2016年12月18日

非日常の王国で 09

「さあ、どうぞどうぞ。ゆっくり見ていってくださいねー」
 満面笑顔の里美さまにつづいて、ドアの向こうからショールームへと入ってこられたお客様がた。

 最初にお顔が見えたのは、ショートカットで涼しげな目元が理知的な印象の和風美人さん。
 スレンダーな体躯に胸元が大きめに開いたざっくりしたワンピース姿が、アンニュイな色香を漂わせています。

 つづいて、ユルふわヘアーにボストン型メガネでTシャツにジーンズの、見るからに好奇心旺盛そうなキュート系メガネっ娘さん。

 最後に、なぜだか警戒されているような真剣な表情でしすしずと入ってこられた、前髪パッツンのゼミロングでハーフっぽいお人形さんみたいなお顔に、ロリータ系モノトーンの半袖レースワンピをお嬢様風に着こなしたお洒落さん。

 お三かたともお口を、うわー、という形にポッカリ開けて、お部屋を見渡しました。

 里美さまがこちらへ近づいてきて、テーブルの傍らに立っていた私の横に並びました。
 お三かたの視線が、ご遠慮がちながら訝しげに私へと集まります。
 私は、ドキドキしつつもお愛想笑いに努めて小さく会釈し、いらっしゃいませ、とご挨拶しました。

「この部屋にあるものは、どれでも手に取って、気になることがあったら何でもわたしに聞いてください。どうぞごゆっくり」
 里美さまがおっしゃると、はーい、という元気なお声とともに、お三かた共ダダッと壁際のマネキンとトルソーの林に駆け寄りました。

「うわーエロい!このマイクロビキニ、松井先輩とか、超似合いそう」
「こっちのボディスーツはぜひ、レイちゃんに着て欲しいな。ほら、バストとお股のところがジッパーで開くようになってる」
「絶対いやよ。第一あたし、こんなに胸ないもん」
「だったらこっちのアミアミボディスーツは?」

 思い思いにマネキンを指差して、かまびすしいお客様がた。
 そのお姿を背後からニコニコ笑顔で眺めている里美さま。
 私はと言えば、この人たちの前でこれから裸になるんだ、とドキドキとキュンキュンの二重奏。

 お客様がたはそれから、ショーケースを順番に吟味しながらお三かただけでキャッキャウフフと盛り上がっています。
 里美さまと私は、テーブルにお尻を預けて為す術なく見守るだけ。
 このままでは埒が明かないと思われたのでしょう、やがて里美さまが明るくお声をかけました。

「倉島さんご注文のロープは、こちらにご用意してありますよ。あと、スイッチレスバイブがご覧になりたいとおっしゃっていたかたはどなたかしら?」
「あ、はいはいアタシでーす」
 どなたかわからないお声とともにお三かたがテーブルに近づいてこられました。

 高級そうな和紙に包まれた生成りの麻縄をテーブルの上に置く里美さま。
 おずおずと手を伸ばされたのは、ショートカットの彼女でした。
 このかたが、倉島さま、のようです。
「8メートルを2束ね。使用前のなめし方とかメンテナンス方法は、後で説明するわね」
 恐る恐るという感じで和紙の包みに手を伸ばされる倉島さま。

「それで、バイブは?」
「あ、はい。アタシです」
 メガネっ娘さんが元気に手を挙げました。
「これがサンプルね。ご購入されるなら、新品が用意してありますから」
 ミニチュアの雪ダルマさんみたく大きさの違う球体が重なった形状をしたピンク色の物体を、里美さまがメガネっ娘さんに渡しました。

「ギュッと握ってみて」
 里美さまがイタズラっぽくおっしゃいました。
「キャッ!」
 小さな悲鳴をあげたメガネっ娘さんが、握りしめた右の掌をあわてて開きました。

「締め付けると震える仕組みなの。キツク締めるほど震えも激しくなるのよ」
 再び掌を閉じるメガネっ娘さん。
「あー、気持ちいいー」
 握った拳から低く、ヴゥーンという音が聞こえます。

 私は、イベントの最後のほうで着せられたCストリングを思い出していました。
 膣と肛門に突起を挿入して装着する、あの卑猥極まりない悪魔の下着。
 そのCストリングの膣へ挿入するほうの突起が、今メガネっ娘さんが握っているバイブレーターと同じ仕組みでした。

 そして私はステージ上で、実際にそのデモンストレーションをすることを命ぜられ、70名以上のお客様と関係者の方々が見守る前で、淫らに昇り詰める姿をご披露してしまったのです。
 あのときの被虐と恥辱と、それらを上回るほどのからだが消えてしまいそうな快感を全身が思い出し、しばしウットリしてしまいます。

「もしよろしければ、試してみていいですよ。挿入するのなら、この避妊ゴムを被せてね」
 メガネっ娘さんにおっしゃったのであろう、美里さまのお声で我に返りました。
「えっ!?ここでですか?いえ、ま、まさかっ、そんなこと出来ないっすよー」
 メガネっ娘さんが盛大にあわてふためいて、右手をブンブンお顔の前で左右に振っています。

「みんながいて恥ずかしいのなら、そこの右手がおトイレだから、その中でいかが?」
 里美さまがイタズラっぽくニコニコ顔でお薦めすると、他のおふたりも口々に、
「やってみなよ、ヨーコ。せっかく言ってくださるんだから」
「そうだよ。ここに来る途中、すごく楽しみって大騒ぎしていたじゃない?」
 からかうように囃し立てます。
 メガネっ娘さんは、ヨーコさまというお名前みたいです。

「いえいえ、買いますから。実物見て握って良いものだってわかりましたから、お試ししなくても大丈夫ですから」
 ずいぶんと焦ったご様子で弁解されるヨーコさまに、みなさま、あはは、って大笑い。

 そんな和気藹々のおしゃべりのあいだも頻繁に、お客様のお三かたと私で視線が合っていました。
 顔にお愛想笑いを貼り付けたままの私を、おしゃべりの合間合間にチラチラ盗み見てくるお三かたからの視線。
 
 気がつくたびに視線を合わせ、ニコッと微笑みかけました。
 だってみなさま、会社にとって大切なお客様ですし、私は買っていただくほうの側ですから。
 でも、みなさま決まり悪そうに、ササッと目を逸らしてしまわれます。

 そのご様子に気づかれたのでしょう、里美さまが愉快そうにみなさまにおっしゃいました。
「みなさん、ずいぶんこの子が気になるみたいね?ごめんなさいね、紹介が遅れてしまって」
 テーブルのほうに一歩近づかれました。
「立ち話もなんだから、いったん座りましょうか。せっかくいらしたのだから、みなさんといろいろおしゃべりもしたいし」

 里美さま自ら椅子を引いて、立っている私の横の席にお座りになりました。
 テーブルの向こう側に集まっていたお三かたも、つられるように着席されました。
 2対3で向かい合う形になったのですが、先ほど里美さまが、紹介が遅れて、とおっしゃったので、これからみなさまに紹介されるのだろうと、座りそびれる私。

「この子はね、今日これからみなさんに麻縄での自縛を披露してくれる、名前は、うーんと、そうね、エム・・・マゾ子ちゃん」
 身も蓋もない名前で呼ばれ、カッと全身が熱くなる私。

