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2011年7月23日

しーちゃんのこと 23

母と昼食を一緒に食べてから母を送り出し、自分のお部屋に戻りました。
お外はよく晴れていたのですが、暖房無しではまだ少し肌寒い感じだったのでエアコンをつけ、お部屋が暖まるのをしばらく待ってから、お洋服を脱ぎ始めました。

今日は、すでに書き上げていた、榊ゆかりシリーズお浣腸編を、そのお話のとおり実際にやってみるつもりでした。
小笠原亜弓さまが榊ゆかりを苛めるお仕置きの一つとして、途中にお浣腸プレイが組み込まれていました。

たぶん大丈夫とは思っていましたが、万が一、お部屋の床を汚してしまうのは絶対イヤだったので、大きめのレジャーシートを床に敷きました。
念のためバスルームからプラスティックの洗面器も一個持ってきていました。

全裸になった私は、姿見の鏡の前にお尻を突き出して、プラスティックの定規でお尻を叩いたり、洗濯バサミで苛められたりして気分を盛り上げていきました。
あーんっ、アユミさまー、お願いですぅ、許してくださいーっ!
そんなこと言ったって、下のお口からよだれが溢れちゃってるじゃない?いやらしい子!
指で股間にふれてみると、半開きになったアソコに指が吸い込まれるようにヌルンと入ってしまいます。
このまま中を思いっきりかきまわしたい・・・
そんな欲求がムクムク湧き上がりますが、なんとかふみとどまります。
だめだめ、今日のお楽しみはこれからなんだから。

今日は、ゆかりさんにもっと恥ずかしいことをしてもらうからねっ!そこに四つん這いにおなりなさい!
先にお部屋のドアを開け放してから、レジャーシートのビニールの上に四つん這いになりました。
お尻が姿見にバッチリ映るようにして、お浣腸のお薬の箱を開けます。
前回のより一回りくらい大きな容器で、スポイト状の先端も2センチくらい長いみたい。
うふふ、これを入れて、出来る限りがまんしてもらうからね!せいぜい悶え苦しむがいいワ!

鏡に映った自分のお尻の穴に、お浣腸容器の先端をそっとあてがいます。
「あっ、いやっ!それだけは許してくださいっ!」
実際に声に出して言いながらも、お浣腸器の先端をソロリソロリとお尻の穴に埋め込んでいきます。
「ああんっ!」
すっかり埋め込まれたら、お浣腸器の側面をゆっくり押し潰します。
「あああーーっ!」
冷たい液が体内に送り込まれるのがわかって、淫らな声が出てしまいます。
ずいぶん喜んでくれるのねー?だったらもう1本サービスしちゃうワ!
2本めも注入してヨロヨロと立ち上がりました。

それじゃあここで立ったまま、私の前でオナニーなさいっ!
私の計画では、ここで、バネの力を弱めてやっとつけられるようになった特製洗濯バサミを両方の乳首につけた後、お腹の具合を見ながら、四つん這いになってお部屋を出て、2階のおトイレまで廊下を這って行く予定でした。
お腹はすでにグルグル鳴っていて、便意が強まったり弱まったりしていましたが、がまんできないほどではありません。

姿見の前で自分の全裸を見ながら、右の乳首を特製洗濯バサミに噛ませます。
「あ、あぅっつー!」
すでにおっぱい脇から内腿まで左右に3つずつ洗濯バサミをぶら下げたからだに、さらに一つ加わります。
「ああんっ!」
お尻の穴を必死にすぼめながら、みじめな姿の自分を見つめて顔を歪めます。
次は左の乳首よ!
もう一つの特製洗濯バサミを右手に持ち、まだ何もつけていない左の乳首を左手の指でギューッとつまんだ瞬間、あまりの気持ち良さがからだをジーンとつらぬき、盛大にビクンと震えました。

それと同時にお腹がキュルキュルンと鳴ってモーレツな痛みが襲いました。
「あっ!だめっ!」
腰に力を入れてお尻の穴をギューッとすぼめたのですが、一瞬遅かったみたい。
お尻から左内腿を伝ってかかとのほうへ、一筋の液体がスルスルッと滑り落ちていきました。
鏡に映ったそれは、無色透明ではなく、茶褐色を帯びた液体でした。
「あーっ!いやーーっ!」
大きな声で叫びそうになり、慌てて口を押さえる間も無く、どうにも耐え難い強烈な便意が襲ってきました。
考える暇もないほど素早く無意識に、プラスティックの洗面器にまたがってしゃがみ込み、しゃがむと同時にジャジャーッと排泄していました。

しばらくそのままの姿勢で呆然としていた私は、ふっと我に帰り、裸のまま一目散に2階のおトイレに駆け出しました。
便器に座って、便意が収まるのを待ちながら、からだにつけた洗濯バサミを全部はずし、トイレットペーパーを濡らして、汚してしまった左脚を丁寧に拭きました。
なんだかすっごく悲しい気持ちになっていました。

どうやら私は、お浣腸を甘く見ていたみたいでした。
40グラムを2つっていう量も、多すぎたのかもしれません。

お尻もウォッシュレットでよく洗い、お部屋に戻った私は、なおいっそう悲しい気持ちになってしまいました。
レジャーシートのビニールに点々と散らばる茶褐色の飛沫・・・
プラスティックの洗面器に溜まっている茶褐色の液体・・・
そして、お部屋全体に充満している、何とも言えないイヤな匂い・・・

私、いったい、一人で何をやっているんだろう?
高校生にもなって、自分のお部屋で、大きいほう、お漏らししちゃって・・・
心が完全に打ちひしがれて、目尻に涙が滲んできてしまうほどでした。

それから先のことは、あまり書きたくありません。
洗面器の中身をおトイレに捨てに行って、ビニールシートと洗面器をバスルームでキレイに洗って、お部屋の窓という窓を全開にして空気を入れ替えて・・・
それらのことは全部、全裸でしたのですが、えっちな気分は戻ってきませんでした。
つい数十分前までは、はちきれそうだった私の性的コーフンは、すっかり萎えていました。

この失敗は、かなり長く尾を引き、しばらくはオナニーをする気にもなれませんでした。
そうこうしているうちに、終業式、春休みとなり、月が変わって二年生に進級すると、もう一つ、良くないことが待っていました。
しーちゃんと、別のクラスになってしまったのです。
中川さんと山科さんとは、同じクラスになれたのだけれど、友田さんとしーちゃんとは、別々のクラス。

しーちゃんとは、春休み中にも何度か会って、クリスさんともうまくいっているようで、いろいろお話を聞かせてもらいました。
相変わらず二人でえっちな遊びをしているみたいで、いつ会ってもすっごく楽しそうでした。
そんなしーちゃんとクリスさんがうらやましい気持ちは、もちろんずっとあって、そういう意味で言うと二年生になって別のクラスになったことは、私にとって、しーちゃんを一度忘れて、新しい出会いをみつけるチャンスとも言えるのですが、中学生の頃から毎日のように顔を会わせていたしーちゃんがクラスにいない、っていうのは、やっぱり寂しいことでした。

お浣腸失敗お漏らし事件以来落ち込んでいた性欲は、月日が経ってその記憶が薄れるとともに、私はいやらしいマゾ女なんだから、そういうみじめな体験をするのもあたりまえなんだ、という論理にすり変えて自分の中で納得させ、その記憶で妄想オナニー出来るほど復活していました。
榊ゆかりシリーズお浣腸編も、がまんしきれずにその場でお漏らしして床を汚してしまったゆかりは、激怒した小笠原亜弓さまによってお外に連れ出され、もっともっとひどいお仕置きをたくさん受ける、というストーリーに変えていました。
ただし、私はこの先、お部屋でのお浣腸遊びは絶対しないと心に決めていました。

私の性欲が戻って安定するのを待っていたかのように、もう一つの悲しいニュースが飛び込んできたのは、5月下旬のことでした。
バレエ教室でレッスンが終わった後、やよい先生から、6月いっぱいでお教室の講師をやめる、と告げられたのです。

すごいショックでした。
私は、愛ちゃんと一緒に、なんで?なんで?とやよい先生に詰め寄りました。

やよい先生が説明してくれたところによると、お仲間たちと共同で東京でお酒を飲ませるお店をいつか出そう、という夢と言うか計画が前々からあって、この数ヶ月の間にどうやらその目星がつきそうになったので、まだはっきり決まったわけではないけれどご迷惑をかけないためにも、まずバレエ教室の運営会社にお話をした、ということでした。
「あたしのツレが今年になっていろいろ動いていて、いい物件を最近複数みつけたらしくて、条件とかの具体的な話になってきてるらしいのよね」
「東京に行くのがいつになるかはまだわからないけど、この町から出て行くことは本決まり。私が今住んでるマンション、分譲なんだけど、貸す相手も決まっちゃったし」
「安心して。代わりの講師は、すごくやさしくてキレイな人、紹介しといたから」
やよい先生がすまなそうに笑いました。

翌日から、私はずっとやよい先生のことばかり考えていました。
やよい先生とは、中学二年の夏休みに受けたトラウマのことでご相談したとき、私が高校二年くらいになって、まだそういう気持ちがあったら、えっちなことのお相手をしてくれる、っていうお約束をしていました。
17歳になったら、って言ったんだっけかな?
お誕生日がまだなので、私はまだ16歳ですが、やよい先生がいなくなってしまう、という緊急事態の前では、そんな細かいことは関係ありません。
私は、最後のレッスンの日に、やよい先生にあの日のお約束のことを言って、デートしてくれるように頼むことに決めました。

中学生の頃、やよい先生を想って自分の指を股間にすべらせていた甘酸っぱい日々。
そんな日々を思い出しながら、私の気持ちも、やよい先生に恋焦がれる中学生の頃にすっかり戻っていました。

やよい先生、あのお約束、憶えていてくれるよね?


グノシエンヌなトルコ石 01

2011年7月18日

しーちゃんのこと 22

次のチャンスは、一週間後にやって来ました。
その日も母は午前中から、篠原さん親娘は昼前にお出かけして、共に夕方帰宅予定でした。
私は、篠原さん親娘を送り出してから、早速実行することにしました。

お昼ごはんのグラタンをダイニングでゆっくり食べた後、後片付けしてから自分のお部屋に戻る前に、バスルームの脱衣所と一階のおトイレの暖房を入れました。
今日は時間もたっぷりあるし、階下のおトイレでしてみよう、って思っていたんです。

お浣腸のお薬は、あと三つ残っていました。
それらの入った黒い袋とバスタオルを一枚持って、まずは階下のバスルームの脱衣所に入りました。
バスルームとおトイレは隣り合わせになっているので、脱衣所で全裸になってから、おトイレに入ってお浣腸、という計画でした。

着脱がラクなように、今日は起きたときからスウェットの上下を着ていました。
それらをちゃっちゃと脱いで、下着も取って全裸になり、いったん廊下に出ておトイレに入りました。

一階のおトイレは床部分が広いので、四つん這いになってやってみようと思っていました。
前回は、立ったままの挿入だったので、注入した後、容器に液がだいぶ残っていました。
実は、一回抜いてから、もう一回挿してもみたんです。
そうすると、今度は最初に空気が送り込まれてしまって、空気のお浣腸状態になってしまうんですね。
小学生の頃のお医者さんごっこで幼馴染が、空気が入るとおならがいっぱい出ちゃうんだよ、って言ってたのを思い出して、すぐやめました。
液体は上から下へ流れるわけですから、お尻を高く突き出して、お浣腸容器をなるべく垂直に立てて挿入したほうが、液がムダなく効率よく入るはず、って考えたんです。

おトイレの床に両膝を開き気味について、左腕で上半身を支えながら右手に持ったお浣腸容器を、右手の中指でお尻の穴を探しながらあてがいます。
なんてぶざまな格好。
お浣腸器の先端がすんなりお尻の穴に挿入されたので、容器を立て気味にしつつ側面を押すと、液がスーッと中へ流れ込みました。
「あああんっ!」
お浣腸器を抜いた後、よろよろと立ち上がり、すかさず腕時計を見ました。
午後1時33分。

1時40分になるまで、絶対出しちゃダメだからね!
頭の中で小笠原亜弓さまに命令されて、便器の前に立ち尽くしました。

前回と同じように、お腹がグルグルと騒ぎ始めました。
まだ全然時間経ってないわよ、がまんしなさい!
お腹を上から下へ、下から上へ、駆け巡るような鈍い痛みが襲ってきます。
お尻の穴に力を入れてすぼませて、なんとかがまんします。
まだ2分しか経ってないわよ、ここで出したらまたお仕置よ!
下半身全体に力が入っているので、両脚がプルプル震え始め、からだ全体が熱くなってきました。
もうダメ、もうダメ・・・
お腹の奥が時折、グルグルとかキューンとか鳴いています。
私が必死にお尻の穴をすぼめていると、両膝が目に見えるくらいガクガク震え始めました。
4分経過、あと3分・・・
睨みつけるように左手の腕時計を凝視しながら、右手はいつの間にか、裸の上半身を激しくまさぐっていました。
おっぱいをギューッと掴んで、硬くなった乳首を捻って、お腹をスリスリさすって・・・
「あん、あーんっ!」
ガクガク震える下半身、クネクネ悶える上半身。
髪の毛の生え際とかから汗もにじんでいるみたい。
「んーーーっ」
私はぎゅっと目をつぶって、お浣腸液の責めに耐えていました。
「むぅーーーんっ」

「あれっ?」
なんだかからだがラクになったな?と思い、目を開けました。
時計は1時43分になっていました。
目をつぶって身悶えしているうちに、どんどん便意が遠ざかっていき、今はなんだか普通の状態に戻っていました。
もちろん、お漏らしなんかしていません。
「あれーっ?」
もう一度、大きめな声でつぶやきます。
からだは、まだ欲情していますが、お浣腸の苦しみは去っていってしまいました。
「こ、こんなものなの?」
私は、また拍子抜けしてしまいました。

しばらく呆然とした後、ふと思い出しました。
私のお尻には、まだお薬が入ったままなんだ。
便座に腰掛けてお尻に少し力を入れてみると、ジャーッと液体が便器に放たれました。
今回も無色透明でした。

釈然としないまま、バスルームに戻り、熱いシャワーで下半身だけ洗い、バスタオルをからだに巻いて、ひとまず自分のお部屋に撤収しました。

確かにがまんしているときの身悶えするほどの被虐感は心地良かったけれど、そんなにあっさり収まっちゃうものなのかしらん?
もっとこう、なんて言うか、キタナイモノを出したくないのに出ちゃうのー、見ないでー、みたいな禁断系というか背徳系というか、そういうのを期待していた私は、肩透かしを食らった状態でした。

ちなみに私の通常のお通じは、朝起きてすぐミネラルウォーターをコップ一杯飲み、身支度して歯を磨いたりお顔を洗っている頃に催してきておトイレへ、という一日一回ペースの健康的なものでした。
あんまりたくさんは食べないし。
私のからだが健康的すぎるのかな?

それから真剣にもう一度、お浣腸薬の説明書を読み返し、一つだけ気づいたことがありました。
どうしても自分で入れると、容器の中のお薬が全部は入らないこと。
抜いた後の容器を見ると、今回も五分の一くらいは、残っていました。
お薬が足りないのかもしれない。
そう考えた私は、一時間後に今度は2本いっぺんに注入してみよう、と決めました。

お部屋の中で全裸のまま、榊ゆかりシリーズお浣腸編を執筆しながら、時間が経つのを待ちました。
決行は3時ジャスト。
それまでオナニーも禁止です。

3時になると同時に、全裸のまま階段を降り、バスルームに直行しました。
今度はバスルームの鏡の前で、お浣腸液を注入するつもりです。
四つん這いになって、出来るだけ鏡の前にお尻を突き上げ、顔をひねって自分のお尻を見ます。

菊座って、うまいたとえだなー、なんて思いながら1本注入。
「うふふ、いやらしいゆかりには1本じゃ、物足りないわよねー?ほら、ご褒美よ、もう1本」
小さい声で言いながら、2本目をお尻の穴に挿入しました。
「あ~あんっんっ!」
2本目のお浣腸容器はお尻に挿したまま立ち上がって、脱衣所を通り廊下に出て、おトイレに入りました。

今度は10分よ!10分がまんなさい!
頭の中で小笠原亜弓さまの声が聞こえます。
ただ突っ立ってるだけじゃ面白くないわよね?ほら、ゆかりの大好きなアクセサリーよっ!
お部屋から持ってきた洗濯バサミが、私のからだに噛みついてきます。
左右内腿に一つずつ、左右脇腹に一つずつ、左右おっぱい脇に一つずつ。
「あぁぁっ、んんんーっ!」

お腹はすでに激しくグルグルしていました。
脚もガクガクしてきて、全身がカーッと熱くなっています。
まだまだ3分しか経ってないわよ、ほら、おっぱい揉みなさいっ!
私は、両手で激しく自分の胸を揉みしだきます。
洗濯バサミがブランブラン揺れます。
快感に溺れると下半身がユルミそうになります。
そのたびに、お浣腸容器が挿されたままのお尻の穴にキュッと力を入れてすぼめます。
すると内腿の洗濯バサミに噛まれているところもズキンと疼いて・・・

6分経過、あと4分よっ!
今回のお浣腸液の攻撃は、さっきと違って手を緩めてくれません。
便意がひっきりなしに寄せては返し、そのインターバルもだんだん短かくなっています。
「ああんっ、あっ、あんっ、あぁー」
私は、左右の乳首をギュっとつまんでひっぱり、痛さで便意をごまかそうとしていました。
「ああん、ああんっ、も、もう・・・」
脚はガクガク、からだはクネクネ。
がまんしなきゃ、がまんしなきゃ、がまんしなきゃ・・・

時計を見ると10分はとっくに過ぎて、13分になろうとしていました。
「も、もう、もうっ、もうダメーーーっ!」
私は、右手でお尻に挿さったお浣腸容器を抜くなり、便座にへたり込みました。
同時にジャジャーッという激しい水音。
同時に右手が自分の股間に滑り落ち、飛び出ているクリトリスを親指と人差し指でクネクネこねくり回していました。
左手は左右のおっぱいをせわしなく、乱暴に揉みしだいていました。
「ああんっ、ああんっ、いいっ、いいっ、いいーーーーっ!!!」

しばらく便座に腰掛けたままガックリうなだれていました。
「はぁ、はぁ、はぁーっ・・・」
すっごく良かったぁぁぁ・・・

閉じていた目を開けると、私はまだ洗濯バサミを6つ、ぶら下げたままでした。
「つっ!」
血流が戻る痛みを6回くりかえして洗濯バサミをはずし、よろよろと立ち上がります。
便器に溜まっている私のお尻から出た液体は、今度は、薄っすら茶褐色を帯びていました。
「いやんっ!」
すかさず水洗ボタンを押して、恥ずかしい液体を私の視界から消しました。

お浣腸プレイがすっかり気に入ってしまった私は、すぐさま次回の計画を練りました。

ネットで調べると、私が使った30グラムのよりお薬液が多い、40グラムのやつも売っていることがわかりました。
前回、30グラム一つだと今一で、二つだと良かったということは、お薬の量も関係しているはずです。
それなら40グラムのを買ったほうが楽しめそう。
それに、40グラムのやつはスポイトの挿入管が長くて、より奥までお薬が届く、って書いてありました。
より奥までって、なんだかえっち。

早速次の土曜日に、この前のお店で2箱買ってきました。
箱が前のよりちょこっと大きかった。
そのとき、使用済みの容器や外箱は、黒い袋に入れてしっかり封をして、その駅のゴミ箱にコッソリ捨ててきました。

今度は、自分のお部屋でやってみるつもりでした。
今までの経験から、お薬を入れた後でもいくらかの猶予はあるみたいだし、誰もいなければ自分のお部屋から2階のおトイレまで裸で駆けて行っても大丈夫そうだし。

用意は万端でしたが、なかなか決行のチャンスは訪れませんでした。
生理が来たり、試験があったり、篠原さんたちがいたり。
お薬の説明書に、常用はしないこと、ともあったので、そんなにすぐやるつもりもなかったのですが、ずいぶん待たされました。

決行のチャンスが来たのは、陽気も良くなった3月中旬の日曜日。
母とのお買物デートのお誘いを、しーちゃんたちとお約束があるから、と嘘をついて断わって作った貴重な時間でした。


しーちゃんのこと 23

2011年7月17日

しーちゃんのこと 21

そのプレイを体験するためには、あるものを手に入れなければなりなせん。
そして、それを買いに行く行為自体が、私にとってはドキドキな羞恥プレイでした。

それは、薬屋さんに売っているはずです。
でも、小さな薬屋さんだと、その商品名を店員さんに告げなければ買えなそうです。
まして、私の町にある薬屋さんは、しーちゃんのご両親のお店でした。
しーちゃんちの薬屋さんは大きなお店でしたが、そこでそれを買うことは、私には恥ずかしくて絶対出来ないことでした。

バレエ教室のある駅には、大きなドラッグストア形式のチェーン店がありましたが、そこだと買っているのを誰かに見られちゃうかもしれません。
学校の最寄駅の薬屋さんも同様ですし、何よりも制服のまま買うのは憚られます。
結局、悩んだ挙句、学校よりも遠い、このあたりでは一番大きな繁華街がある駅まで足を伸ばすことにしました。

二月にしてはよく晴れて、比較的寒くない土曜日のお昼過ぎ、私は電車に乗ってその街を目指しました。
髪型を変えて、素通しのメガネをかけて、私にしては精一杯の変装をして、地味な服装で出かけました。
空いている電車のドア際に立って流れていく景色をボンヤリ眺めていました。
学校のある駅を3つぐらい過ぎた、とある駅に停まっているとき、駅前に、バレエ教室のある駅にあるのと同じドラッグストア形式のチェーン店があるのが見えました。
私が目指している駅は、まだまだこの後20分くらい、電車に揺られなければ辿りつけません。
今日は夕方までお家には誰もいないので、早く入手できれば今日中にそれを試すことが出来ます。
早くお家に帰れるなら、それに越したことはありません。
そう考えた私は、素早くその見知らぬ駅に降り立っていました。

改札を出ると、ロータリーの向こう側にドラッグストアの大きな看板が見えました。
早足気味にそっちへ向かいました。

それがどんなデザインのパッケージで売られているのかは、昨夜ネットで確認していました。
カゴを片手に端のほうからゆっくりと商品棚を見ていきます。
広い店内に、中年のおばさま買い物客が4、5人、私と同じようにまったりと商品棚を物色していました。

まさかそれだけを買うのはあまりに恥ずかしいと思ったので、あらかじめ考えておいたハミガキ粉とのど飴を、見つかった順にカゴに入れました。
目的のものは、まだみつかりません。

えーっと、ああいうのはどの棚なんだろう?
内臓系だから胃腸薬とか、そういうとこかな?

レジに近い壁際に、胃腸薬などが並んでいる棚がありました。
そこを端から見ていくと、棚の一番下の段に、昨夜ネットで見たのと同じデザインのパッケージがありました。
あった!
みつけた途端に胸がいっそうドキドキしてきました。

容器が、とある果実に形状が似ているので、その名前を冠された液体状のお薬。
私が探していたのは、お浣腸のお薬でした。

そーっと手を伸ばして小さい箱を2箱掴み、カゴに入れました。
ドキドキが高鳴ります。
私、便秘でもないのに、ただ恥ずかしい遊びがしたくて、これを買おうとしているはしたない女・・・
自分で思いながら、キュンって感じてしまいます。

レジには3人、清算待ちのお客さんがいました。
これをカゴに入れたままレジの行列に並ぶのは恥ずかしい。
もう一度店内を一周しながらレジが空くのを待ちました。

レジの係りの人は、中年のおばさまでした。
淡々と機械的に商品を取り上げてはピッってやって、黒いビニールの袋に入れて渡してくれました。
黒い袋を受け取った途端に、フッと緊張が緩んで、代わりにワクワクした気持ちが湧いてきました。

急いでお家へ帰りました。
午後の2時半過ぎ。
母や篠原さんたちが帰って来るまで、少なくともまだ2時間はあるはずです。
早速、やってみよう。

どこでやるかが問題です。
いきなり自分のお部屋、というのは危険な感じがします。
どのくらいの刺激で、どのくらいがまん出来ないものなのか、全然わからないから。
最初ですから、ここは無難におトイレでかな?
階下のおトイレのほうが広いのですが、万が一早めに母たちが帰ってきた場合、ややこしいことになりそうなので、自分のお部屋に近い2階のおトイレですることにしました。
二月ですから、まだ廊下に出ると肌寒い感じです。
いったん荷物を自分のお部屋に置いた私は、2階のおトイレの暖房をあらかじめ点けておくことにしました。

お浣腸のお薬を入れた黒い袋だけ持って、おトイレに入りました。
中はほどよく暖まっています。
黒い袋からお浣腸のお薬の紙箱を取り出し、ふたを破って中身を取り出しました。
ビニールの袋に包まれた果実型スポイト状のお浣腸器が二つ、現われました。
へー、こういうふうになってるんだ・・・
薄いピンク色のスポイト容器の中には透明な液体が詰まっていて、スポイトの先端はちっちゃなキャップで栓がしてあります。
このキャップをはずして、スポイトの先端をお尻の穴に挿し込むのね・・・

お尻の穴に何かを挿れてみるのは、小学校のときにしたお医者さんごっこ以来だと思います。
あのときは、お浣腸がどういう行為なのかも知らないまま、幼馴染の女の子にオモチャの注射器を突き立てられたんだっけなー。
幼い頃の行為なら、少々ヘンタイっぽいことでも可愛げ気があって微笑ましくも思えますが、高校生になって、それがどんな快楽をもたらしてくれるのか知りたくて、自分の手で行おうとしている今の私は、紛れもないヘンタイさんですよね。
まだ何もしていないのに、ブラの下で乳首が固まってくるのがわかりました。

さて、どんな格好でやろうか?
行為が行為ですから、万が一漏れたソレで衣服や下着を汚してしまうのは絶対イヤでした。
やっぱり全裸かな・・・
そう、これはゆかりへのお仕置なのですから、服を着ていることなんて許されません。
私は、着ていたニットの胸ボタンをはずし始めました。

ジーンズも脱いで、ソックスも脱いで裸足になります。
ブラをはずすと、乳首がツンと上を向いていました。
ショーツを取ると、早くも薄っすらと湿っていました。

脱いだ衣服一式はキレイにたたんで、ちょっと迷ってからおトイレのドアをそっと開け、廊下に置きました。
おトイレ内に衣服一式を安全に置いておけそうな場所がなかったから。
おトイレのドアをあけたとき、廊下の冷たい空気がスーッと忍び込んできて背中がブルッて震えました。
お家のおトイレの中で全裸になっているというのも、考えてみるとありえない状況です。
私のワクワクがどんどん高鳴ってきます。

どんな格好で挿れればいいのかな?
ネットの読み物だとたいがい四つん這いにされていました。
でもそれは、挿れてくれる人が居る場合のこと。
お浣腸の容器を一つ、右手に持ったままちょっと考えてから、休め、の状態で上半身を前に屈め、お尻を後ろに突き出すような格好になりました。
おっぱいがプルンと震え、固くなった乳首が下を向きます。

右手をお尻のほうに回して、お浣腸容器の尖った先端を手探りで、お尻の穴にあてがいます。
このへんかな?
おトイレには鏡が付いていないので確かめようがありません。
左手も後ろに回して、指先で自分のお尻の穴を確かめます。
左手の指先で自分のお尻の穴を押し広げるように、お尻のお肉をひっぱります。
今、自分がやっていることの恥ずかしさ、いやらしさ、ヘンタイさにふいに気がついて、アソコの奥がキュンって疼きました。

お浣腸容器の先端が私のお尻の穴を捉えました。
「ああんっ!」
背筋がゾクゾクッとして、思わずえっちな声が洩れてしまいます。
そのままゆっくり、先っぽをお尻の穴の奥へと挿入していきます。
ネットのお話では必ず、ほら、お尻の力を抜いて!って、やるほうの人に言われていたのを憶えていたので、私も力を抜いています。
「ああああーっ」
お尻の穴に何かが侵入してくる感覚がわかります。
思いのほかスムースに、先端がお尻の穴に埋め込まれたみたいです。

それからゆっくりと容器の側面を押して、お薬を中に入れていきます。
「ううーーんっ」
冷たい液体がお尻の奥へと注ぎ込まれていくのがわかります。
なんだかヘンな感覚・・・
容器がペッチャンコになるまで押してから、そーっと引き抜きました。

「ふーっ」
上体を起こして、今引き抜いたばかりのお浣腸容器の先端部分をしげしげと見てみます。
これが今、私のお尻の穴に入っていたんだ・・・
容器には、四分の一くらい、まだ液体が残っていました。
さあ、これから私に何が起こるのでしょう?

