2013年10月14日

コートを脱いで昼食を 15

「ほら、直子?あなたもちゃんとご挨拶なさい」
 シーナさまが肘で私の脇腹をつっつきますが、私は恥ずかしさで顔を上げることが出来ません。
 今のシーナさまのお言葉を聞いて、アンジェラさんたちがどんなお顔をされているのか・・・
 うつむいたままモジモジするだけです。

 助けてくださったのはアンジェラさんでした。
「大丈夫よ。心配しないで。わたくしたちは、ミス・シーナがとてもイジワルな人だということを、みんな知っていますから」
 すっごくやさしいお声で、でもちょっぴりクスクス笑いながらおっしゃいました。
「親子ほども年の離れたマダムにイジワルしているところ、今まで何度も見ていますから、ね?」
 私がそっと顔を上げると、アンジェラさんももう一人の女性も、たおやかな笑顔を浮かべて私を見つめていました。

「ところで直子はさ、ここがどんなサロンなのか、わかっている?」
 シーナさまがニヤニヤしながら聞いてきます。
 私は首を小さく左右に振りました。
「あら、ミス・シーナは、ミス・ナオコに何も教えずに、ここにお連れしたの?」
 アンジェラさんが呆れたお顔でシーナさまを見ています。
 シーナさまはアンジェラさんには答えず、さらに私に聞いてきました。

「じゃあさ、想像でいいから、このサロンは、何をするところだと思う?」
「えっと・・・」
 言っちゃっていいのか、少し迷いましたが、正直に思ったことをお答えしました。
「あの・・・よくはわかりませんが、たぶん・・・な、なにか、えっちなことを、するところ?」
 本当は、SMプレイのサロンで、アンジェラさんたちは、おやさしそうなお顔をされているけれど、実は女王様なのじゃないかな、って考えていたのですが、それではあまりにストレート過ぎるので、少しぼかしました。

「ほらね。聞いたでしょ?直子、それは想像じゃなくて、あなたの願望よ」
「この子はね、こういう子なの。こんな澄ました顔してても、頭の中では年がら年中、いやらしいことばっかり考えているのよ」
 すかさずのシーナさまのツッコミに、私は再びうなだれてしまいます。
 うなだれる寸前に、アンジェラさんが苦笑いを浮かべているのが見えました。

「いい?直子。このサロンはね、知る人ぞ知る、とっても評判のいいエステティックサロンなの」
「それも富裕層のマダムやその子女限定で、完全紹介会員制。表立っては一切広告宣伝していなくて、ある種のステイタスがなければ施術を受けるどころか、この場に入ることさえ出来ない、隠れ家的な高級エステなの」
「こちらにいるアンジー、アンジェラ先生が、このサロンのチーフ・エステティシャンで、スゴイのよ。世界中の美容業界を飛び回って、最新の技術をいつも研究されているの」
「その上、看護師やら美容師やら整体師やら、あと何だっけ?とにかくその手の資格全部持っているから、美容関係のことは何でも出来ちゃうの」
「エンヴィって英語で、妬む、とか、羨む、っていう意味なのだけれど、ここに来れば誰でも、人から羨まれて妬まれるくらい美しくなれる、っていう意味が込められているんだって」
 シーナさまがまくしたてるみたいに説明してくださいました。

「わたしのアレのひとりがここの会員だったからさ、わたしも出入り出来るようになって、いろいろお世話になっているのよ」
「ミス・シーナには、良いお客様を何人もご紹介いただいて、感謝しているわ」
 アンジェラさんが嬉しそうにうなずきながらおっしゃいました。

「そう言えばミス・シーナ。マダム・ワカバヤシはお元気かしら?」
「あら?二週間前くらいに来なかった?わたし、バンコクにいたときにメールで命令を出しておいたのだけれど」
「ああ、ご存知だったのね。それならいいわね。確かにいらしたわ。いつものコースで」
「そうでしょう?キレイになっていたもの。相変わらずよ。あのメス犬の貪欲なド淫乱さには、わたしのほうが疲れちゃうくらいだわ」
「あらあら。だけどマダム・ワカバヤシがあのお年になっても若々しくてお綺麗なのは、80パーセントくらいはミス・シーナのおかげよね」
 シーナさまとアンジェラさんが楽しそうに笑っています。

 マダム・ワカバヤシさんて、たぶん私のマンションの一番上の階を所有している、シーナさまのドレイ兼パトロンなおばさまのことでしょう。
 楽しそうにお話されるシーナさまに、私はなんだかフクザツな気分。