「えーーっ!?」
「マジですか?それちょっと。ヤバイんじゃ・・・」
「うんうん。ハンザイの臭いが・・・」

 口々に驚きのお声をあげられるお三かたに、嬉しそうな里美さまがニッコリ笑ってつづけました。
「やっぱりそう見える?でも大丈夫。安心して。こう見えてもこの子、ちゃんと成人しているから」
「えーーっ!?うそぉ」
 再びあがる驚きのお声。
 年甲斐もないツインテールと学校の制服風衣装に、みなさますっかり騙されてくださったようでした。

「どう見てもJK、下手したらJCに見えますよぉ?」
 引いたお顔の倉島さま。
「そうそう。なんか今にも、ジャッジメントですのっ、とか言い出しそうな感じ」
 ヨーコさまが興味津々の瞳で私を見つめながらおっしゃいました。

「あ、やっぱりわかってくださったのね、コスプレ。同人活動されているってお聞きしたから、ウケるかなと思って、マゾ子ちゃんに頼んで着てもらったの。良かったー」
 悪戯が成功した子供みたいに、心底嬉しそうな笑顔の里美さま。

「でも、キャラよりもこの人のほうが、おムネに存在感が有り過ぎですよね?」
 ロリータさんが小声でポツンとおっしゃり、ウンウンとうなずかれるおふたかた。

「座っていいわよ、マゾ子ちゃん」
 里美さまに促され、里美さまの左隣の椅子に腰掛けました。
「それに、このマゾ子ちゃんにはね、すでにご主人様がいるの。エスとエムの関係のね。一日中裸でご主人様の身の回りのお世話したり、営業中のコインランドリーで全裸にされたり、いろいろ愉しんでいるみたい」

 私のヘンタイ性癖をあっさりみなさまに暴露しちゃう里美さま。
 里美さまが私の痴態をご覧になったのは、最初のランジェリーショップと先日のイベントのときだけでしたが、きっとお姉さまやスタッフのみなさまから、いろいろ聞いていらっしゃるのでしょう。

「そのご主人様がわたしの知り合いで、その人に頼んで今日、来てもらったの。まあ、マゾ子ちゃんにとっては、ご主人様と言うより、麗しのお姉さま、なのだけれど」
 里美さまのお言葉に、ざわつくお三かた。
「キマシタワー」
 ヨーコさまが嬉しそうにおっしゃると他のおふたりも、キマシ、キマシとつぶやかれました。

「あら?そこに反応するなんて、倉島さんたちは、レズビアンではないの?」
 里美さまが不思議そうなお顔で、お三かたにお尋ねしました。

「うーん、とくにそういう意識はないのですが・・・」
 倉島さまが代表するようにおっしゃると、
「ガチなのはメグだけだよね?松井先輩にぞっこん、だもんね?」
 ヨーコさまがからかうようにロリータさんを覗き込みました。
 ロリータさんは、メグさま、というお名前みたい。
 そのメグさまは、照れたように頬を染めてモジモジしていっらしゃいます。

「もちろん興味はあるのですが、そこまで踏み込んでいないと言うか・・・男に期待していないのは確かですけれど」
 倉島さまが、慎重にお言葉を選ぶようなお顔つきで語り始めました。

「あたし、高校の頃に俗に言う官能小説を読んで衝撃を受けて、それからエロいことに興味を持ったのですけれど、最初に読んだのが所謂、調教もの、だったので、緊縛とか拘束とかに憧れちゃって」
「それでネットとかでそういう創作物をこっそり調べたりしていたのですが、自分が興奮出来るものと、すごくドギツイ描写なのに全然濡れてこないような文章があるのがわかって」
「そういうのってほとんどが男性視点じゃないですか?とくにSMものは、女の子を本当に物扱いして男の性欲の捌け口にするだけ、みたいなのが多くて」

「たまに自分に合うシチュがみつかって、それでオナニーすると、すごく気持ち良くて。ただネットでも好みに合うシチュになかなか巡り会えなくて。それで、自分でもこっそり書き始めたんです」
「その頃、男性との経験もしてみたんですけれど、全然気持ち良くなかったんです。粗野だしひとりよがりだし厚かましいし、すぐにオマエはオレのもの、みたいな勘違いするし」

「それで女子大入って、ちゃんと文章の勉強もしておこうと思って文芸部に入ったんです。文章の創作系サークルで学校公認の部がそこしかなかったので」
「でも、文芸部って言うとお堅いイメージだと思うんですけれど、うちはチャラくて。それもヘンに理屈っぽいサブカルかぶれの、鼻につくチャラさなんです」

「たまにケータイ小説みたいなスカスカの文章書いて悦に入って、今度はどこどこの大学と合コン、とか、男の話ばっかりしてるような人が多くて、全然馴染めなくて」
「それで話の合いそうなメンバー誘って同人サークルを立ち上げたんです。非公認サークルってやつですね。それが今日のメンバー。この他にもうふたりいるんですが」

「無理やり連れて行かれた大規模合コンで、白けて先に抜け出したメンバーなんです。その合コン相手が勘違い野郎ばかりで、そこそこ偏差値高いガッコだったけど、誰でもいいからヤラセロオーラ全開って感じで。サイアクだったよねー」
 ヨーコさまがややお下品な注釈を入れてくださいました。

「そうそう。それで抜け出して女性5人だけで飲み直したら、官能小説の話から思春期のヰタ・セクスアリス話で妙に盛り上がっちゃったのよね。なんだ、みんなムッツリだったんだ、って」
 苦笑い気味の倉島さまが、お話を引き継がれました。

「この子」
 とおっしゃってヨーコさまを指差す倉島さま。
「ヨーコの部屋が学校から歩いて10分くらいなんですよ。そこを溜り場にして同人活動しているんです。耽美小説研究会、っていう名称で」

「大きな即売会にも参加して、結構売れるんです。文芸部にはもう幽霊部員状態。他の文芸部員たちからは、G研、なんて陰口叩かれているみたいですけれど」
「ジー研?」
 里美さまが可愛らしく小首を傾げられました。

「自分で慰める、の自慰ですよ。あたしたちの小説は、主人公がひたすら快楽を追求するような話が多いので、オカズ本だ、自慰研究会だって」
「オリジナルもアニメの二次創作も、BLもGLも、何でも書くんですけれどね。男の一方的な陵辱もの以外なら」

「まあ、女性が読んで気持ち良く濡れるような小説を載せたい、って思っているのは事実ですけれど」
「へー。面白そうね。わたしも読んでみたいわ。面白かったらうちのネットショップで扱ってあげてもよくってよ」
 興味津々のお顔でおっしゃる里美さま。

「あ、それは助かります。ありがとうございます。今度持ってきますね。ヨーコのところからここまでも、歩いて15分くらいですから。あ、もちろん、アポ取った上で伺います」
 倉島さまが嬉しそうにお辞儀されました。

「そんな感じなんで、あたしらはレズビアンて言うよりも、男の手を借りない快楽を追求している、っていう感じなんです」
「ヨーコの部屋で会員同士で、ふざけてちょっと縛ったり、愛撫しあったりもするんですけれど、それも同性の手のほうが繊細で気持ちいい、っていう感じですから、レズビアンていうよりも、相互オナニーと言うか、相手のオナニーのお手伝い、と言うか、みたいな感じなんです。仲の良い女子同士のイチャイチャの延長線上ですね」
 