念のために便器のふたを開けていつでも座れる状態にして、休め、の姿勢で立っていました。
ほどなくお腹がムズムズし始めて、キューッと痛くなってきました。
えっ!?こんなに早いの?
お腹がグルッて鳴りました。
この痛さは、お腹をこわしておトイレが近くなっているときのせっぱ詰まった状態と同じ感じです。
えーっ!?こんなのがまんできないよーっ!
お尻から何かが出よう出ようとしているのを、お尻の穴をキュッとすぼめてがまんしようとします。
でもお薬の攻撃は容赦ありません。
お腹が耐えられないくらいグルグル痛みます。
もうだめーーっ!

サッと便座に座ると同時にお尻の穴から、ジャーッと水状のものが流れ出ました。
「はあ、はあ、はあ・・・」
便座に座り込んだまま荒い息を吐いて、ふと腕時計を見ました。
お薬注入から2分も経っていませんでした。

こんなに呆気ないものなの?
なんだか拍子抜けしてしまって便座に座ったまま、お薬の箱に入っていた使用上の注意を読んでみました。
そこには、便意が強まるまで3分から10分くらい待つこと、使用後、すぐに排便を試みると薬剤のみ排出され、効果がみられないことがある、って書いてありました。

便器の底に残っている、私がさっき出した液体を覗き込んでみると、確かに無色透明の液体しか出ていませんでした。
そっか、私、お薬入れて、お薬出しただけだったんだ。
最低でも3分はがまんしなくちゃいけないんだ、よーし、もう一回!
と思ったら、2本目をご使用の際は、一 時間あけた方が効果的です、と書いてありました。
これから一時間待つと、母たちが帰ってきてしまう恐れがありました。

どうしようか?
もう一回チャレンジしてみたいのはやまやまでしたが、さっきからの一連の行為にからだが疼いていて、お部屋でオナニーをしたい気持ちが勝ちました。

結局、ウォシュレットでお尻を洗ってから裸のまま自分のお部屋に戻り、ちゃんとお浣腸を出来なかった罰としてお尻をぶたれたり洗濯バサミを挟まれるお仕置オナニーでその日はがまんしました。
次は絶対、5分はがまんするぞ、って心に誓って。


しーちゃんのこと 22

2011年7月16日

しーちゃんのこと 20

しーちゃんと恋人関係になれる望みが完全に潰えてしまったショックは、約2週間後に迫った学期末試験のお勉強に没頭することで紛らわせていました。
しーちゃんのことを考えそうになるたびに頭をブンブン振り、教科書に書かれた文字をひたすら暗記しました。
学校では、以前とまったく変わらない感じで、しーちゃんとおしゃべりしたり遊んだりするように心がけていたので、まわりのお友達からは、文化祭が終わってますます仲良しになったみたい、なんて言われました。

期末試験が終わった日、しーちゃんが私の家に来て、文化祭のときに展示されていた私の肖像画を、お誕生日プレゼントとしてお約束どおり私にくれました。
抱いて眠れるくらい大きい、フワフワのウサギさんのぬいぐるみと一緒に。
「しーちゃん、スゴイわねー。実物よりもちょっとキレイ過ぎるけど」
母がその絵を見て、すっごく感動していました。

もらってからしばらくは、自分のお部屋にその絵を飾っていました。
試験も終わってしまい、さしあたってやるべきことが無くなってしまった私は、一人でお部屋に居るとやっぱりどうしてもしーちゃんとのことを考え始めてしまいます。

私がもっと早くアプローチしていれば・・・
私の性癖をさっさとお話しておけば・・・
キスだけでも先にしていたら・・・
絵を見つめながら、たら、れば、ばかりをうじうじと考えてしまいます。
こんなに真剣に私の肖像画をステキに描いてくれたしーちゃんは、間違いなく私のこと好きだったはずなのに、私がぐずぐずしているから・・・

「ねえママ?私、しーちゃんのあの絵、すっごく好きなんだけど、なんだか自分のお部屋に飾ってるのは、少しヘンかな、って思ったのね・・・」
「あら?なんで?」
二学期の終業式の日、帰宅した私は母におずおずと告げました。
「なんだか、自分がキレイに描かれた絵を自分のお部屋に飾ってるのって、ナルシストみたいって言うか・・・」
本心は、あの絵を見ると反射的にしーちゃんを思い浮かべてしまうことに、耐えられなくなっていたからでした。
「あはは。それはなおちゃん考えすぎよ?」
「そうかなあ?」
私がうつむいてしまうと、母が私の肩をポンと軽く叩きました。
「でもまあ、なんとなく照れ臭いのはわかる気がするわ。だったらママの部屋にあの絵を飾らせて。あの絵をどこかにしまっちゃうなんて、もったいないもの。ママも毎日キレイななおちゃんのお顔を見れて嬉しいし」

そういうことで、しーちゃんの絵は母のお部屋に飾られることになりました。
そして私は、しーちゃんからもらったウサギさんのぬいぐるみを、毎晩胸に抱いて眠っていました。

しーちゃんがお泊りした次の日からずっと、私にえっちなムラムラ感が訪れなくなっていました。
生理がやって来て去っていっても、私のからだが疼き始めることはなく、心の中では空虚な喪失感が日に日に大きくなっていきました。
もちろんしーちゃんやまわりのみんなには気づかれないように、努めて明るく振舞っていましたが・・・

冬休みに入って、お部屋に一人で居ることが増え、私はインターネットでえっちな読み物を読み耽ることに嵌っていました。
野外露出や恥ずかしいオナニーの体験談とか、創作されたえっちな小説とか。
たぶん、しーちゃんから聞かされたクリスさんとのえっちな体験談、そして今も実体験しているであろうえっちな遊びのあれこれを、私もそういうのを読むことで追体験できるかも、と思ったのでしょう。
しーちゃんとクリスさんに感じているうらやましさを、ごまかしたかったんだと思います。
ムラムラな気持ちはおこらないまま、何て言うか、普段している読書と同じように、知識欲に衝き動かされる感覚で、そういうお話が載っているサイトをいろいろ検索しては、淡々と熱心に読んでいました。

中にはいくつか、私の性癖をくすぐる刺激的なお話もありました。
でもどんどん探して読んでいくうちに大半のお話は、私には合わないことがわかりました。
男性視点の、女性をヤル、っていうお話ばかりだったからです。
でも考えてみれば、こういうお話を読むのは、ほとんどが男性ですから、それはしごくあたりまえのこと。
女性向け、とわざわざ断わったサイトでも、書かれているのはだいたい男女のロマンス。
それがノーマル。
ヘンなのは私。
男性のモノが具体的に描写されるお話は、それがどんなに被虐的で私が気に入るシチュエーションだったとしても、読み進めることができませんでした。

インターネットも私を慰めてくれないんだ。
サイト巡りを始めて一週間で、そんな結論に達し、モヤモヤした気持ちのまま新年を迎えました。

お正月休み中も、お友達とたまにお出かけしたとき以外は、お部屋でゴロゴロしていました。
オナニーをしたい、っていう欲求も相変わらず湧かず、自分でも、このままで大丈夫なのかな?と思いつつも、他にしたいことも無く、しーちゃんから借りていたライトノベルを読み始めました。

「どうしてこんな簡単なことに気付かなかったのかしら!」
「ないんだったら自分で作ればいいのよ!」
そのライトノベルの中で、少しエキセントリックな女の子が、自分に合う部活動が無くて憤っていたとき、主人公の男の子に言われた何気ない言葉によって活路を見出して、発せられたセリフです。

それを読んだとき、私もその女の子と同じように目からウロコでした。
そうか、ネット上に無いなら、自分で書けばいいんだ!

せっかく文芸部に入って、文章の作法も教えてもらっているのだから。
妄想のネタなら、今までもずいぶん考えてきたし、それなりの体験もしたし。
私が読みたいと思うようなお話を、自分で書いてみよう。
その日の夜から早速パソコンに向かい、自分のえっち妄想を物語風に書き始めました。

最初に選んだのは、中三の修学旅行の後、しーちゃんにお友達以上の感情を抱き始めた頃に見た夢をもとに、盛んにオナニーのオカズにしていた、あの妄想。
しーちゃんが相原さんにさらわれて、私が助けに行って返り討ちにあい、相原さんに散々いたぶられる・・・
あの妄想をちゃんと文字にしてみよう。

さすがに自分やお友達の本名で書くのは気恥ずかしいので、それぞれ名前を考えることにしました。
私が好きなマンガや小説の登場人物を参考に、私が榊ゆかり、しーちゃんは日向ちよ、相原さんは小笠原亜弓と名づけました。
最初は小説風に、三人称で書き始めてみたのですが、客観的に書かなければならず、登場人物にもなりきれないのでなんとも書き辛くて、一人称に変更したら、ずいぶん書きやすくなりました。
物語の辻褄とかはぜんぜん気にしないで、とにかく私、いえ、榊ゆかりが苛められる場面から書き始めてみました。

頭の中では、ゆかりがいたぶられているシーンがどんどん浮かんでくるのですが、いざそれを文章にしてみようとすると、けっこう難しいことでした。
両手を後ろ手に縛られ、ベッドに仰向けに転がされ、大きく両膝を広げられた、と書いてから、実際、どんな格好になるんだろう?って思い、パジャマと下着を脱いで、ベッドの前に姿見を置いて、両腕を後ろに組んだままベッドに寝転んでみます。
ああ、こういう風に見えるんだ、いやらしい・・・
その姿をしっかり目に焼き付けてパソコンのある机に戻り、今見た自分のアソコの描写を書き込みます。
右膝は縛っちゃったほうがいいかな?
またベッドに戻り、今度は右膝だけ折り曲げて両脚を開いてみます。
左脚は吊るしちゃおうか・・・

そんなことをくりかえしているうちに、私はすっかり発情していました。
何度目かにベッドに戻ったとき、ついにがまんできなくなってしまい、自分の裸のからだをすごい勢いで撫ぜ回し始めていました。
どんどん気持ち良くなっていく自分のからだの感覚を、どう文章に表現しようかって思いながらも、盛大にイってしまいました。

妄想した行為を描写するために自分でやってみて、それを見て文章にしつつ、ついにがまんできなくなって・・・という一連の作業、妄想執筆オナニーがすっかり気に入ってしまい、それから毎晩、お休みが終わって学校が始まっても、私は夜な夜な、榊ゆかりシリーズを書き続けていました。
ゆかりをどうやって苛めるかを考えるのが楽しくて、その苛め方を実際自分のからだでやってみるのも楽しくて、後で読み返すのも恥ずかしいけれど楽しくて・・・

もちろん、そんな文章を書いていることは、絶対誰にも知られたくないので、書いた文章は外付けのUSBメモリにそのつど移し、パスワードをかけて絶対見られないようして持ち歩いていました。

文章の中でなら、ゆかりにいくつでも洗濯バサミを噛ませることができます。
そういう描写を書いていると、私も実際にたくさんの洗濯バサミを肌にぶら下げたくなってきます。
とくに乳首を噛ませてみたくて、仕方ありませんでした。
でも実際には、本当にすっごく痛くって無理でした。
そこで一生懸命考えて、二つの洗濯バサミだけバネの力が弱まるように細工しました。
一般的なプラスティックの洗濯バサミは、円状の細い針金のたわみで締め付けて挟む仕組みなので、この針金を後ろにずらしてあげると締める力が少し弱まるようです。
こうして弱まった洗濯バサミなら、なんとか乳首に付けられるようになりました。
最初に、乳首を噛ませた自分の姿を鏡に映したときは、痛かったけれど、すっごく嬉しかった。

露出行為をしている心境を生々しく書いてみたくって、あることを試みたのは、一月の中頃でした。
と言っても、臆病な私に大胆な露出行為が出来るはずもなくて、たいしたことではありません。
バレエのレッスンにタイツもインナーショーツも着けずに出てみたんです。

高校生になってからのバレエレッスンは、私の場合、基礎はすでに終えていたので、個人練習みたいなものになっていました。
中学生がグループレッスンをしている一角についたてをして、自分の課題曲を音楽プレイヤーのイヤホンで聞きつつの個人練習。
それをたまにやよい先生が見に来てアドバイスをくれる、という形でした。

タイツをわざと忘れてきた私は、インナーも穿かず、じかにグリーンのレオタードに両脚を通しました。
パッと見ただけではわからないでしょうが、踊り始めて脚を上げたり、ジャンプしたりすれば、どんどん食い込んでしまうはずです。
ドキドキしながらレッスンルームに出ました。

私の2メートルくらい隣で愛ちゃんが夢中で踊っています。
そのまた向こうにももう一人。
私を含めて三人が、鏡に全身を映して、それぞれ個人練習をしていました。
私の下半身は案の定、激しい動きでスジの形通りに食い込んできていました。
濃いめのグリーンなのであまり目立ちませんが。

ああ、恥ずかしい・・・
どうか誰も気がつかないで、私のこんないやらしい姿・・・
鏡に映った自分の姿を見ながら、それでもスジの食い込みを直そうともせず踊りつづける私のアソコは、すでにヌルヌルになって少し表布に染み出してもいました。
タイツを忘れてきた私への罰、それはスジを食い込ませた恥ずかしい私の姿をみんなに晒すこと・・・
見ないで・・・でも見て・・・

頭の中でそんなえっち妄想を昂ぶらせつつ、課題曲の練習をしていると、
「森下さん、ちょっと動きにキレがないわよっ!」
ふいに背後からやよい先生に声をかけられました。
「きゃっ!」
私は大げさに驚いて、思わず股間を両手で隠してしまいました。
「あ、驚かせちゃった?ごめんごめん。でもその部分はもっと大胆に、歯切れ良く演じたほうがいいわよ」
そう言いながらやよい先生が、そのキレイな肢体をのけぞらせて、私が今やっていた箇所を踊ってくれました。
「あ、はいっ。がんばります」
私は、不自然にならないように股間からサッと両手をはずし、すぐにやよい先生がしたように踊ってみせます。
「そうそう、そんな感じ。その調子ね」
やよい先生は、私にニッと笑いかけ、愛ちゃんのほうに移動していきました。
よかった、バレずに済んだみたい。
最高潮に達していた私のドキドキが緩んでいき、同時に下半身でジワッと何かが溢れ出たのがわかりました。
ああんっ!

今から思えばあの頃、私はしーちゃんにもフられて、かなり自虐的な心境になっていたんだと思います。
とにかく自分を苛めたくて、みじめな姿にしたくて、仕方ありませんでした。

そしてもう一つ、私がゆかりにぜひとも体験させてみたいプレイがありました。
ネットで読んだお話の中の誰もが、とても苦しそうで、恥ずかしそうで、そのくせなんだかとても気持ち良さそうに見えた、すっごく被虐的な責められかた。
ゆかりに体験させるためには、私も実際に体験してみなければなりません。
そのプレイとは・・・


しーちゃんのこと 21

2011年7月10日

しーちゃんのこと 19

まっ先に一階の洗面所に寄り、冷たいお水で顔を洗って、トイレをして、しーちゃんのお家にお電話した後、母にしーちゃんが泊まることを告げました。
やっと気持ちが落ち着いてきました。
再び自分のお部屋に戻ってからは、いつもお話しているアニメやマンガなどの話題を、普段どおりにいろいろおしゃべりして、やっぱり、しーちゃんとお話するのは楽しいな、って感じていました。

お夕食を、母と篠原さん親娘としーちゃんとでワイワイ食べた後、また二人で私のお部屋に戻りました。

「胸につっかえていたことをなおちゃんにちゃんと話せて、なおちゃんもワタシたちを理解してくれて、これからもお友達でいてくれるってわかったら、なんだか一気にスッキリしちゃったヨ。だから、もっとエッチなヒミツも全部、この際教えてあげるネ」

そう言って、明るいお顔に戻ったしーちゃんがその後聞かせてくれたお話は、つまりは二宮先輩としーちゃんとのラブラブなお惚気話だったのですが、しーちゃんは知らないはずの私の性癖をピンポイントで刺激しまくる、二人をすっごくうらやましく感じてしまうお話でした。

鳥越先輩のお家で初エッチをした後、しーちゃんのお部屋や二宮先輩のお家、たまには鳥越先輩のお家で、夏から秋にかけて、二人は何度も何度もえっちなことをしたんだそうです。

「クリスの家はネー、すんごい豪邸なんだヨー。なおちゃんちにも負けないくらい」
しーちゃんの二宮先輩に対する呼び方が、いつの間にかクリスって愛称に変わっていました。
先輩なのに、いいのかな?

「お父さんがどっかの大きな会社の社長さんらしくて、お手伝いさんとか執事さんまでいるんだヨ」
「クリスは三人姉妹の真ん中。クリスの部屋もすんごく広くて、当然、お姫さまベッドだった」
「でも、クリスの家に初めて行ったのは、二学期始まってからで、その前に行った夏の合宿がまた、スゴかったんだヨ」

「合宿のときは、顧問の井上先生のお友達っていう、プロのモデルの人が来て、その人のヌードデッサンもやったのネ」
「その人がすんごく美人さんでキレイなからだでネー。20代半ばくらいなのかナ?おっぱい大きくて、乳首がツンとしてて、アソコの毛もキレイにカットしてお手入れしてあって」
「落合先輩によると、毎年来てくれてるんだって。今年で3年目だけど全然からだの線が崩れてなくって、それどころか見るたびに一層キレイなプロポーションになってる、って」
「アダルトビデオの人なんじゃないか?なんて憶測もあったんだけど、井上先生は笑って否定してた。去年、落合先輩がネットのそういうサイトで顔を頼りに検索しまっくったときも、みつからなかったんだって」
「それで、そのデッサンをやった日の夜は、みんなコーフン気味だったんだ。えーっと、性的なイミでネ」

「で、ワタシたち6人は同じお部屋だったんだけど、負けたらカード交換と同時に服も脱がなきゃいけない、ストリップ大貧民が始まったんだヨ」
「大貧民は二枚、貧民は一枚、負けたら何か着ているものを脱がなきゃいけないのネ。富豪と大富豪は、その脱いだ服ももらえるの。脱ぐものが失くなったらエッチな指令になるのネ」
「夏だからみんなTシャツにジーンズと下着くらいじゃない?身に着けてるの。だから3回くらい大貧民がつづくともうハダカンボ」
「富豪とかに返り咲ければ、貧民がまだ服を持っていれば返してもらえて着れるんだけど、返ってくるのが自分の服とは限らないのネ」
「マッパなのにTシャツだけ返ってきたりすると、それだけ着たりして。下半身ヌードでチビTだけって、すんごくいやらしい感じなんだヨ。それ披露したのは村上先輩で、あの人おっぱいバイーンだから、すんごくエッチかった」

「クリスは最初の3回ずっと大貧民で、たぶんワザと負けてたんだと思う。早々と脱ぐものが失くなっちゃってて」
「ワタシはだいたい貧民から平民の間をウロウロしていて、辛うじてショーツ一枚はキープしてたんだけど、クリスへの誰かの指令は全部、ワタシがクリスにやらなきゃいけないことになってたのネ、まだつきあい始めたばっかだったから」
「最初のうちは、キスしなさい、とか、おっぱいを3回揉みなさい、とかソフトな指令だったんだけど、鳥越先輩が強くてネー。自分の周りにみんなの服や下着ほとんど集めて、イジワルな指令をしてくるんだヨ」
「乳首を勃たせなさい、とか、アソコの毛を一本抜きなさい、とか、ワタシとクリスは、さんざんいじられちゃったヨ」

「結局、鳥越先輩以外はほとんどハダカンボになっちゃってて、そのうちお互いのパートナーとイチャイチャしだして」
「そのペンションは、うちのOBの経営で合宿の日は貸切状態なんだって。だから少しくらいエッチな声出しても大丈夫、って言われたから、もうみんな大胆だったヨー」
「井上先生も、あのモデルの人と楽しんでいるはずよ、なんて落合先輩が言ってた。嘘か本当かわからないけど」

「二学期始まってからも、部活の後にお互いのお家を行き来して、いろいろ遊んでたのネ」
「それで、クリスといろいろそういうことしているうちに気がついたんだけど・・・」
「クリスはネ、そういうことをしてるとき、お尻をパチンて叩かれたり、乳首を強くつままれたりすると、すんごく反応して、何て言うか、喜ぶのネ」
「これはよくエッチぽいマンガに出てくる、アレだな、って思ったヨ」
「わたしマゾっぽいよね?ってクリス自身も言ってた。それで、ワタシもそうやってクリスのお尻叩いたり、乱暴におっぱい掴んだりすると、異様にコーフンしちゃうことに気がついちゃったのネ」
「ワタシ、Sッ気、強かったみたい・・・自分でも知らなかったヨ」

「被虐願望、っていうのかナ?自分を可哀想でみじめな状況に追い込んでコーフンするタイプ。クリスはそういうのがとっても好きみたいなのネ」
「でも、面白がってただイジメているワケじゃないんだヨ。ワタシはクリスが大好きだから、クリスがやって欲しいと思ってることを、やってあげたいだけなんだから」
「だから最近はネ、みんなといるときは普通に先輩と後輩みたいに振舞っているんだけど、二人きりになったら、ううん、鳥越先輩たちと一緒のときもそうかな?」
「そういうときには完全にSとMの関係になっちゃってるのネ」

しーちゃんが本当に楽しそうなお顔でお話してくれます。
私は、しーちゃんのお話にグイグイ引き込まれて、相槌をうつのも忘れてしーちゃんのよく動く唇を見つめていました。

「ワタシの目が届かないところでは、無防備な格好をしちゃダメ、って約束だから、ワタシの許可がないと、今は人前で裸でモデルとかしちゃイケナイことになってるのネ」
「だけどワタシが、やって、って言ったら、そのときがどんな状況でも、他の人にみつからないように、ちょこっと恥ずかしいこととか、しなくちゃイケナイの、クリスは」

「たとえばワタシが、次の休み時間、ってクリスにメールするでしょ?そうするとクリスは、次の休み時間にワタシがクリスの教室に顔を出すまでにパンツを脱いでおいて、ワタシが教室に来たら、そのパンツをワタシにこっそり手渡さなくちゃイケナイのネ」
「ワタシが次にメールを入れるまで、クリスはノーパンのまま授業を受けなければイケナクなるワケ」
「始めた頃は、クリスもどこでいつ、パンツを脱げばいいのかわからなくて、ワタシが教室に着いてもまだ脱いでなかったのネ。廊下の隅の人目につかないところでコソコソ脱いでもらったヨ」
「クリスが廊下の隅っこで恥ずかしそうにパンツ脱いでいる、その姿がカワイクって。クリス、身長が高いから、普通に立ってると目立っちゃうでしょ?だから両膝屈めて小さくなって、よろけたりして」
「パンツを膝の下くらいまで下げたときが、一番恥ずかしい、って、顔真っ赤にして言ってたヨ」

