていただいた、私を虐めるための高級ブランドもの乗馬鞭。

 お姉さま、どうしてこんなところに無造作に置き放しにしたのだろう?
 あの日、私に見せることが出来なかったから、わざわざ置いておいてくれたのかしら?
 だとしたら、誰かにみつかる前に、どこかに片付けたほうがいいのかな?
 しばし迷っているうちに、ノックとともにドアが開き、出社されたほのかさまが社長室へ入ってきました。

「おはよう、直子さん。おひさしぶりね。チーフのお手伝い、上手くいった?」
 たおやかな笑顔で近づいて来るほのかさま。
「あ、おはようございます。それでえっと、はい。なんとか・・・」
 ほのかさまに向き直り、乗馬鞭を隠すように両手をバタバタ振って、しどろもどろな私。
 かまわずもっと近づいてきたほのかさまが、おやっ?という感じでテーブル上へと視線を遣りました。

「あら?素敵な乗馬鞭。ああ、そう言えばチーフ、信州で乗馬されたっておっしゃっていたわね」
 私の隣に並び、乗馬鞭をしげしげと覗き込むほのかさま。

「あ、はい。ほのかさんもご存知だったのですね」
「うん。空港へ送ってもらう前にここに寄ったとき、おっしゃっていたわ。久しぶりだったけれど、とても気持ち良かったって」
 ほのかさまが乗馬鞭を見つめながらおっしゃいます。
「きっとそこで、手に入れられたのね」
 ほのかさまの手が乗馬鞭に伸び、箱ごと持ち上げられました。

「あら、有名なブランドもの。すごーい。これなら可愛いし、お客様との話題の種にもなりそうだから、インテリアとして飾っておいても良さそうじゃない?」
 おっしゃりながら、すぐにテーブルの上に箱を戻されました。

「きっとチーフもそのおつもりよ、こんなところにわざわざ出しっ放しのまま出張に出かけられたのだもの」
 そうおっしゃると、ほのかさまはあらためてゆっくりとお部屋を見渡し、もはや乗馬鞭への興味は失くされたようでした。

「さあ、今日からイベントの日まで、やることたくさんあるけれど、一緒にがんばりましょうね」
 私の両手を取り、さわやかにおっしゃったほのかさまは、私の返事は待たず、来たときと同じ優雅な足取りで入ってきたドアに向かわれました。

「はいっ!がんばりますっ!」
 ほのかさまに聞こえるように、その背中に大きめな声をかける私。
 出る寸前に振り返り、ほのかさまはニコッと可憐な笑顔を向けてくださいました。
 
 結局、ほのかさまのお言葉で、私はその乗馬鞭をテーブル上から片付ける理由を失くしました。
 お仕事に集中しなくてはいけないあいだは、あえてその乗馬鞭を見ないようにし、存在を忘れるように努めました。

 連休明けから四日後の夜、どうやら私が帰った後にチーフが立ち寄られたらしく、その翌朝、応接の壁際に設えられた、刀剣を飾るような台に恭しく飾られた乗馬鞭を発見しました。
 ほのかさまの推理は、大当たりだったのでした。

 その数日後。
 お仕事に余裕が出来、煩悩の塊となった私は、その乗馬鞭が気になって仕方なくなっていました。
 お姉さまが私を虐めるためだけに手に入れてくださった、私専用の乗馬鞭。
 そんな乗馬鞭が私の仕事場に堂々と飾ってあるのです。
 気にならないわけがありません。
 
 オフィスに早乙女部長さましかいなく、その部長さまもご来客さまと応接にこもっておられるようなときを見計らって、そっとその鞭を手に取り、軽く振ってみたりしました。
 軽く振っただけで、ヒュンという心ざわめかせる被虐的な音が鳴り、マゾマンコがキュンと疼きました。
 扇情的な赤いベロでジーンズの腿を軽くペシペシ叩いたり、股間を撫でたり。
 
 ああん、早くお姉さまの手でこの鞭を振るわれて、剥き出しのお尻が真っ赤になるまでいたぶられてみたい・・・
 そんな妄想で人知れず、ショーツの股間を濡らしていました。

 そのまた数日後のある日の午後。
 今度は、リンコさまとミサさまが息抜きのため、社長室を訪れました。
 おふたりとも乗馬鞭のことは知らなかったようで、最初のいきさつから、ここに飾られるまでを全部、ご説明しなくてはなりませんでした。
 もちろん、私専用というはしたない秘密だけは隠して。