 せっかく倉島さまが里美さまの疑問にお答えを出されたのに、すかさずヨーコさまが嬉しそうにまぜかえしました。
「ただしメグは除く、でしょ?」

 倉島さまのお話をお聞きして、私も学校時代に、このお三かたみたいに自分の性癖を素直に出せるお仲間が周りにいたら、どうなったかなー、なんて考えちゃいました。
 でもすぐ、今のお姉さまの会社での自分の立場が、同じようなものなことに気づきました。
 そのおかげでこれから私は、すっごく恥ずかしいメに遭うことができるのですし。

「なるほどね。それでセルフボンデージ、というわけなのね?」
 里美さまがご納得されたお顔で、倉島さまに微笑みかけました。

「はい。そういう小説も書きたくて、書くなら自分の身で体験してみたいなと思って、ネットで自縛の方法とかいろいろ調べたりもしたのですが、やっぱり動画では細かい所までわからないので、ここなら教えてもらえるかなー、と」
「もちろん、それは後でご披露しますよ。倉島さんは、拘束される側にご興味がお有りなの?」
「そうですね。するのもされるのもやってみたいですね。肌に縄をかけたまま街中を歩いたりも」

「へー、エス側にもエム側にも興味があるんだ。このマゾ子ちゃんは、野外露出もスペシャリストよ」
「そうなんですか!?」
 一斉に向けられた尊敬のような侮蔑のような、好奇心に満ち満ちたお三かたのまなざしが気恥ずかしいです。

「あと、セルボンデージでアイスタイマーってあるじゃないですか?氷が溶けて鍵がリリースされるまで拘束されたままっていう。身動き取れなかったり、すごく恥ずかしい格好のままだったり、バイブ挿れっ放しだったり。あれも一度してみたいですね。気持ちいいんだろうなー」
 うっとり妄想するかのように宙空を見つめる倉島さまに、同意するようにウンウンうなずかれるヨーコさまとメグさま。
 
 お三かたのご様子に私とかなり近い嗜好を感じ、自分のヘンタイ性癖が全面的に肯定されたような気がして、すっごく嬉しくなってきました。

「アイスタイマーもいいけれど、鍵を容器に入れて凍らせたり氷を沢山用意したり、手間がかかるわよね?まあ、その手間も含めて準備するワクワクソワソワまでもが愉しいとも言えるけれど」
 里美さまが、テーブルにあったスチール製の頑丈そうな手錠に手を伸ばしながらおっしゃいました。

「もっと手軽に、鍵を待ち侘びる方法を教えてあげましょう」
 お手に取った手錠を私の右手首にカチャンと嵌めて、ご自分の左手首にもカチャン。
 私の心臓がドキンと跳ねました。

「こういう、嵌めるときには鍵のいらない手錠ね。これを拘束の最後のカギにするの。自縛でもハーネスでも好きに自分を拘束して、最後に両手を使えないように手錠をするわけ」
 右手に持った小さな鍵をみなさまに見せる里美さま。
「あなたがたのお家の郵便受けは、玄関ドアに付いている?それとも外かしら?」

「うちはマンションの4階なので、ポストは1階のエントランスですね」
 と倉島さま。
 倉島さまは、ご自分のバッグからノートとペンを取り出してメモを取り始めました。
「ワタシは2階だけど、エントランスまで降ります」
 とメグさま。
「アタシんとこは建物が古くて2階建ての1階だから、それぞれ戸別にドアに受け口が付いてますね」
 と最後にヨーコさま。
 
「あら、ヨーコさんのところって、みなさんが溜り場にされているお家よね?それならセルフだけじゃなくて、みんなで集まって誰かひとりをえっちに虐めるときとかにもオススメよ」
 手錠の鍵をプラプラさせながら里美さまがつづけます。

「この鍵をね、ご自宅宛てのご住所を書いた封筒に入れて適当な郵便ポストに投函しちゃうの。ご近所のポストからでも翌日まで戻ってこないわよね」
「たとえば投函した日の夜に手錠を嵌めたとしたら、翌日、郵便物が配達されるまで、どう足掻いても絶対外せないわけ。外したくても手元に鍵は無いのだから。拘束の陶酔感と絶望感がたっぷり味わえるわよ」

「玄関の内側で郵便物を受け取れるヨーコさんのお家なら、足まで縛っちゃってもいいわね。心待ちにしていた郵便屋さんが来たら、這いつくばって玄関まで行って、封筒を破って鍵を取り出して開錠」
「みなさんでイチャイチャするときにも、イジワルに応用出来るでしょ?拘束する側もされる側も、ちょっとした拉致監禁気分が味わえるはず」

「あ、でもひとりのときに後ろ手に施錠しちゃうと、手探りで鍵穴に鍵を挿すことになって意外と手こずるから、事前にちゃんと練習しておいたほうがいいわよ。指で鍵穴の感触がわかるように」
「それと、後ろ手錠って思うよりもかなり不便なの。ものを食べるとか日常生活的にね。自分のからだもまさぐれないから、ひとりのときに自慰的にも愉しみたいならリモコンのバイブとか装着しておいたほうがいいわね」

「ポストが外にあるなら、そこに強制露出プレイが加わるの」
「外に出なくちゃならないから足は縛れないけれど、敢えて外に出るには恥ずかしい格好になって手錠をかけちゃうの。キワドイ水着とか、素肌にブラウス一枚だけとかね。もちろん勇気があるなら全裸でもいいけれど」

「それで、お部屋を出て郵便受けまで取りに行ってお部屋に戻る。途中誰かに会っちゃったら手錠もしていることだし、ハンザイに巻き込まれたのか、って大騒ぎになるかもしれないから、真夜中に取りに行くことをオススメするわ」
「もしも大騒ぎになっても、わたしに責任は無いからね?あくまでも自己責任で、覚悟してやってね」
 里美さまがみなさまを見渡し、イタズラっぽく微笑まれました。

「面白そう!」
 真っ先に倉島さまの弾んだお声。
「今度ヨーコんちでやってみよう。うちのマンション、世帯数多くて夜でも出入り多いから、エントランスに手錠姿で出るのヤバそうだし」

「レイちゃんがアタシんちで拘束姿だったら、アタシ、張り切っていっぱいイタズラしちゃうだろうなー」
 ヨーコさまも弾んだお声で、倉島さまに軽く肩をぶつけられています。
 レイちゃんというのが倉島さまのお名前みたい。

 それにしても里美さま、お見かけによらずそういうアソビにお詳しそう。
 そのお口ぶりは、どう聞いてもご経験者のおっしゃりかたでした。
 意外とSMアソビのベテランさんなのかもしれません。
 私もその、手錠の鍵を郵便で送ってしまう、というひとりSMアソビをすっごくやりたくなっていました。

「ポストが外にあって郵便タイマーが危険なら、もっと手軽に鍵を一定時間使えなくする便利アイテムもあるわよ」
 里美さまがご自分の手首の手錠だけを外して立ち上がり、ショーケースのほうへスタスタと向かって、隣の棚から大きめのダンボール箱を取り、すぐに戻られました。