「それにアンジー、さすがだわ。うちのメス犬とわたしとの関係は知っているクセに、無闇に顧客の情報を漏らさない、その姿勢はたいしたものよ」
 シーナさまが私のほうに向きました。
「アンジーはね、スペイン系のクォーターでね、日本語以外も5、6ヶ国語くらいペラペラなのよ」
「それでね、会員制とは言っても、めんどくさいお客も少しは来るのよね」
「なまじお金が有り余っているから傲慢になりがちなのよ、そういうマダムは」
「そんなときアンジーはね、そのお客に絶対わからない言葉、ドイツ語とかスペイン語とかでね、ちっちゃな声でヒドイ悪態ついてたりするのよ、その客の目の前でニコニコ笑いながら」
 愉快そうに笑うシーナさま。
「あらやだ!ミス・シーナ、気づいていたの!?困ったわ、あなたの前だったら何語で悪態をつけばいいのかしら?」
 ひとしきり、楽しげな笑い声が響きました。

「そんなわけで、今日は直子に、このサロンの超一流の技術で、よりいっそうキレイになってもらおうと思って連れてきたのよ」
「ここのエステのモットーはね、お客様が喜ぶことを全力でしてさしあげること、なんだって。直子が喜ぶこと、って、わかるでしょ?」
「だから安心して、わたしの言う通りにしなさい」
 シーナさまの目が一瞬、妖しく光った気がしました。

「そうそう、ご紹介が遅れてしまったわ。わたくしの隣のこの女性は、うちのスタッフの一人で・・・」
 アンジェラさんのお言葉が終わらないうちに、その女性がスクッと立ち上がりました。
「夏目蘭子です。どうぞよろしくお願いいたします」
 スッと私に名刺が差し出され、私も慌てて立ち上がりました。

 夏目蘭子さんは、三人の中では一番肉感的なタイプでした。
 と言っても決してふくよかなのではなく、出るところは出て、引っ込むべきとことは引っ込んでいる、つまりすっごくプロポーションが良いのです。
 薄手のカシミアらしいベージュのロングセーターに包まれたその肢体は、まさにボンキュッボン、見蕩れちゃうほどセクシー。
 細面に涼しげな目元、少しカールしたボブカットでニッコリ微笑んだ姿は、まるでファッションショーの一流モデルさんのようでした。

「蘭子さんのマッサージはね、本当、魔法みたいなのよ」
 シーナさまが嬉しそうに、お口をはさんできました。
「それはもう、からだ中が蕩けちゃうくらい気持ち良くて、終わったら何もかもがスッキリ。肩凝りでも筋肉痛でもストレスでも、跡形もなく消えちゃうの。まさにマジックね」
「あとでわたし、蘭子さんにマッサージしてもらうんだ。それで指名して、わざわざ今日来てもらったのよ」
 シーナさま、本当に嬉しそう。

「そして、あそこに座っているのがわたくしの秘書、小野寺梓さん。事務関係全般とスケジューリングなんかをやってもらってるの」
 アンジェラさんのご紹介で、受付の美人さんが立ち上がり、私に向かってさっきと同じような完璧なお辞儀をしてくださいました。
 私も丁寧にペコリ。

「さあ、これで今日来ているスタッフの紹介は終わったわね。ミス・ナオコも今日からわたくしのサロンの会員よ。ミス・シーナのご紹介だもの、大歓迎よ。いつでもお好きなときに遊びにいらっしゃい」
 アンジェラさんがニッコリ笑いながらおっしゃってくれました。
「もちろん、ペイのほうは全部、ミス・シーナにツケておくから。何も心配はいらないわ」
「望むところよ。わたしも直子がもっとキレイになるのなら、そんな出費なんてまったく気にもしないわ」
「でも、お振込みの名義はなぜだか、マダム・ワカバヤシなのでしょう?」
 またひとしきり、楽しげな笑い声が響きました。
 シーナさまもアンジェラさんも、どこまで本気なのだか。

「さて、それじゃあそろそろ始めたいと思うのだけれど、その前にやっぱり、もう一度確認しておくわ。ミス・シーナ、例の件だけれど」
「例の件、って・・・ああ、研修のこと?」
「そう。わたくし、てっきりミス・シーナはまた、誰かそういうマダムをお連れになると思っていたから、気軽にお頼みしちゃったのだけれど、お連れになったのはマダムどころか、可愛らしいマドモアゼルじゃない?本当にいいのかな、って」
「大丈夫よ。気にしないでやってちょうだい」
「でも、ああいうところを見られるのって、すごく恥ずかしいのじゃない?それも、年が近い子たちだと、とくに・・・」
 ご心配顔のアンジェラさんが私の顔を覗き込むように見てきます。

「大丈夫よ。モーマンタイ。直子なら、むしろそのほうがいい、っていうくらいよ」
 シーナさまも私の顔をチラチラ見ながら、つづけました。
「この直子はね、こう見えて、かなりのヘンタイ娘なのよ。見せたがり、っていうよりも、視られたがり、ね」
「だからこの後のことも、余計な気遣い、気配りは一切、まったくいらないから。うちのメス犬にするときみたいに、いいえ、もっと大胆な格好をさせてもかまわないわ」
「直子はクラシックバレエをやっているから、からだがかなり柔らかいの。だから研修もやりやすいと思うわよ。言うこときかなかったら遠慮なくお尻叩いちゃっていいから」
「だけどこの子、すごく敏感ですぐ濡れちゃうから、そういう意味ではちょっと、やりにくいかもしれないけれどね」