「へー。乗馬なんて優雅な遊び、インドア派のアタシらには縁の無い世界だわねえ」
 おっしゃりながらリンコさまが乗馬鞭を手に取り、力強く一回振りました。
 ヒュンッ!
 と妙に甲高い、私にとっては身震いしちゃいそうなほど官能的な音が室内に鳴り響きました。

「うわっ。なんだかこの音って淫靡な感じしない?アタシらみたいな輩には、鞭っていうと乗馬よりも、どうしてもアッチ関係のイメージが強い道具だからさ」
「ヒュンていう音の後に、キャッとかアウッとかイヤンなんて言葉がつづきそうな感じ」
 そんなことをおっしゃって、ミサさまに乗馬鞭を渡すリンコさま。
「うん。だけどボクの調査だと、乗馬鞭はあまり使えないらしい。プレイならバラ鞭、本気で痛めつけるのなら一本鞭が至高、らしい」
 おっしゃりながらヒュンヒュン良い音を響かせるミサさま。

 ミサさまは、普段、あまりお話しされません。
 お仕事中、チーフや部長さまたちと必要最低限の会話をされるときには、ご自分のことを普通に、私、と称されますが、こういったくだけたお仲間とのおしゃべりのときは、一人称が、ボク、に変わります。
 
 最初にそれに気づいたとき、ボーイッシュなリンコさまではなく、ロリ&ボインなミサさまのほうが、ボク、とおっしゃることに、新鮮な驚きを感じたものでした。
 慣れるとそれがとても可愛らしく聞こえて、私は大好きでした。
 今も、無邪気に鞭を振るうミサさまの豊かなお胸が、ふんわり気味のブラウスの下でもわかるくらい、ブルンブルン揺れています。
 さすがおふたりとも、俗に言う腐女子系なオタク趣味をもお持ちなだけあって、その手のSM的知識も豊富にお持ちのようでした。

「アタシもコスプレの小道具でちゃちいのを何本か持っているけれど、さすがに元馬具メーカーのブランドものだと、作りがしっかりしてるよね。今度そっち系のコスプレするとき、チーフに貸してもらおう」
 ミサさまから戻された鞭を指揮棒みたいに振るリンコさま。
 今日はゆったりめなグレーのTシャツの下で、控えめな乳首が浮き沈みしています。

「でもさ、チーフがこの鞭持ってる図って、かなりお似合いだと思わない?かっちり系スーツ姿で仁王立ち」
 リンコさまの問いかけにコクンとうなずくミサさま。
「早乙女部長も似合いそう。赤フレームのつり目メガネあれば、なおよし」
 ポツンとつぶやいたミサさまにキャハハと笑うリンコさま。
 そんな会話を、ドキドキしながら聞いている私。

「それでさ、ナオっちが何かミスしたら、このテーブルの上に這いつくばらされて、突き出したお尻をペロンと剥かれてペシペシ叩かれちゃうの」
 リンコさまのお言葉に、
「それは、かなり、エロい」
 と、すかさず返すミサさま。

「ねえ?ナオっちって、鞭で叩かれたことある?」
 不意な突然唐突の直球一直線なご質問に一瞬絶句して、ワンテンポ遅れて盛大に首を左右に振る私。
「だろうねえ。普通ないわな。そんな感じにも見えないし。ナオっちとたまほのは、お嬢様まっしぐらっていう感じだもんね」
 私に向けたのかミサさまに向けたのか、独り言ぽくおっしゃったリンコさま。

「でもね、気をつけたほうがいいかもよ?チーフって絶対エスっ気あるから」
 今度ははっきりと私に向かって、からかうようにおっしゃるリンコさま。
「ボクもそう思う。なぜなら、ボクもそうだから」
 ミサさまがまた、ポツンとつぶやきました。

「でもアタシらはさ、妄想を絵や言葉にしているだけじゃん。二次創作で既存のキャラ借りて。最近凝ってるのはね、ビーエルを、敢えて女体化」
「ボクはナマモノも好物。チーフ×直子は、かなり萌える」
 真面目なお顔で答えるミサさま。