「それからしばらく、クリスは授業が終わったらすぐトイレに駆け込んで、個室で脱いで、ワタシに渡してたようなのだけど、ワタシも意地になるから、クリスにトイレに行く時間を与えないように、急いでクリスの教室に行くようにしたのネ」
「ワタシが教室に顔を出して、そのときクリスが教室にいないと、その日の放課後デートは中止になっちゃうから、クリスも真剣に考えたみたいでネ」
「両サイドをヒモで結ぶ式のパンツを穿いてくるようになったの。それなら、ワタシからメールが来たらすぐ、授業中でもなんとかこっそり脱げるじゃない?」
「でも、それじゃあちょっとツマラナイから、ワタシはすぐ、ヒモパン禁止令を出したのネ。そしたら最近はクリス、普通のパンツでも、なんとか先生やみんなの目を盗んで、授業中に脱いでいるみたい」

そう言われてみれば、二学期になってからしーちゃんが、授業中にコソコソとメール打っていたり、休み時間になった途端に廊下へ飛び出していくところを何回か目撃していました。
そんなにえっちで楽しそうな遊びをやってたのか・・・

「うちの学校の制服にはベストがあるから、ブラでやらせたこともあるヨ。ベストしてればノーブラばれないから」
「ブラのときは、さすがにみんなのいる教室ではずすのは無理だから、二人でトイレの個室入って、ワタシがはずしてあげるのネ」
「ノーパンやノーブラのとき、先生に指されて教科書読まされたり、前に出て問題解かされたりすると、すんごくドキドキして感じちゃうんだって」
「そういう遊びをした後の放課後デートはスゴイんだヨ。クリスが感じまくっちゃってネ」

「一度、ノーパン指令が体育の時間にかかっちゃってネ」
「クリスは仕方ないからジャージを直穿きして臨んだんだって」
「クリスのジャージ、ちょっとウエストゴムが緩くなってて、間の悪いことにその日は鉄棒の授業」
「クリスは運動神経、すんごくいいの。スポーツは何でも得意みたい」
「先生に指名されて、みんなへの模範演技として足掛け回りやってみせている間中、今ここでジャージのゴムが切れちゃったらどうしよう、ジャージがずり下がっちゃったらどうしよう、ってずーっとドキドキしっ放しですんごいコーフンしちゃったんだって。ジャージの内側がベトベトになるくらい」
「だけど頭の片隅では、ゴムが切れちゃうことを願ってたかもしれない、みんなにジャージがずり下がったノーパンのお尻を見られちゃうことを望んでたのかもしれない、なんて、すっごく恥ずかしそうに真っ赤になってワタシに言うのネ。それがまたカワイクってネー」

「クリスを恥ずかしがらせるアイデアは、鳥越先輩たちと考えたり、クリスが自分でアイデア出すこともあるんだヨ。それも、すっごく嬉しそうに」
「面白そうでクリスも乗り気なアイデアでも、あんまり過激すぎるのは却下。先生とか頭が固くて融通の利かない一般の生徒にヤバイ現場を見られちゃうのはマズイからネ、そのへんは気をつけてるヨ」
「小川先輩がクリスと同じクラスだから、いろいろフォローしてくれてるみたい。クリスが教室でヘンなことをしてるの、他のみんなにみつからないように」
「その代わり、クリスがノーパン状態のときにワザとスカートつまんでみたり、ノーブラのときにタッチしたり、まわりには悪フザケっぽく見える範囲でちょっかい出して、クリスを教室でも辱めてあげてるみたい。それを後でワタシに教えてくれるの」
「小川先輩も鳥越先輩と二人だと、完全に、受け、状態らしいんだけどネ」

しーちゃんは、本当に楽しくてしょうがない、という様子で、クリスさんのお家の美人姉妹さんのこととか、しーちゃんちに来たときのご両親の反応とか、その他いろいろ、いっぱいお話してくれました。
私は、しーちゃんとクリスさんの関係が、うらやましくてうらやましくて、仕方ありませんでした。

二人でベッドに横になって電気を消して、もう寝よう、ってなったとき、私のほうを向いた気配がして、こんなことを言いました。

「ワタシ、今こんなふうにクリスと遊んでること、マンガに描いてみようって思ってるんだ。こんな経験を実際にしてる人って、きっとめったにいないだろうから。出来上がったらまっ先に、なおちゃんに見せてあげるネ」

しーちゃんの言葉が途切れて、やがて規則正しい寝息が聞こえてきました。
私は暗闇の中で目を開いたまま、だんだんと闇に目が慣れて薄っすらと見えてきた、天井の白い幾何学模様をボンヤリ眺めていました。

後輩である可愛らしいしーちゃんからえっちな指令を出されて、それを羞恥に震えながらもけなげに実行する美しい上級生のクリスさん。
そんな遊びで燃え上がったお互いのからだを、最後は二人きりで思う存分貪り合う・・・
それは、まさしく私が理想とする百合カップルの姿でした。

お話疲れしちゃったのか、私の隣でしーちゃんが無邪気なお顔でグッスリ眠っています。
私もぐったり、心身ともに疲れきっていました。
この数ヶ月の間にしーちゃんは、私よりも遥かに高く、オトナの階段をのぼっていました。
今、しーちゃんに抱きついたら、しーちゃんは私のお相手をしてくれるだろうか?
そんな不埒な考えが一瞬頭をよぎります。

いえいえ、私の身勝手な衝動で、しーちゃんとクリスさんのステキな関係を乱すわけにはいきません。
しーちゃんは、私の大事な大事な親友なんだから。
私は、しーちゃんのお顔に自分の顔を近づけ、その柔らかいほっぺに唇を一度だけ触れさせてもらってから、仰向けに戻って両目を瞑りました。


しーちゃんのこと 20

2011年7月9日

しーちゃんのこと 18

「お風呂で二宮先輩にからだを洗ってもらったときの感触が気持ち良かったから、忘れられなくて、ある日の夜に自分の部屋で、自分で同じようにからだをさわってみたら、だんだんヘンな気持ちになってきちゃってネ」
「ここなんて・・・」
しーちゃんが自分の股間を指さします。
「ヌルヌルになっちゃってて、それでもいろいろ弄っていたら、今までに感じたことないような気持ち良さの波がやってきて・・・」
しーちゃんは、すっごく恥ずかしそうにうつむいて、しばらく言葉が途切れました。
私も何も言わず、しーちゃんが再び語り始めるのを静かに待ちました。

「それで、二宮先輩にもう一度ワタシのからだ、さわって欲しいナー、なんて考えていたら、8月の中旬、夏休みの合宿の前に、打ち合わせでまた、鳥越先輩のお家に集まることになったのネ」
「その日は、デッサンとかはしないで、合宿に持っていく荷物の分担とか、向こうでやる遊びの企画とかを話してたのネ。二宮先輩は、清楚な感じの白いノースリワンピ、着てたナ」
「鳥越先輩たちは、ワタシたちがつきあい始めたことに興味シンシンでネ、いろいろ冷やかしたり、質問してきたりするの」
「それで、その日の先輩たちは、なんだかみんなエッチでサ。その手の話ばっかりで盛り上がってたの」
そこで、しーちゃんはじっと私を見つめてきました。

「なおちゃんも薄々勘付いてると思うけど、鳥越先輩と小川先輩、落合先輩と村上先輩は、カップルなのネ。おつきあいしてる恋人同士なの」
「美術部には、他にも二組、あ、ワタシたち入れると三組か、百合なカップルがいるんだ」
「前に、お姉ちゃんにそれとなく聞いてみたことがあるのネ。あの人、学校内のそういう事情に詳しいから。そしたら美術部って、伝統的に代々、百合カップル率が高いことで、生徒会では有名なんだって」
「美術部のビは、ビアンのビ、なんて格言があるくらい。そういうのは、格言って言わないけど」
「絵画とか美術に興味のある人には、そういう嗜好の人が多い、なんて説は聞いたこと無いんだけど、なぜだか美術部では、カップル成立率が高いんだよねー、って笑ってた」
「ワタシに向かって、あんたは絶対にその手の人には受けいいから、その気が無いんだったら充分気をつけなさい。でももしその気があるんだったら、きっと天国よ。なんて、からかわれちゃった」
しーちゃんがクスッと笑いました。

「それで、鳥越先輩のお家で、先輩たちがエッチな話で盛り上がってたとき、小川先輩がワタシに、ひとりエッチしてるの?って聞いてきたのネ」
「ワタシは、さっき言ったみたいに、その気持ち良さを知ったばっかりで、正直に言っちゃうと、毎晩、っていうくらいしてた・・・」
しーちゃんが上目遣いに私をチラッと盗み見て、すぐにつづけます。
「でも、絶対そんなこと言えないから、黙ってうつむいてたのネ」
「そしたら鳥越先輩が、ひょっとしてやりかた、知らないんじゃないの?とか囃し立ててきて、みんなでワイワイ言い出して、それじゃクリス、やって見せてあげなよ、って話になって・・・」

「ワタシ、先輩たち、まさか二宮先輩に、みんなが見ている前でそういうことをやらせようとしてるのかな、って思っちゃって。みんなエッチな感じでニヤニヤしてたし・・・」
「でも、二宮先輩は今はワタシの恋人なんだから、そんなのヒドイと思って、ワタシは二宮先輩のそんな姿を他の人には見せたくないと思って、何か言わなきゃって思ったのだけど、言葉が出てこなくて・・・」
「でもさすがに先輩たちはみんなオトナで、その後すぐ、いつかみたいに4人で夕食の買出しに出かけてくれて、ワタシたち二人きりにしてくれたのネ」
「また先輩たちに乗せられてるナー、ってちょこっと思ったけど・・・」

「で、二宮先輩が、見たい?って聞くから、ワタシ黙ってうなずいて、二宮先輩がソファーに浅く腰掛けて、恥ずかしそうにワンピースの肩紐ずらして、スカートの裾まくって・・・」
「二宮先輩のせつなげな声が聞こえてきて、しのぶちゃん、こっちに来て、さわって、って言われて」
「ワタシもがまんできなくなって、二宮先輩に抱きついて、キスして、お互いのからだをまさぐりあって・・・」
「二宮先輩の指で、何回もイっちゃった・・・」
しーちゃんは、私の顔を見ずに、うつむいたまま言いました。

「それで、二人ともほとんど裸のままソファーで抱き合ってグッタリしてたら、先輩たちが帰ってきちゃって、お二人さん、結ばれたのねー、なんて冷やかされて」
「わたしもムラムラしてきちゃったー、って小川先輩が言って、鳥越先輩にキスし始めて、落合先輩と村上先輩も服を脱ぎ始めて」
「結局その後は6人とも、ほとんど裸の状態でごはん食べたりゲームしたりして、ずっとイチャイチャしちゃった。裸でツイスターゲームやると、すんごくエッチなんだヨー、ありえないポーズになっちゃったりして」
楽しそうにしーちゃんが言った後、しまった、っていうお顔になって私を見ました。

「なおちゃん?やっぱりヘンだと思ってるでしょ?女同士でそんなことして・・・」
「ううん・・・」
即座に否定したものの、その後につづける言葉がみつかりません。

私は、すっごくうらやましい気持ちでした。
そして、悔しい気持ちと寂しい気持ちもありました。
その気持ちの正体はわかりきっているのですが、認めたくなくて、私は、唐突に中三のときに経験した相原さんとのことを、しーちゃんに話し始めていました。

相原さんが図書室で裸になっていたことや、二宮先輩みたいな裸になりたがり、だったことは伏せて、図書室で知り合って、相原さんのお家に呼ばれて、そこで抱き合った、ということだけをお話しました。
相原さんにさわられて、相原さんにさわって、すっごく気持ち良くって、相原さんをどんどん好きになっていった、っていうことは、包み隠さず正直に告白しました。

私の告白を聞き終えたしーちゃんのお顔には、なんだかホッとした、みたいな安堵の表情と、聞きたくなかった、みたいな寂しげな表情が入り混じった、複雑な表情が浮かんでいました。

しばらく二人とも黙ったままでした。
しーちゃんが自分の腕時計にチラッと目をやって、ンーーッって大きく伸びをしてから居住まいを正し、あらためて私の顔を見つめて語りかけてきました。

「それで、昨日文化祭で、なおちゃんが部室に来てくれたでしょ?あの後、二宮先輩に言われちゃったの。わたしたちのこと、森下さんには言ってあるの?って」
「きっと森下さんはしのぶちゃんのこと大好きだし、しのぶちゃんも彼女のこと好きなんでしょ?って。二人が親友だったら、わたしたちのこと、つまりワタシと二宮先輩がつきあっていることを、たとえば他の人から聞かされたり、風のウワサで知ったとしたら、森下さんは、あんまりいい感じがしないだろう、って」
「親友だからこそ、ちゃんとしのぶちゃんの口から、言っておくべきじゃない?って」

「ワタシも別に隠すつもりはなかったのだけれど、夏休み中はあんまりなおちゃんと会えなかったし、二宮先輩と実際に深い関係になっちゃったら、なんだか恥ずかしくって、言い出せなくて・・・」
「だから今日、なおちゃんに全部言って、謝ろうと思って、来たのネ・・・」

「謝るなんて・・・」
私は、自分の胸の中で騒いでいる落胆の気持ちを一生懸命抑えつけながら、つとめて普通の感じを心がけて、言いました。
「しーちゃんが私に謝る必要なんて、全然ないよ。しーちゃんが可愛くて魅力的な女の子だからこそ、ステキなパートナーさんと巡り会えたんだから」
「しーちゃんが誰とおつきあいしていても、私はしーちゃんのこと大好きだし、しーちゃんが二宮先輩とシアワセになるなら、私いくらでも応援するよ」
「ほんと?ありがとーっ!そう言ってくれるとワタシも嬉しいヨー」
しーちゃんが私の両手をとって、ギューッと握りしめてきました。

「ワタシ、昨夜、なおちゃんのお家に明日行こうって決めて、ベッドに横になったとき考えたんだ・・・」
「ワタシ、本当はなおちゃんと、二宮先輩とのおつきあいみたいな関係になりたかったんじゃないのかナー、って」
「なおちゃんをそういう関係に誘いたかったんだけど、どうすればいいのかわからなくって・・・」

それは私も同じことでした。
少なくとも夏前までは、私のほうがえっちなことに関しては、リードすべき立場でした。
でも私がグズグズしているうちに、しーちゃんには二宮先輩というステキなパートナーが現われて、私の恋心はまた一人ぼっちで、取り残されてしまいました。

「私もしーちゃんと、そういう関係にもなってみたかった気持ちはあったんだけど、タイミングが合わなかったみたいだね」
「ステキな人をみつけたんだから、今はその人を大切にしなきゃ」
「私としーちゃんは、これからもずっと親友だし、何があってもずーっと、私はしーちゃんの味方だから」
なるべくしんみりしないように、明るめな声を出して、私はしーちゃんへの恋心をあきらめようとしていました。
「そうだ、今日はうちでお夕食も食べて、泊まっていきなよ?二宮先輩とのこと、もっと聞きたいし」
「私、しーちゃんのお家に電話して、お泊りの許可、もらってくるっ!」
これ以上ここに二人でいると、涙がこぼれてきちゃいそうだったので、サッと席を立って、私は階下に駆け出していました。


しーちゃんのこと 19

2011年7月3日

しーちゃんのこと 17

お約束通り、5時から講堂で演劇とバンド演奏を観て、この日は6時半に文化祭が終わりました。
クラスのお教室で後片付けをしてから、美術部の人たちと打ち上げがあるというしーちゃんと別れ、私も文芸部の部室でささやかな打ち上げをして、お家に帰ったのは夜の8時過ぎでした。

寝る前に、どうしてもニノミヤさんの裸の絵とレオタード姿が思い出されて、オナニーをしたい気持ちもあったのですが、それ以上にからだが疲れきっていたみたいで、あっさり眠りに就いていました。

翌日は振り替え休日。
文化祭の後片付けが残っている人は登校しなければいけませんが、それ以外の人はお休み。
私は昨夜、ヤキソバに使った重たいホットプレートも持って帰っていましたし、図書室もすっかり普段通りに戻しておいたので登校する必要は無く、朝の10時過ぎまで、ゆっくり惰眠を貪りました。
お昼は、母と一緒に食べながら文化祭でのしーちゃんのゴスロリ姿や描いてくれた絵のことをコーフン気味におしゃべりして、午後からは、読みかけのコミックスを自分のお部屋でベッドに寝転んで読んだりしてダラダラ過ごしました。

午後の3時前に携帯電話が鳴って、出てみるとしーちゃんからでした。
これから私の家に遊びに行っていいか?という内容で、もちろん私にノーと言う理由は今も昔もまったく無いので、しーちゃんが来ることになりました。
3時少し過ぎくらいに現われたしーちゃんと、最初はリビングで母と3人でお茶を飲みながら、また文化祭の話題をしばらくしていました。
3時半頃、母がお夕食のお買い物へ行くと席を立ったので、しーちゃんと二人で私のお部屋に移動しました。

お部屋でもしばらくは、昨日の友田さんのステージはカッコ良かったね、とか、演劇部のお芝居はなんだかよくわからなかったね、とか他愛もないおしゃべりをしていました。
しーちゃんは、なぜだかいつもより言葉少なでした。
会話が途切れて、何気なくしーちゃんのお顔を見たとき、なんだか思いつめたような表情になっているのに気がつきました。

「しーちゃん、どうかしたの?何かあったの?」
「うんとネ、今日はネ、どうしてもなおちゃんにお話しておかなければならないことがあって、来たの・・・」
「・・・たぶんなおちゃん、びっくりすると思うけど・・・なるべくびっくりしないで、聞いて・・・」
「なおちゃんには、ちゃんと言っておかないといけない、って思ったから・・・」
しーちゃんのお顔は、今までみたことないくらい真剣でした。

「ワタシネ、今、二宮先輩とおつきあい、してるの・・・」
しーちゃんが思い切るみたいに言って、私の顔を見つめてきます。
「おつきあいって言っても、百合ごっこ、みたいのじゃなくてネ、キスもしたし、もっと先までももう・・・」
しーちゃんの突然の告白に、私は文字通り、口をポカンと開けて絶句していました。

「気持ちワルイよネ?女同士でなんて・・・」
ポツンとつぶやいたしーちゃんの言葉に、私は激しく反応しました。
「ううん。ぜんぜん気持ち悪くなんてないっ!女同士だって私、ぜんぜんいいと思う!」
「ほんと?なおちゃん・・・」
しーちゃんがうつむいていたお顔を上げて、再び私を見つめてきました。

私の頭の中は、激しく混乱していました。
しーちゃんが二宮先輩とおつきあいしている・・・
もうキスも、その先までもヤっちゃった・・・
女同士は気持ちワルイ?・・・

その三つしか言われていないのに、それらが何を意味するのか、まったく理解できませんでした。
混乱している頭をごまかすみたいに、思いついたことを口にしていました。
「いつから、そんな感じになってたの?詳しく聞かせて」
しーちゃんが宙に目を泳がせ、思い出すような表情でお話し始めました。

私にも教えてくれた6月のヌードクロッキー会の後、もう一度その機会が訪れたのは、明日から夏休みという終業式の放課後、場所は、三年生の鳥越先輩のマンション。
鳥越先輩は、ご両親のお仕事の関係で、学校の近くのマンションに一人暮らししていました。
て言うか、社会人のお姉さんと一緒に暮らしているのですが、お姉さんがカレシさんのお部屋に入り浸って帰ってこないので、結果的に一人暮らしになっていたのだそうです。
前々から、その日はみんなで集まる、って先輩がたに言われていて、しーちゃんも、きっとあの日のつづきをするんだな、って薄々思っていたので、ちょっとワクワクしていたそうです。

いったんお家に帰って、私服に着替えて再び集まったのは、あの日と同じメンバー、三年生の鳥越先輩と落合先輩、二年生の小川先輩と村上先輩、二宮先輩、そしてしーちゃん。
午後の三時過ぎに集まった6人は、そのままお泊り会をする予定でした。
鳥越先輩のマンションは結構広くて豪華で、
「一部屋改造して、アトリエみたいになってるんだヨー」
と、なぜだか自分のことのように自慢そうなしーちゃん。

広いリビングで一息ついて、アトリエでクロッキーを始めたのが午後の4時頃。
今回は、短時間ではなく、しーちゃんのが仕上がるまでっていうことだったので、クロッキーではなくてデッサンでした。
当然のように、二宮先輩がお洋服をすべてスルスルっと脱ぎ、アトリエのソファーに寝そべって、みんな真面目にデッサンを始めました。
アトリエは、美術室より断然明るかったので、二宮先輩のからだの細かいところ、筋肉のつき方や毛の生え際とかまでクッキリとわかり、二宮先輩は、やっぱり薄っすら頬を染め、恥じらいと高揚感が交錯しているように見えたそうです。

休憩を何度か挟んで2時間弱、なんとかしーちゃんも納得出来る作品に仕上がったので、そこでデッサン会は終わりになりました。
二宮先輩以外の先輩がた4人が、お夕食のお買い物に行ってくる、と言って外出してしまい、お部屋にはしーちゃんと二宮先輩だけが残されました。
「たぶん、先輩たちがあらかじめ打ち合わせてて、ワタシたちを二人きりにしたんだヨ」

デッサンが終わっても二宮先輩はお洋服を着ようとせず、しーちゃんは目のやり場に困ったそうです。
ソファーに並んで座って、しばらくお話タイム。

「しのぶさんには、カレシさんとかいるの?」
「いいえ、ワタシはまだそんなの・・・」
「興味ないの?」
「はい・・・」
「わたしのからだ見たの久しぶりだったよね、どうだった?」
「あ、はい。やっぱりすんごくキレイだと思います。憧れちゃう」
「わー、ありがとう。わたし、しのぶさんのこと部室で初めて見たとき、なんてカワイイ子なんだろう、って思ったの」
「はあ・・・ありがとうございます」
二宮先輩が少し黙ってから、内緒話をするみたいなヒソヒソ声で聞いてきました。
「しのぶさん、女同士でおつきあいするのって、ヘンだと思う?」
「あ、いえ、ワタシは別に・・・」

しーちゃんは実際、女の子同士の恋愛もアリだと思っていたし、これから百合マンガを描いていくためにも、自分の身で経験してみたいなーとも思っていたのだそうです。

「それなら藤原さん、わたしとおつきあいしてみない?」
二宮先輩に小さな声でそう言われたとき、たぶん先輩がからかっているんだろうと思ってお顔を見たら、頬をピンクに染めて思いっきり恥らっていて、その姿がすっごく可愛らしくって、たまらなかったそうです。
「それとも、誰か他に好きな人がいるの?」
そう聞かれたとき、パッと浮かんだのが私の顔・・・でも、何も言えず・・・
「こんなふうに人前で裸になっちゃう、はしたない女じゃ、イヤ?」
「そんなことありませんっ!」
この問いにだけは、しーちゃんはすぐに反発しました。

「二宮先輩は、やさしいし、絵もお上手だし、教え方もうまいし、お顔もからだもキレイだし、お話していて楽しいし、ワタシ憧れてます」
「うわー。今まで生きてきて、一番嬉しい褒め言葉よ、それ。ねえ、お願い、藤原さん?わたしとおつきあいしてください」
二宮先輩は、先輩なのに哀願するような言葉遣いになりました。
「わたしはもっとしのぶさんのことが知りたいし、しのぶさんにももっともっと、わたしのことを知って欲しいの。わたしたち絶対うまくいくと思う」
二宮先輩は、そのつぶらな瞳でしーちゃんのことをすがるようにじーっと見つめ、今にも泣き出しそうな感じだったそうです。
しーちゃんは真剣なそのまなざしにあがらえきれなくなって、首をコクンと縦に振りました。

その途端に、泣き出しそうだったお顔が、雲の切れ間からお日様がパーッとお顔を出したように、満面の笑みに変わって、その笑顔が本当に綺麗で、背中に電流が走ったみたいにゾクゾクッてしちゃうほど。
「嬉しいーっ!」
横向きのしーちゃんに抱きついてきた二宮先輩の裸の胸やお腹がしーちゃんに押し付けられ、そのふうわり柔らかい感触といい匂いは、うまく言葉にできないほど心地良いものだったそうです。

やがて先輩がたが帰ってきて、お夕食の支度。
二宮先輩は、裸にピンクのフリルのエプロンだけかけて、せっせとご馳走を作って、みんなでワイワイ食べました。
「クリスがあんなに上機嫌ていうことは、しのぶちゃん、オッケーしたんだね?」
小川先輩が二宮先輩の目を盗んで、しーちゃんに小声で言いながらウインクしてきます。
やっぱりこの会合は、先輩がたに仕組まれたもののようでした。

お夕食の後、しばらく経ってお風呂タイム。
最初に落合先輩と村上先輩、次に鳥越先輩と小川先輩が入り、必然的にしーちゃんと二宮先輩が一緒に入ることになりました。
二宮先輩の前で裸になるのは、しーちゃんにとってかなり恥ずかしいことでしたが、お風呂上りの先輩がたがみんな、下着だけとか、ノーブラにキャミソールとかでお部屋をウロウロしているので、恥ずかしさの感覚が麻痺しちゃって、ま、いいか、になっちゃったらしいです。

「しのぶさんのからだ、スベスベでお人形さんみたいね」
二宮先輩は、そんなことを言いながらしーちゃんのからだをすみずみまで、やさしく丁寧に洗ってくれました。
フワフワのスポンジをたっぷり泡だてて。
「胸とかをやさしく撫ぜられて、ワタシすんごく感じちゃった・・・」
しーちゃんが照れ臭そうに言いました。

その後、二人でゆったりとバスタブに浸かって、見つめ合っているうちになんとなく、キスしてしまいました。
「なぜだか、そうしないとお風呂から出れないような気がしたんだヨ」
しーちゃんが盛大に照れました。

お風呂から上がると、みんな相変わらず下着姿で、三年の先輩は缶ビールなんかも開けて、ワイワイおしゃべりしていました。
二宮先輩が素肌にタオルを巻いたままの格好でその輪に加わったので、しーちゃんもパジャマを着るのがためらわれ、空気を読んで下着だけの姿でおしゃべりに参加しました。
「でもね、えっちい話なんかぜんぜんしなくて、絵の具の混ぜ方のこととかポスト印象派がどーたらとか、えらく真面目な話ばっかりなんだヨ」
「みんな裸に近いセクシーな格好なクセに、すんごく真剣にマジメな話しているから、何て言うか、シュールでネ。少し笑っちゃった」
「好きなマンガの話もしたから、ワタシもすんごく盛り上がっちゃったヨ」