「これ。タイマー付き収納ボックスゥー」
 青い猫型ロボットさんがひみつ道具を取り出すときのような声色と共に里美さまがダンボール箱から取り出されたのは、20センチ四方位のほぼ正方形なジップロックコンテナみたいな形状の、白い蓋以外透明なプラスティックの箱でした。
 ただし、ジップロックコンテナよりもだいぶ厚いプラスティック製で、かなり頑丈そうな感じです。

「本来は、普段生活する中で感じるちょっとした欲望のコントロールをしたい人たちのために考案されたボックスらしいの」
「たとえば禁煙したい人がタバコを入れたり、受験生が勉強すべき時間だけ、携帯電話とかゲームのコントローラーとか気が散りそうなものを遠ざけたり」

「この蓋のタイマーを合わせて封印すると、合わせた時間にならないと絶対蓋が開かない仕掛けなの。1分間から丸10日間まで、分刻みで好きな時間に合わせられるのよ」

 おっしゃってから不意に私の左手首を取り、さっきご自身で外されたもう片方の手錠を、私の左手首にカチャンと嵌めました。
「あっ!」
 文字通り、あっという間に両手を手錠拘束されてしまった私。

「それでこの鍵をボックスの中に入れるでしょう?」
 透明な箱の中に小さな鍵がチャリンと落下しました。
「で、蓋をしてタイマーを合わせるの。そうね、3分位でいいか」
 蓋の上のダイアルを回してデジタルの数字を 3:00min に合わせました。
「最後にここを押す、と」
 里美さまがダイアルを押すと、5,4,3,2,1のカウントダウンの後、蓋の側面のストッパーがジーっと機械音をたててボックスに嵌め込まれ、タイマーのデジタル数字が秒刻みで減り始めました。

「これでマゾ子ちゃんは、少なくともあと3分間は、この手錠を絶対外せない状況になった、というわけ」
 ニッと笑った里美さまの瞳に再び、妖しい光がより色濃く宿ったように見えました。


非日常の王国で 10


2016年12月11日

非日常の王国で 08

 とある日の昼下がり。
 綾音部長さまからお呼び出しがかかり、メインルームの綾音さまのデスクの前で対面していました。

 その日もお昼休み後にリンコさまからメールでご命令をいただき、すでにとても恥ずかしい格好にさせられていました。
 ちょうどその日はインターネットで盛り上がっているナショナルノーブラデーというノーブラ推奨の日だったらしく、ノーブラなことが一目でわかるお洋服ということで選んだそうです。
 私が着ることを命ぜられたのは、おっぱいのところだけまあるくふたつ、ポッカリとくり抜かれたピチピチのタンクトップ。

 ふたつの穴からおっぱい部分だけを放り出すように全部露出させているのですが、タンクトップが濃い紺色なので白い素肌とのコントラストが余計に際立ち、嫌がらせのように飛び出たおっぱいばかりが目立つ姿でした。
 歩くたびにおっぱいが無造作にプルンプルン暴れるのが、自分の視点で嫌というほど見えていました。
 
 おへそまでに満たないタンクトップの下は、当然スッポンポン。
 タンクトップと同じ色のニーハイソックスを穿いているので、おっぱい部分と同じように、剥き出しな下半身の白さも卑猥に目立っていることでしょう。

 全裸よりも恥ずかしい、そんな破廉恥極まりない姿を更に強調するアクセサリーも用意されていました。
 ネットショップの宣伝用にレビューを書かなくてはいけない、ボディジュエリーの新作商品たち。

 紺色のチョーカーからゴールドチェーンで左右の乳首まで繋がれたニップルクリップ。
 乳首を絞るリングの下にはキラキラ光る金色の小さな鈴がぶら下がっています。

 下半身には、裂け目を囲む左右のラビアに挟んで装着するラビアチェーン。
 股間に垂れ下がったチェーンの先端にも、乳首のと同じ鈴がぶら下がり、動くたびに3つの鈴が軽やかにチリンチリンと小さく音をたてていました。

 本来なら秘めておくべき私の敏感な三箇所の恥部、尖った乳首と潤んだ秘唇を、一際目立たせるようにキラキラ金色に輝くチェーンと3つの鈴。
 そんなニンフォマニアックな私の姿をジロリと一瞥した綾音さまは、とくにご感想をおっしゃることもなくフッと艶っぽく微笑まれてから、おもむろにご用件を切り出されました。

「うちのネットショップがショールーム制度を始めたのは、以前ミーティングで伝えたわよね?」
「はい」

 ネットショップ部門がこちらのオフィス近くにお引っ越ししてきてスペースが広くなったのを期に、実際にアイテム実物を見てみたいというお客様向けに予約制でショールームを開いた、というお話でした。
 予約出来るのは、ネットショップでのご購入履歴が一万円以上ある女性のお客様のみ。
 毎週木曜日と金曜日の午後2時以降であれば、メールかお電話で日時をご予約いただき、ご来店いただいてごゆっくりとアダルティなラブトイズをお選びいただけるという、女性限定のサービスです。

「おかげさまで、コンスタントにご予約もいただいて、順調に売上も伸びているのだけれど」
 綾音さまがパソコンのキーを叩きながらおっしゃいました。
「あるお客様からご来店に際してのちょっとしたリクエストをいただいて、愛川さんからわたくしに相談があったの」
 愛川さんというのは、ネットショップの責任者でイベントのときもお手伝いしてくださった里美さまのことです。

「なんでもそのお客様は、セルフボンデージにご興味がおありで、ショールームに行ったときにロープの扱い方や自縛、自分で自分を縛ることね、について詳しく教えて欲しい、っておっしゃっているのだって」
 綾音さまの視線が、私のタンクトップから飛び出している剥き出しのバストに注がれます。

「そのかたは、購入履歴も多い優良なお客様だから無下にお断りするのもなー、って思ったときに、あなたの顔が浮かんだのですって、愛川さんの頭の中に」
「それでわたくしに相談した、というわけ。チーフに聞いてみたらあなた、チーフに教えられるくらいロープ捌きが上手って言うじゃない。よくひとりで自分を縛って遊んでる、って」
「高校生の頃に、百合草女史に仕込まれたのですってね。エリートじゃない?」

 おっしゃってから私の目を、じーっと5秒間くらい見つめてきました。
 綾音さまのお口からやよい先生のお名前が出て、私はドキン。

「次の金曜日、午後3時にショールーム。4時にご来店の約束だから、愛川さんと段取り打ち合わせして。終わったらこちらへ戻らず、直帰していいわ」
 ハナから私の都合やイエスかノーかの返事など聞くつもりもない、決定事項の業務命令でした。

 お電話の呼び出し音が鳴り、ほのかさまがお出になるお声が背後から聞こえます。
 ほのかさまのお席は綾音さまと3メートルくらいの空間を挟んだ向かい合わせ。
 ほのかさまは、私の剥き出しのお尻と、両腿のあいだにキラキラ光るゴールドチェーンを眺めながらお電話のご対応をされていることでしょう。

「そうそう、当日は、自分で使っている緊縛用の麻縄を持ってくること。それと扱い方をわかりやすくレクチャー出来るように頭の中を整理しておくこと」
「いらっしゃるお客様は、沿線の女子大の学生さんだそうだから、そんなにかしこまる必要は無いと思うわ。すべて愛川さんに従いなさい」
 最後に綾音さまがご命令口調でおっしゃられ、開放されました。