 えっ!?
 シーナさまったら、普通のお顔でシラッと、スゴイことをおっしゃっていません?
 私の恥ずかしい性癖をどんどんバラしちゃってる。
 それで、アンジェラさんも、それを真剣に聞いていらっしゃる。
 ここってエステなのよね?
 私、これから何されるの?
 再び頭がパニックになって、全身を火照らせたままうなだれてしまいました。

「そう。そういうことなら、お言葉に甘えて予定通りでいきましょう。ミス・ナオコがそれを望んでいらっしゃる、と聞いて安心しました」
 えーーっ!そんなこと私、言ってない・・・
「それなら一応、始める前に研修の子たちにもご挨拶させるわね。小野寺さん、呼んでちょうだい」
 私がうなだれているあいだに、事態はどんどん進行していきました。

「ほら、直子っ」
 シーナさまに肘で脇腹をつっつかれて、恐る恐る顔を上げました。
 新たに、それぞれカラフルな私服を着た可愛らしい系の女性が3人、アンジェラさんの後ろに並んでいました。
 私が顔を上げたと同時に、
「よろしくおねがいしまぁーす!」
 声を揃えて元気良く、ご挨拶されました。

「えーっと、向かって左から、アリナさんとマリナさんとセリナさん。偶然3人とも似たような名前だけれど、こういう名前を付けるのが流行っていた世代なのかしらね?」
「3人ともうちの見習いスタッフで、入ってまだ日が浅いから、アロマテラピーやマッサージはほぼ習得したのだけれど、これからやる施術の現場は初めてなのね」
「だから今日、わたくしがミス・ナオコに施術するところを見せて、覚えてもらおうと思っているの」
「ひょっとすると、実際にこの子たちにもやらせてみるかもしれないけれど、わたくしが付いて細心の注意を払っているから、どうかご安心してご協力くださいね?」
「どうぞよろしくおねがいいたしまぁーす!」
 再び声を揃えて元気良く、お願いされてしまいました。
「は、はい・・・」
 そう答える他ありません。

「それにしても、アンジーのサロンのスタッフって、全員もれなく美人よね?」
 シーナさまが前に並んだ5人をしげしげと見回しながらおっしゃいました。
 私もそう思っていました。
 それもみんなタイプの違う美人さん。
 アンジェラさんは華やかなエキゾティック・ビューティ、小野寺さんはインテリジェント・クール・ビューティ、蘭子さんはグラマラス・ビューティ。
 研修でご一緒されるという3人も、年齢は私とそう変わらない感じで、それぞれ、どこかの美少女アイドルグループや女性ファッション誌の読者モデルさんと言われても信じちゃうくらい、キュートな美人さん揃いでした。

「それはそうよ。わたくしたちは、女性の美を追求するエステティシャンなのですもの」
「ねえ、ミス・シーナ?たとえばあなた、頭に毛がなくなっちゃった社員が何人も働いている製薬会社の育毛促進剤、買う気になる?」
「つまりそういうこと。スタッフが美しくないビューティサロンなんて、誰も来やしないわよ」
「だからわたくしはいつも、スタッフには自分の美しさをキープする努力を、まず一番に要求しているの」
「ミス・ナオコ、あなたもその気があったら、うちで修行させてあげるわよ?」
 アンジェラさんがパチンとウインクをくださいました。

「さあ、それでは始めましょうか?」
 アンジェラさんのひと声で、その場にピーンと緊張感が走りました。
「ミス・ナオコには、あちらのドレッシングルームで準備していただいて、施術するみんなはユニフォームに着替えて・・・」
 アンジェラさんがそこまでおっしゃったとき、遮るようにシーナさまの鋭いお声が響きました。
「ちょっと待って。アンジー?わたし言ったはずよ?余計な気遣いは一切無用だって。直子にはドレッシングルームなんて贅沢なものは、いらないの」
「みなさんも、もう少しそこでラクにしていていいわ。今、面白いものをお見せするから」
 そして、シーナさまが私を見ました。

「直子?」
「は、はい」
「裸になりなさい」
「えっ?」
「今すぐ着ているものを全部脱ぎなさい」
「え、えっと、こ、ここで、ですか?」
「何回言わせるの?早く裸になりなさい」
 シーナさまの瞳にエスの炎がチロチロと揺れ始めていました。


コートを脱いで昼食を 16


2013年10月13日

コートを脱いで昼食を 14

 ジュエルケースにしまっておいたチョーカーを取り出しました。
 手に取っただけでからだが火照ってきます。
 鏡の前で、そっと首にあてがってみました。
 うわ、すっごく目立っちゃう・・・
 白いブラウスとベージュのジャケットといういでたちの中では、首元に艶のあるエンジ色はとても目立ちます。