「あはは。いいね。うちのスタッフだと雅部長×たまほのとか、アヤちゃん×たまほのとかね。部長同士だと雅ちゃんが受けかな?」
「ボクの中では、間宮部長は誘い受けっぽい。だから、たまちゃんがどうなるか心配。攻めるたまちゃん、たまミヤは想像出来ない」
「あはは、ひどーい。ミサミサ、たまほののこと大好きだもんね?」
「うん。素敵」

「ナオっちは受けだよね?」
 ミサさまに尋ねるリンコさま。
「うん。総受け」
 きっぱり言い切るリンコさま。
 どんな表情をすればいいのかわからない私。

「あはは。でもナオっち、アタシらがこんなこと言ってるなんて、チーフたちに告げ口しちゃイヤよ。あくまで勝手な妄想なんだから」
 イタズラっぽく笑うリンコさまに、あやふやな笑顔をお返しして、コクコク真剣に頷きました。

「ところで先週のアレは見た?」
 そこで話題は唐突に変わり、その後はひとしきり他愛も無いアニメ関係のおしゃべりをした後、おふたりが出て行ってから考えました。
 果たして今の会話は、カマをかけられたのか、それとも単純に乗馬鞭から連想された冗談なのか。

 だけど、いくら考えても正解なんかわかるはずもなく、一抹の不安を頭の片隅に保留して、お仕事に戻りました。
 この日の会話で、リンコさまとミサさまのおふたりに、今まで以上に興味が湧いたのは事実でした。

 お休み明けから二週間過ぎても、私のムラムラは治まるどころか、ひどくなる一方でした。
 そのあいだ、家に帰れば毎晩、遅くまでオナニーしていたにも関わらずです。

 街を歩いていて、コインランドリーや証明写真ブースを見かけると、それだけでからだが反応し、下着を汚してしまうほど。
 公園の公衆トイレやコンビニ、地下鉄の階段、見知らぬマンションのベランダを見上げただけでも、そうなってしまうのでした。
 
 そこでお姉さまがしてくれたこと、いただいたご命令、自分が感じた恥辱感などが鮮明によみがえり、いてもたってもいられなくなってしまうのです。
 今すぐ、あのときと同じ快感を味わいたい、そこで恥ずかしい姿を晒して、たくさんの人に嘲り蔑んでもらいたい、という欲求に呑み込まれそうになってしまうのです。

 ジーンズや長めのスカートを穿いたときは、ノーパンで出社するようになっていました。
 そうでないときでも、お仕事の合間に人知れず、意味も無くブラジャーを外したり、ショーツを脱いでみたり、女子トイレで全裸になってみたり。
 もちろんすぐに元通りにはするのですが。
 社長室に絶対誰も入ってこないとわかっているときは、ノーブラのブラウスのボタンを全部外したまま、パソコンに向かったりもしました。

 過去の納品書や請求書をチェックするために、自社ブランドのカタログをパソコンで照らし合わせていると、エロティックなアイテムがいくつも出てきます。
 ボディコンシャスなドレス、ローライズジーンズ、マイクロビキニの水着、シースルーの下着、キャットスーツ、ヌーディティジュエリー・・・
 それまで極力、それらをそういう目で見ないように努めていたのですが、今の自分には無理でした。
 
 そういったものがモニターに映るたび、それを身に着けた自分を妄想し、そんな恥ずかしい格好の自分を街中へと放り出してみます。
 すると、ふしだらではしたない妄想が頭の中で延々と連らなり、全身の血液が乳首と下半身に集まってしまったかのように、ジンジン痛いくらい火照ってしまうのです。

 それでもさすがに、オフィスでオナニーまでは出来ませんでした。
 チーフから、会社はお仕事をする神聖な場所、と釘を刺されていた私でしたが、その頃のムラムラ状態であれば、もしも出来るチャンスがあったら、ためらわず内緒の行為に及んでいたことでしょう。
 出来なかった理由は単純に、オフィスで完全にひとりきりになることが無かったからでした。

 別室とは言え、必ずデザインルームにはリンコさまかミサさまがいらっしゃいましたし、夜の八時を過ぎてからひょっこり間宮部長さまが現われるようなこともありましたから。
 遅いときは夜の十時過ぎまでお仕事をしていたときもありますが、オフィスには誰かしら、私の他にいらっしゃいました。
 