 まったく見知らぬ初対面のかたの前で、緊縛のレクチャーをする・・・
 扱い方をお教えしたら、そのかたをちょっと縛ってみたりするのだろうか?
 ううん、セルフボンデージにご興味、っておっしゃったから自縛の方法が知りたいのでしょう。
 そうすると、私がそのかたの前で実演することになりそう。
 やっぱり裸になるのだろうな・・・

 その日までドキドキしっぱなし。
 お家に帰ると、ずっと昔、私がまだ高校生の頃にやよい先生からいただいた、やよい先生のパートナーであるミイコさま主演の自縛講座DVDを何度も見返し、実際に自分を縛りながら復習しました。
 縛っているうちに自虐オナニーが始まり、ついついキツく縛りすぎて二の腕やおっぱいに縄の痕が残ってしまい、翌日オフィスでリンコさまたちにからかわれました。

 いよいよ当日。
 トートバッグの一番下に愛用の麻縄の束をひっそりと詰め込み、出社しました。
 その日のオフィス勤務者は、綾音さま、リンコさま、ミサさま、ほのかさま。
 黒い首輪型チョーカーを着けているのにお昼過ぎになっても珍しく誰からもえっちなご命令は無く、みなさまから、がんばって、とからかうような激励を受けつつ、3時15分前にオフィスを出ました。

 里美さまのオフィスは歩いて10分くらい。
 大きな通り沿いの地下鉄出入口から裏道に入り、少し歩いた雑居ビルの2階。
 訪問するのは初めてでした。

 一階がセレクトショップの店舗になった小洒落た外観のビル2階に到着したのは3時4分前。
 River of LOVE と書かれた可愛らしい小さな看板が掛かったえんじ色の鉄製ドアの前でインターフォンを押しました。
「ダブルイーの森下です」
 はーい、というお声とともにドアが開き、里美さまがニッコリ、可愛らしいお顔を覗かせました。

「直子ちゃん。わざわざありがとうね。さ、入って入って」
 普通のお家みたく玄関は沓脱ぎになっていて、フワフワしたスリッパを勧められました。
「お客様にゆっくりくつろいでいただきたいと思って、靴を脱いでいただくようにしたの」
 短い廊下の向こうにもう一枚ドアがあり、それを開くとカラフルな空間が広がっていました。

 一見、ファンシーショップのようなポップでキュートな印象。
 明るい壁紙、アートなポスター、整然と並ぶガラスショーケース、ゴージャスなマネキン人形たち。
 ただし、ショーケースに並ぶ色とりどりのグッズたちは、よく見るとみんな卑猥な形状。
 マネキンたちが着ているのは、布面積が極端に少ない下着だったり、スケスケだったり、ラテックスだったり。
 お部屋の中央に6人掛けくらいの大きなテーブルが置いてあり、その上にもアダルティなラブトイズがいくつか並べてありました。

 それでも全体の雰囲気はファンシー側に踏みとどまっていました。
 スイーツの充実した女子向けのオシャレカフェテラスの感じ?
 通りに面した側に並ぶ窓を飾る、真ん中分けの花柄ドレープカーテンがメルヘンチックな雰囲気を盛り上げています。

「ここって、もともとはけっこう広い喫茶店だったの。ショールーム部分は、その雰囲気を残して、壁で区切った向こう側がオフィスと倉庫ね」
 マネキンやトルソーが並んだ壁を指さして、里美さまが教えてくださいました。
 マネキン人形たちの隙間に、そちらへつづくのであろうドアが見えました。

「今日は、バイトの子達には先に上がってもらったから、今ここにはわたしと直子ちゃんだけ。そのほうがリラックス出来ると思って」
 グラスに注いだ飲み物をテーブルの上に置いて、里美さまが微笑まれます。
 今から見ず知らずの人に自分の恥ずかしい性癖をご披露すると思うと、とてもリラックスどころではありませんが、そのお心遣いが嬉しいです。

「ロープは持ってきた?おっけー。わたしも直子ちゃんの自縛レクチャー、楽しみだわ」
 やっぱり自縛を実演することになるようです。

「あの、えっと、縛るときは、やっぱり裸になったほうが、いいのでしょうか?」
 気になっていたことを恐る恐るお尋ねしてみました。
 里美さまは一瞬びっくりされたようなお顔になり、それからクスッと笑われました。

「そのへんは直子ちゃんに任せるわ。裸でも下着でも。なんならここにある衣装で気に入ったのがあったら、着てもいいわよ」
 そこでいったんお言葉を切り、私の顔をまじまじと見つめる里美さま。

「でも意外ね。そんなこと聞くなんて」
 少し苦笑いが混じったような笑顔を作って私に向け、里美さまがつづけました。
「直子ちゃんなら、こういう機会は喜び勇んで全裸に成りたがるんだろうと思っていたわ。ひょっとして何か常識的なしがらみかなにかで遠慮している?ショールームの運営に迷惑がかかるとか?責任者としてのわたし的にはぜんぜんかまわないのよ?」
 私の目を覗き込むような里美さまの視線。

 それまで里美さまとは、あまり親しくお話したことはありませんでした。
 出会いの場であったお姉さまのランジェリーショップでは、店員さんとお客さんの間柄でしたし、就職してからは、ネットショップのご担当者としてお仕事を通したおつきあい。
 イベントのときも、ミサさま指揮の元、パソコンのオペレーターとして楽屋で常にクールにお仕事されていました。

 ただし、それこそお姉さまとの出会いのときから、先日のイベントまで、里美さまは私のヘンタイ性癖の行状を間近でつぶさに目撃されていました。
 イベントの楽屋や打ち上げの席でのリンコさまたちの会話もすべてお耳に入っていたはず。
 私があの場でスタッフ、関係者全員のマゾペットとなったのは、ご存知のはずでした。
 
 それでも、今日も私のことを呼び捨てではなく、ちゃん、付けで呼んでくださったり、他のスタッフのかたたちみたいに、私を辱めて愉しもうとも思っていらっしゃらないようなご様子に見えました。
 そういうことには淡白なかたなのかな?
 でも、ランジェリーショップのときには、気絶した私の膣に指を挿れてイタズラされていたらしいですし・・・
 里美さまとは、あくまでも別々の会社の社員、という関係でもあり、どう接すれば良いのか、決めかねていました。

 出会ったときは、お姉さまと里美さまの店長と店員の関係を超えていそうな深い信頼関係に、お姉さまとの仲を疑ったりもしちゃったけれど、里美さまの品があって凛々しい佇まいは、ほのかさまと通ずるところもあり、大好きでした。
 里美さまもリンコさまたちのように、興味津々でエスっぽく振る舞ってくださったほうが、気持ち的には楽なのですが。

 まあ、いずれにせよ、綾音さまから今日は里美さまに従うように命ぜられていますので、先ほどの、わたし的にはぜんぜんかまわない、というお言葉が里美さまのご希望と解釈し、今日、お客様の前で裸になることは、私の中で決定しました。

「それでね、直子ちゃん、ちょっと変装しておいたほうがいいと思うのね」
 里美さまが真剣なお顔でおっしゃいました。
「今日来る3人の内のおひとりが、ご近所に住んでいらっしゃるらしくて、よくあのオフィスビルのモールにもお買い物に行かれるそうなの」
「今日のレクチャーの後で、そういうところでバッタリ出くわしてしまったら、お互いに気不味いでしょう?お客様も直子ちゃんも」