 これを着けると街中にマゾオーラを撒き散らしてしまうので、外出時の装着は禁止されていた首輪型チョーカー。
 それなのに今日は、これを着けて外出、っていうご命令です。
 メス犬マゾペットの首輪を着けてマゾオーラ全開の私の姿を、シーナさまはいったい誰にお見せになる気なのでしょう?
 下半身がモヤモヤ疼いて仕方ありません。

 チョーカーをジャケットのポケットに入れて、ハンドバッグを片手にマンションを出ました。
 マンションの門から10メートルくらい離れた路上に、見覚えのある黄色くて四角張った可愛らしい感じのシーナさまの愛車が、ライトをチカチカさせて待っていました。

「お待たせしました」
 助手席に乗り込むと、シーナさまが右手のひらを上に向けて、黙ったまま私の前に突き出してきました。
「あ、はい・・・」
 ポケットからチョーカーを取り出し、シーナさまの手のひらの上に乗せて、背中を向けます。
 シーナさまが手際よく、私の首にチョーカーを装着してくださいました。

 前を向くと、車のルームミラーに私の首元が映りました。
 やっぱり目立つ・・・
 鏡の中の自分と目が合って、頬が火照ってきました。

「うん。いい感じ。とても直子らしくなったわ」
 首だけ左にひねってずっと私を見ていたシーナさまが、嬉しそうにおっしゃいました。
「今日はわたしと一緒だから、思う存分マゾオーラ発散しちゃっていいから。でも、普通にアクセとしても、ちゃんと似合っているわよ」
 シーナさまが私の右頬に軽くチュッとしてくれました。

 そのまま私の右耳に唇を寄せて、
「どうせまた、濡れてきてるんでしょ?」
 低くささやかれました。
「は、はい・・・」
 チョーカーを着けられたときから、アソコの奥がキュンキュンうごめきだし、今のシーナさまのささやきの途端に、自分でも、あっ、と思うくらいたくさん、分泌物が滲み出てきているのがわかりました。
「ふんっ。いやらしい子」
 シーナさまが投げ捨てるみたいにつぶやき、車がスイーッと滑り出しました。

 車の中でも、スカートをまくれとかいう類のえっちなご命令は一切無く、シーナさまは運転しながら、イスタンブールで食べたサバのサンドウィッチのお話などをされていました。
 私は首のチョーカーが気になって、お話をお聞きしながらも時折ルームミラーをチラ見してはドキドキしていたのですが、やがて気持ちが落ち着いてきました。
  
 車はしばらく、交通量の多い大通りを走ってから、住宅街ぽい脇道に入りました。
 その住宅街は、どのお家も一軒一軒の敷地が広く、ゆったりと立ち並んで、全体的に落ち着いた雰囲気を醸し出していました。
 どのお家もデザインが洒落ていて、塀や門が立派で緑も多く、どう見てもお屋敷、という感じな趣のあるお住まいもありました。

「もうすぐ着くわよ」
 窓の外をもの珍しげに、熱心に眺めている私に、シーナさまからお声がかかりました。
「あ、はい。えっと、ここは、このあたりは、どこなのですか?」
「駅で言うと目白になるわね。いわゆる高級住宅街っていうやつよ」

 目白って言うと、池袋の一つ隣です。
 駅一つ違うだけで、こんなに街の雰囲気が変わるなんて。
 あらためて東京ってすごいなー、って思っていると、車が減速して左へ曲がり、アーチ型のゲートをくぐって地下へつづくらしいスロープを降りていきました。

 ゲートをくぐるときに、その敷地内に建っている建物が見えました。
 高校のとき、家族旅行で訪れて見たことのある、パリの高級アパルトメントのような瀟洒な、目を惹く外観のアンティークぽい建物でした。
 リゾート地のホテルとかにありそうなデザイン。
 ホテルなのかな?
 でもまさか、こんな高級住宅街にはホテルなんて建てないだろうし・・・

 スロープを降りた先は、車が10台くらい置ける駐車場になっていました。
 シーナさまは空いているスペースに手慣れたハンドルさばきで車を停めました。
「充分間に合ったわね。よかった。土曜日だからもう少し渋るかと思ったわ」
「あの、シーナさま、ここは・・・何ですか?」
「え?あっ、ひょっとしてラブホかなんかだと思ってる?あの外観見て」
 シーナさまが可笑しそうにクスクス笑います。
「そんなわけないじゃない。ここは普通のマンションよ。あ、でも普通ではないわね、お家賃的には、高級マンション、に該当する物件だから」

 車を降りてふたり、駐車場に隣接したエレベーターホールへ向かいました。
「そうそう、今日の直子は、モリタナオコだから。その名前で先方には言ってあるから」
「だから、モリタさま、って呼ばれたらちゃんと返事してね」
「本名だとちょっとマズイかな、とも思ったのよ。だから、これからずっと、ここに来たらあなたは、モリタナオコだから、ね?」
「は、はい・・・」