 私の本性をまだご存知ないスタッフの誰かが一生懸命お仕事をされている、そんなところで構わずオナニー出来るほどの大胆さと言うか僭越さは、持ち合わせていませんでした。
 なので、その日オフィスで育んだ妄想を大事に持ち帰り、お家に帰った途端、何かに憑かれたようにオナニーに励む毎日を過ごしていました。

 チーフ、いえ、最愛のお姉さまとは、そのあいだに二日ほどあったはずの休日も急な出張となり、デートのお約束もお流れ、2週間のあいだ、ほとんどお顔さえ拝見出来ない状態でした。
 連休以降にお姉さまとふたりだけでおしゃべり出来たのは、連休翌週火曜日のランチのときだけ。
 初めてこのオフィスを訪れたとき連れていってくださったエスニックレストランで、小一時間だけおしゃべり出来ました。
 でも、そのときも、お姉さまがひどくお疲れのご様子だったので、無難にお仕事関係のお話しと世間話しかしませんでした。
 その代わり、メールで毎日、オナニーしましたのご報告だけは入れていました。

 そんな悶々とした毎日を送る私に、ちょっとした事件が起きたのは、5月もそろそろ終わろうとする頃のある日。
 とある昼下がりのことでした。


オートクチュールのはずなのに 27



2015年11月23日

オートクチュールのはずなのに 25

 私のからだには、ピッチリと白いバスタオルが巻かれ、首輪のリードは外されていました。
 仰向けに寝かされたお腹の上に、ハガキ大のメモ用紙が一枚。
 手に取ると、お姉さまのお綺麗な走り書きで、伝言が書かれていました。

 ぐっすり眠っているようなので起こさず、先に用事を済ませてきます。
 いない間にもし起きてもあわてたりしないように。すぐ帰ってくるから。

 ここはどこなのだろう?
 からだを起こして後部座席のシートに座り直し、恐る恐る窓からお外を覗きました。
 薄暗闇に目を凝らすと、周囲は殺風景なコンクリート打ちっ放しの地下っぽい雰囲気。
 どうやらどこかの駐車場みたい。

 何気なく右手で胸元を押さえたら、タオル地越しの柔らかな感触。
 当然のことながら、バスタオルの下は何も身に着けていないようです。

 私、こんなところにバスタオル一枚の、裸同然な姿でひとり取り残されちゃったんだ・・・
 後部座席や助手席を見回しても、持っていたバッグや衣服は見当たりません。
 怖さと心細さが押し寄せてきたと同時に、こんなふしだらな格好で放置されてしまったという被虐的な官能が全身に広がり、性懲りも無く股間が潤んでくるのがわかりました。

 遠くのほうでキュルキュルと、タイヤが軋むような音が聞こえました。
 ここが駐車場だとすれば、いつ他の車が近くにやって来てもおかしくはありません。
 お姉さまが愛車を停めたスペースは、コンクリートの壁のあいだを3台分に区切った一画で、窓から覗ける右側は丸々2台分空いていました。
 ここに他の車が駐車しに来ないという保障は、どこにもありません。

 バタン、バタン!
 遠くのほうで、ドアを開け閉めするような音が響きました。
 つづけてまた、別の方向からキュルキュルとタイヤが軋むような音。
 
 私は、ゆっくりと背もたれの背中を滑らせ、シートに再び寝そべりました。
 いくら密閉された車の中とは言え、今はひとりきり。
 バスタオル一枚の無防備な姿を見知らぬ人に発見されてしまうのはマズイと、本能が告げていました。

 寝そべっていれば、窓に顔を近づけて覗き込みでもしない限り、中に私が居ることはわからないはず。
 後部座席の窓には、スモークのフィルムも貼ってあるし。
 ドキドキ脈打つ胸を両手で庇うように押さえ、車の天井を見上げました。

 仰向けになって両膝を軽く立てると、両内腿のあいだが直に外気に晒されていることが、スースーする感覚で露骨にわかりました。
 自分が置かれた状況がわかってから、時折聞こえる外部からの物音がもたらすスリルに、私のマゾ性はキュンキュン感じっぱなしでした。

 自然と右手が下半身へと伸びてしまいます。
 その部分に軽く触れただけで、溢れんばかりに濡れそぼっていること、そして、風邪引きさんのおでこみたいに熱く火照っていることがわかりました。