夏休みに入って、しーちゃんと二宮先輩は何度もデートしました。
「ショッピングしたり、映画観たり、遊園地も行ったしプールも行ったヨ」
そういう場では、二宮先輩はごく普通なやさしい先輩で、しーちゃんのことをすごく気使ってくれて、別れ際にはいつもやさしいキスをして。
二宮先輩は、デートのときにセクシーな服装をしてくるとか、ノーブラで来るとかもぜんぜん無くて、本当にこの人が美術室で裸になりたがる彼女と同じ人なのかな、ってしーちゃんが思うくらいいい人で、しーちゃんもどんどんますます二宮先輩のことが好きになっていったそうです。

そしてこの頃、しーちゃんはひとりエッチがちゃんと出来るようになっていました。


しーちゃんのこと 18

2011年7月2日

しーちゃんのこと 16

「それじゃあなおちゃん、ちょこっとこっち来て?」
お話が一段落して訪れた束の間の沈黙を待っていたように、しーちゃんがスッと席を立ち、私の肩に背後から手を置きました。
私も立ち上がります。
しーちゃんは、展示物が飾ってあるお部屋の壁際奥のほうに私を連れていきました。
「ほら、これ」
そこには、正面を向いた人物の油彩の肖像画が飾られていました。
A3を縦にしたくらいの大きさで、濃いエンジ色をバックにこちらを見て薄っすらとやさしく微笑んでいる、写実的タッチな女性の顔。
それは、紛れもなく日頃鏡で見慣れている私の顔でした。

「どう?」
「えっと・・・これ、しーちゃんが描いてくれたの?スゴイッ!綺麗!上手っ!天才っ!」
食い入るようにその絵を見ながら私は、どんどん高揚してきていました。
絵の中の私は、鮮やかな深碧の瞳を緩やかにたわませて、何とも言えない慈悲深い笑みをたたえています。
濃いエンジ色をバックに、首筋から肩の少し下までの透き通るような肌色と、鎖骨の陰影がすっごくセクシー。
どう見ても、実際の私より数段綺麗でオトナっぽい、私が、そうありたいな、って思い描いている理想に限りなく近い笑顔でした。
絵画のタイトルは、ガールフレンド、と名づけられていました。

「文化祭の展示、何にしよっかなー、って迷ってたときに、ふと思いついたのネ。文化祭終わったら、もうすぐなおちゃんのお誕生日だナー、って」
「なおちゃんを描いて、それをプレゼントにしちゃうのも手かナー、って思って」
「8号ていう大きさは、風景画では慣れてたけど、人物描いたのは初めてでちょっと戸惑ったけど、写真見ながらがんばったヨ」
「それじゃあ、これ・・・?」
「うん。お誕生日にこの額ごとなおちゃんにプレゼント!」
「ありがとうっ!すっごく嬉しい!一生の宝物にするっ!」
私は、心の底から感動して、しーちゃんの両手を私の両手で包み込むように取り、ギューッと私の胸に押し付けました。

「いやいや、こうして実物のかたとご一緒すると、しのぶさんの技術の巧みさがよくわかりますなあ」
「いえいえ、実際のモリシタさまのほうが、もっともっとお美しくあらせられましてよ?」
いつの間にかトリゴエさんやオガワさんたちに囲まれていて、みんながワイワイ囃したててきました。

その後、美術部のみなさんと一緒に展示物を一通り見て回りました。
トリゴエさんが描かれた淡い色彩が上品な水彩の大きな風景画、オガワさん作のカラフルでキッチュなポップアート、ニノミヤさんの大胆な色彩で鮮烈に描かれたアクリル画らしい静物画。
その他の方々の作品も、私なんかから見るとみんな、すっごく上手い、って驚嘆するしかないものばかりでした。
でも、私にとってのナンバーワンは、言うまでもなくしーちゃんの作品なんですけど。

美術室にずいぶん長居してしまい、そろそろ図書室に戻らなければいけない時刻になっていました。
「それじゃあ私、そろそろ・・・」
言いかけたとき、オガワさんが私の顔を見てニッと笑って、
「ねえ、お姉さまがた?モリシタさんとお近づきのシルシに、最後にあの作品、ご覧いただくっていうのはどうかしら?」
貴族ごっこがつづいているのかいないのか、中途ハンパな口調にイタズラっ子なお顔で言いました。
「どう?クリス」
トリゴエさんがニノミヤさんに聞くと、ニノミヤさんのお顔が薄っすらと紅潮してうつむきます。
「モリシタさまに、見ていただくかい?」
ニノミヤさんは、うつむいていた顎を少し上げ、上目遣いに私の顔をじっと見つめてから小さく微笑み、完全にお顔を上げてトリゴエさんを見つめました。
「よくってよ。お姉さま」

私たちは、ゾロゾロとさっき見たニノミヤさんの絵のところまで戻りました。
ニノミヤさんの絵は、お部屋の入口から一番奥まった壁際に飾ってありました。
美術室は現在、少しだけお客様の来訪が途絶えて、テーブルに2組、5名のお客様がお茶を楽しんでいらっしゃるだけでした。
モーツァルトのオーボエ協奏曲が軽やかに流れています。

私としーちゃん、トリゴエさん、オガワさん、ニノミヤさんの他に、ベルバラ衣装の三年生、オチアイさんと、フレンチメイドな二年生のムラカミさんもついてきました。
7人でニノミヤさんの絵を取り囲むように立つと、背の高いトリゴエさんが自身の背後に垂れ下がっていたエンジ色の布を、カーテンを引くようにスルスルっと横に滑らせました。
エンジ色の布が私たちの背後を覆うように広がって、その絵の周辺の空間だけが美術室から一層薄暗く遮断されました。
ムラカミさんが、絵の下に置いてある照明のスイッチをひねると、絵の周辺だけがまばゆい白色ライトで一段と浮かび上がりました。

ニノミヤさんの絵は、乱暴に二つに割られて乱雑な断面を見せている真っ赤なスイカの横に、これまたパックリ割れてツヤツヤした赤いルビーのような中身を見せているザクロの実が二つ、漆黒をバックに写実的かつ大胆な色遣いで描かれた静物画でした。
新聞紙を半分にしたくらいの大きさの横向きの構図で、スイカとザクロの中身の鮮烈な赤と、スイカの皮やザクロの葉の緑とのコントラストが印象的な作品。
タイトルは、夏の円熟。
見方によっては、なんだかエロチックな感じもしてきます。

この絵は確かにスゴイと思うけれど・・・
真意が掴めず私が戸惑っていると、ニノミヤさん自らその絵を額ごと壁からはずし、クルッとひっくり返して再び壁にかけました。
「どうぞ・・・見て・・・ください・・・」
消え入るような、恥ずかしげなニノミヤさんのお声がしました。
誘われるように視線を壁に戻すと、そこには・・・

裸のマヤ・・・
一糸纏わぬ裸で横向きにソファーに寝そべる美しい女性の姿が、写真と見紛うような精巧な筆致で描かれていました。
ふんわりとした髪、瑞々しい肌の艶、まろやかな曲線を描く乳房、両内腿の間の翳り、少しだけ膝を立て気味のしなやかな右脚のライン・・・
すべてが生々しく息づいていて、溢れるばかりの迫力です。
それに、このソファーが置かれている場所は、どう見てもこの美術室。
特徴のある壁の木目まで鮮やかに再現されていました。
これは、コンピューターグラフィック?

「その絵のモデルが誰か、モリシタさん、おわかりになるわよね?」
オガワさんに聞かれて、私は黙って、ニノミヤさんのお顔を見ます。
ニノミヤさんは、薄闇の中でもお顔が真っ赤に火照ってらっしゃるのがわかります。
それでも私は不躾に、絵を見てはニノミヤさんを見て、絵を見てはニノミヤさんを見てをくりかえしてしまいます。
絵のタイトルは、紅百合の后、でした。

「クリスの裸は、本当にキレイなんだ。だからワタクシたちの創作意欲が抑えきれなくなってしまってね。頼み込んでモデルをしてもらったの」
オチアイさんが説明してくれます。
「この絵は、ワタクシたち6人の合作なの。下絵はしのぶさんが描いたのを採用して、それをパソコンに取り込んで彩色はクリスも含む全員」
「いろんなCGの技法が盛り込まれているのよ」
「このおっぱいの感じが難しかったのよねー。クリスから、私の乳首、こんなに黒ずんでいない、とかNG出されて」
「下の毛も揉めたわねー。もうちょっと濃く、いいえもっと薄く、なんて」
オガワさんとムラカミさんが楽しそうに言い合ってます。
「だからおヘソの下周辺は、ワタシが責任を持って担当したんだヨ」
しーちゃんがこれまた嬉しそうに教えてくれました。

「クリスはね、普通絶対裸にならないようなところでこっそり恥ずかしい格好をしたり、誰かに自分の裸を見てもらったりすることが好きな、ちょっと変わった子なのね。今だってこの子、モリシタさんにこの絵を見てもらって、嬉しくってしょうがないんだから」
トリゴエさんが、ニノミヤさんの肩に手を置いて、からかうみたいにモミモミしています。
「クリスったら、この文化祭中もはりきって、ずっとレースクイーン的なハイレグのえっちぽいレオタード着ているのだけれど、過度に肌を露出するような衣装は学校から厳重に禁じられてるから、仕方なくワイシャツを羽織っているの」
オガワさんがヒソヒソ声でつづけます。
「昨日はそれでも、ワイシャツ脱いで記念撮影とかできたんだけどね。今日は、風紀の先生が見回りにくるっていうウワサもあるから、とりあえず一人ワイシャツ祭りの人になってるクリスちゃん。これもこれで相当色っぽいけどね」

「そうだ。今ここでならワイシャツ脱げるじゃん?カーテンで仕切ったから向こう側からは見えないし。モリシタさんにも見せてあげなよー。セクシーなレースクイーン姿」
ムラカミさんが、イイことを思いついた、って調子ではしゃぎ気味に言いました。
私はまだ、絵と実際のニノミヤさんを飽きることなく見比べていました。
ずいぶんと無遠慮な視線だったと思います。
ニノミヤさんは、チラッとしーちゃんのほうに視線を向けます。
しーちゃんがかすかにうなずくように首を動かした気がして、ニノミヤさんが上から、ボタンを一つ一つ、ゆっくりはずし始めました。

こんなふうに、精緻に描かれた自分の裸の絵を前にして、実際の自分と見比べられるのって、どんな気持ちなんだろう?
おっぱいも、乳首も、アソコの毛も、精密なタッチで再現された自分の裸が描かれた絵の前で、シャツのボタンを一つづつはずしていくニノミヤさん・・・
その姿を見ていたら、ニノミヤさんをうらやましいと感じている自分の気持ちが隠せなくなってしまい、ニノミヤさんが感じているであろう、その恥ずかしさに私も共鳴して、そのあまりの恥ずかしさにいたたまれなくなってきてしまいました。
心臓がドキドキドキドキ高鳴って、甘美な性的高揚感をからだの奥に感じていました。

シャツを両袖から抜いたニノミヤさんは、バストの谷間も露な深い襟ぐりの濃いグリーンのレオタード姿になりました。
プロポーションは絵のまんま。
ほどよく豊かなバスト、キュッとくびれたウエスト、ゆるやかに張ったヒップ、深いハイレグの切れ込み、スラっと伸びた生脚。
背筋をピンと伸ばして私の目の前に立ったその姿から、もっと見て、よーく見て、という声と、いやっ、恥ずかしい、見ないで、っていう声が、同時に聞こえてくるようです。
私は、まじまじとニノミヤさんのしなやかな肢体を上から下まで、舐めるように見つめていました。
そして、気づいてしまいました。

「あーっ!先生。見回りご苦労様でっすー!」
ドアが開いた音と同時に、なんだかわざとらしいような誰かの大声がカーテンの向こうから聞こえてきて、カーテンの内側はちょっとしたパニックになりました。
オガワさんがニノミヤさんの絵をクルッとひっくり返して元通りの静物画に戻し、ニノミヤさんはあわててワイシャツに袖を通してボタンを嵌め始めています。
オチアイさんとムラカミさんが、スススッとカーテンの陰から出て行き、
「先生、おかげさまで大盛況ですよー。ポストカードもたっくさん売れました。さ、こっちでお茶でもどうです?」
なんて、愛想のいい声を出しています。
その調子のいい声を聞いて、私としーちゃんは顔を見合わせ、プッと吹き出してしまいました。

ニノミヤさんの身繕いも素早く終わり、オガワさんがさりげなくカーテン代わりの布を元に戻し、私としーちゃんはニノミヤさんの絵に見入っていたフリを少しした後、さりげなく振り向きました。
いつの間にか来訪のお客様がまた増えていて、テーブルはほぼ満卓、入口の近くのテーブルでは、オチアイさんとムラカミさんが見回りの先生らしい初老の女性のかたをもてなしています。
「おおっ、カゲヤマうじ。お見えになっていたのか。水くさいでござるよ」
トリゴエさんもお知り合いをみつけたのか、男装の麗人貴族に戻って、お芝居口調の大声を出しながらそちらに駆け寄っていきました。
でも、その口調、貴族じゃなくて武士・・・

「すっごく楽しかったです」
しーちゃんとワイシャツ姿に戻ったニノミヤさんが廊下まで見送ってくれました。
「しーちゃんの絵、すっごく嬉しかった。ありがとう」
「ニノミヤさんの絵も本当にステキでした。とくに裏側は、なんて言うか、本当に美しかったです。うらやましいです」
「わあ。ありがとう」
ニノミヤさんが蕩けそうな笑顔で私に握手してくれます。
「それじゃあしーちゃん、また後でね。5時くらいに講堂行って、演劇と友田さんのバンド、一緒に観よう」
「うん。また後でネー」

しーちゃんが明るく手を振ってくれて、私は図書室に急ぎました。
廊下を早足で歩いている間中、ずっと同じことばかりを考えていました。

ニノミヤさん、レオタの下、ノーブラだった・・・
ニノミヤさん、乳首、勃っていた・・・
ニノミヤさん、ハイレグの股布、濡れて色が変わってた・・・
ニノミヤさん、私に見られて、感じてた・・・


しーちゃんのこと 17

2011年6月26日

しーちゃんのこと 15

私が参加している文芸部は、三年生が4人、二年生が3人、一年生が4人という小じんまりな規模の部活動でした。
先輩がたはみんな、おっとりした感じのやさしくてキレイなかたばかりで、部会のときはお菓子とか持ち寄って、まったりと好きな小説や作家さんのお話をする、みたいなのんびりホンワカした雰囲気でした。
でも、去年作った機関誌を見せてもらったら、人気アニメの主人公を借りた二次創作のBLもので、かなりアブナイ描写のあるお話があったり、すごく意味シンな言葉が並ぶ詩が掲載されていたりして、意外とムッツリさんの集まりなのかもしれないな、なんて思いました。
私も人のことは言えないですけど。

文化祭で頒布する機関誌では、私は、見開き2ページ分を埋めるノルマをいただきました。
エッセイでも、小説でも、詩でも、マンガでもイラストでも何でもいい、って言われて、かえって迷ってしまいました。
最初は、夏休みに行ったヨーロッパ旅行の紀行文を書いてみようかと思い、考えがまとまらないまま書き始めたのですが、一通り書き終えて読み返したら、なんだか小学生が書いた遠足の感想文みたいになっていて、ひどく落ち込みました。
そこでウンウン唸りながら構想を練って、今度は、私の大好きなビートルズがアルバムジャケットにして有名になった横断歩道を歩いたときのお話に絞って、自分が好きな曲やそれにまつわる思い出とかとからめて書いてみたら、なんとなくエッセイっぽい感じになりました。

部会のたびに、先輩がたからアドバイスをもらい文章を改め、なんとか締め切りまでに間に合わせることが出来ました。
とくに、去年まで部長だった麻倉さんという三年生の先輩が、絵に描いたようなお嬢様、っていう感じのかたで、いつもたおやかな笑顔で適切なアドバイスをくれて、本当に助かりました。
気恥ずかしかったらペンネームを使っても良い、ということでしたが、自分でもかなりうまく書けたと思ったので、本名で掲載することにしました。

そんなこんなで晴天の空の下、文化祭が始まりました。
一日目はクラスのお教室で、しーちゃんとお揃いの淡いグリーンのエプロンを制服の上にかけ、ヤキソバを焼きまくりました。
お役目の合間にしーちゃんや中川さんたちと他のクラスの展示を見たり、校庭に並んだ屋台で買い食いしたりして文化祭の雰囲気を満喫しました。
さすがに由緒ある学校の文化祭だけあって、外来のお客様もたくさんお見えになっていて、プラカードを掲げた着ぐるみのパンダさんやカエルさんが校庭を右往左往し、小さな子供たちが駆けずり回る人混みの中、ナンパらしく声をかけてくる他校の男の人たちのお誘いを丁重にお断りしつつ、いつもの学校とはまったく違う非日常的な空間を楽しみました。

文化祭初日は午後六時で終了となり、久しぶりにしーちゃんと二人で帰りました。
「さすがに高校の文化祭はスケールが違うヨネー。お化け屋敷も凝ってたし、クイズ大会も楽しかったー」
「ヤキソバも好評で、明日は材料足りなくなりそうだって」
「今日はちょこっとしか部のほうには顔出せなかったから、明日はしっかりお手伝いしなきゃナー」
しーちゃんも私もすっかりコーフンしていました。

「そうそう、なおちゃん。明日、そうだなー、1時から2時くらいの間に美術室に来てネ。なおちゃんにぜひ、見せたいものがあるんだ」
「へー。何?何?」
「それは言っちゃったらツマンナイから内緒だヨー。それにうちの先輩たちもなおちゃんに会いたがってるヨ」
「え?なんで?」
「だってなおちゃん、痴漢を捕まえた我が校の英雄だもん。ワタシの親友です、って先輩たちにいっぱいイバっちゃった」
しーちゃんがニコニコ顔で私の手を取りました。
「だから絶対、来て、ネ?」
「うん」
わたしもしーちゃんの手を握り返しながら返事しました。
「明日は演劇もあるし、友田さんのステージもあるし、楽しみだネー」

次の日は、世間的には休日の日でしたが、朝早くから学校に行き、クラスのお教室に顔を出してから部室に向かいました。
午前中いっぱいは図書室で、バザーのお手伝いや来訪されたお客様のお相手をしました。
愛ちゃんとあべちん、ユッコちゃん、そして曽根っちとカレシの人も、みんな別々にでしたが、遊びに来てくれました。
曽根っちとカレシの人は、ラブラブ真っ只中っていう感じですっごくシアワセそうでした。

午後になって自由時間をもらった私は、美術室に足を向けました。
美術室の扉は、西洋のお城みたいな雰囲気に綺麗に飾られていました。
正面に流麗なレタリング文字で、
『●●女子高校名物!!喫茶 紅百合の城 美術部』
って描いてあります。

その下に、CAUTION!、として、
『男性のみでのご入城は、固くお断りいたします。カップルさんなら可!』
って、ポップな書体の但し書きが貼ってありました。

入口の荘厳な感じと、名物!!っていう俗っぽい単語とのギャップが可笑しくてクスクス笑いながらドアを開けました。
「いらっしゃませぇぇ~~」
複数の女の子たちの無理矢理揃えたような華やいだ声に迎えられました。

室内は、少し薄暗い感じで、真っ白なクロスをかけたテーブルが数卓置かれ、それぞれにLEDの青い光が灯っています。
窓や壁には、ステージの緞帳のようなエンジ色の光沢のある布が何枚も垂れ下がり、その間に展示品の絵画や彫刻がまるで美術館のように、下から白い光を当てられて飾ってありました。
天井の蛍光灯も隠されて、代わりにシャンデリア風の照明や豆電球が吊るしてありました。
ゆるやかにたなびいているモーツアルトのピアノ曲。

何よりも驚いたのは、美術部員らしい人たちの衣装。
ざっと見回してお客様らしい人たちが10数人、今日は休日ですから思い思いの私服を着て、テーブルでお茶を楽しんだり、展示物を熱心に見たりしています。
全員女の子ばかり。
そのお相手をされているのが美術部員のかたたちだと思うのですが、そのかたたちの衣装がスゴイんです。

本格的なフレンチメイド服の人、ベルバラみたいな中世風衣装の人、タカラヅカ風男装の麗人、ピンクのナース服、裾が大きく広がったお姫様ドレス、人気アニメのセーラー服コスプレ・・・
ドアを閉めるのも忘れてしばしたたずんでしまいました。

「あっ、なおちゃん!来てくれたんだっ!」
私が入口で呆然としていると、奥から声がかかり、黒地に青のフリフリがキュートなゴスロリドレスを身にまとったニーソックスの女の子が、私のほうに駆けてきました。
「しーちゃんっ?」
「えへへー。前になおちゃんのお母さまにいただいたこのドレス、人前で初めて着ちゃった。どう?似合う?」
「うん。すっごくカワイイ。へーー。すっごく似合ってる!」
私の母は、以前からしーちゃんには絶対、ゴスロリが似合うと主張していて、私たちがこの高校に入学が決まったとき、お祝いにって、3人ではるばる都心までお買い物に出かけ、母が見立ててプレゼントしたものでした。
買ったその日に、私と母の前では着て見せてもらったのですが、学校の美術室でその姿を再び見るとは、思ってもいませんでした。

「しのぶさん、大きな声をお出しになって、はしたないわよ?」
艶やかな白のローブデコルテにレースのショールを纏ったスタイルの良い女性が、優雅な足取りで私たちのところへ近づいてきました。
「ごめんなさい。オガワお姉さま。ワタシ、ついはしゃいでしまって・・・」
しーちゃんもお芝居っぽく返しています。
「こちらがアナタのご学友のモリシタさまなのね。しのぶさん、ワタクシにぜひご紹介してくれませんこと?」
オガワお姉さま、と呼ばれた女性が私を見つめてニコッと笑います。
「レディたち、何をそこでコソコソやっているんだい?」
盛大にお芝居がかった声を出しながら近づいてきたのは、タカラヅカ風男装の麗人の人でした。
「あ、トリゴエお姉さま。ちょうどいいところへいらしたワ。こちらが先日お話していたモリシタさんですの」
しーちゃんは、半分吹き出しながらも、お芝居っぽく返しています。

しーちゃんが私の耳に唇を近づけてささやきます。
「ごめんネ。この空間は上流貴族の社交パーティっていう設定なのネ。だからああいうお上品ぶったしゃべり方が義務づけられてるの。テキトーに合わせといて、マリみてみたいな感じで」

私の耳からお顔を離したしーちゃんが先輩がたのほうへ向いて言いました。
「みなさん、ご紹介します。こちら、ワタシの親友のモリシタナオコさん。モリシタさん、こちら、二年生のオガワサトミお姉さま」
オガワさんが一歩前に出て、レースの手袋をした右手を差し出してきます。
「おウワサはかねがね、おうかがいしていましたわ。小川です。お会いできて光栄だわ」
私もオガワさんの手を軽く握り、
「こちらこそ、お会いできて光栄です。よろしくお願いします」
その場の雰囲気に合わせるつもりで、バレエの演技が終わったときにやるレヴェランス、片脚を軽く後ろに引いて、もう一方の脚の膝を曲げるお辞儀の動作、をスカートの布をちょこっとつまんで軽い感じで付け加えると、みなさんのお顔が、おぉっ!っていうふうになりました。

「こちらは、三年生のトリゴエキヨミお姉さま」
男装の麗人の人です。
S字を横にしたようなお鼻の下のおヒゲは、墨か何かで肌に直接描いているようです。
「アナタは勇敢な女性だとしのぶさんから聞いています。それにノリもいいようだ。はははは」
トリゴエさんがお芝居笑いをして、私の右手を強く握ってきました。
私はまたご挨拶してレヴェランス。

「そしてこちらが二年生のニノミヤクリスティーナお姉さま」
いつの間にか、しーちゃんの右横にもう一人女性が立っていました。
私より5センチくらい身長が高くて、ふうわりした柔らかそうな髪を両肩に垂らした瞳の大きなキレイな女性。
この人が・・・

お顔から視線を落としていくと、ニノミヤさんは、男物らしい大きめの白い長袖ワイシャツを腕まくりして着ていました。
胸元のボタンが3つはずれていて、その下に大きめに開いた襟ぐりの白い肌と水着と思われるグリーンの布地が見えます。
ザックリしたシャツのシルエットのため、バストはあまり目立ちませんが、充分に大きそう。
シャツの裾が膝上10センチくらいまでを隠して、その下からスラっとした白い生脚が見えています。
足元は、黒い皮のショートブーツ。
すっごくセクシー。

「はじめまして。二宮です。おウワサはしのぶさんからいろいろうかがっていますわ。今日、お話出来るのをとても楽しみにしておりましたのよ」
鈴を転がしたような、という形容詞がまさにピッタリくる、可愛らしいお声でそう言われ、なんだかドギマギしてしまいました。
「森下直子です。今日はお招きいただいてありがとうございます」
ニノミヤさんの右手をしっかり握って、レヴェランスも一番丁寧に決めました。

「はじめましてではないよ、クリス。モリシタさまは、春にしのぶさんと一度ここに来ている。そのときキミもお会いしたはずさ。ボクは憶えているよ」
「まあ、立ち話もあれだから・・・おお、ちょうどあそこのテーブルが空いている。あちらでゆっくりとお話しようではないか」
男装のトリゴエさんが相変わらず芝居ッ気たっぷりな調子でみんなを促し、お部屋奥の大きな丸いテーブルに向かいました。
ニノミヤさんが私の椅子を引いてくれて、5人でまあるくなって腰掛けました。