 本名だとマズイこと、って何だろう?
 シーナさまが企てたことですから、えっちな事柄に関連することであるのは間違いありません。
 先方、とおっしゃったから、これから誰かと会うことになるのも確実です。
 本名を隠しておいて良かった、と思うくらい、その人の前でとんでもなく恥ずかしいめに遭わされちゃうのでしょうか。
 ドキドキがどんどん激しくなってきました。

「14時から予約を入れているシーナです」
 エレベーターの扉脇に付いたテンキーを操作してから、シーナさまがインターフォン越しに告げました。
 ほどなくエレベーターが降りてきて、扉が開きました。
 シーナさまが4階のボタンを押し、エレベーターが上昇を始めます。
 監視カメラが付いているらしく、天井付近のモニターに私たちふたりの姿が俯瞰図で映っていました。
 その映像の中でも、私の首のチョーカーは、かなり目立っていました。

「さあ、いよいよだわね、直子。いろいろがんばって、ね?」
 シーナさまが嬉しそうに謎な言葉を投げて、私にパチンとウインクしました。

 エレベーターの扉が開くと、そこはホテルのフロントみたいになっていました。
 大理石の床と壁に、木目も鮮やかで重厚なカウンターが置かれ、その向こうでスーツを着た綺麗な女性がニッコリ微笑んでいました。

「ようこそいらっしゃいませ、シーナさま、そしてモリタさま。お待ちしておりました」
 両手を前で揃えた完璧なお辞儀の後、またニッコリと微笑みます。
「どうぞ、こちらのお部屋へお入りください。チーフも中ですでに準備して、おふたりのご到着をお待ちしておりますから」
 カウンターから出てきて、私たちを案内するために一歩先を歩いていく彼女。
 そのタイトなスカートからスラリと伸びた脚線美に見蕩れていたら、お部屋のドアが開きました。

「お履物はここでお脱ぎいただいて、ご用意いたしましたその室内履きにお履き換えください」
 女性が一歩退いて、私たちを入口のお部屋側に通してくれました。
 そこから覗いたお部屋の様子に、もうびっくり。
 ゴージャス。
 その一言しか思い浮かびませんでした。

 応接間にしては、いささか広すぎる床のほとんどを覆っている、暖色系のグラデーションによるアラベスク文様鮮やかな、毛足の長いペルシャ絨毯。
 適材適所に置かれた、アンティークながらお手入れの行き届いていそうな、見るからに高級そうな猫脚の家具たち。
 品良く飾られた、どこかで目にしたことのあるような絵画と彫刻。
 きっとレプリカではなく本物なのでしょう。
 お部屋の中央付近には大理石の大きめなテーブルが置かれ、そのテーブルを挟んで、柔らかそうなソファーに腰掛けたご婦人がふたり、ティーカップを前にして談笑されていました。
 お部屋全体に、お香なのかアロマキャンドルなのか、何とも言えない甘くていい香りが漂っています。

 豪華すぎるお部屋を前にして呆然と立ち尽くす私を尻目に、シーナさまはスタスタとテーブルのほうへと歩いていかれました。
「ミス・シーナ、お久しぶりね。会いたかったわ」
 こちらを向いてソファーに腰掛けていたご婦人がゆっくりと立ち上がり、テーブルの脇に立ってシーナさまを迎え、やんわりとふたり抱擁されました。
「チーフのお仕事、順調に伸びているみたいね。下の駐車場で見たわよ。また車、変えたでしょ?」
「ああ。あれはお客様の送迎用の車よ。設備投資みたいなもの」
「ここのお得意様って、新型のジャガーで送り迎えしてもらえるんだ。リッチだわねー」
 おふたりがとても親しげに、お話されています。

 シーナさまのお相手をされているご婦人は、パッと見た感じ20代後半から30代前半。
 ゆったりとした品の良いパープル系のワンピースで、からだつきはスレンダー、胸元に3連の細いゴールドチェーンがキラキラ揺れています。
 お顔が小さくて彫りが深く、背もけっこう高めだから、ひょっとすると欧米系のハーフさんかもしれません。
 そのクッキリした目鼻立ちをキツクならないように上手にメイクして、ショートめの髪をゆるやかなウェーブで左右に分け、全体として、すっごく華やかな美人さん、という印象です。

「ほら、直子も早く、こちらにいらっしゃい」
 シーナさまに促され、案内していただいたスーツの女性にも、微笑みながら、どうぞ、という手振りで後ろから促され、おずおずと柔らかな絨毯をフワフワのスリッパで踏んで、シーナさまに近づきました。
「それにしても、ミス・シーナがこんなにお若いかたをお連れになるとは、思いもよらなかったわ。ミス・シーナ、あなた最近、趣味変わったの?」
 チーフと呼ばれた、ハーフなお顔のご婦人が、心底驚いたという感じで、シーナさまを見つめています。
「そういうことではないけれどね。この子はいろいろワケありでさ。まあそれはともかく、紹介する・・・」
 シーナさまが私のほうを向いて、チーフさんのことを私にご紹介してくれそうになったとき、チーフさんが私に向けて名刺を差し出してきました。
「ミス・モリタさん、だったわよね?わたくしはこういうものです。今後ともよろしくね」
 チーフさんがニコッと笑いかけてくれました。