 寝そべっていればみつからないだろうという安心感からか、大胆な思いつきが理性を侵食し始めます。
 このまま指を動かして、オナニーしてしまおうか・・・
 いっそバスタオルも外して、裸になっちゃおうか・・・
 お姉さまがお戻りになったとき、私が全裸で身悶えてたら、お姉さま、どんなお顔をされるだろう・・・

 この三日間、お姉さまと一緒に体験した、めくるめく快感のあれこれがフラッシュバックしてきました。
 とくに、今日の体験は強烈でした。
 雨の中で人通りは少なかったとは言え、日中の街中で全裸になってしまったのですから。
 車の中でしたオナニーの気持ち良さといったら。

 少し眠って休んだのに、私のマゾマンコは超敏感なままみたい。
 ちょっと弄ったらすぐイっちゃいそう。
 今の状況がもたらすスリルと被虐とで興奮した疼きともごちゃまぜとなり、私は呆気なく発情しきっていました。

 思うより早く左手が、胸元にあるバスタオルの折り返しに伸びていました。
 全裸になる気満々。
 マゾマンコに密着させた右手のひらの人差し指と中指を、ゆっくりと内側に折り曲げ始めます。

「あふぅん!」
 指の付け根辺りに熟した突起が当たり、電流が頭まで突き抜けました。
 指先にヌルリと、粘液の感触。

 そのときでした。
 すぐ近くで一瞬、何か電子音みたいなのが鳴ったと思ったら、すぐそばでガチャンという大きな物音。
 ビクンと震えた私は次の瞬間、バックシートに胎児のような形で縮こまりました。
 バタンという音と共に車内が少し揺れ、今度は私の頭側の後部ドアがバタンと開きました。

「お待たせー。起きたー?」
 半開きになった後部ドアから身を屈ませてお顔を覗かせたのは、もちろんお姉さま。
 そのまま後部座席に乗り込もうとしてきました。

 あわてて奥へずれようと身を起こした途端、バスタオルがハラリと外れ、おっぱいが露に。
「あっ!いやんっ」
 焦ってバスタオルを乱暴に掻き合わせると、今度はお尻側が全開になってしまいました。
 そんな私の様子を愉快そうに眺めているお姉さま。

「何を今更恥ずかしがっているの?街中を走っているあいだ中、真っ裸でマゾマンコ掻き回して、ずっとアンアン喘いでいたクセに」
 私のトートバッグだけ持ったお姉さまがニヤニヤ笑いながら、私の横に腰掛けようとしています。
「ちょっとそのタオル貸して。シートが汗とかいろんなもので濡れちゃってる」
 私からバスタオルを容赦無く剥ぎ取ったお姉さまは、ご自分が座るシートをそのタオルで拭き始めました。
 お姉さまは、お仕事のときっぽいシックな濃茶のパンツスーツに着替えていらっしゃいました。

「なんだか車内にいやらしい臭いが充満しているわね、紛れも無い直子の臭いが」
 シートに腰掛けたお姉さまがお鼻をヒクヒクして、苦笑いを向けてきました。
 からだを起こして、お姉さまの隣に全裸で腰掛ける私。
 お尻の下がヌルリと濡れているのがわかりました。

「あの、ここは、どこなのですか?」
 私の左隣はコンクリートの壁なので、お外から覗かれる心配も無さそうなのですが、それでもやっぱり両手でおっぱいを庇いながら、恐る恐るお聞きしました。

「あら?気づいてなかったの?ここはうちのオフィスがあるビルの駐車場よ。つまり池袋」
「えーっ?」
「直子は、車が走り出した途端にここでオナニー始めて、イキまくって、静かになったと思ったらスースー寝息立てて眠りこけちゃったの」
「もう一時間以上前に、ここに着いていたのよ?どうしようかと思ったけれど、あんまり気持ち良さそうに眠ってたから、あたしだけ降りて、オフィスで一仕事済ませてきたの」

「つまり今直子は、自分が勤める会社が入っているビルの地下駐車場で、なぜだか素っ裸なの。恥知らずにも程があるわよね?」
 からかうようなお姉さまのイジワル声。

「直子のオナニー、凄かったわよ。バックミラーでチラチラ見ていたら、ひっきりなしにビクンビクン、イキまくってた。眠った後も、ときどきヒクヒクして、いやらしい声出していたし」
「裸で放っておくのも可哀相だと思ってバスタオル巻いてあげたら、寝惚けているのか、あたしに抱きついてきたの。憶えている?」
 お姉さまが可笑しそうにククって笑いました。
 全然憶えていません。