「えっ!?3人ですか?」
 びっくりして尋ねました。
「あれ?早乙女部長、教えてくださらなかったの?イジワルだなあ」
 苦笑いの里美さま。

「昨日メールが来たの。友達も連れて行っていいかって。同じ大学のサークルのお仲間らしいわ」
「調べてみたら、そのかたたちもうちで数回の購入履歴があったし、そのうちのおひとりは、どうしても欲しいものがあるっていうことだったからオッケーしたの。ちょうど在庫もあったから」

「倉島さん、っていうかたが予約を入れてくださったお客様ね。女子大で文芸系の同人サークルに所属されているみたい」
 
 唐突に里美さまが座っている私の背後に回り、私の髪を弄り始めました。
 私に変装を施してくださるみたい。
「直子ちゃんの髪って柔らかいのねえ。お手入れも行き届いてるからアレンジしやすそう」
 いつの間にかヘアスプレーまで持ち出してきて、左サイドの辺りをまとめ始めます。

「でーきたっと。うわー。すごく稚くなっちゃった」
 5分位の髪弄りの末にお声があがりました。
 コンパクトを目の前に差し出され、鏡を覗き込みました。

 両サイドの上の方で大きな赤いリボンに左右それぞれまとめられ、緩くウェーブのかかった髪が垂れ下がるツインテール。
 正面は真ん中分け。
 ツインテールなんて多分、小学校のとき以来でしょう。
 確かにずいぶん幼い感じの顔になっていました。

「このあいだの夕張小夜さんと比べたら、雰囲気に親子くらいの違いがあるわね。直子ちゃんて面白い、変幻自在。これなら普通の髪型に戻したら絶対別人」
 ご自分のお仕事にご満足気な里美さま。
「こんないたいけっぽい子が自縛するなんて、考えただけでゾクゾクしちゃう」
 嬉しそうに私をじーっと見つめています。

「そうだ。どうせなら徹底的に変身しちゃいましょう。今の直子ちゃんに、ピッタリのコスプレ衣装があったのを思い出したの」
 いそいそとマネキンの林を掻き分けてオフィスのお部屋へと入っていかれる里美さま。

 待つこと3分くらい。
 そのあいだ、テーブルの上に並んだグッズを眺めていました。
 レザーの首輪、スチールの手錠、棒枷に繋がった足枷、チェーン、ローソク、バイブレーター、ローション、クリップ・・・
 およそファンシーショップに似つかわしくないアブノーマルなものたちが、雑然と並べてあります。
 中には、私にも用途がわからないものも。

 この後、私はお客様の前で裸になって自縛して、それからどんなことをするのか、されるのか・・・
 マゾ気分がどんどん膨らんでいく中、里美さまがスーツカバーと紙袋を提げて戻られました。

「キャラ設定に合わせたサンプルだからサイズが小さいかもしれないけれど、まあ、どうせすぐ脱いじゃうのだし」
 テーブルの上にお洋服を並べながらおっしゃいます。

「同人活動をしているのならきっと、アニメもお好きなはずよね?これもお客様サービスの一環ということで」
「うちはコスプレ衣装のオーダーメイドも承っているから、ひょっとしたら何かオーダーもらえるかもしれないし」

 取り出された衣装は、一見して学校の制服風。
 白のシンプルな半袖ブラウス、茶系のベージュぽいニットベスト、グレイのプリーツミニスカート、そして白い三つ折りソックス。
「着てみて、着てみて」
 里美さまの楽しそうに弾んだお声。

 その日は、脱ぎやすいようにと前ボタン開きのゆったりしたワンピースを着てきました。
 下着は、濡れジミが目立たないように黒の上下。
 里美さまに促されて立ち上がり、ワンピースの前ボタンを外し始めます。

 里美さまの真っ直ぐな視線が注がれる中、ワンピースを脱いで下着姿に。
 今回はここまでで許されますが、お客様がいらっしゃったら、すべてを脱がなければいけないのです。
 乳首と肉芽にグングン血液が集まってくるのがわかりました。

 衣装は全体的に少し小さめでした。
 ブラウスとベストにおっぱいが押し潰される感じ。
 ミニスカートも付け根ギリギリで、少し伸びをしたら黒い股間が覗けそう。

 最後に三つ折りソックスを履いて鏡を覗くとわかりました。
 髪色こそ違いますが大きめな赤いリボンのツインテールに、学校の制服風衣装。
 少し前に流行ったラノベ原作近未来学園都市ものアニメの準主役級キャラクターでした。

「やっぱり似合うわよ直子ちゃん。作品設定通りに中学生って偽っても通っちゃいそう」
 いえいえ、それは絶対ナイです。
「マリみての衣装もあったのだけれど、こっちにして正解ね。マリみてだと今どきの女子大生は知らないかもしれないし」
「どっちのキャラも、お姉様にぞっこん、っていうところが直子ちゃんと一緒よね?」
 里美さま、意外と流行りの深夜アニメにお詳しいみたいです。

「そろそろいらっしゃる頃ね」
 時計を見ると午後4時まであと10分でした。

「いらしたら、接客はわたしがやるから、直子ちゃんはレクチャーまで、そこに座って適当にしていて」
「お客様のご希望を聞いて、アイテムを一通りご紹介したら声をかけるから、直子ちゃんの出番」
「わたしが聞いているのは、菱縄縛りの実演が見たい、っていうことだけなのだけれど、その他にも何かリクエストがあったら、出来る限り応えてあげてね」

「もちろん直子ちゃんの本名とかは教えないし、ダブルイーの社員ていうことも伏せておくわ。わたしの知り合いのドMの子、って紹介するつもり」
「ロープのお手入れの仕方とかも教えてあげて。けっこう高い本格的な麻縄のお買上げは決定しているから」

「それだけじゃなくて、わたしがお客様とセルフボンデージについてお話しているとき、何か気がついたことがあったらどんどん口出ししてきていいから。お客様も実践している人の言葉を聞きたいでしょうし」
「あ、それと、レクチャー中にわたしが写真を撮るけれど、御社の早乙女部長にご報告するためだから、気になさらないでね」
 慈愛に満ちた表情で、おやさしげに笑った里美さま。

 その笑顔を見て私は、里美さまに思い切り虐められたい、と強く思いました。
 こういうおやさしげなかたが、どのくらいイジワルに、残酷になれるのか、それを見てみたい。
 少し前にカフェでほのかさまに虐められたときに感じた、ビタースイートな被虐感が五感によみがえりました。
 そのためには、まずはマゾの私から、里美さまにかしずかなくては。
 
「わかりました。今日は綾音部長さまから、すべて里美さまに従うようにと言いつけられています。でも、そのお言いつけが無くても、私は素敵な里美さまにすべて従うつもりでここに来ました。何でもご遠慮なくご命令ください」
 自分の口から出る被虐的な言葉に、マゾ性がビンビン反応して粘膜が疼くのがわかりました。

「私はどうしようもない露出狂ヘンタイマゾ女ですから、里美さまと、本日いらっしゃるお客様がたのご要望に、どんなに恥ずかしいことでもすべて、お応えすることを誓います」
 里美さまの目をじっと見つめ、期待と不安にゾクゾクしながら、縋るようにそう宣誓しました。