 受け取った名刺を見てみます。

 サロン エンヴィ envy (艶美)
 代表 アンジェラ 樹里

 それに住所と電話番号が書いてありました。
 裏返すと同じことが英語で書いてあります。

「サロン?」
 思わず独り言を小さくつぶやいてしまいました。

「だからね、ここは・・・」
 シーナさまが私に説明しようとすると、再びチーフさん、つまりアンジェラさんが遮りました。
「まあまあ、立ち話もなんだから、一回みんな座りましょう。小野寺さん、お茶をご用意して」
 小野寺さんと呼ばれた、受付のスーツ姿の女性がお部屋の奥へ消え、私とシーナさまは、さっきまでアンジェラさんが座っていた側のソファーに並んで腰掛け、アンジェラさんは、先ほどまで談笑されていたもうひとりの女性の隣に腰掛けました。
 ほどなく小野寺さんが、お紅茶とチーズケーキを人数分持ってきてくださり、小野寺さんは、お部屋の入口近くにある椅子に、ひとり離れてお座りになりました。

「それじゃあまずわたしから、あらためてご紹介するわ」
 おのおのがティーカップを一口傾け、チーズケーキをひとかけら頬張り一息ついた後、シーナさまが口火を切りました。
「今日初めてこのサロンのお世話になる、こちらの女性は・・・」
 そこで一呼吸置き私のほうを見て、ニッと一瞬笑いました。
 すぐにアンジェラさんたちのほうに向き直り、私を右手でバスガイドさんのように指し示しながら、シーナさまがつづけます。
「一番新しいわたしのドレイ、モリタナオコです」

 えっ!?
 シーナさま今、私のことを、わたしのドレイ、っておっしゃらなかった?
 えーっ!?
 私の聞き間違いじゃないよね?
 えーーっ!?
 何それ?そんなこと言っちゃっていいの?えーーーーっ!何?何?何?何?
 思いもよらないシーナさまのお言葉に、私はあっさりパニックに陥りました。


コートを脱いで昼食を 15


2013年10月6日

コートを脱いで昼食を 13

 発端は夏休み終盤、私が実家に帰っていたときに届いた、シーナさまからのメールでした。

 直子へ
 久しぶりに池袋に戻って来たのに、直子は帰省中とのこと、なんだかがっかり。
 こちらに帰ってきたら連絡すること。
 それと、このメールを読んだら、次に私と会う時まで、陰毛の処理は一切禁止。
 これは命令、厳守すること。

 というメールでした。

 その当時の私は、久しぶりの実家でのんびりと過ごし、生理中でもあったので、全裸家政婦の頃からつづいていたムラムラも、ずいぶん大人しくなっていました。
 でも、そのそっけない文面のメールを読んだ途端、からだがウズウズ疼き始めました。

 一番最近にソコの毛を処理したのは、全裸家政婦生活を思い立った8月の下旬でした。
 あれから約二週間ちょっと。
 もともと薄い私の股間にも、ようやくうっすらと翳りの片鱗が見え始めている頃でした。
 ナプキンをあてるときにそれが気になって、東京に戻ったらまたキレイに剃ってしまおう、なんて考えていた矢先のメールでした。

 処理するな、って言われると、余計に処理したくなってしまうもの。
 けれどシーナさまのご命令ですから、絶対逆らえません。
 シーナさまがまた、何か企んでいらっしゃる・・・
 アソコの毛を処理するな、というご命令が、ひどく淫靡なことに思えて、いろいろ妄想をめぐらせては、実家でひとり悶々としていました。

 東京に戻って学校に通い始めると、夏休み中とは生活のサイクルが一変して、しばらくは慌しく日々が過ぎていきました。
 シーナさまには、もちろん戻ってすぐにご連絡したのですが、お仕事で遠方へお出かけされていて、お戻りになるのは2、3週間後ということでした。
 そうこうしているうちに月が変わり、念願の裸コート用にオリーブグリーンのコートを手に入れたこともきっかけとなり、秋・冬物のお洋服をウォークインクロゼットで整理していた日曜日の午後。
 とっかえひっかえいろんなお洋服を着ては脱ぎ、鏡の前でひとりファッションショーをしていたとき、からだ全体がムラムラ、すっごく昂ぶっていることに気がつきました。

 その日から再び、お部屋での全裸生活が始まりました。
 エレベーターからお部屋のドアまでのあいだにストリップすることを決めたり、乳首穴空きTシャツを考えついたのもこの頃のことです。
 学校へは毎日ノーパンジーンズ&チュニックで通い、体育授業の着替えでスリルを味わったり、おトイレの個室で慰めたりもしていました。