「今も乳首がそんなに尖っているっていうことは、起きて、取り残されたってわかった後も、何か良からぬ妄想していたのでしょう?」
「あの、えっと、はい・・・少しだけ・・・」
 一応正直にお答えしましたが、お姉さまが戻られる寸前まで、オナニーする気満々だったことは、さすがに言えませんでした。

「まったく。一度火が点いた直子の性欲って、底無しよね。だけどあたしは、今は性欲よりも食欲なの。お腹空き過ぎて死んじゃいそう」
「今からお店選ぶのも面倒くさいし、手っ取り早くビルの上にあるお店で打ち上げディナーしましょう。もう運転もしないからお酒も飲めるし」
 お姉さまが私のバッグの中から、何かを引っ張り出しました。

「直子との全裸家政婦契約も、ここで終了。ここからはうちのスタッフ、あたしの秘書に戻るの。はい、直子のワンピース。下着もちゃんと着けるのよ」
 私の衣服一式を手渡してくださったお姉さまは、私の髪を解き、丁寧にブラッシングを始めてくださいます。
「テリトリーに戻ってきちゃったから、ヘンタイ遊びはおしまい。休日とは言え、誰に見られているかわからないから、きちんとしないと」
 手渡された下着は、行きに着けてきたフロントホックと紐パンティでした。

 バスタオルでからだを拭い、それぞれをゆっくりと身に着けました。
 肌が布地にくるまれる、久しぶりの感覚におっぱいやお尻が戸惑っている感じ。
 コインランドリーでお洗濯したワンピースを纏い、ボタンを留めていきます。
 私が放置されているあいだにお姉さまが付け直してくださったのでしょう、一番下のボタンが復活していました。
 私がお洋服を着ているあいだ、お姉さまはずっと私の髪を梳いてくださっていました。

「雨や汗で完全にスッピンになっちゃっているけれど、メイクは軽めでいいわよね?あたし、直子の素顔、好きだから」
 嬉しいことをおっしゃってくださるお姉さま。
「おっと、あぶないあぶない。首輪、外さなきゃ」
 お姉さまが苦笑交じりに腕を伸ばしてきました。
「すっかり馴染んじゃっていたから、気づかないところだったわ」
 その通りでした。
 
 この三日間ですっかり首に馴染んでしまった首輪は、もはやからだの一部のようでした。
 お姉さまの手で外され、首からその感触がなくなったとき、ひどく寂しい気持ちが盛大に襲ってきました。
 首輪を外すことによって、お姉さまとの関係も薄まってしまうような。
 もちろん、よく考えればそんなことはぜんぜん無いのですが、出来ることならずーっと、他人の目なんか気にせずに首輪を着けつづけて、お姉さまとの関係、エスとエムの関係だけを常に意識しながら生活していたい、と思ったのは事実でした。

「あ、それと、今夜は直子の部屋に泊めてね」
 不意にお姉さまがおっしゃいました。
「ごはん食べたら直子と別れて、部室に行ってゆっくり休んで、明日の出張に備えるつもりだったのだけれど、さっきオフィスへ行ったらリンコとミサがまだ仕事していて、今夜は部室に泊まるって言うから」
 部室というのは、スタッフの寝泊り用としてオフィスビルの近くに借りているマンションの一室の通称です。

 私も、今夜お姉さまは、おひとりで部室にお泊りになるのだろうな、ごはんを食べたらお別れなのだろうな、と思っていたので、思いがけない延長戦に俄然元気が出てきました。
「もちろんです。お姉さまとまだまだずっと一緒にいれるなんて、すっごく嬉しいです」
「でも、あたし、明日朝早いから、あまり遅くまではつきあえないよ。あたしがぐっすり眠れるように、スッキリさせてよね?」
 イタズラっぽく笑うお姉さまに、コクコクうなずく私。

 成人女性ふたりがあれこれするには少し狭い後部座席ですっかり身繕いを終えてから車を降り、エレベーターでエントランスへ。
 エレベーターを乗り換えて高層ビルのてっぺん近くのレストラン街。
 お姉さまは、和食をお選びになりました。