「今日は、モリシタさまがいらっしゃると聞いていたので、特別に用意させたものがあるの。どうぞ召し上がって」
オガワさんがそう言ってから、近くに居たナース服の人に何か言うと、美味しそうな苺のミルフィーユと紅茶がテーブルに運ばれてきました。

おしゃべりは、私が痴漢を捕まえたときのことが中心でした。
おしゃべりの間、お芝居口調を崩さなかったのはトリゴエさんだけで、他の人たちは、普通の口調に戻って興味シンシンでいろいろ聞かれました。
おしゃべりしている間も、ナース服の人やメイド服の人、ベルバラの人などが入れ替わり立ち代りご挨拶に現われ、トリゴエさんやオガワさん、しーちゃんが誰かに呼ばれて途中で席を立つと、すかさず他の人がやって来て座ってまた質問されたりと、かなり忙しくしゃべらされました。

でも、美術部の人たちはみんなノリが良くて、それでいてどこかしらお上品な感じで、みんな仲が良さそうで、私はすっごく好印象を持ちました。


しーちゃんのこと 16

2011年6月25日

しーちゃんのこと 14

駅員さんが数人やって来て、一番偉いッぽい人が、駅の事務室に行こう、と痴漢の人に言っているようでしたが、痴漢の人は頑なに拒否しているようでした。
痴漢の人は、今は、体格のいい駅員さん二人に両脇からガッチリと腕をとられていました。
その間に別の駅員さんから、私とカップルさんが事情を詳しく聞かれました。

やがてホームに制服姿のケーサツの人が三人現われ、二人が痴漢の人の腕をしっかり掴み、駅前の交番にみんなで移動しました。
私がいつも使っている改札口とは反対側の改札口前にある交番でした。
愛ちゃんもついてきてくれました。
「なおちゃんのお家に電話して、お母さまにも伝えておいたから。すぐ行くって」
「ありがとう」
本当に愛ちゃんは、頼りになります。
「愛ちゃん、ごめんね。陸上の番組、始まっちゃう」
「いいよいいいよそんなの。ケーサツ終わるまで、なおちゃんと一緒にいてあげるから」
私はまた、涙腺が緩んできてしまい、困りました。

交番では、痴漢の人は奥のお部屋に連れて行かれ、私とカップルさんは、婦警さんからもう一度事情を聞かれました。
愛ちゃんは、心配そうに寄り添っていてくれて、ずーっと私の手を握っていてくれました。
サラリーマンさんは、たとえ裁判になっても目撃者としていつでも証言する、っておっしゃってくださいました。

婦警さんは、私のスカートのさわられていたとこらへんにテープみたいのを貼って、布地の繊維を採取していました。
痴漢の人の指先、爪とかから同じ繊維の破片みたいのが出れば、ほぼ100パーセント有罪なんだそうです。
そうしている間に父と母が車でやって来ました。
父は、珍しく早く帰ってきていたそうで、カップルさんに何度も何度もお礼を言っていました。
両親の顔を見て心底ホッとして、だいぶ気持ちが落ち着いてきました。

カップルさんは、沿線にある同じ会社にお勤めしているそうなのですが、同僚さんたちには内緒でおつきあいしているので、
「今日の騒ぎを同僚の誰かに見られていたら、ちょっとヤバイかもしれないなー」
「でも、そろそろ結婚するつもりだから、バレたらバレたで、それがきっかけになるわよ」
なんて、笑っていました。
なんだかすっごくさわやかな、仲睦まじいカップルさんでした。
ちなみにOLさんのほうが3つ年上なんだそうです。

私は、男性もヘンな人ばっかりじゃなくて、このサラリーマンさんみたいにちゃんとした、カッコイイ人もいるんだな、なんて、ちょっとだけ男性全体を見直したりもしました。

ケーサツの取調べが終わって、カップルさんたちに何度もお礼を言って連絡先を交換してから車に乗り、愛ちゃんをお家まで送って、愛ちゃんのご両親にご挨拶とお礼をして、9時ちょっと前に我が家に戻りました。

痴漢されたことは、すっごくショックでトラウマが甦っちゃうんじゃないか、ってビクビクしていたのですが、今回の痴漢事件は、あんまり後を引きませんでした。
たぶん、みんながすっごく私の行動を褒めてくれたから。

両親からは、怖がらずによくやったと褒められて、愛ちゃんが連絡してくれたらしい、やよい先生からもその夜にお家にお電話をいただいて、盛大に褒められました。
「あたしの言ったこと、ちゃんと憶えていてくれて、実行したんだね」
って言ってくれたときは、嬉しくて泣きそうになりました。

うちの学校の生徒の誰かが、ちょうどあの現場に居合わせていたらしく、翌日の学校でも、うちの生徒が痴漢を捕まえたらしい、と早くもウワサになっていました。
そのときは、その捕まえた生徒が誰だかはまだわからないままで、私もその話題になると、誰なんだろうねー、なんてとぼけていました。
自分から言い出すのがなんだか恥ずかしかったんです。

その日の放課後、担任の先生に呼ばれて、職員室で簡単に事情を聞かれました。
一応ケーサツから学校にも連絡が来たみたいでした。
その後、図書室当番をした帰り道、しーちゃんにだけはお話しました。
しーちゃんもすごく褒めてくれて、私は、なんだか恥ずかしいのでみんなには内緒にしてくれるように頼んでおいたのですが、月曜日の朝、担任の先生があっさりバラしてしまい、クラスのみんなが休み時間に私の席のところに来て、口々に褒めてくれました。

実際に捕まえたのは私ではなく、あのステキなサラリーマンさんなのだけれど・・・

そして、このお話には思わぬオチがつきました。

後日、母がケーサツの人から聞いたところによると、捕まった痴漢の人は、ずっと黙秘をしていたらしいのですが、持っていたカバンを調べたら、どうやら望遠レンズや赤外線レンズで盗撮したらしい、どこかの民家やマンションでの女性の入浴姿や着替えの写真が何枚か見つかったのだそうです。
その後、私のスカートの布地の繊維成分が痴漢の人の爪から検出され、私への痴漢行為も確定しました。
余罪がありそうなので家宅捜索したところ、自分で盗撮したらしいビデオや写真がパソコンとかから大量にみつかったらしいです。
痴漢行為を書きとめた日記みたいのもあったみたい。
盗撮していたのは、全部あの鉄道の沿線のお家やマンションで、そういったことの常習犯だったみたいです。

そしてなんと、この痴漢の人は、私が通っている高校の3つ先の駅にある偏差値高めで進学校として有名な男子高の化学の先生だったのでした。
沿線周辺ではかなりの話題になって、地元の新聞にも結構大きく記事が載ったほどでした。
もちろん、新聞に私の名前は出なかったのですが、少なくとも私のクラスでは、私がその被害者っていうことはすでに知られていました。

記事が出て、一週間くらい後になって、しーちゃんがしーちゃんのお姉さん、うちの学校の生徒会長さん、から教えてもらったお話です。
その男子高のある生徒もその日、たまたま現場に居合わせていて、その男子高でも翌日、化学教師の誰々があの女子高の生徒を痴漢して現行犯で捕まった、っていうニュースが大々的に広まりました。
いつの間にかそのお話にどんどん尾ひれが付いて、その女子生徒が教師の手をグイッとひねり上げて駅員に突き出した、とか、ひねられて教師の右腕の関節がはずれた、なんていう大げさなお話にまでなり、あの女子高つえー、こえー、ってことになって、その男子高生徒と合コンを予定していた、うちの高校の先輩たちに何件も、合コンキャンセルの連絡が相次いだらしいです。
あと、その化学教師は、ネチネチ陰険で粘着質な性格だったらしく、その男子高の生徒からの評判もあまり良くなかったとか。

確かに、その新聞記事が出てからしばらくは、休み時間に知らない先輩たちが私のクラスを訪れて、痴漢捕まえたのってどの子?ってヒソヒソ聞いていたみたいです。
私は、そんな大げさなお話になっているなんてぜんぜん知らず、注目されるのがひたすら恥ずかしくて、ひたすら気づかないフリをしていたのですが・・・
そんな感じで、私は校内で、ちょっとした有名人になってしまっていました。

9月末の中間テストが終わると、その後は体育祭、遠足、文化祭とビッグイベントがつづき、学校内全体が活気づいていました。
とくにこの学校の文化祭は、二日間に渡って大々的に行なわれ、合唱や演劇など毎年趣向を凝らした演目が近隣の一般の人たちにも評判が良く、外来のお客様も多数訪れる地域の一大イベントになっていました。
普段は女子ばかりの学内に、身内以外の男性がたくさん訪れてくる唯一の機会でしたから、慢性のカレシ欲しい病にかかっている大多数の女の子たちがソワソワ盛り上がって、学校全体のテンションが日に日に上がっていくのがわかりました。

私たちのクラスでは、クラスのお教室でヤキソバ喫茶をやることになりました。
お教室内では火が扱えないので、ホットプレートを持ち寄ってヤキソバを作り、ついでにコーヒーや紅茶も出す、ということで、私としーちゃんは、一日目の調理係になりました。

私が所属している文芸部では、機関誌の発行と、図書室で古本のバザーをやります。
中川さんと山科さんがいる演劇部は、講堂のステージで三年の先輩が脚本を書いたオリジナルの演劇をやるのですが、中川さんたち一年生は全員裏方さんで、まだステージには立てないそうです。
軽音部に入った友田さんは、3人組のロックバンドを組んで最終日のステージで2曲歌うそうです。
しーちゃんの美術部は、美術室に部員全員の作品を飾り、喫茶室をやりながらCGで作った絵ハガキなども売るそうです。

文化祭が近づくに連れ、私もクラスのお友達も、毎日部室に顔を出す生活に変わっていきました。
放課後は、クラスでの文化祭準備をしてから、それぞれが所属する部室に向かい、遅くまで部での準備に励むという忙しい日々がつづき、しーちゃんと一緒にまったり下校出来ない日々が何日もつづきました。


しーちゃんのこと 15

2011年6月19日

しーちゃんのこと 13

二学期が始まって少し経ったある木曜日の夜のこと。
バレエ教室のレッスンを終えた私は、愛ちゃんと一緒に帰宅するために駅に向かっていました。
二人、別々の高校の制服姿でした。

「あべちん、はっきりお断りしたみたいだよ」
「へー」
「相手の男、逆ギレ気味だったらしいけど、今後もしヘンなことしたら、あんたの恥ずかしいメール全部、プリントアウトして学校の掲示板に貼り出すからね、って言ってやったら、死ね!ブス!って子供みたいな捨て台詞吐き捨てて、駆け出してったって。なんだかねー」
愛ちゃんが苦笑いを浮かべて教えてくれました。

お教室の発表会が近いため、その準備をお手伝いしていたので、いつもの時間より一時間くらい遅くなって、ターミナル駅に着いたときは7時を少し回っていました。
母にはあらかじめ言っておいたので、門限的な問題はないのですが、別の問題が起こっていました。
駅が大混雑。
2時間くらい前に沿線で人身事故があったらしく、運転再開された直後のようです。
「すごいねー」
「こんな混雑、珍しいねー。乗れんのかなー?」
「ちょっとどっかで時間潰してく?」
「あ、でもあたし今日、8時から絶対見たい番組があったんだ。陸上の大会の総集編」
「そっかー。じゃあ乗っちゃおうか?」

ホームもギッシリ。
こんなに混んでると痴漢とか出そうだから、女性専用車両まで行こうということになったのですが、ホームを進むのもままなりません。
それでも人をかき分け進んでいるうちに、電車がホームに到着しました。
ギッシリ満員状態で、どう見たってこれ以上、乗り込むことは出来そうにありません。
でも、電車のドアが開くと、思った以上にたくさんの人が降りてきました。
ターミナル駅なので、乗り換えのお客さんが多いのでしょう。
ゾロゾロ降りる人の波が途切れると、今度はホームから電車の入口へザザザーッと人が流れ込みます。
人波に押され、私たちも近くのドアに吸い込まれるように飲み込まれてしまいました。
女性専用車両まであと2両というところでした。
愛ちゃんもいるから大丈夫、と思っていたら、いつの間にか隣にいたはずの愛ちゃんの姿が見えなくなっていました。

私は、電車の連結部分のドア横の壁にからだを押し付けられていました。
左手で持っているスクールバッグが壁と自分のからだの腰の辺りの間に挟まれてクッションみたくなっています。
何も持っていない右手は、とりあえず壁にべたっとつきました。
私の左右横は、同じような姿勢の中年サラリーマン。
左肩あたりの背後からぎゅうぎゅう押され、右肩のあたりにかろうじて少し空間がありました。
首を右にひねって見ると、見えるのは誰かの肩や背中ばかり、ドアの窓からの景色さえ見えず、いわんや愛ちゃんの姿をや。
私の右後ろには、OLさんらしいグレイのスーツ姿の女性の背中が見えました。

私が乗り込んだのは、通勤通学時間だけ走っている快速でした。
バレエ教室のあるターミナル駅を出ると、途中駅を二つとばして私の降りる駅まで止まらずに行きます。
こんな混雑ですから、いちいち駅に止まるより一気に走ってくれたほうが時間も短かく済んで助かるかな。
これは、ある意味ラッキー?
そんなことを考えていたら、電車が動き始めました。

電車が揺れるたびに、背後からぎゅうっと押されて、からだが壁に押し付けられます。
さっきから私のお尻、臀部左側に何かがピタッと押し付けられていました。
誰かのカバンか太腿かな?
最初はそう思っていたのですが、そのうち、その押し付けられたものがサワサワと動き始めました。
撫ぜるように、軽く掴むみたいに。
手のひら・・・

痴漢!
一瞬、パニックになりました。
そのスカート越しにお尻を這い回る手の感触は、間違っても気持ちいいなんて種類のものではなく、ゾワゾワと悪寒が何べんも背筋を駆け上ります。
トラウマになっている、あの日の感触にそっくり。
私は、一生懸命腰を引いて、その手から逃れようとしますが、その手はぴったりとお尻に貼り付いて、ますます大胆に動いてきます。
怖い。
助けて。

そのとき唐突に、私がトラウマを受けた後、バレエ教室のやよい先生にご相談したとき、言われた言葉を思い出しました。

「そこでその男に何の負い目も背負わさずに逃がしちゃうと、次また絶対どこかで同じことするのよ、そのバカが」
「それで、また別の女の子がひどい目にあっちゃう可能性が生まれるワケ」
「そのときに大騒ぎになれば、たとえそいつが捕まらなくても、騒ぎになったっていう記憶がそのバカの頭にも残るから、ちょっとはそいつも反省するかもしれないし、次の犯行を躊躇するかもしれないでしょ?」
「もし、万が一、また同じようなことが起きたら、絶対泣き寝入りしないでね。他の女性のためにもね。なおちゃんならできるでしょ?」

逃げちゃだめ。
やよい先生とのお約束、守らなきゃ。

痴漢の対処法は、やよい先生がバレエの合間に教えてくれていました。
大声をあげる。
足を思い切り踏んづける。
さわっている腕を掴まえてひねるようにしながら高く上げる。

足を踏んづけようにも、自分の足もほとんど動かせない状態ですし、私の後ろにある足が痴漢の足とは限りません。
迷っているうちに、お尻を這い回る手は、お尻のワレメのあたりをスリスリし始めました。
まだ電車が走り始めて2分くらい。
次の駅に着くまであと4~5分間もこのままの状態でいるのは耐えられません。

なんとか首を曲げて、左肩越しにいるであろう痴漢の顔を見てやろうと思うのですが、左肩を強く押されていて首が曲げられません。
仕方ないので、反対側の右後方に首をひねりました。

グレイスーツのOLさんの背中肩越しに、OLさんより20センチくらい背の高い、紺のスーツ姿の若いサラリーマンさんが視線を下に落として、こちらを向いていました。
髪をちょっと茶色っぽく染めていて、けっこうヤンチャそうなイケメンさんでした。
OLさんの左手が脇からそのサラリーマンさんの背中に回っていて、OLさんがサラリーマンさんにもたれるように立っているので、二人は恋人同士、カップルさんなのかもしれません。

そのサラリーマンさんがフッとお顔を上げて、私と目が合いました。
サラリーマンさんが私の目をじっと見て、声には出さず、
「ち・か・ん・?」
ていう形に、問い質すようにゆっくり口を動かして、少しだけ首を横に傾けます。
私は、その人の目を見ながら小さくうなずきました。
背の高いあのサラリーマンさんからは、私がさわられているお尻のあたりがきっと見えているのでしょう。
そこに貼りついた手は、今度はスカートの布地をつまんで、ソロリソロリとまくりあげようとしていました。

もうがまんできませんでした。
サラリーマンさんと目があったことで、勇気も湧いてきました。
首を正面に戻して、左手を掴んでいたバッグから離しました。
バッグは私のからだと電車の壁に挟まれているので、下に落ちることはありませんでした。

やめてくださいっ!って大声で叫ぶと同時に、痴漢の腕を掴もう。
そう決めました。

お尻側のスカートの布がスルスルと上に持ち上がっていくのがわかりました。
もう猶予は、ありません。
痴漢の手が中に侵入してきたりなんかしたら・・・

一回深く息を吸って、
「やめてくだいっ!」
ありったけの声をはりあげたとき、
「こいつ、痴漢ですっ!」
後方からも男性の大きな声が聞きこえてきました。
あのサラリーマンさんが、誰かの手首を掴んで高く上に上げていました。
その瞬間、私のスカートも強く引っぱられるようにまくり上げられちゃったみたいでした。

気がつくと、こんなギュウギュウの満員電車のどこにそんな余裕があったのか、私たちのまわりだけ20センチくらいずつの空間が空いていました。
その空間の中にいるのは、私とサラリーマンさんとOLさんのカップルと痴漢の犯人。
サラリーマンさんは素早く痴漢の人を背後から両腕をとって羽交い絞めにしていました。
痴漢の犯人は、白髪まじりで中背、痩せ型の、一見品の良さそうな中年の男性でした。
着ている麻っぽいスーツがちょっとくたびれている感じもしました。

「何するんだっ!冤罪だっ!」
痴漢の人が大声を出して足をジタバタさせています。
「アナタ、お尻さわれてたのよね?」
グレイスーツのOLさんが聞いてきます。
「は、はいっ!」
私は上ずった声をあげて、大きくうなずきました。
「おまえがこの女の子のお尻さわってたの、俺は見てたんだよっ!」
サラリーマンさんが暴れる痴漢を恫喝するように、大声を出します。
「こんなに混んでんだ。もしさわったとしたって不可抗力だ!」
痴漢の人も負けてはいません。
「不可抗力でスカートつまんでまくったりするかい、ボケッ!いい年こいて、恥を知れ!」

まわりの乗客たちが、ある人は驚いたように、ある人は好奇の目で、私たちをジロジロ眺めてきます。
やあねえー、とか、だせーなー、とかヒソヒソ声も聞こえてきます。
みんなに注目されて、すごく恥ずかしいのですが、それ以上にコーフンしていました。
もちろん性的な意味ではなく、何て言うか、正義感的に。

「次の駅でケーサツに突き出すから、覚悟しとけっ!」
サラリーマンさんがもう一度吠えたとき、電車が減速を始めました。
「アナタも一緒に降りてね、面倒だけど」
OLさんがやさしく言ってくれます。
「は、はい。ありがとうございます」
OLさんは、お化粧がちょっと濃い目でしたが、キャリアウーマンぽいお仕事が出来そーな感じのキレイな人でした。

駅のホームに降りると、OLさんが走って駅員さんを呼びに行き、サラリーマンさんは痴漢の人を羽交い絞めにしたまま私と二人で立っていました。
痴漢の人は、観念したのか不貞腐れたのか、大人しくなっていました
ホームに居た人たちが、何事か?みたいな感じで遠巻きに眺めてきます。
愛ちゃんがどこからか駆け寄ってきました。
「痴漢?こいつ?うわー、災難だったねー」
心配そうに私の肩を抱いて、羽交い絞めされている痴漢の人を睨みつけてくれます。
「うん。でも、この人が捕まえてくれたの・・・」
私は、愛ちゃんのお顔を見て、一気に緊張が緩んだみたいで、目頭がジンジン熱くなってきてしまいました。


しーちゃんのこと 14

2011年6月18日

しーちゃんのこと 12

放課後の美術室で強制的にヌードモデルをさせられる妄想、がすっかり気に入ってしまった私は、6月のムラムラ期はずっと、その妄想ばかりで遊んでいました。
妄想の中の美術部先輩がたは、回を重ねるごとにどんどんどんどんイジワルになっていきました。
とんでもなくえっちなポーズを無理矢理とらされたり、写生も兼ねて、と校庭の人目につかない木陰に裸のまま連れ出されたり・・・

ニノミヤ先輩たちとのその後について、しーちゃんからの続報はありませんでした。
あの後、もう一度6人でヌードクロッキー会をやったのか?
すっごく気になっていたのですが、しーちゃんから言ってこない以上、そんなことを唐突に私から聞くのもなんだかいやらしいかな、って思い、聞けないでいました。

そうこうしているうちに学期末のテストが近づき、それが終わるともう、高校生になって最初の夏休みが間近になっていました。

あと数日で夏休みというある日の放課後。
いつものようにしーちゃんと下校しようと一緒にお教室のドアを出たところで、背後から誰かに声をかけられました。
「アナタたち、本当に仲良しなんだねー。いつも一緒じゃん?」
同じクラスの浅野さんでした。

浅野さんとは、ほとんどお話したことはありませんでした。
浅野さんは、中間テストが終わった後、突然、綺麗なウェーブの長い髪を明るめな茶色に染めてきて、クラス中を驚かせた人でした。
先生からは、少し注意を受けたみたいでしたが、テストの成績は優秀だったらしく、それ以上のお咎めはなかったみたい。
学校のバッグの他にブランドのロゴが入った大きなバッグをいつも持ってきていました。

学校には内緒でこっそり雑誌の読者モデルをやっていて、あのバッグには着替えが入っていて、放課後にどこかで私服に着替えて繁華街に遊びに行っている・・・
そんなウワサもある、うちの学校にしては珍しい、遊んでいる系、派手め系の超美人さんでした。
でも、別に怖い雰囲気ではなくて、言葉遣いはちょっと上からっぽいけれど、どちらかと言うと気さくな感じの人でした。
もう一人、同じような感じの本多さんという、これまた美人さんなクラスメイトとよく一緒に行動していました。

「ヒマだったらでいいんだけどさ・・・」
浅野さんが私としーちゃんの顔を交互に見ながら、長い睫をパチパチさせます。
「アナタたち、合コン参加する気、ない?」
思いがけない提案に、私としーちゃんは顔を見合わせます。
「先輩に頼まれちゃってさー。あたしたち、今度の土曜日、夏休み初日ね、ちょっと大規模な合コン企画してんだけど、なるべくカワイイ子、集めてくれって言われちゃってんのよー」
「アナタたちくらいなら、男どもも喜ぶだろーなー、って思ってさ。ちなみに相手は大学生と、社会人でも一流どころ」

男ども、って言われたときに、私は反射的にドキッとしてしまい、たぶんおそらく、一瞬、露骨にイヤな顔をしたんだと思います。

私の右隣に立っていたしーちゃんが左手を伸ばしてきて、私の右腕にスッと絡め、しっかり腕を組んできました。
それからニッコリと浅野さんに微笑みかけて、
「お誘いは嬉しいんだけど、ワタシたち、こういう関係だから、ワタシたちが参加しても男の人たち、しらけちゃうと思うヨー。ネ?」
もう一度ニッコリ浅野さんに笑いかけてから、同意を求めるように今度は私に目を合わせてきました。

「あ、そうだったの?」
浅野さんの大きな瞳がいっそう大きく見開いて、呆気にとられたようなお顔になりましたが、すぐにキレイな笑みに戻りました。
「アナタたち、ガチ百合なんだー?それじゃあしょうがないねー。他あたるかー」
浅野さんは、拍子抜けするほどあっさりとあきらめてくれたみたいです。
そして、また私としーちゃんの顔を交互に見て、長い睫をパチパチさせました。
「アナタたち、イイ感じなんだけど、男に興味ないんじゃーしょうがないねー。お幸せにねー」
浅野さんは、すっごくキレイな微笑を私たちに投げかけてから、右手をヒラヒラ振り、本当にモデルさんみたいな優雅な足取りで、玄関ホールのほうへ去って行きました。

「しーちゃん、あんなこと言っちゃって、いいの?」
浅野さんを見送って、私たちもゆっくりと廊下を歩き始めました。
腕は組んだままでした。
「なおちゃんがなんだか、本当にイヤそうだったからサー、助けなきゃ、と思って咄嗟に言っちゃった」
しーちゃんが照れたみたいにニッって笑います。
「それに、ワタシたちが仲良しなのは本当のことだし」
「しーちゃん、ありがとう」
私は、すっごく嬉しくなって、心を込めて言いました。

「合コン、ってなんだかめんどくさそーだよネー。男がみんなギラギラしてそーで」
しーちゃんがイタズラっぽく笑いながら、私の顔を探るように覗き込んできます。
「それにしてもなおちゃんて、本当に男の人、苦手そうだよネー?」
「うん・・・」
しーちゃんになら、理由、話しちゃってもいいかな・・・
ちょうどそのとき、玄関ホールの靴脱ぎのところに着いてしまったので、どちらからとも無く組んでいた腕をほどき、靴を履き替えました。
しーちゃんは、それ以上、なんで?とか、一切聞いてきませんでした。

「最近、美術部は、どう?」
駅に向かう道で、さりげなくしーちゃんに聞いてみます。
「うん。コンピューターグラフィックがすごーく便利で面白くって、ワタシもずいぶん使いこなせるようになったヨ。夏休みになったらペンタブっていうパソコンにつなぐペンも買うんだ。そしたらマンガもパソコンで描けるんだヨ」
しーちゃんは、とても楽しそうにパソコンでのお絵かきの方法を詳しくお話してくれました。
しーちゃんにCGを教えてくれているのは、確かニノミヤ先輩だったはず・・・