 最後に処理してから約一ヶ月。
 私のソコの毛は、ほぼ普通の状態に戻っていました。
 と言っても、もともとが薄い私です。
 土手の割れ始め付近から上への狭い範囲に、密度も粗く一本一本細くて直毛な短い毛がチョロチョロ生えた状態。
 私の場合、ここまで生えるともうこれ以上伸びたり濃くなったりはしなくて、ずっとそのままな感じなのです。
 鏡に映すと、何て言うか、貧相、っていう言葉がぴったりな感じで、剃り落としたくてたまらなくなります。

 高二の頃、やよい先生に初めて剃られちゃうまでは、薄い、という自覚はあったものの、そんなに気にすることも無かったのですが、パイパンを覚えてしまい、それがずっと、普通の状態、になってしまった今となっては、ソコに毛があることにうまく馴染めなくなっていました。
 恥毛、という言葉がありますが、私にとってソコに毛がある状態は、まさしく、恥ずかしい毛を生やしている、という感覚でした。
 だから逆に、その状態が新鮮と言うか、自分のソコがパイパンのときよりもより卑猥でだらしなくも思えて、そんな毛を生やしている自分を責め立てる自虐オナニーに、いつもより力が入っちゃったことも事実でした。

 その週の週末の夜に、シーナさまが私のお部屋にいらっしゃることになりました。
 シーナさまとお逢いするのは、夏休み前にデパートでばったり遭遇してチョーカーをいただいたとき以来でしたから、丸々二ヶ月ちょっとぶりでした。
 ムラムラ期真っ最中で全裸生活中の私でしたから、これも何かのご縁と思い、思い切って全裸でシーナさまをお迎えすることにしました。

 金曜日の夜7時過ぎ。
 お部屋のインターフォンが鳴って、モニターでシーナさまとしっかり確認してから、全裸のままそーっと玄関のドアを開けました。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
 そのときのシーナさまのびっくりされたお顔。
 でもすぐに視線を私の胸から下半身へとすべらせながら、
「あらあら、やる気マンマンね」
 と、嬉しそうにニッと笑ってくれました。

 秋らしい浅紫色のステキなワンピースに身を包んだシーナさまは、両手にたくさんの荷物を持ってらっしゃいました。
 お逢い出来なかったあいだシーナさまは、海外を含むいろいろな場所に行ってらしたようで、私のために食べ物や雑貨など、たくさんのお土産を持ってきてくださいました。

 そのお土産にまつわるシーナさまの旅のお話や、私が始めた全裸生活のことなどを、シーナさまに私のからだをいろいろもてあそばれながら、夜が更けるまでたくさんおしゃべりしました。
 一緒にお風呂にも入りました。
 私の予想では、ご命令で伸ばした私の陰毛は、きっとお風呂のときにシーナさまからどうにかされちゃうのじゃないかな?って期待していたのですが、まったくそんなことはなく、普通にイチャイチャしただけでした。

 ずいぶん夜更かしをしてから、ふたりとも裸のままひとつのベッドで寝て、ずいぶん朝寝坊しちゃいました。
 私は全裸、シーナさまは素肌にバスローブを羽織ってのブランチの後、しばらくボーっとしていたら、唐突にシーナさまがおっしゃいました。

「さてと、そろそろ準備したほうが良さそうね」
「え?何のですか?」
「午後になったら出かけるわよ、ふたりで。ちょっとしたドライブね」
「あ、そういう予定だったのですか。えっと、どちらへ?」
「そんなのヒミツに決まっているじゃない。だから直子にも、それなりの格好をしてもらわないと」
 シーナさまがイタズラっぽく笑いました。
 シーナさまとお外へお出かけ、となると、つまりは何か羞恥プレイをすることになるのでしょう。
 となると・・・

「えっと、それはつまり、やっぱりノーパンとか・・・」
「ううん。今回はそういうのじゃなくて、きっちりキメて欲しいのね」
「たとえば、良家のお嬢様風とか・・・あ、でもそんなこと言うと直子、無駄に悩んじゃいそうだわね」
「フォーマルな感じって言うか、セレブな感じって言うか。まあ、カッチリした感じならいいかな。直子ってスーツ、持ってる?」
「あ、はい、一応は・・・」
 大学の入学式用に買った、薄めなベージュ色でノーカラーのショートジャケットと膝丈スカートの可愛いっぽいスーツを、このあいだのお洋服整理のときに久々にみつけて着てみたばかりでした。

「ならそれを基本に清楚っぽくね。あと下着もちゃんとしたやつをね。もちろんメイクも普段よりちょっと気合を入れてみて、ね?」
 シーナさまがパチンとウインクして、私の頬にチュッとしてくれました。
「わたしもいったん上に戻って準備してくるから。1時までには、またここに戻ってくるわ」
 それだけ言い残すと、シーナさまはバスローブの前をちょちょいと結んで、ご自分のバッグから鍵の束だけ取り出してポケットに突っ込み、タタタッと玄関から出て行ってしまいました。