 落ち着いた感じの、窓から見下ろす夜景がとても奇麗なお寿司レストラン。
 お姉さまは、何度か訪れたことがあるようで、手馴れた感じでてきぱきご注文されました。
 お食事のあいだは、主にお姉さまたちが会社を起ち上げた当時のエピソードを面白おかしく聞かせてくださいました。

 私のからだは、ずっと疼いていました。
 お姉さまとお食事となれば、またいつかみたいに個室に入り、人知れずえっちなイタズラを愉しめるかも、という期待も少なからず持っていました。
 だけど、案内された席は窓際で、お仕事の出来そうな仲居さんが私たちの注文にすぐ対応するべく、ずっとさりげなく見守ってくださっていました。
 他のお客様もまばらで静かめでしたし、えっちな話題などとても出来るような雰囲気ではありませんでした。

 それがちょっぴり残念でしたけれど、お姉さまが私の部屋にお泊りになる、帰ったらまた抱き合える、とわかっていたので余裕はありました。
 余裕を感じると、お姉さまと同じように、すごくお腹が空いていたことに今更ながら気づき、お料理が美味しかったせいもあり、お寿司やお造りを私にしてはたくさん、ご馳走になりました。
 お姉さまは、お酒もけっこう呑まれていました。
 つられて私もほろ酔い気分。

 お店を出たときは、夜の9時を回っていました。
 ふたり並んで、てくてくと私のマンションへ。
 お姉さまはお酒のせいかご陽気で、話題もこの三日間に私が見せた痴態をからかうような、シモネタに移っていました。
 住宅街に入ってからはずっと、手を繋ぎました。
 お姉さまも私も手まで火照り、じんわり汗ばんでいました。

 マンションに到着し、エレベーターに乗り込んだとき、お姉さまが急に思い出したようにおっしゃいました。
「そう言えば、証明写真の賭け、確認しに行くの忘れちゃったわね?」

 そうでした。
 すっかり忘れていました。
 顔だけ隠して撮った私のおっぱい写真、駅の証明写真ブースに置きっ放しにしたのでした。
 つい数時間前のことなのに、なんだか何日も前の出来事のように感じていました。
 それだけ、この三日間に体験したあれこれは、ひとつひとつの密度が濃かったということなのでしょう。

「きっと誰かが持って帰って有効利用してくれているわよ」
 からかうようにおっしゃるお姉さま。
 まったく見ず知らずの誰かが、私のおっぱい写真を持っている、ということを想像すると、からだがじんじん疼いてきました。
 お姉さまをすがるように見つめて目が合ったとき、エレベーターのドアが開きました。

「瞳ウルウルさせちゃって、何?またサカってるの?本当にいやらしい子」
 先にエレベーターを降りたお姉さまが振り返り、私の顔を覗き込みました。
 そうおっしゃるお姉さまだって、アルコールのせいか瞳が充血して、すっごく色っぽい。

「ほら、直子がサカっているときは、ここで服を脱いで、部屋に入る前に裸になるのが決まりなのでしょう?早く脱ぎなさい」
 背後でエレベーターの扉が閉じると同時に、お姉さまの冷ややかなお声。
 その口調で、お姉さまもエス性に支配されつつあることがわかりました。

「は、はい、お姉さま」
 歩きながらワンピースのボタンを外し始める私。
 お姉さまはスタスタと前を歩き、ご自分の合鍵で私の部屋のドアを開けました。
 開け放したドアの内側でご自分も上着を脱ぎ、スラックスのベルトに手をかけています。
 私もブラジャーのフロントホックを外し、通路の途中でショーツの紐を解きました。

 私が全裸になってドア前にたどりついたとき、ドアの陰からお姉さまの右手が伸び、そのまま引っ張られて抱きすくめられ、ドアの中へと連れ込まれました。
 お姉さまもすでに、黒い上下の下着姿になっていました。

 激しいキス。
 乱暴に抱きすくめる両腕の力。
 裸のお尻を鷲掴むお姉さまの手。
 そのまま廊下に押し倒され、私の唇に押し付けられるお姉さまの剥き出しな秘唇。
 まさぐり合う指が幾度も相手を仰け反らせ、わななかせました。