「うふふ。可愛らしいマゾ子ちゃんだこと。愉しみだわ。期待しているわよ」
 里美さまの瞳にチラッと一瞬、妖しい光が宿ったように見えました。

 そのときチャイムがピンポーンと鳴り、インターフォンからお声が聞こえてきました。
「4時、あっと16時に予約を入れている倉島と申します。ちょっと早く着いちゃったのですけれど、大丈夫でしょうかー」
 緊張されて無理やりハキハキしているような、若い女性の上ずったお声が聞こえました。

「はいはーい。ようこそいらっしゃいませー」
 明るいお声でインターフォンに返し、いそいそと玄関へ向かわれる里美さま。

 私は立ち上がり、テーブルの傍らでお出迎えするべく、ドキドキしながらお客様が入ってこられるのを待ちました。


非日常の王国で 09


2016年12月4日

非日常の王国で 07

 オフィスに戻ると、綾音部長さまとリンコさまミサさまが、デスクの上に何枚ものデザイン画を広げ、打ち合わせの真っ最中でした。

「ただいまー。集めたサンプルや契約書類、間宮部長の分まで持ってきました。少しでも早いほうが良いかと思いまして」
 ほのかさまがツカツカと綾音さまたちに近づいていかれました。

「おお、たまほのー、おつかれー、お帰りなさい」
 ニコニコ手を振るリンコさまの横で、すごく嬉しそうなミサさま。
「ご苦労さま。今ちょうど、例のガールズバンドの衣装に取りかかったところだったから、ナイスタイミングよ。早速見せてくれる?」
 綾音さまがデスクの上を片付けながら、おっしゃいました。

 私は、おつかいを頼まれて買ってきた文房具類をお渡ししようと綾音さまに近づきました。
「ああ。ありがとう」
 受取りながら私を見た綾音さまのお顔が、おやっ?という感じに曇りました。

「あなた、出るときは確か、ブラジャーしていたわよね?」
 私の胸元を見つめつつの目ざといお尋ね。
「あ、はい・・・」
 やっぱり一目見てわかっちゃうほど、乳首のポッチ、目立ってるんだ・・・
 オフィスに戻るまでにすれ違った人たちの人数を考えて、ドキドキがぶり返してきます。

「わたしが命令してみたんです。お茶しているときに」
 カートから布地の束を取り出しながら、ほのかさまがおっしゃいました。
「たまほのがあ?」
 驚き顔のお三人を代表するみたいに、リンコさまがカン高いお声をあげました。
 傍らのミサさまは、信じられない、という感じで大きな瞳をまん丸くされています。

「チョーカーを着けているときは虐めて欲しいとき、というお話でしたし、直子さん、悦んでくれるかな、と思って・・・いけなかったですか?」
 不安げなお顔で、綾音さまたちのご様子を窺うほのかさま。
「ううん。ぜんぜんいけなくない、って言うか、むしろグッジョブ!」
 リンコさまのお返事で、お三人が一斉にお顔をほころばせました。

「そっかー。たまほのもナオコのヘンタイ性癖に興味津々なんだね。これからもどんどん、ナオコを悦ばせてあげるといいよ」
 リンコさまの明るいお言葉にほのかさまもホッと、笑顔が戻りました。

「その格好で、あのカフェからここまで戻ってきたんだ?」
 リンコさまが私に視線を移して尋ねてきます。
「あ、はい・・・」
「ジロジロ視られたでしょう?」
「・・・と、思います・・・」
 リンコさまの視線が私の下半身に移動しました。

「と、いうことは・・・」
 私ににじり寄ってきたリンコさまが素早く私のワンピースの裾に手をかけました。
「それーっ」
 掛け声とともにワンピの裾を盛大にずり上げられました。

「ああんっ」
 為す術もなく露になる私の下半身。
 腰にぴったりフィットしたタイトなニットですから、リンコさまが手を離しても元に戻りません。
 おへその下から下腹部全部が丸出しになりました。

「やっぱりねー。カフェの席で脱がせたの?」
 ほのかさまに振り向いたリンコさまのお声。
「あ、はい。先にショーツを脱いでもらって、写メを撮ったのですけれど、直子さん、まだつまらなそうだったから、ブラジャーも」
 ほのかさまが嬉しそうに私の恥ずかしい写真をみなさまにお見せしています。

「グッジョブ!グッジョブだよ、たまほの。そういう虐め方、いいなあ。今度アタシもやってみようっと」
 リンコさまのはしゃぎ声。
 ミサさまは、愛おしそうにほのかさまを見つめています。

「たまほのはよくやったけれど、リンちゃんはだめよ。バッドジョブね。せっかく直子がエロティックな姿をしているのに、そんな雑なめくり方ではエレガントではないわ」
 綾音さまからニヤニヤ笑いでクレームが入ります。
「あ、そうですね。失礼しました」
 リンコさまが手を伸ばし、私のワンピの裾を綺麗に折りたたむ形でまくり直してくださいました。

 ワンピースのスカート部分がおへそまで折りたたまれて固定されてしまいました。
 お尻丸出し。
 短かめなニットセーターだけを着ているような状態でした。

「お似合いよ直子。とてもエロティック。こういう普通の日常の場にひとりだけヌーディストがいるのって、西洋美術の名画みたいで、クリエイティヴなインスピレーションが湧いてくるわ」
 綾音さまの視線が艶かしく私の肌を撫ぜます。
「今日はその格好でお仕事なさい」
 決めつけるようにおっしゃいました。

 今日はお姉さまがお戻りになる日だというのに・・・
 みなさもそれはご存知のはずなのに・・・
 下半身丸出しノーブラニットの姿でお迎えすることになるんだ・・・
 あらためて、自分がオフィスの慰み者になってしまったことを思い知り、被虐感が全身を駆け巡ります。

「脱いだ下着はどうしたの?」
 リンコさまが私に尋ねました。
「あ、わたしが持っています」
 ご自分のバッグから私のブラとショーツを取り出すほのかさま。

「へー。これがナオコの勝負下着なんだ」
 ほのかさまから受け取って、みなさまに見えるように広げたリンコさま。
 やっぱりみなさま、私がお姉さまと会えるワクワク感を、見透かしていたみたい。

「フリルレースで可愛いけれど、もう汚しちゃってるじゃない。本当にスケベな子」
 イジワルくクロッチ部分を私に見せてくるリンコさま。
 純白の中そこだけ変色したシミに、カッと頬が熱くなりました。
「安心して。アタシらがもっとナオコらしく改造しといてあげる」
 何を安心すればいいのかわかりません。

 その後は、社長室にひとりこもり、お仕事をつづけました。
 もちろんご命令通り、下半身丸出しの姿で。
 綾音さまたちは、メインルームで打ち合わせをつづけられているご様子。
 途中1時過ぎに綾音さまがランチに行かれる、というご連絡があった以外、誰にも構われずに時間が過ぎて行きました。

 お姉さまが戻られたのは、午後2時を少し過ぎた頃でした。
 メインルームがざわつく気配を感じてわかったのですが、この姿でお出迎えに飛び出す勇気が出ませんでした。
 数分間の逡巡の後、やっぱりお出迎えしなくちゃ、と立ち上がったとき、コンコンとドアがノックされ、間髪を入れずに開かれました。