「それって、ニノミヤ先輩が教えてくれてるんでしょ?」
お話の区切りを待って、思い切って聞いてみました。
「うん。ニノミヤ先輩は教え方が上手でネー・・・」
それからしばらく、ニノミヤ先輩は優しくっていい人だ、っていうお話になりましたが、ヌードクロッキー会のその後やニノミヤ先輩の露出症の話題は出てきませんでした。

しーちゃんが遭遇したニノミヤ先輩の一件は、先輩たちが新入生のしーちゃんをからかうために仕組んだ、一回きりの手の込んだオトナなイタズラだったのかもしれません。
私は、もっとえっちっぽい進展を期待していた分のがっかりした気持ち半分と、なぜだかホッとしている気持ちも半分の複雑な気分で、本当に楽しそうに説明してくれるしーちゃんのお話を黙って聞いていました。

その年の夏休みは、8月の頭から二週間、家族でヨーロッパに旅行に行くことになっていました。
私にとっては、初めての海外旅行です。
母の大学の頃のお友達がイギリスとドイツにいるので、その人たちのお世話になりつつ、ヨーロッパ一帯をのんびりと観光することになっていました。
家族で、と言っても、普通だったら父はそんなに休暇が取れないはずなのですが、タイミング良く、と言うより無理矢理、私たちのスケジュールに合わせてフランスへの出張を入れて、二週間のうち10日くらいは、一緒に行動できるようになりました。
それと、父の妹さんの涼子さんとその旦那さま、私が中二のときのトラウマ事件のときにワインを飲ませてくれた、まあるい体型のテレビ局のディレクターさん、も同じ時期にイギリスに居るので、何日か合流する予定でした。

初めての海外旅行にワクワクな私は、その準備で洋服やら何やらのお買い物をしたり、後顧の憂い無く遊び倒すために夏休みの宿題、さすがに進学校だけあって膨大な量でした、を片付けたりで、夏休み前半から、しーちゃんやクラスのお友達とは、ほとんど遊べない状態がつづきました。

二週間のヨーロッパ旅行を満喫した私は、山ほど買ってきたお土産を渡す、という名目で、久しぶりに中学校時代のお友達を我が家に呼んでお泊り会をすることにしました。
夏休みも残すところあと10日となった蒸し暑い日に、愛ちゃん、曽根っち、ユッコちゃん、あべちん、そしてしーちゃんの5人が我が家に勢揃いしました。

愛ちゃんとは、バレエ教室のたびに会っていたので、お互いの近況は知っていました。
愛ちゃんは、高校でもやっぱり陸上部に入って、今は走り高跳びの記録更新に夢中なんだそうです。
夏の間も練習に忙しかったらしく、キレイな小麦色に日焼けしていました。

ユッコちゃんは、名門水泳部に入って毎日プール三昧。
ピッチリしたタンクトップの隙間からところどころ覗く、競泳水着の形の白い肌がセクシーでした。
胸も少し大きくなったみたい。

曽根っちは、中三のときにおつきあいを始めた一つ年上のカレシと順調に交際をつづけているみたいです。
あべちんからえっち関係のことを聞かれて、言葉を濁していましたが、口ぶりからするともうヤっちゃったみたいでした。
言葉の端々に、そんなことは、たいしたことじゃない、みたいな余裕が滲み出ていました。

しーちゃんも元気そうでした。
「ワタシ、あさってから美術部の合宿で湖畔のペンションに行くんだ。二泊三日だって。テニスもできるらしいヨ」
「へー。しーちゃんの口からテニスなんて、なんだかビックリ」
ユッコちゃんが感心したように言いました。
「しーちゃん、高校行ってから、前より明るくなったよねー?」
あべちんも驚いていました。

「あべちんはねー、夏休み前に2年の先輩から告られて、つきあい始めたんだよー」
愛ちゃんがクスクス笑いながら暴露します。
愛ちゃんとあべちんは同じ公立高校に進んで、クラスは別々でしたが、あべちんが告られた日に愛ちゃんの家を訪ねて来て、聞かされたそうです。
私は、夏休み中はバレエ教室もお休みして愛ちゃんとも会っていなかったので、そのお話は初耳でした。

「でもねー。結局タイプじゃなかったんだよねー」
当のあべちんは、浮かない顔をしています。
「始めは、初めてのことだからワクワクしてたんだけどさー・・・」
「何て言うか、チャラくってさー。顔はまあまあなんだけど、やることなすことガキっぽくて、薄っぺらくて」
夏休み中に3回ほどデートしたのだそうですが、話題はテレビのバラエティ番組の受け売りばっかだし、選ぶ映画はミーハー丸出しだし、カラオケでは裏声で女性歌手の歌ばかり歌うし。
「それで、何かとわたしにさわりたがるんだよねー。3度目のデートの別れ際に無理矢理キスしてこようとするから、突き飛ばして、それ以降連絡とってない」
「何て言うか、結局おまえ、ヤりたいだけ違うんか?って感じでさ。あーやだ!」
あべちんが憤懣やるかたない、って様子でつづけます。
「そしたら、今度はやたらメール送ってきてさ。それがまたキザっぽいキモい文面なんだ。似合わねーよって言ってやりたいけど一切返事してない」
「新学期に学校行って会ったら、はっきりお断りすることに決めました」
あべちんは、らしからぬ真面目な調子でしめくくりました。

そんな感じで久しぶりのワイワイガヤガヤ、楽しい夜通しのおしゃべりでした。
一見、中学校のときとまったく変わらない私たちでしたが、やっぱりそれぞれ少しずつ、オトナへの階段を登っているんだなあ、なんて感じていました。


しーちゃんのこと 13

2011年6月12日

しーちゃんのこと 11

制服を着終えた私は、ベッド脇の姿見の前に立って目をつぶり、4月にしーちゃんと一緒に訪れた夕方の美術室の様子を思い出します。
木造のシックな雰囲気と油絵の具の香り、大きな窓からのやわらかい夕陽としんとした静寂。

私は、美術室のフロアの中央にソファーを背にして立っていました。
私の目前には、美術部の先輩がたが7人。
今ボンヤリと思い出せるのは、4月に行ったとき、説明をしてくれた髪の長い落ち着いた感じのキレイな先輩のお顔だけなので、私の妄想の中の先輩がたは、みんなその人に雰囲気の似た、オトナな感じの人たちでした。
少し迷ったのですが、しーちゃんは参加していないことにしました。
先輩がたはみなさん、思い思いの場所で椅子に座ってスケッチブックを開き、私に注目しています。

「これは美術部のしきたりなんだから。あなたも観念して、さっさと裸になりなさい」
先輩の一人が、決めつけるような厳しい口調で言いました。
しーちゃんのお話とは違って、私の妄想の中の美術部部員の先輩がたは、みんなかなりイジワルそうでした。
「で、でも・・・」
「デモもストもないのっ!決まりなんだから、従ってもらわなくちゃ。グズグズしてると、顧問の先生が来ちゃうわよっ!」
別の先輩がからかうように言います。
実際の美術部の顧問の先生は、妙齢のキレイな女性の先生でしたが、私の妄想の中では、毛深くてマッチョな男の先生、っていうことになっていました。

「わ、わかりました」
私は観念して、まずベストを取りました。
私の敏感な乳首は、すでに盛大に反応していて、白いブラウスの薄い布地をこれ見よがしに隆起させています。
それをなるべく隠すように胸に手をやり、ネクタイをスルスルっと抜きました。
先輩がたの視線が、射抜くように私の上半身に注がれています。
両腕でブラウスの突起がバレないように隠しつつ、震える手で一番上から、ブラウスのボタンを一つずつはずしていきます。
姿見に、そんな私の姿が映っています。

ブラウスのボタンを3つ目まではずしたとき、
「あらーっ。アナタ、ノーブラだったのー?」
先輩の一人から驚いたような声がかかりました。
私はビクッとして、ボタンをはずす手が止まってしまいます。
「うわー、大胆ねー」
「いくらベストで乳首のポッチを隠せるからって、そんな姿でいつも授業受けてたんだー」
「この子、ひょっとしたらかなりのヘンタイさん、かもよー?」
先輩がたがドッと沸きます。

「ほら、早くブラウス取っちゃいなさいっ!」
強い口調で促されて、私のブラウスはボタンが全部はずれ、全開になりました。
「もたもたしてないで、脱いで脱いで」
ブラウスの袖を両手から抜くと同時に、両腕を胸の前で交差しておっぱいを隠します。
「何やってんの?隠しちゃだめでしょ!気をつけっ!」
一番偉いっぽい先輩に睨まれながら言われて、私は両腕を両脇にピッタリくっつけ、直立不動になりました。
「見て見て、両方の乳首がビンビンに尖って、上向いてる」
「見られてるだけで、感じちゃってるのよー」
「なんだか誘ってるみたいな、いやらしい形のおっぱい」
「ちょっとさわっただけで、アンアン悶えだしそうねー。スケベそーな子」
てんでに好き勝手なことを言われても、その恥辱に黙って耐えることしか私には出来ません。

「ねえねえ、この子ノーブラだったじゃん?だとすると、ひょっとして・・・」
「あるかもあるかもー、この子だったらやってそー」
「本当にそうだったら、正真正銘ヘンタイ決定だねー」
先輩がたがわざとこちらに聞こえるように、興味シンシンで騒いでいます。
そして、私は実際、その通りなんです。

「それじゃあアナタ、スカート取る前にそのソファーに座って、ソックスから脱ぎなさい」
リーダー格の先輩に言われて、私はベッドの縁に腰掛けました。
「もうちょっと両脚を開いてっ!まず右の腿を高く上げて、右のソックスから」
上半身を屈めて、なるべく脚を上げないようにしてソックスを脱ごうと思っていた私だったのですが、それは先手を打たれて、早々と禁じられてしまいました。
仕方が無いので言われた通り、右の腿をソックスに手が届く位置まで高く上げます。
当然、スカートの布地も一緒に持ち上がり、両腿の付け根のあたりが露になります。
先輩がたの視線が一斉にソコに突き刺さります。
鏡にもハッキリと、だらしなく開いた濡れているピンクの中身が映りました。
私は出来るだけ手早くソックスを脱ぎ、右足を大急ぎで床に下ろしました。

「やっぱり・・・」
「やっぱり!」
「やっぱりねー」
ヒソヒソ声にかぶせるようなご命令の声。
「はい。次は左のソックスっ!」

私は、同じように左太腿を素早く上げて、ソックスを脱ぎました。
「やっぱりだったねー」
「マン毛、うすぅー」
「この子、本当にノーパン、ノーブラで授業受けてたんだー」
「とんだインラン女ねー」
「信じられなーいっ!」
「はい。ドヘンタイ決定っ!」
先輩たちの表情がどんどん険しくなっていくのがわかりました。

「じゃあ立って、さっさとスカート取って。取ったら隠さないで、気をつけっ!」
リーダー格の先輩の声も一層冷たくなって、ヘンタイ淫乱女を見る軽蔑しきった目つきで睨んできました。
私は、スカートのホックをはずしてその場に落とすと、気をつけの姿勢で姿見の前に立ちました。

「ほらほら、脱いだ服はちゃんと片付けなきゃ。だらしないわねー。さっさとやって!」
その声に弾かれるように、私は先輩がたに裸のお尻を突き出し、脱ぎ散らかした制服を拾い集め、ハンガーに掛けてからまた気をつけの姿勢に戻りました。

「それじゃあ、今日は初めてだから、ゴヤの裸のマヤのポーズをやってもらうわね。アナタ、美術部に入るくらいだから、もちろんご存知よね?」
「は、はいっ!」
私は、両手を組んで自分の後頭部にあてるように上に上げてから、ベッドの足側のほうに重ねて置いたお布団に背中をもたれかけ、両脚はピッタリ閉じたまま枕側に伸ばして寝そべりました。
姿見には私の下半身が映っています。

「そう。それでいいんだけど、アナタの場合は、それじゃあツマンナイわね」
リーダー格の先輩が私のほうに近づいてきました。
「右膝を曲げなさい」
「えっ?」
「右膝よ、右膝。お箸持つほうの側の膝」
言いながら私の右太腿がピシャリと手のひらではたかれました。
「あんっ!」
その痛みに呼応して、伸ばしていた右脚の膝を立てます。
「もっと深く曲げてっ!同じように左膝も」
「は、はい」
ベッドの上で、上半身は腹筋運動の途中、下半身は体育座りのような格好になっています。
「両膝を立てたら、左脚だけそのままソファーにつくように横に倒しなさい」
「えーっ?!」
「エーもビーもシーもないのっ!いちいちうるさいわねぇ!さっさと言われた通りにするっ!」
今度は左腿をバチンとはたかれて、私はおずおずと膝を曲げた形の左脚全体を横に倒していきます。
倒れるにつれて両腿の間のスジが徐々に割れていき、左脚がベッドにつく頃には、パックリと割れて濡れそぼった中身が丸見えになっていました。

「こ、こんな姿をスケッチするんですかあ?」
「何言ってるの?嬉しいクセに。たとえアナタが否定しても、そんなになってるソコ見たら、一目瞭然じゃない。あんまり感じすぎてソファー汚さないでよねっ!」
確かに、私の開いたアソコからは、溢れ出した蜜がトロリと内腿をつたい、ベッドのシーツまで糸を引いていました。

「部員のみなさん。今年の文化祭では、今日のモリシタナオコさんの裸婦画を画集にして、裏でこっそり売り捌く予定です。みなさんはりきって克明に描くように」
リーダー格の先輩が嬉しそうに言って、先輩がたがそれぞれ真剣に、私のあられもない姿を凝視しながら描き始めました。

「ちょっとォ、ユラユラしないでくれる?」
「モデルがフラフラ動いたらうまく描けないじゃない!」
「部長!この子のお下品なアヘ顔、なんとかなりません?創作意欲がそがれますぅ!」
「よだれまで垂らしちゃって、ヘンタイ女はどうしようもないわねっ!」
股間を大きく広げたまま、部員のみなさんに疼く裸体を晒している私は、そのあまりの恥ずかしさにジンジンジンジン感じてしまい、全身はプルプル小刻みに震え、火照ったからだ全体からジワジワと汗が滲み出ていました。
姿見には、そんな私の欲情しきった全裸姿が映っていました。

「やれやれ。見せて見られてコーフンしちゃうタイプだから、こうなっちゃうと収まりつきそうも無いわねえ」
部長と呼ばれたリーダー格の先輩が、心底呆れたみたいに見下しきった声で言いながら、私に近づいてきました。
片手に絵筆を持っています。
「いっそのこと、一度イかせちゃおうか?そうすればグッタリして、フラフラ動くこともなくなるんじゃない?」
そう言って、手にした絵筆で私の全開の左腋をサワッと撫ぜました。
「ひゃんっ!」
絵筆が肌の上を移動して、尖りきった左の乳首をチョコチョ撫ぜ回します。
「ああん、いやん、あふーんっ」
「ちょっと!アナタ、何ていう声出してるの?ここがどこだかわかる?神聖なる美術室なの。よくそんな発情しきった牝猫みたいな声、出せるわねっ!」
部長さんは、言葉とは裏腹に、筆先を右の乳首や脇腹、おへその下あたりまで縦横無尽に動かしてきます。
「あん、ああーんっ」
「いやん、だめ、だめーん」
「うーん、あっあっーんっ!」
私は、からだをクネクネ踊らせて、筆先の愛撫に身悶えています。

部長さんが操る筆先が、私の陰毛を下へ滑り、割れ始めの寸前でピタリと止まりました。
「アナタ、オナニーしたことあるわよね?ううん、こんなにいやらしいからだしてて、ない、なんて言わせないわ」
「あたしは、アナタのこんな汗まみれの汚いからだをさわるのはイヤなの。だからアナタ自分で自分を慰めて、さっさとイキなさい」
「ほら、この絵筆貸してあげるから。アナタが夜な夜なやってるみたいに、部員みんなの目の前で思う存分イキなさい」
「ただし、下品な喘ぎ声はなるべく慎んでちょうだいね。大きな声出すと先生がたがやってくるかもしれないから。みつかったら、あたしたちは厳重注意程度で済むだろうけど、素っ裸でオナニーしてたアナタは、間違いなく退学になるわね」
部長さんは、私のアソコのまわりを焦らすようにコソコソと筆で嬲りながら、蔑んだ目に嘲笑を浮かべています。

「ほら、さっさとやって。時間は15分。終わったら今度はフラフラしないで、ちゃんとモデルやるのよ!」
もう一度左腿をピシャリとはたかれて、二本の絵筆を投げつけるように渡されました。

私は、姿見に全身が映るようにベッドの上にお尻をつき、両膝を立てて大きくM字に開きました。
次から次に溢れ出てくる蜜でビチャビチャになったピンク色の奥が丸見えです。
右手には絵筆を二本。
私の目前には、美術部員の先輩がた7人が、私のアソコに熱い視線をぶつけてきます。

太い絵筆の毛先で、尖った乳首をくすぐります。
「あんっ、あはーん」
細い絵筆の毛先で、プックリ露呈しているツヤツヤのクリトリスをツンツンつっつきます。
「ふんっ、うふーんっ!」
二本の筆の間に乳首を挟んで、思い切りひねります。
「あっつううううぅぅ!」
二本の筆の柄を突っ込んで、アソコを大きくこじ開けます。
「いやーーんっーーーううっーん」
とうとうがまんできなくなって、右手の指二本をアソコに挿し込み、グルグルかき回し始めました。

「やだ。あの子の乳首あんなに伸びるのー?」
「痛くないのかしら。あ、そうか、痛いのがいいんだ。さすがヘンタイ」
「うわっ、オマンコの中がヒクヒク波打ってる」
「あの嬉しそうな顔は何?淫乱そのものって感じぃ」
「なんか小さな声で、見て見て見てもっと見て、って言ってるわよ?女の露出狂も本当にいるんだねー。やだー」
「今度クリスとレズらせてみよっかー?」
「あ、背中がのけぞった!そろそろイクみたいよ!」

頭の中にこだまする先輩がたの罵声が、私をどんどん高みに導きます。
アソコに潜らせた指が激しく内部を蹂躙し、親指の爪がクリトリスを引っ掻き回します。
「ぃぃぃーぅぅんーーんぅぅ、いいーーーんふぅぅーっ!!!」
やがてアソコの粘膜が盛大にどよめいて、頭の中が真っ白になりました。


しーちゃんのこと 12

2011年6月11日

しーちゃんのこと 10

ドキッ!
私は、しーちゃんの無邪気な言葉に内心、大いに動揺していました。
美術室で、みんなの前で全裸になっちゃうような人と私が、似ているって・・・

「でも、実際におしゃべりしてみたら、外見や顔は、そんなに似てなかったけどネ。背なんか、なおちゃんよりもっと高いし」
「でも、なんて言うのかなー、物腰?たたずまい?ちょっとした仕草?みたいのが、なおちゃんぽいかナー、って、あらためて思ったけど」
しーちゃんは、あくまで無邪気に言葉をつづけます。
お話を聞いた限り、ニノミヤ先輩っていう人は、確かに私と似た性癖、と言うか、嗜好を持っているみたいです。
しーちゃんには、そういうのがなんとなくな雰囲気でわかっちゃうのかなあ?
しーちゃんのお顔を上目遣いで盗み見ながら、なんだかすごくドキドキしてきてしまいました。

「ソファーとかを元通りにしたら、ニノミヤ先輩もやっと服を着始めたのネ」
しーちゃんがお話を、唐突に再開しました。
「ワタシ、ニノミヤ先輩が服を着るのを、突っ立ってボーッと見ていたの、それこそ放心状態で」
「そしたら三年の先輩がポンてワタシの肩たたいて、どうだった?って」
「びっくりしたでしょ?って聞くからワタシ、はい、とても、って」
「でもなんだかヒミツめいててワクワクもしない?とかいろいろ聞いてくるのを、ワタシ、ただ黙って首を縦にウンウン振って、うなずくだけだったヨ」

「ニノミヤ先輩がソファーに腰掛けてソックス履いてるのをまだボーッと眺めてたら、三年の先輩が、明日は課題勉強会だから、遅れないようにね、って、もう一度肩をたたかれたの」
「これは、今日はもうあなたは帰りなさい、っていう意味だな、と思って、空気読んで、ワタシはお先に失礼したのネ」
「ワタシがいなくなってから、きっと5人で、今のワタシの反応とかを話題にして盛り上がるんだろうなあ、なんてちょっと思ったけど、ワタシもかなり動揺していたし、気持ちを落ち着かせたくて、早く一人になりたかったから・・・」
しーちゃんは、コップのお水をゴクッと一口飲んで、じっと私を見つめてきました。

「お家に帰って、自分の部屋で、さっき部室でニノミヤ先輩がしたことを思い出していたら、なんだか無性に不安になってきちゃったのネ」
「ニノミヤ先輩は、別にイヤイヤやってるようでも、脅されてやらされてるようでもなかったから、イジメ、みたいなことではないんだと思うんだけど・・・」
「むしろ、裸を見られるのが嬉しい、みたいな雰囲気さえ、ワタシには感じられたんだけどサ・・・」
私の胸が、またドキンと波打ちます。

「もしも、もしもさあ、美術部にはそういう伝統って言うか、しきたりみたいのがあって、部員はみんな、一度は裸婦のモデルをやらなきゃいけない、みたいなルールがあったりしたら、ワタシ、イヤだなー、って思ってサ」
「みんなの前で一人だけ裸になるなんて、ワタシ絶対出来ないから・・・」
「すんごく不安になってきちゃって、そういうのがもしあるんだったら、美術部やめよう、とまで思い込んじゃってサ・・・」
しーちゃんが自嘲っぽく小さく笑いました。

「それで今日、勉強会の後に先輩にこっそり聞いてみたのネ」
「勉強会早めに終わったから、昨日その場にいた先輩、三年のトリゴエ先輩と二年のオガワ先輩を捕まえて、廊下の隅でヒソヒソと」
「トリゴエ先輩とオガワ先輩は、いっつも一緒にいるのネ。すんごく仲いい感じ」
「先輩たち、ワタシがせっかくヒソヒソと話してるのに、聞いた途端に盛大に笑い転げちゃってたヨ」
「美術部にそんなしきたりなんて全然無いし、もちろんニノミヤ先輩へのイジメとかでもなくって、あれはニノミヤ先輩がしたくってしてること、なんだって」
「でも、先輩たちがときどきそういうことをしてるのを知っているのは、ニノミヤ先輩を含めた昨日の5人の先輩たちと、昨日初参加のワタシだけだから、絶対他の部員には言わないように、って固く口止めされたヨ。とくに他の新入部員には絶対に、だってサ」
「ワタシ、ヒミツの悪い仲間に選ばれちゃったみたいだヨ?」
しーちゃんが嬉しそうに笑いました。

「なんでも、去年の部の合宿のとき、その5人グループで一緒にお風呂に入ったんだって。で、ニノミヤ先輩の裸がとてもキレイだったから、冗談半分本気半分でヌードモデルやってよ、って、当時二年生のトリゴエ先輩が熱心に口説いたら、その夜、合宿してたホテルのお部屋で、モジモジ恥ずかしがりながらも、脱いでモデルしてくれたんだって」
「合宿の部屋割もその5人だったから、その後もずっと、その5人だけがヒミツを共有してるんだって」

「ワタシが、ニノミヤ先輩、恥ずかしそうなのはもちろんなんだけど、何て言うか、嬉しそうな感じでもありましたよネ?って聞いたのネ」
「そしたらオガワ先輩が、しのぶちゃんでも気づいてたんだ、ってクスクス笑って、クリスはね・・・」
「あ、クリスっていうのはニノミヤ先輩の名前ネ。正確にはクリスティーナだかクリスティーヌだか。お父さんがイギリスだかフランス人だかで、ハーフなんだって」
「でもそんなにそれっぽい顔ではないんだけど。あ、もちろん、すんごく綺麗な顔であることは間違いないヨ」

「それで、オガワ先輩が、クリスはね、露出症なんだよ。って。裸とか恥ずかしい格好を誰かに見られることが気持ちいいんだって」
「オガワ先輩とニノミヤ先輩は、同じ中学出身の幼馴染なのネ。それで、ニノミヤ先輩はちっちゃい頃からその傾向があったんだって」
「近所の子供たちとお医者さんごっこするときも決まって患者さん役だったし、小学校や中学校のときも、女子だけのお泊り会で王様ゲームとか、負けたら脱ぐのを賭けたゲームしたりして、みんなでクリスをよく裸にしてたんだ。って、オガワ先輩が言ってた」
「そのたんびにクリスったら、恥ずかしいくせになんだか嬉しそうなのよねー。それがまた可愛くってさー。って」
「クリスは、もちろんナイスプロポーションだから、それを見せびらかしたい、っていうナルシスも少し混じってるんだろうけど、それだけじゃないんだろうねー。あれ、絶対ビンビン感じちゃってると思う。なんだかちょっぴりうらやましいから、こっちもなんだかウズウズしちゃって、なおさらイジワルしたくなっちゃうんだよねー・・・って、オガワ先輩がしみじみ言ってた」

「ワタシは、恥ずかしいのは、やっぱり恥ずかしいだけで、気持ちいい、っていうのがよくわかんないんだけど、世の中にはそういう人もいるんだネ?」
しーちゃんが当惑したような、私に同意を求めるような、ビミョーなお顔をして私を見つめてきます。

今にして思えば、このときはチャンスでした。
「実は、私もニノミヤ先輩のその気持ちがわかるの。私にもそういう傾向があるの。しーちゃんに私の裸を見て欲しいの」
って、勇気を出して言えたら、私としーちゃんのお話も、また違った展開になっていたのかもしれません。

でも、その頃もまだ、私はしーちゃんに自分の性癖について、チラッともお話していませんでしたし、オナニーしていることさえもヒミツでした。
しーちゃんと仲良くなればなるほど、しーちゃんが時折見せてくれる性的なことに対する無垢な純粋さや無邪気さと、私がひた隠しにしている、すでに身につけてしまったヘンタイ性や歪んだ妄想癖とのギャップが絶望的に見えて、しーちゃんに対して、安易な性的アプローチがとれない理由となっていました。