 抱き合ったままバスルームへ。
 熱いお湯とシャボンでずぶ濡れ泡まみれのまま、互いの肌を執拗に密着させました。
 バスルーム内をハモるようにエコーする、音程の違うせつなげな喘ぎ声。
 ひとしきり鳴り響いた後、徐々に熱い息遣いが鎮まっていき、やがてぐったりと湯船に浸かるふたつの裸身。

「ああスッキリした。これでグッスリ眠れそうよ」
 脱衣所でふたり、からだを拭いていると、お姉さまが晴れやかなお声でおっしゃいました。
「もうおやすみになられますか?」
「うん。スッキリしたら疲れがどっと襲ってきた。本気でサカッてる直子の相手するのは、けっこう大変なのよ?」
 イタズラっぽくおっしゃってニッて笑うお姉さま。
「そうですか・・・」

 残念だけれど、わかままは言えません。
 もう三日間も、ずっとお相手をしてくださったのだから。
「ベッド占領しちゃって悪いわね」
「いえ、お気になさらないでください。お姉さまは明日、早朝からお仕事なのですから」
 ふたりとも裸のまま、リビングに戻りました。

「あたしが寝ても、どうせ直子はまだ眠らないのでしょう?」
 髪にタオルを巻いたお姉さまが、見透かすみたいにおっしゃいました。
「あの、えっと、はい・・・」
 バスルームでも何度も達したのに、私のからだはまだまだ疼きが薄れていません。
 お姉さまがおやすみになってひとりになったら、マジックミラーのサンルームで思い出しオナニーを、思いっ切りするつもりでした。

「だったら、いいものあげる」
 お姉さまが壁に架けたご自分のスーツのポケットから、何かを取り出しました。
「今日だったか昨日だったか、味覚の辛さは痛みと同じ、っていう話をしたの、憶えてる?だから檄辛好きはドマゾなのかも、っていう話」
「はい・・・」
 確かにそんな話をした気がします。

「それで、さっきのお寿司屋さんで帰り際、これを頒けてもらったのよ」
 お姉さまが差し出されたのは、ビニール袋に入った緑色の生ワサビの根茎でした。
 確かにさっきお造りを食べたとき、すっごく辛くて、でも美味しくて、歪んで涙が滲んだお互いの表情にふたりでお顔を見合わせて、大笑いしたものでした。
 そのビニール袋にはご丁寧に、小型のわさびおろし器まで入っていました。

「お店の板さんが言うには、その鮫皮のおろし器で丁寧におろしたワサビが至高なのですって。丁寧にゆっくりと、念入りに擂り潰すほど、鮮烈な辛さになるらしいわよ」
 お姉さまが眠たそうな瞳で教えてくださいました。
「は、はい?・・・」
 今ひとつおっしゃる意味がわからない、鈍い私。

「だから、それを擂り潰して、直子がこれからするオナニーのおかずにしなさい、っていう話よ。そのワサビを直子のビンカンなところに擦り付けてみなさい」
 お姉さまが怒ったようにおっしゃいました。
「あっ!はいっ!」
「後でどんなだったか教えてねー。だけどやりすぎて、明日会社遅刻したら駄目よ。それじゃあおやすみー」
 お姉さまがお口に手を当て、欠伸を噛み殺しながらベッドのある私の寝室へと消えました。

 お見送りしてから、すぐにザリザリとワサビの根茎をおろし器でおろし始める私。
 見るからに辛そうな、見ているだけで鼻にツンときそうな、鮮やかな黄緑色の小山が出来ました。
 その頂上付近を右手人差し指の指先ですくい上げます。
 床にぺったりお尻を着き、M字になった内腿付け根の中心に、指先のワサビを恐る恐る近づけました。

 指先が肉芽に触れた束の間、最初は何も感じなかったけれど、徐々にジーンと痺れるような、喩えようも無い甘美な刺激がジワジワ広がり、あん、何これ痛い、と思ったときには視界が真っ白になり、いてもたってもいられないような快感を引き連れて、クリトリスから全身へと陶酔が広がっていったのでした。

「んんーーーーーーーーっ!!!」
 頭の中に火花が飛び散り、自分の意志とは関係なく腰がガクガクと震えました。
 間髪を入れず、おろし器に残ったワサビを指先ですくう私・・・

 そんなふうにして、私とお姉さまの濃密過ぎる淫靡な連休は、幕を閉じたのでした。


オートクチュールのはずなのに 26