「あっ!」
 私の姿を一目見たときのお姉さまのお顔。
 ドアを閉めるのも忘れ、あ、の形でお口をポカンと開き、数秒間固まっていらっしゃいました。
「あはははは」
 つづいて弾ける哄笑。
 ドアの外からもクスクスというつられ笑いが聞こえてきました。

 私は、一瞬股間を隠しかけたのですが、お姉さまのとても嬉しそうなご様子と、久しぶりにお顔を見れた嬉しさに、自然と両手が後頭部へと上がっていました。

「あたしもさ、直子がすぐに出てこないから、すでに素っ裸にされていたりして、とか予想はしていたけれど、まさか、そんなに直子らしい姿で出迎えてくれるなんて」
 目尻に涙を浮かべるほど笑い疲れたふうのお姉さまが、ご自分のデスクにバッグを置いて、背中を投げ出すように椅子にお座りになりました。

「まったく。こういうことに対してのうちのスタッフの順応性と団結力は大したものよね」
 
 ドアを閉じてふたりきりになった後、お姉さまの出張中に他のみなさまからされたことを、ほのかさまにしたようにひとつひとつご説明しました。
 もちろん、つい数時間前のほのかさまのご命令も追加して。
 ご自分のバッグの中身を片付けながら聞いてくださっていたお姉さまが、聞き終えておっしゃったご感想が上のお言葉です。

「よかったじゃない?みんなで直子を虐めてくれて。直子がずっと思い描いていた理想のマゾ生活に今のこのオフィス、かなり近い状態じゃない?」
「それは、そうなのですけれど・・・でも、やっぱり恥ずかしいです・・・」

 お姉さまに服従ポーズをじーっと視られながら、ムラムラがどんどん昂ぶってくるのがわかりました。
 本当はワンピースなんか脱ぎ捨てて全裸になって、お姉さまに抱きしめて欲しい気持ちでいっぱいでした。

「あら?なんだか嫌々やっているような、うちのスタッフがガチ苛めしているような、可愛くないご感想ね?」
 私の気持ちを知ってか知らずか、お姉さまはイジワルモードに入りつつあるようです。
 
「何言ってるの?あたしたちは直子に、ちゃんと選択肢を残してあげているじゃない。チョーカーをしていないときは何もしない、って」
 お片付けが一段落されたらしいお姉さまは、椅子から私を非難するような険しい目つきで見上げておっしゃいました。
「それなのに直子は、ずっとチョーカーを着けて出社している。つまり全部、直子が望んだことでしょう?そうじゃない?」

 おっしゃる通りでした。
 イベント後ずっと朝起きると、今日は何をされちゃうのだろう、とドキドキしつつ、喜々として、どのチョーカーにしようかな、と選ぶのが日課となっていました。
 チョーカーを着けないで出社する、などという考えは、爪の先ほども浮かんだことはありませんでした。
 それくらい、今のオフィス生活にワクワクしているのは事実でした。

「言っておくけれど、あたしは直子とオフィスでは、シないわよ?」
 お姉さまが真面目なお顔でおっしゃいました。
「直子を虐めたり辱めたりすることはあっても、直子にシてもらったりベタベタしたりはしない。スタッフがいるオフィスで喘ぎ声あげるなんて、そんなはしたない真似、死んでも出来ない」

 ショックでした。
 久しぶりにお逢いしたのですから、抱き合ってキスのひとつくらいいただけると予想していましたから。
 ツンモードに入ったお姉さまが頑ななことは、経験上知っていました。

 私の落胆がわかったのでしょう、お姉さまはイジワルく目を細め、こうつづけました。
「でも直子は、あたし以外の誰かに頼まれたらちゃんとシてあげなさい。直子は我が社の秘書兼ご奉仕マゾペットなのだから」
 お姉さまの瞳は完全に、エス色に染まっていました。

「さあ、仕事をさっさと片付けちゃいましょう。さすがのあたしも今回の出張は疲れちゃった。幸い土日はゆっくり出来るから、早く帰って休みたいの」

 それから夕方まで、みなさまが取ってきた契約書や見積書の確認に時間を費やしました。
 お姉さまはスーツ姿、私は下半身丸出し姿で。
 資材の発注をしたり、工房にスケジュールの確認をしたり、お取引先に御礼のお電話をしたり、えっちな気分が顔を出すヒマもなく働きました。
 
 そのあいだずっと、お姉さまはこの週末をどう過ごされるおつもりなのだろう、と不安で仕方ありませんでした。
 お疲れのようだから、おひとりでゆっくりお休みしたいのかな・・・
 せっかく近くにいらっしゃるのに、私は放置プレイになっちゃうのかしら・・・
 お仕事が終わってしまうのが怖いと感じていました。

 午後5時前にお仕事がすべて終わり、お姉さまがんーーっと伸びをひとつ。
「ふぅー。これでやっと帰れるわね。お疲れさま」
 私の肩を軽くポンと叩いてねぎらってくださいました。

「ところで、出張中にずいぶん洗濯物が溜まってしまって、帰ってもあたしにそんな元気もないし、どこかにいい全裸家政婦さんはいないものかしら?」
 お姉さまがお芝居ぽくお道化た感じでおっしゃいました。

「はいっ!」
 元気よく真っ直ぐに挙手する私。
 お姉さまがデレモードに突入!
 お仕事の疲れが吹き飛ぶほどの嬉しいご提案でした。

「あら、あなた出来るの?うちは厳しいわよ?」
「はい。何でもします。どんなご命令にも従います」

「帰ってくるなりそんなエロい格好を見せつけられて、あたしもムラっとしちゃっているの。あなたはあたしを満足させることが出来る?」
「はい。必ず出来ます。全身全霊をかけてご奉仕させていただきます」

「出来なかったらキツーイお仕置きよ?」
「大丈夫です。私はマゾなので、お仕置きも大好物ですから」
「そう。それなら行きましょうか」

 お姉さまが私のまくり上げられたワンピースを直してくださり、そのまま、まだお仕事中の綾音さまやほのかさまに、良い週末をー、と冷やかされながら退社。
 お姉さまのお車で飯田橋のマンションに拉致監禁されました。

 それから丸二日間。
 生憎の雨模様だったので、ほとんど外出はしませんでしたが、全裸もしくはそれに近い格好のまま、お姉さまの言いなりとなり淫らに過ごしました。
 家事をして、虐められ、辱められ、晒されて、ご奉仕して、たっぷり愛し合いました。
 5月の連休のときに勝るとも劣らないほどの濃密な全裸家政婦生活でした。
 
 一週間分のお姉さま分を補給しても、私の旺盛な恥辱欲は衰えることを知らず、お姉さまが再び出張へと旅立たれた翌月曜日の朝からも、私は相変わらずチョーカーを着けて出勤しつづけました。

 オフィスでは、下半身裸が私のトレードマークのようになっていました。
 どんなに清楚な服装で出社したとしても、午後には少なくとも下半身はスッポンポンにされていました。
 生理が来ても、マゾマンコからタンポンの紐をプラプラ覗かせながら勤務していました。

 生理が去って私がレビューしたアダルティなラブトイズの数が二桁になった頃、綾音部長さまから私に、恥ずかし過ぎる業務命令が下されました。


非日常の王国で 08