さらに、放課後の美術室で全裸を晒すニノミヤ先輩のお話を聞いて、私の妄想回路が今やフル回転、緊急のムラムラモードに突入していました。
しーちゃんとどうこう、っていうのより、早くお家に帰って、今のお話を元に、自分なりの妄想展開で思いっきりオナニーしたい、っていう欲求が私の頭の中を埋め尽くしていました。

「露出症っていう趣味嗜好の人がいる、っていうのは私も何かで読んだことがあるよ・・・」
あたりさわりのない答えでごまかしました。
「ふーん。見ているワタシがすんごくドキドキしちゃうんだから、見せているほうは、ものすごーくコーフンしちゃうんだろうナー」
しーちゃんは、あくまで無邪気に夢見る目つきです。
「そんな話をしてたんで、今日は教室に戻るの、ちょっと遅れちゃったんだヨ。でも、なおちゃんに話せてなんだかスッキリした。部活、これからいろいろ楽しくなりそうだナー」
言いながら、しーちゃんが何気なく自分の腕時計を見て、ギョッとしたお顔になりました。
「もう、こんな時間だヨ。夕飯に遅れたら叱られちゃうヨー」
夢中でお話していて、ずいぶん時間が経っちゃったようです。
バタバタとあわただしく喫茶室を出て、駅前の交差点のところでお別れしました。
「バイバーイ。来週また、学校でネー」

夕食を終えて入浴も済ませ、バスタオル一枚のまま身繕いを終えた私は、ベッドの前に姿見を移動しました。
パソコンで裸のマハを検索し、そのポーズを頭の中に焼き付けます。
学校で使っている絵画用具セットの中から、絵筆を2本、太いのと細いのを取り出して枕元に置きました。
それから、バスタオルを取って裸になると、下着は着けず、素肌の上にじかに、高校の制服、ブラウスとスカートとネクタイとベストとソックスをいそいそ身に着けました。
おっと、お部屋の鍵も閉めておかなくちゃ。


しーちゃんのこと 11

2011年6月6日

しーちゃんのこと 09

毎週金曜日は、しーちゃんは美術部で勉強会の日、私は文芸部図書室受付当番の日だったので、部活が終わった後、クラスのお教室に戻って待ち合わせて、一緒に下校していました。
しーちゃんはその日、いつもより15分くらい遅れてクラスのお教室に現われました。

電車に乗って地元の駅に着くまでは、いつもの他愛も無いおしゃべりをしていたのですが、駅を出たとき、
「ちょっとお茶していこうヨ?」
って、意味あり気にしーちゃんに誘われて、駅ビルの地下の喫茶室に入りました。

「昨日サ、なおちゃんバレエだったから放課後ツマンナイし、部活に顔を出したのネ」
ウエイトレスさんが二人分の紅茶を置いて立ち去ったのを見届けてから、しーちゃんが話したくってしょうがなかった、っていうお顔で、内緒話をするみたいなヒソヒソ声で切り出しました。

「昨日は自由参加の日だから、美術室には二年の先輩3人と三年の先輩2人だけがいて、ワタシはコンピューターグラフィックを練習しようと思っていたのネ」
「先輩たちは、その日は絵とかは描いてなくて、ソファーや椅子に座って、ただおしゃべりしてたみたいだったの」
「その一週間くらい前にコンピューターを教えてくれた二年生の先輩、ニノミヤ先輩っていうんだけど、その先輩もいたからラッキーって思って、その先輩の隣に座ったのネ」
「でも、みんなまったりおしゃべりしてるから、コンピューター起動するのもKYかなと思って、しばらく一緒におしゃべりしていたのネ」
しーちゃんは、ずーっと声をひそめたまま、思わせぶりにつづけます。

「おしゃべりが一段落したとき、三年生の先輩の一人が、今日はしのぶちゃんも来たから、あ、ワタシ先輩たちからしのぶちゃんって呼ばれてるのネ」
しーちゃんが少し照れたお顔をしました。
「今日はしのぶちゃんも来たから、久しぶりにクロッキー、やろうか?って言い出したのネ」
「クロッキーっていうのは、人とか人形とかモデルを見ながら、スケッチを短時間でやるやつ。線画みたいな感じで単色で、濃淡で質感出したり、っていうスケッチ」
「ちなみに、時間かけてやるのは、デッサン、ネ」
「そう言ったとき、その三年の先輩がニノミヤ先輩のほうを見て、ニッって笑ったような気がしたの。ワタシの隣のニノミヤ先輩もなんだかモジモジし始めて」
しーちゃんがティカップに唇をつけて、またソーサーに戻しました。

「先輩たちが座っていたソファーから立って、そのソファーをフロアの中央に運んだり、ドアの鍵を閉めたりカーテン引いたりし始めたのネ。ワタシ、何が始まるのか、と思ったヨ」
「しのぶちゃん、スケッチブック持ってきた?って聞かれたから、いえ、今日はCGやろうかと思っていたんで・・・って言いながらニノミヤ先輩のほう向いたら、ニノミヤ先輩は席を立って、ソファーのほうに行ってた」
「二年の先輩が、じゃあこれあげる。入部記念に特別よ。ってロッカーから真新しいクロッキー帳を出してきて、笑顔で手渡してくれた。あとエンピツも」
「ロッカーのほうに行ってたワタシがそれらをもらって、元の場所のほうへ戻ろうと振り返ったら・・・」
そこでしーちゃんが言葉を止め、私の顔をまじまじと見つめてきました。
私もしーちゃんを見つめ返します。

「振り返ったら、ソファーの前でニノミヤ先輩がスルスルって、制服、脱ぎ始めてたの」
「えーーっ!」
私は、思わず大きめの声を出しながら前屈みになっていた背中を起こしてしまい、あわてて口を手で押さえ、また背中を丸めてテーブル越しにしーちゃんと見つめ合います。

「ベスト取って、ネクタイ抜いて、ブラウス脱いで、ブラジャー取って、上履き脱いで、ソックスも脱いで、スカート脱いで、パンツも脱いで、一糸まとわぬオールヌード・・・蛍光灯全開ですんごーく明るい夕方の美術室でだヨ」
「ニノミヤ先輩、けっこうサバサバ脱いでるようだったんだけど、顔を見るとやっぱりすごーく恥ずかしそうなのネ。頬が薄っすら赤くなっちゃって、でも脱いだ服を裸のまま丁寧にたたんだりして、余裕があるような、やっぱり恥ずかしがっているような・・・」

「ニノミヤ先輩が脱いでいる間、他の先輩たちは腕組みとかしてじーーーっとそれを見てるの。服を脱いでいくのを」
「こっちにお尻を向けて服をたたんでたニノミヤ先輩がたたみ終わったらしくこっちを向いて、ポーズをつけるみたいに私たちの前にスクッと立ったの。右手でバストを隠して、左手をアソコの前に置いて・・・ほら、ヴィーナスの誕生、みたいなポーズ」

「それが、すごーーーーーっくキレイなの!」
「ニノミヤ先輩、スタイルすんごくいいの。バストはそんな大きくないけど形が良くって、ウエストはキュッってくびれてて、キレイな髪が裸の肩にフワリと垂れて・・・」
「肌も滑らかそうな、白いとかそういうんじゃなくて、本当の肌色って言うか、薄桃色みたいな感じで、ツヤがあって」
しーちゃんが私を見つめてきます。

「三年の先輩が大きなクッションを2つ持ってきて、今日はしのぶちゃん初めてだから、基本っていうことでマヤで行こうか、なんて言いながらクッションをソファーの上と下に置いたのネ」
「そしたらニノミヤ先輩、裸のままソファーの下のクッションにお尻ついて、背中をもう一個のクッションの上に乗せて、両腕を枕にするように上にあげて、両腋の下全開で・・・」
「なおちゃん、裸のマヤっていう絵知ってるでしょ?スペイン語読みだとマハだったっけかナ。ググッたらすぐ出てくるヨ。その絵のポーズでソファーにもたれたの」

「しのぶちゃんは、このへんで描いてって、椅子を置かれたのがニノミヤ先輩の下半身の前あたりでサ。2メートルくらいの距離があるんだけど、ニノミヤ先輩、頬や首筋がピンク色に上気して、目も少し潤んでるみたいで・・・」
「じゃあ、15分ね。あの時計で4時25分まで。クロッキー、スタート!って三年の先輩が言って、みんな真剣に描き始めたの」
「ワタシも描き始めたヨ。昔、絵画教室でクロッキーやってたから慣れてたし」

「でもネ・・・」
しーちゃんがまた、ティーカップに手を伸ばしました。
私は、お話に引き込まれてしまい、動くこともできません。

「ワタシの位置からだと、ニノミヤ先輩のアソコが至近距離でモロ、なのネ。ニノミヤ先輩の毛、アソコのネ、も薄くてチョロチョロなの。左膝を少し曲げ気味にしてたから。あの、なんて言うか、スジまで丸見えなのネ」
「ニノミヤ先輩の頬はさっきより上気しているし、恥ずかしいんだろうナーって思ったら、ワタシも恥ずかしくなってきて・・・」
お話している、しーちゃんの頬もピンクに上気していました。

「描きながらずーっとドキドキしっぱなしで、思うようにエンピツが動かなくて・・・」
「それで、ときどきニノミヤ先輩がワタシのほうにかすかな目線をくれるのネ。それで目が合うと、本当にかすかに、笑いかけてくれてるような気がして、それでドキドキがゾクゾクッていう感じになっちゃって・・・」
「それで結局、15分で輪郭くらいしか描けなかったヨ」
しーちゃんが、ここまででお話一段落、みたいな感じで背中を起こしました。
私もつられて背中を起こします。

しばらく無言で見つめ合ってから、またしーちゃんが身を乗り出しました。
すかさず私もつづきます。

「先輩たちがワタシのクロッキー帳取り上げてサ、なーんだ、まだぜんぜん描けてないじゃなーい、なんて、からかうように言ってくるのネ。たぶん本当にワタシ、からかわれているんだと思うんだけどネ」
「それで、その輪にニノミヤ先輩も裸のまんま加わってるの。笑顔浮かべて、ワタシの背後でキレイなバスト、プルプル揺らして・・・」
「三年の先輩が、しのぶちゃんのがぜんぜん未完成だから、今度またこの6人が集まったら、つづきをやりまーす。って宣言して、そのクロッキー大会は終わったんだけどネ」

「それでネ、みんなでソファーとか片付け始めたんだけど、ニノミヤ先輩ったら、なかなか服着ないの。裸のまんまソファー運んだリ、他の先輩とおしゃべりしたり」
「ワタシのところにも来て、CGはまた今度、教えてあげるわね、なんて恥ずかしそうな笑顔で言われて」
「ワタシ、思わず言っちゃった。先輩のハダカ、すごーくキレイですね、って。だって本当にキレイだと思ったから」
「そしたら、アリガト、次が楽しみね、だって。なんだかとっても嬉し恥ずかし、って感じだった・・・」

「・・・ねえ、なおちゃん、どう思う?」

どう思う、って聞かれても・・・
私の頭の中は、しーちゃんのショーゲキの報告に大混乱していました。

まず、まだ普通に生徒たちがいる学校の一室で、正当な理由で全裸になって、みんなに裸を見てもらえる部活動がある、っていうのがショーゲキでした。
美術部ならば確かに、裸婦画っていうのは一つの芸術のジャンルですから、そのモデルを一生徒がやっても問題は無いのかもしれません。
でも、鍵をかけているところをみると、やっぱり先生たちには内緒のアソビなのかしら?
その裸を他の人たちがちゃんと真剣にスケッチしている、っていうのも、芸術家としては当然なのでしょうが、事情を知らない人から見ると、なかなかにシュールでエロい光景に思えます。
写真部とかでも、やってたりして・・・

女子校だから、っていうも大きいのかな、とも思いました。
私たちのクラスでも、6月になってムシ暑くなってきたので、授業中にネクタイを緩めて、胸元のボタンも3つくらい開けて、ブラをチラチラ見せながらアチーーとか言っている豪快なクラスメイトが何人かいました。
先生もそれに関して、とくに注意とかしないんです。
休み時間にスカートをバサバサやって涼を取り、可愛いショーツを見せびらかせている、たぶん本人にそんなつもりはないのでしょうが、人がいたり、体育の着替えのとき、あっけらかんとおっぱい丸出しで普通のブラからスポーツブラに着替える人がいたり。

男性の目が無い、女性同士なら別に下着を見られようが裸を見られようが恥ずかしくない、っていう油断と安心感は、やっぱり女子校だと強いんだと思います。

でも、今しーちゃんから聞いたニノミヤ先輩のお話は、それだけでは説明できないショーゲキでした。
絶対、ニノミヤ先輩は、みんなの前で裸になることを楽しんでいるはずです。
すっごく恥ずかしいのに、楽しんでいるはずです。
そして私はそれを、心底うらやましいと思っていました。

「どう、って言われても・・・」
私は、慎重に言葉を選んで答えようとしましたが、うまく言葉がみつかりません。
仕方が無いので、ごまかすようにしーちゃんに聞きました。
「そのニノミヤ先輩っていう人は、どんな感じの人なの?」
「うんとネー、オトナっぽい感じで、背が高くて、髪は肩くらいまでのサラサラで顔が小さくて、プロポーション抜群で・・・」
「そうだっ!前に言わなかったっけ?憶えてない?春になおちゃんと部活見学行ったとき、ワタシが、なおちゃんにどことなく雰囲気が似てる人がいたネー、って言ったでしょ?あの人だヨ」


しーちゃんのこと 10

2011年6月5日

しーちゃんのこと 08

「ねえねえ、なおちゃん、中川さん。もう部活決めた?」
入学式から二週間ほどたったある日のお昼休み、しーちゃんが私の席まで来て、聞いてきました。
私は、お隣の席の中川ありささんとおしゃべりをしていました。

中川さんとは、すでにすっかり仲良しになっていました。
背は小さめだけど元気一杯で、いつもニコニコしている人なつっこい中川さんは、お話しているだけでこちらにも元気がもらえるようなポジティブまっすぐな女の子でした。
「あたしは、演劇部に決めたんだ」
中川さんがしーちゃんに答えます。
しーちゃんと中川さんもすでに仲良しさんになっていました。

「わたしは、軽音部に入ってバンド組むつもり」
しーちゃんの後ろからこちらへやって来たのは、しーちゃんのお隣の席の友田有希さん。
背が高くてストレートのロングヘアーでからだの発育もいい、なんだかカッコイイ感じの女の子です。
しーちゃんとアニソンのお話で盛り上がり、たちまち意気投合したんだそうです。
そして、ステキな偶然もあるもので、中川さんと友田さんは、同じ中学出身なお友達同士でした。

「アタシもまだ決めてないんだよねー」
会話に混ざってきたのは、私の後ろの席の山科洋子さん。
なんだか色っぽい感じのウルフカットでスレンダーな美人さん。
私とは違うバレエ教室に通っているそうで、もちろんバレエのお話がきっかけでお友達になれました。

私たちのクラスには、派手に髪を染めていたり、極端に短かいスカートを穿いてくるような、いわゆるギャルっぽい人は一人もいなくて、なんだかみんないい人っぽい、おだやかな感じの女の子ばかりでした。
この学校の制服のデザインだと、短かいスカートは絶対合わないのは誰の目にも明らかなので、そうい人は最初からこの学校に来ないのでしょうけど。
さすが、まわりからお嬢様学校、と思われているだけあって、なんとなくお上品というか、マイペースな感じの人ばかりみたい。
私には、とても居心地のいい雰囲気でした。

そんなクラスで早くもお友達になれた3人としーちゃんとで、しばらく部活のことについておしゃべりしました。
「ワタシ、美術部にするかマンガ研究会にするか、迷ってるんだよネー」
しーちゃんが言うには、マン研は、すでに部員がいっぱいいて活気がある感じなんだけれど、なんだかみんな理屈っぽそうな雰囲気がしたんだそうです。
それに較べて美術部は、先輩がたがみんな落ち着いた感じで、人数も少なくて、逆に言うとちょっと暗い感じ。
「お姉ちゃんに聞いたら、私には美術部のほうが合っている、ってニヤニヤしながら言うんだよネー。どういう意味なんだろう?」
しーちゃんのお姉さんは、三年生に進級して、生徒会会長になっていました。
BL大好きな、フジョシな生徒会長さん、です。

「森下さんは、バレエ習ってるんだから、新体操部とかダンス部とか、いいんじゃない?」
山科さんが聞いてきます。
「うーん・・・そう言う山科さんは、そういうところへ入るつもりなの?」
「アタシは、体育会系はパスかなあ・・・バレエ教室で充分て言うか・・・部活になっちゃうとしんどそうだし、教えてくれる先生によって指導も違いそうだし」
「そうでしょ?私も同じ気持ちなの。だから文芸部に入ろうかなあって思ってる」
「うちは全員、何かしら部活に入らなきゃいけない決まりだからねえ。アタシも演劇部にでも入ろうかなあ・・・」
「あ、それいいよ。あたしと一緒に演劇やろう。山科さんなら舞台栄えしそー。男装の麗人とか」
「何それ?アタシのおっぱいが男子並、って言いたいの?」
「いやいやいや、そーじゃなくてー」
中川さんが嬉しそうに山科さんの手を引っぱりました。

「なおちゃんは、中学のとき、ずーっと図書委員だったんだヨ。すっごくたくさん本読んでるの」
しーちゃんがみんなに説明しています。
しーちゃんも、一対一じゃなくても普通にみんなの会話に混ざるように努力しているようでした。

この高校には、図書委員っていう制度は無くて、図書室の運営や管理をしているのは文芸部なのだそうです。
入学した次の日に訪れた図書室はとても立派で、まだ読んでいない本がたくさんあったので、高校でもまた図書委員に立候補しようと思っていたのですが、そのことを聞いたので、文芸部しか考えられなくなっていました。
部活見学で再度訪れて説明を聞いたら、読むだけではなく、小説やエッセイを執筆して機関誌の発行とかもするようで、小学校の頃から一応日記みたいなものを書いていた私は、ますます興味を惹かれました。
ちゃんとした文章の作法とかも勉強できそうだし。

「なおちゃんがエッセイ書いたら、ワタシがイラスト付けてあげるヨ」
しーちゃんがニッって笑いかけてくれます。
そんな感じでお昼休みの間中、ガヤガヤとおしゃべりしました。

「ねえ、なおちゃん。ワタシ、もう一回美術部見学に行くから、なおちゃん、つきあってくれない?」
その日の放課後、しーちゃんと一緒に帰ろうとしたとき、しーちゃんが言いました。
「いいよ」
私は、軽い気持ちで引き受けて、二人で3階の美術室を訪れました。

3階校舎のはずれにある美術室は、普段並んでいる椅子や机がきれいに片付けられ、広いフロアにイーゼルが7台、みんな思い思いの方向に向けられて立っていて、その前で7人の部員さんたちが、真剣な面持ちでキャンバスに絵筆を滑らせていました。
「あっ、いらっしゃい。えーっと確か藤原さん、だったっけ?どう?決心はついた?」
先輩らしき一人がキャンバスから顔を上げて、こちらに声をかけてきました。
髪の長い、落ち着いた感じのオトナっぽいキレイな人でした。
「あっ、はいっ。まあだいたいは・・・」
しーちゃんが緊張した声で答えています。
「そちらは?」
「あっ、彼女はワタシのお友達で、彼女は文芸部に入る予定なので、付き添いです」
「そう。ゆっくりしていってね」
その人が私を見つめて、ニッコリ笑ってくれました。
「今日は、自由参加の日だから、今描いているのはみんな好き好きの自由な個人作品なの。部全体での課題勉強会は水曜日と金曜日だけ。その他の日は来ても来なくてもいいし、自由参加の日は、こうして自分の作品を描いててもいいし、そこのソファーでおしゃべりしててもいいわ。結構ラクな部活よ」
しーちゃんのほうを向いてそれだけ言うと、その人はまた顔をキャンバスに向けて、自分の作品に戻りました。

私としーちゃんは、なるべく迷惑にならないようにそーっと歩いて、それぞれの絵を描いている先輩がたの背後に回り、それぞれの作品を見せていただきました。
私たちが近寄っていくと、みんなお顔をこちらに向けて、ニコっと会釈してくれます。
私には、絵の上手下手はまったくわかりませんが、みなさん上手いように思えました。

木目の綺麗な壁で囲まれたシックな感じの美術室には、油絵の具の香りがただよい、レースのカーテンがひかれた西側の窓から春の夕方の陽射しがやわらかく射し込み、しんと静まりかえった中に時折サラサラと絵筆が滑る音・・・
みんな耳にイヤフォンをしているということは、思い思いに好きな音楽を聴きながら、絵を描いているのでしょう。
7人の先輩がたは、みんな真剣で、オトナな感じで、カッコイイと思いました。

「コンピューターでの絵の描き方も教えてくれるって言うし、美術部に決めちゃおうかナ」
見学を終えて、しーちゃんと帰宅する道すがら、しーちゃんがウキウキした感じで言いました。
しーちゃんも高校進学のお祝いにパソコンを買ってもらったそうです。
「先輩たちみんな、カッコイイ感じだったね。決めちゃえば?」
「中に一人、すごーく雰囲気のある、オトナっぽい感じの人、いたでしょ?」
「えーっと、みんなオトナっぽく見えたけど・・・」
「一番背が高くて、抽象画を描いていた人。あのひと雰囲気がどことなくなおちゃんに似てたヨ」
「へー。どの人だろう?」
私は、全然覚えていませんでした。

結局、私は文芸部、しーちゃんは美術部、中川さんと山科さんは演劇部、友田さんは軽音部に入部しました。

部活とバレエ教室以外の日は早めに帰宅してパソコンのお勉強をし、そうしている間に初めての中間試験を迎え、という具合に4月と5月があわただしく過ぎていきました。

5月の連休までには、パソコンのだいたいの操作を覚えた私は、連休初日にいよいよインターネットのえっちサイトデビューを果たしました。
最初に訪れたのは、相原さんのお家で見せてもらったえっちな告白サイト。
サイトの名前を覚えていたので、検索エンジンで検索するとすぐ見つかり、貪るように思う存分読み耽りました。
その後は、画像探しの旅です。
いろいろ検索して、いきなり無修正の男の人のアレ画像が出てきて、あわててパソコンの電源コード抜いちゃうようなこともありましたが、夜な夜なのえっちなネットサーフィンは、私の妄想オナニーの頼もしいオカズ元になっていました。

そんなこんなで迎えた6月初旬の金曜日。
しーちゃんと二人で帰宅する途中に立ち寄った喫茶店で、しーちゃんからスゴイお話を聞かされました。


しーちゃんのこと 09

2011年6月4日

しーちゃんのこと 07

高校へ進むのを機会に、心に決めていたことがありました。
念願だった女子校にも進めたことだし、今までの自分の性格を少し意識して変えてみよう、と。
なるべく明るくふるまうようにして、積極的に知らない人とも接するようにして、たくさんお友達を作って、たくさん楽しいことが出来るといいな、と。

もちろん中学での三年間でも、楽しいことはたくさんありました。
でも、入学時にこの地域に転居してきた関係で、知っている人がクラスに一人もいなかったこともあり、なんとなく人間関係全般で受け身な立場に慣れてしまい、愛ちゃんたちと仲良くなった後でも、なんだかいつも、みんなに引っぱってもらっているような感じをずーっとひきずっていました。
それに加えて、中二の夏休みに受けたトラウマ・・・
自分の内向きがちな性格とも相まって、中学での三年間は、自分から何かをする、ということがほとんど無かった気がしていました。
それを変えたいと思ったんです。

今度進む高校は、いろんな地域から生徒が集まりますから、みんな最初は知らない同士です。
今までの私を知っている人は、たぶんしーちゃんだけ。
それまでの人間関係が一度リセットされる進学は、自分の内向きがちなキャラを変える絶好のチャンスだと思ったんです。

卒業式の後で私はしーちゃんに、そんな自分の決意を告げました。
「それ、わかる気がする。ワタシもなおちゃんと同じようなことを考えてたヨ。ワタシももう少し社交的にならなきゃナー、って」
しーちゃんがニッコリ賛同してくれました。
「それに、新しい学校でまったくみんな知らない人ばっかだったら、やっぱりちょっと身構えちゃうけど、なおちゃんも一緒だしネ。もしも同じクラスになれなくても、同じ学内ならいつでも会えるし」
「ワタシもいろいろと、高校デビューしちゃうつもりだヨ」
しーちゃんも、まだ見ぬ女子高生活にすっごくワクワクしているようでした。
「でもやっぱり、なおちゃんと一緒のクラスになれるといいナー」
それは、私も同じ気持ちでした。

私が住んでいる町の最寄りの駅からターミナル駅を超えて5つめの駅に、その女子高校はありました。
初めての電車通学です。
入学式の朝、車で送ると言ってくれる母の申し出を断って、しーちゃんと駅で待ち合わせ、一緒に学校に向かいました。
朝の電車は混むし、痴漢とかのことも聞いていたので、女性専用車両に乗り込みました。
想像していたより全然、電車内は混んでいなくて、これなら別に無理して女性専用車両に乗らなくてもいいみたい。

私としーちゃんは、もちろん同じデザインの制服を着ています。
濃いめのグレーのブレザーに同じ色の膝丈スカート。
ブレザーの下には、ブレザーと同じ色で、ショルダーラインの幅が広く、両脇が大きく開いた、ちょうど和服の裃みたいなデザインのベスト。
その下には、白のブラウスに紺色のネクタイ。
全体的に直線の多いシャープなデザインで、なんだかオトナっぽくって、私は一目でこの制服をすっごく気に入っていました。
この制服が着たかった、っていうのもこの学校を選んだ大きな要因でした。
ショートヘアのしーちゃんが着ると、西洋の美少年お坊ちゃまみたいで、それはそれですっごく似合っていました。