 シーナさまったら、素肌にバスローブだけの姿で8階まで戻るんだ。
 エレベーター内には監視カメラがあって管理人さんが見ていらっしゃるかもしれないのになー、大胆だなーって思って、思い出しました。
 そうだった、エレベーターは使わずにお外の非常階段を使っているんだった。
 
 以前、あんまり頻繁に直子の部屋に出入りしていると、管理人さんに不審がられそうじゃない?とおっしゃって、管理人さんとそのフロアの住人しか持っていない、建物の側面に設えてある非常階段に出られる非常口の鍵を、お貸ししたことがありました。
 シーナさまはそれで合鍵を作り、私の部屋の出入りには、あまりエレベーターは使わず、お外の非常階段を使われているみたいでした。
 だけど、バスローブ一枚で土曜日のお昼時にお外の非常階段を登るのって、それはそれでもっと大胆ですよね。
 シーナさまらしい、ってクスッと笑ってしまいました。

 シーナさまはいったい、私をどこへ連れて行こうとしているのだろう?
 考えながら着替えをしました。
 着替えと言っても、元が全裸でしたから、お洋服を身に着けただけですが。

 お言いつけ通りに、下着はシルクでレースがたくさん付いた可愛らしいピンクの上下。
 スーツだからパンティストッキングも穿かなくちゃ。
 フリルがヒラヒラの白いリボンブラウスを羽織り、メイクもいつもより念入りに。
 なんだか久しぶりのおめかしに、ワクワクしてきました。

 どこかの一流レストランにでも連れて行ってくれるのかな?
 なんだかテレビドラマとかでよく見る、お見合い、の前みたい。
 まさか・・・ないよね?
 誰かのパーティにお呼ばれでもしているのかしら?
 シーナさま、そういうセレブなお知り合い、多そうだから・・・

 慣れないおめかしに意外と手間取り、ジャケットの袖に腕を通したときには、もう1時前でした。
 ほどなくインターフォンが鳴り、シーナさまが戻っていらっしゃいました。

「へー。なかなかいい感じね。良家のお嬢様に見えるじゃない?」
 私の姿を見るなり、シーナさまが満足そうにおっしゃいました。
「そのスーツって、あのブランドのでしょ?直子、いいもの持ってるのねー」
 
 そういうシーナさまは、ダークなストライプのパンツスーツに、黒のシースルー気味なフリルブラウスで、なんだかマニッシュな感じ。
 カッコいい!
 髪も片方にまとめてサイドに流し、メリハリの効いたメイク、中性的って言うか美少年ぽく変身されていました。
「本当はもっとフェミニンな感じにしようかとも思ったのだけれどさ、車運転するの考えると、どうしてもパンツスーツになっちゃうのよね」
「だから今日は思い切って、そっち寄りにちょっとやり過ぎてみたの」
「たまにはこんなのもいいでしょ?」
 シーナさまが自嘲気味におっしゃりながら、私の全身をマジマジと見つめています。

「うーん、すごくいいのだけれど、何かが足りないわねー」
 美少年なシーナさまが考え込んでいます。
「そうだ。ずいぶん前に会ったときにあげたチョーカー、着けてごらんなさい。あれ着けたら完璧よ、きっと」
 ドッキーン!

 シーナさまのお口から、チョーカー、という言葉が出たとき、心臓が口から飛び出しそうなくらいに跳ねました。
 久しぶりのおめかしのワクワク気分なんて、一気に吹き飛びました。
 普通の人には単なるアクセサリーに見えても、私にとっては、メス犬マゾペットの首輪、としか思えない、あのチョーカー。
 いただいた当初は、お部屋で自分をいたぶるときによく着けていたのですが、汗やいろいろなおツユで汚してしまうのがもったいない気がして、だんだん着けなくなり、最近はずっと大事にしまったままでした。

 まがりなりにもシーナさまとお出かけするのですから、そこに何かしらのえっちな目論見が無いわけがありません。
 それを私ったら、おめかししてどこかでお食事かしら?なんて能天気にワクワクしたりして。
 きっとこのおめかしだって、私をより効果的に辱めるために必要な道具立てのひとつなのでしょう。
 忘れかけていたムラムラが全身に広がり、健全だったワクワクを瞬く間に不健全なワクワクに塗り替えてしまいました。
 
 私、これからどこで、何をされちゃうのだろう?
 チョーカー、という一言だけで、全身がみるみるうちに疼きだしたのがわかりました。
 久しぶりに穿いたパンティストッキングとショーツの下で、早くもアソコが潤み始めていました。

「あら、もうこんな時間。急がなくちゃ。わたし、車をマンションの前まで持って来るから、先に出るわ」
「直子は、チョーカーを持って、門の前で待ってて。チョーカーは車の中で着けてあげるから」
 そう言い残すと、シーナさまは慌しく玄関から出て行きました。


コートを脱いで昼食を 14