校舎は、駅を出てから商店街、住宅街を10分くらい歩いて、周囲に田園風景が広がり始めるのどかな一角にありました。
昭和の戦争のずっと前からあったというその女子高は、さすがに時代を感じさせる厳かな雰囲気の校門とクラシカルながら立派な校舎。
受験のときは、ちらほらと雪が舞っていた畑沿いの道も、今日は、両脇に植えてある何本もの桜の木に、キレイなピンクの花びらが満開でした。

校門をくぐり、クラス分けが載っているプリントを受付でもらいました。
「やったヨー、なおちゃん!おんなじクラスだヨ!」
しーちゃんが大きな声をあげて私に飛びついてきました。
「よかったー。しーちゃん、また一年、よろしくねー」
私もすっごく嬉しくて、しーちゃんと抱き合って喜びました。

一年A組。
入学式を終え、クラスのお教室に入ると、私たちはとりあえず出席番号順に並んで着席させられました。
一クラス32名、全員女子。
なんだかホッとしてしまいます。

順番に短かく自己紹介をしていきました。
もしも知っている顔が誰もいない一人ぼっちの状態でしたらドキドキの瞬間ですが、私の3つ前の席にしーちゃんがいると思うと、ずいぶん気がラクになって、スラスラと自己紹介できました。
イイ感じです。
この調子でお隣の人にも声をかけてみようか・・・
担任となった30代くらいの女性の先生のお話が終わって解散になったとき、そう考えて右隣に顔を向けたら、
「森下直子さん、だったっけ?あたし、ナカガワアリサ、よろしくね?」
その人のほうから声をかけてきました。
肩くらいまでの髪を真ん中で分けて、左右を短くおさげにした人なつっこそうなカワイイお顔がニコニコ私を見つめていました。
「あ、はいっ。こちらこそよろしくですっ!」
私も精一杯明るい笑顔でごあいさつしました。
ナカガワさんは、なおいっそうやさしげな笑みになって、右手を小さく左右に振りながら、ご自分のお友達らしい人のところへゆっくりと歩いていきました。

早速お友達が出来そうです。
しーちゃんとも一緒のクラスになれたし、今のところ最高な滑り出し。
そんなふうに、私の高校生活が始まりました。

高校進学と前後して、我が家にも大きな変化がいくつかありました。

一つは、ハウスキーパーの篠原さん親娘が、我が家の二階で同居することになったこと。
それまで篠原さんが住んでいたマンションが更新になるのを機に、いっそのこと住み込みで働いたら?、という父の提案でした。
これ以上ご迷惑はかけられない、と篠原さんはずいぶんご遠慮されたそうですが、篠原さんのことをすっごく気に入っている母がモーレツに説得したようです。
家賃がもったいないし、我が家の二階には使っていないお部屋がいくつもあるし、私の受験も終わるし、ともちゃんも大きくなったし・・・
それまで、篠原さんが来られない日には、日中をずっと一人で過ごしていて、大いにヒマをもてあましていたらしい母の熱心な説得に篠原さんも恐縮しつつもうなずいてくれて、四月の中旬にお引越ししてきました。

もちろん私も大歓迎です。
篠原さんは、優しくて優雅でキレイで大好きですし、小学校二年生になったともちゃんは、私にとても懐いてくれていて、ちっちゃいからだでニコニコしてて本当に可愛らしくて、ずっと長い間、妹が欲しかった私は大喜び。
これからいつでも、お家に帰るとともちゃんがいて、一緒に遊んだり、お風呂に入ったりできるんだ、と思うと知らず知らず、顔がほころんでしまいます。

我が家の二階の改装は、私の受験が終わった2月下旬から始まっていました。
一階に、篠原さん宅専用の玄関を設けて、我が家の玄関を通らなくても篠原さん宅に入れるようにして、二階のお部屋も、篠原さんのほうからは、棟つづきの私のお部屋のほうには来れないようにすることになっていました。
「親しき仲にも礼儀あり、でしょ?篠原さんたちが気兼ねなくくつろげるように、お仕事以外のプライベートでは、お互いのプライバシーが完全に守れるようにしましょう」
という母の提案でした。
そのため、二階にもお風呂場やキッチンを増設したり、篠原さん宅用玄関からつづく階段を新たに加えたり、と大々的な改装工事となって、完成が予定より一週間ほど遅れてしまいました。

私がちょっぴり不安だったのは、お部屋でオナニーするときの声・・・
今までは、二階には誰もいなかったけれど、これからは篠原さん親娘がお部屋一つと壁を挟んだ向こう側にいつもいることになります。
もちろん今までも声はなるべく押し殺すようにしていたので、あまり気にすることもないとは思うのですが・・・

もう一つの変化は、パソコン一式と携帯電話を買ってもらったこと。
とくにパソコンは、中三のとき、相原さんのお家でさわらせてもらって以来、欲しいなあ、と思っていたものなので、すっごく嬉しかった。

高校の入学式が迫った日曜日の昼下がり。
めずらしく父と二人で、車でおでかけしました。
画面が大きめのノートタイプのパソコンとプリンター、その他を父が選んでくれて、お家に戻ると、設置も全部父がやってくれました。
「ほれ。これで一応インターネットの接続もプリンターも全部動くから。あとはこの本をよく読んで、自分で覚えなさい。なあに、直子ならすぐに使いこなせるようになるさ」
言いながら父は、分厚い本を3冊、私に手渡してくれました。
「タイピングの基本とワープロと表計算、それくらいをまず覚えればいいから」
父はなんだか嬉しそうに笑うと、私の肩を軽くポンッて叩いてお部屋から出て行きました。

パソコンを使いこなせるようになれば、あの日相原さんのお部屋で見たえっちなホームページとかも自由に見ることができる・・・
私は、早速その夜から、熱心にパソコン操作のお勉強を始めました。


しーちゃんのこと 08

2011年5月29日

しーちゃんのこと 06

私の背より50センチくらい高くて頑丈そうな本棚には、少女マンガ、少年マンガ混ぜこぜで、ずいぶん昔の名作から最新刊まで膨大な数のコミックス本が判型を合わせて整然と並んでいます。
棚が横にスライドする方式の本棚なので、裏にもまだ本が詰まっています。
軽く1000冊くらいはありそう。
「親が持っていたのも並べてあるからネー」
最初にお部屋を訪ねたとき、しーちゃんが言っていました。

有名作家さん以外の作品は、ジャンルによっておおまかに分けられているみたいで、ラブコメ、スポーツもの、ギャグマンガ、ファンタジーもの、グルメものなどなどでひとかたまりになっていました。
これまだ読んでないっ、あっ、これも・・・
心の中でタイトルにチェックを入れながら、上から下まで順番にじっくり見ていきました。
一番下の段は、週刊マンガ誌と同じ判型の本が並んでいて、その大部分が背表紙のついていない、パンフレットみたいな二つ折り中綴じの薄い本でした。

私たちが中二で、私がまだあのトラウマを受けてない頃、みんなでしーちゃんのお部屋で遊んでいたとき、このコーナーから何気なく一冊取り出した私は、ひどいショックを受けました。

すっごく人気のある男子向けサッカーマンガの主人公とそのライバルが、上半身裸で顔をくっつけあってキスしているカラーイラストが表紙に描かれていました。
「うわっ!」
私は思わず、大きな声をあげちゃいました。
「あーあっ。なおちゃん、みつけちゃったねー」
曽根っちがニコニコ笑って近づいてきます。
「そのへんはBLのどーじんぼんなんだよ」
「ビーエル?・・・ドージンボン?」
「同人本。アマチュアのマンガ好きな人たちが自主制作で、人気マンガの主人公や設定だけ借りて、自分の考えたストーリーで描いた本のことだヨ。それで、男の子同士でえっちなことをさせちゃうのがBL、ボーイズラブ、ネ」
しーちゃんも私の傍らに来て、教えてくれます。
「やおい、って前に話題になったじゃない?あの流れの二次創作本で、一年に何回か、そういうのばっかり集まった盛大な即売会があってね・・・」
しーちゃんと曽根っちで、いろいろ詳しく教えてくれました。

その解説を聞きながら中身をパラパラッとめくると、二人が真っ裸になって抱き合っていたり、ライバルの告白に主人公が頬を染めていたり・・・
正直、私は、なんだかキモチワルイ・・・って思っちゃいました。
「パロディみたいなもんだからネー。ワタシは純粋にギャグマンガとして楽しんでるヨー」
しーちゃんは、無邪気に笑いながら言っていました。

そんなことを思い出して、今の私はこの段のは見れないなー、なんて考えていたら、ベッドのしーちゃんから声がかかりました。
「そこにあったBL本は、全部お姉ちゃんの部屋に移しちゃったから、今そこにある同人誌は、非エロと百合系だけだヨ」
しーちゃんは、月刊マンガ誌を読み終えたらしく、ベッドから下りて私の横にペタンと座り込みました。
「お姉ちゃん、BLにどっぷりハまっちゃったみたいで、最近は自分でも何か書いているみたい。もうすっかりフジョシ」
「フジョシ?」
「腐った女子って書いて腐女子」
「えーっ?しーちゃんのお姉さん、キレイな人じゃない?それに生徒会副会長でしょ?」
「そういうのはカンケーないの。考え方が腐っているから腐女子。だって一日中、男同士のカップリング、考えてるんだヨ?どっちが受けでどっちが攻め、とか」
「お姉ちゃんがそうなっちゃったから、ワタシはじゃあ、女同士でいこうかなア、なんて。百合系のほうが絵柄的にもキレイでしょ?」
しーちゃんはそう言うと、その段から一冊の薄い本を抜き出しました。
これまた良い子に大人気な美少女戦士が二人、裸で抱き合っている表紙でした。
私は少し、ドキンとします。

「お姉ちゃんがネー、ワタシが高校進んだら、同人誌の即売会、連れて行ってくれるって。そんときは、なおちゃんも、一緒に行こう?」
「う、うん。ぜひ」
「実はネー、ワタシも最近、ちょこっとマンガ描き始めたんだ。まだまだ人に見せられるほどじゃないけど・・・」
「今は受験勉強でそれどころじゃないけど、終わったら本格的に描くんだ!ガラかめの二次ものとか、描きたいなア・・・コスプレもしてみたいし」
しーちゃんが夢見る目つきでつぶやきます。

しーちゃんから手渡された美少女戦士の本をパラパラとめくってみます。
絵はあんまりうまくない感じですが、女の子同士で胸をさわりあったりして、感じている顔になっていたりします。
「しーちゃんは、こういうマンガをみると、何て言うか、その、コーフンしたり、するの?」
その絵を見ていたら、ちょっと大胆な気持ちになってきたので、思い切って聞いてみることにしました。
「うーん・・・コーフンってほどじゃないけど、ちょこっとドキドキしたりはするかナ・・・でも・・・」

しーちゃんはうつむいて、言おうか言うまいか少し迷ってたみたいでしたが、やがて真っ赤になったお顔を上げて小さな声で言いました。
「でもワタシ、まだ・・・まだひとりエッチをちゃんとしたことないんだよネ・・・マンガでやってるみたいに自分のからださわってみても、くすぐったいだけだったり、痛かったり・・・ぜんぜん気持ちいい感じがしないって言うか・・・」
「たぶんきっとまだ、ワタシのからだはオトナじゃないんだヨ。もうちょっと成長しないとサ・・・」
「・・・ふーん」
私は、ドキドキしながらしーちゃんの告白を聞いていました。
「だから、そういうのはきっと高校生になったらいろいろわかるんじゃないかなー、って思ってるヨ」
しーちゃんが私を見つめて、恥ずかしそうにニッて笑いました。
「ワタシ、こんなこと教えたの、なおちゃんだけだヨ。曽根っちにも言えない。なおちゃん、何でもちゃんと聞いてくれる感じがして、すごーく安心できるから」
しーちゃんがいつもの感じに戻って、ニコニコ笑って照れ臭そうに私を見つめてくれます。

その告白はすっごく嬉しかったのですが、私の心は、その後の展開に先走りしていました。
しーちゃんから、なおちゃんはどうなの?ひとりエッチしてるの?って絶対聞かれると思って、心臓が飛び出しそうなくらいドキドキしていました。
聞かれたら何て答えよう・・・少しだけ、でいいかな?どういうふうにするの?って聞かれたらどうしよう・・・こんなふうに、なんて教えてあげたりして、そのまま一気に今夜が二人の記念日になっちゃったりして・・・

でも、しーちゃんとのおしゃべりは、いつの間にか、今一番お気に入りのライトノベルのお話に移ってしまい、二度とえっち系な話題には戻ってきませんでした。

その後また少しゲームをやったり、おしゃべりをして夜が更け、二人とも眠くなってきました。
パジャマ代わりのロングTシャツに着替え、お夕食の後しーちゃんのお母さまが持ってきてくれたお布団を床に敷き、電気を消して横になりました。

「ねえ、なおちゃん、そっちだと寒くない?」
少ししてから、ベッドのしーちゃんが声をかけてきました。
「ううん。だいじょうぶ」
「暖房消すとけっこう寒いし、床も冷えちゃうし・・・なおちゃんもこっちで寝ヨ?って言うか、寝て・・・」
「う、うん。いいけど・・・」
私はまたドキドキしてきました。

お布団から出て、枕だけ持って、ベッドのしーちゃんの左横にからだをすべらせました。
「うふふ。ほらー、二人だとあったかいネー」
しーちゃんの体温でほんわか温まった毛布の中で二人、横向きに向き合いました。
しーちゃんのベッドは、二人だとちょっとだけ狭い感じ。
「今日はすごーく楽しかったヨー。ワタシなおちゃん、だーいすきっ!」
しーちゃんがそう言って、寝ている私のほうに両腕を伸ばし、私のからだを抱きしめてきました。
しーちゃんの頭が私の首の下あたりに埋まっています。
まるで小さな子がお母さんに抱きつくみたいな感じです。
「あらあら、しーちゃんは甘えん坊さんねー」
私も両腕でしーちゃんの背中を抱き寄せ、右手でしーちゃんの髪をやんわり撫ぜます。
「修学旅行のときお風呂で見たなおちゃんの裸、すごーくキレイだった・・・」
しーちゃんが私の胸に顔を埋めたまま、ボソボソっとつぶやきました。
「やんっ。恥ずかしい・・・」

しーちゃんは、下半身を丸めていて、毛布の中でしーちゃんの両膝が私の伸ばした太腿にあたっていました。
私の心臓がひっきりなしにドキドキしているのが、しーちゃんにも伝わっているはずです。
しーちゃんのからだは細くて、しなやかで、温かくて・・・
私は、この後どうするか、盛大に迷っていました。

そのうち、私の胸の谷間あたりに規則正しい寝息が、くすぐったく感じられるようになっていました。
どうやらしーちゃんは、私にしがみついたままあっさり、眠ってしまったようでした。

しーちゃんの生身のからだの感触にしばらくドキドキしていた私の鼓動が徐々に治まって、今は何て言うか、自分の中の母性のようなものを感じていました。
しーちゃんを守ってあげなくちゃいけない、みたいな。

焦る必要はないみたいです。
さっきのお話だと、しーちゃんは、まだ自分がえっちなことをするのは早すぎると思っているみたいだったし、高校に入ってから、いろいろしてみたいようだったし。
しーちゃんが私を好いていてくれることは、充分確認できたし。
新しいステップを踏み出すのは、高校に入ってから、が正解かな?
しーちゃんを抱く腕に力を込めて、そんなことを考えているうちに、私もいつしか眠りに落ちていました。

そんな夜を過ごしつつも、お勉強会の成果もあり、翌年の二月中旬、私としーちゃんは無事、第一志望の女子高校に合格することができました。


しーちゃんのこと 07

2011年5月22日

しーちゃんのこと 05

修学旅行の後、文化祭、体育祭とたてつづけにあり、文化祭では、私たちのクラスは演劇をやることになりました。
演目は、星の王子さま、で、曽根っちがキツネさんの役、あべちんが火山その2の役に選ばれました。
しーちゃんは背景美術、ユッコちゃんはタイムキーパー、私は衣装作りで、愛ちゃんが総監督。
みんな遅くまで学校に残って準備して、たくさん練習して。
文化祭最終日に体育館のステージで、たくさんのお客さんを前に曽根っちとあべちんが可憐な演技を見せてくれました。
体育祭では、愛ちゃんとユッコちゃんが徒競走やクラス対抗リレーで大活躍しました。

それも終わってしまうといよいよ、本格的な受験モードになってきました。
私も入試が終わるまで、バレエ教室をお休みすることにしました。
愛ちゃんグループでときどきやっているお泊り会も、お勉強会という名目に変わりました。
途中まではちゃんと真面目にお勉強していても結局、真夜中にはおしゃべり会になってしまうんですけどね。

グループのお勉強会とは別に、しーちゃん一人でもよく私の家にお勉強をしに来るようになりました。
「ほら、ワタシの部屋は勉強に適した環境じゃないんだよネー。遊ぶ物だらけだから、集中できなくって」
一週間に一、二回、放課後からとか、お夕食が終わった頃に訪ねてきました。
2、3時間集中してお勉強してからおしゃべり、っていうのがパターンでした。

数学や理科は私のほうが得意で、国語と社会はしーちゃん、英語は同じくらい。
お互いの不得意科目は相手に教えてもらって、すっごく楽しく有意義にお勉強できました。
お勉強の合間にしーちゃんの好きなアニメやゲームのことをお話したり、私がバレエのステップを教えたり。
私たちは、すっかり打ち解けていました。

母もしーちゃんのことがとても気に入ったみたいでした。
「しーちゃんて雰囲気がロココよねー。絶対、ゴスロリが似合うわよ。高校合格したらお祝いさせてね」
って、いつも言っていました。

しーちゃんは、私と二人だけのときは、よくしゃべるし表情も豊かで、みんなでいるときよりずっと明るいオーラを発していました。
私がそれについて聞くと、
「ワタシ、3人以上での会話って、苦手なんだよネー。ワタシがしゃべって相手が答えてくれる、相手が何か言ってワタシが答える、っていうくりかえしじゃないとちゃんと伝えられない、っていうか・・・。だから、みんなといるときは聞き役になってたほうが楽しい、みたいな・・・」
「同じこと、曽根っちにも言われてるヨ。曽根っちと二人のときも、ワタシけっこうしゃべってる」
「ふーん」
「なおちゃんも、そういうとこ、あるよネ?ワタシたち、似てるよネ?」
「うん。確かにそうかもしれない・・・」

曽根っちは、カレシとおつきあいを始めてから、私たちといる時間が少なくなりつつありました。
お泊り会も欠席しがち。
カレシにお勉強を教えてもらっているようです。
「しーちゃん、最近、曽根っちがあんまりかまってくれなくて、寂しくない?」
「うーん・・・正直言うとちょっと寂しいけど・・・でも、しょうがないヨ。曽根っちは、それがシアワセなんだもん。ワタシたちのつきあい長いし、曽根っちがシアワセになれるなら、ワタシ嬉しいし、それに・・・」
「それに、今はなおちゃんとこんなに仲良くなれたし、ネ?」
そう言って微笑むしーちゃんを、私はなりふりかまわずその場で抱きしめたくって、がまんするのが大変でした。

年末にかけて、たくさんの時間をしーちゃんと過ごしたことで、しーちゃんと私は、お互いの性格や好み、長所や短所など、たいがいのことは、わかりあえるようになっていました。
しーちゃんは、聡明で、素直で、恥ずかしがりやさんで、可愛らしくて、私はどんどん好きになりました。
ただ、えっちに関することについては、やっぱり言い出せないままでいました。
しーちゃんと親密になればなるほど、どんどん言いづらい感じになっていました。
穏やかな関係に余計な石を投げ入れて波をたてるのが、前以上に怖くなっていました。

その頃、私がお気に入りだった妄想オナニーのシチュエーションは、10月のある夜、確かしーちゃんがお泊りに来て楽しく過ごした次の日の夜、に、唐突に見た夢がヒントになっていました。

なぜだか、しーちゃんが悪い人にさらわれてしまいます。
私は、しーちゃんを助けるべく、悪い人のアジトに潜入します。
悪い人のアジトは、田舎によくある古くて大きいお屋敷みたいな日本家屋で、そのお庭のはずれの大きな土蔵の中にしーちゃんは閉じ込められていました。
なんでそんな建物なのか、と言うと、これは、その数日前にテレビで見た、田舎の旧家を舞台に、ちょっとえっちな場面もある推理サスペンスものの日本映画の影響だと思われます。
父の実家のお屋敷にも似てたかな?

しーちゃんは、薄暗い土蔵の中に下着姿、薄いブルーのスポーツブラとカワイイ青水玉のショーツ姿、で、お腹のところを縄で大きな柱にくくりつけられていました。
口には猿轡をされ、ガックリ首を落としてうなだれています。
「なんでこんなことをするのっ!?」
「それは、アナタをおびき寄せるためよ」
悪い人の声は、女性でした。
悪い人の顔は影に覆われて見えず、ワザと出しているような低い声だけが響きます。
「この子を助けたかったら、あたしの言う通りにすることね・・・」
悪い人の声に気がついたのか、しーちゃんがゆっくりと顔を上げて、私のほうを潤んだ瞳で見つめてきます。
「しーちゃんっ!」
「どうなの?あたしの言う通りにするの?」
「わ、わかりました。言う通りにします。その代わり早くしーちゃんの縄を解いてあげてください」
「聞きわけがよくて助かるわ」
悪い人は、柱の後ろ側にまわってお腹の縄をほどき、しーちゃんは膝から崩れてその場にペッタリ腰を落としました。
しーちゃんの両手は手錠で、両脚は足枷で、まだ繋がれたままです。
「この手錠と足枷は、アナタの今後の服従度次第ね。うふふ。それじゃあまず、服を全部脱ぎなさい・・・」

私は、なぜだか学校の制服を着て、そのアジトに乗り込んできていました。
震える手でブレザーのボタンをはずし、ブラウスのボタンをはずし、スカートのホックをはずし・・・
衣服を全部脱ぎ終えると、なぜだかその下にバレエの真っ白なレオタードを着ていました。
それもバストのカップと下のサポーター無しの、素肌にじかの状態で。

「あらー。やる気マンマンなのね?さあ、早くそれも脱ぎなさい」
何がやる気マンマンなのか、私にはわからないのですが、その言葉に私はカーッと恥ずかしくなって、みるみる乳首が勃ち、アソコが湿ってきてしまい、そのいやらしい証拠が薄い布地越しにクッキリと、バストの突起と股間のスジとなって浮き出てしまいます。
「ほら、早く言う通りにしないと、この子がもっとヒドイめにあうことになるわよ?」
私は、観念してレオタードの肩紐に手をかけて・・・

こんな感じで、この後私は、その悪い人にたっぷり苛められてしまいます。
四つん這いの恥ずかしい格好をさせられたり、洗濯バサミをたくさん挟まれたり、お尻をペンペン叩かれたり、裸のままお外に連れ出されたり・・・

そんな私の恥ずかしくてみじめな姿を、しーちゃんがじーっと見つめています。
お風呂場で私のからだを見つめてくれたときと同じ、食い入るような視線。
その肌に突き刺さるような視線が、ひどく気持ちいいんです。

その夢から目覚めたとき、私のショーツは、まるでオモラシしてしまったみたいにグッショリ濡れていました。
夢だけでこんなに濡れたりするのかな?
たぶん寝ている間に無意識に、いろいろからだをまさぐったのかな?
どちらにせよ、生まれて初めての経験でした。

このえっちな夢がすっかり気に入ってしまった私は、高校入学前後までムラムラ期が来るたびにいつも、責められかたの細部はいろいろ変えつつ、この夢を元にした妄想でオナニーしていました。
もちろん姿見の前で、声を殺して。

しーちゃんに直接手をふれたり、しーちゃんの手でふれられたり、ということは、いっさい考えませんでした。
しーちゃんを助けるために私が恥ずかしいことをしなければならない、っていう状況がひどく気に入っていたみたいです。

夢で見たとき、月の光が土蔵の高いところにある窓から一筋差し込んで、悪い人が相原さんだったとわかる、という場面があったので、妄想するときの悪い人役は、最初から相原さんになっていました。

この夢を細かく分析すれば、その頃の私のいろいろこんがらかってしまった深層心理、受験を控えたストレスとか、相原さんやしーちゃんに対する想いなどなど、がわかるような気もしたのですが、なんだか結論を出すのが怖い感じがするし、考え過ぎてますます迷路にハまってしまいそうな気もしたので、やめておきました。

冬休みに入って、年の瀬も押し迫ったある日、久しぶりにしーちゃんのお家に遊びに行くことになりました。
私たち二人、ずいぶん一生懸命お勉強してきたから、年末に一日くらい、楽しいものがたくさんあるしーちゃんのお部屋でマンガやゲームやアニメ三昧で過ごしてもバチは当たらないだろう、っていう、がんばった自分たちにご褒美お泊り会、でした。

お昼過ぎからしーちゃんのお部屋で、対戦テレビゲームやしーちゃんのおすすめアニメを見て楽しく過ごしました。
お夕食は、ご家族のほうのお部屋に招かれてご一緒しました。
しーちゃんのお父さまとお母さまも一緒で、お姉さんは、お出かけ中のため、いませんでした。
ご両親とも、今までみんなで遊びにきたときに何度もお顔を合わせていたのですが、こうして間近でご一緒してみると、しーちゃんのお父さまの温和そうなお顔は確かに、クイーンのベースの人に似ているかも、と思いました。
お母さまは、しーちゃんをそのままオトナの体つきにしたような可憐なかたで、相変わらずお綺麗でした。

すっごく美味しかったお夕食を終え、しーちゃんのお部屋に二人で戻りました。
「ふーっ。ちょっと食休みネ」
しーちゃんはそう言うと、ベッドに寝転んで、まだ読み終えていないらしい月刊少女マンガ誌を途中から読み始めました。
私は、みんなで来たときだとゆっくりと見れなかった、しーちゃんの膨大なコレクションがぎっしり詰まった本棚を、端からゆっくり眺め始めました。


しーちゃんのこと 06