2010年6月27日

グノシエンヌなトルコ石 01

私が初めて、本格的な『レズビアンSM』 を体験したときのお話です。

お相手をしてくれたのは、私が中学一年のときから通っていたバレエ教室で、私のレッスン担当講師だった、百合草やよい先生。
他の生徒さんたちは、ほとんど『ゆり先生』 と呼んでいましたが、私はずっと『やよい先生』 と呼んでいたので、ここでもその名前で呼ばせてください。

やよい先生は、私が中二のときに遭遇したある出来事で男性恐怖症みたいなことになってしまったとき、親身になって相談相手になってくれました。
その出来事や、その後のあれこれについては、あらためて読んでいただこうと思っているので、ここでは、やよい先生のかんたんなプロフィールだけ。

年齢は、当時たぶん20代中頃か、ちょっと上?
ごめんなさい、聞いたことありませんでした。
身長は、普通。
たぶん160センチいかないくらい。
今の私と同じくらい。
髪は、耳が隠れるくらいのベリーショート。
目が大きくてぱっちりしていて睫も長め、口も大きめ。
ちょっと上向きでぽってりした上唇が肉感的。
エキゾチックな感じがする超美人さんです。
なんて言うか、美少女というより美少年、っていう顔立ちでした。

からだは、全体に細め。
でも、レオタード姿になると、出るところはバランスよく出ていました。
腕や脚の筋肉もゴツゴツしているんじゃなくて、しなやか。
つまり、プロポーションがすごく良くて、背は高くないのに、スラっとした印象。
とくに、踊り始めると、その動きの一つ一つが優雅でありながら迫力もあって、しなやかで、実際の背の何倍も大きく見えました。
私たち生徒にも、気さくに接してくれて、すごく頼りになるお姉さんという感じ。
私はいつも、尊敬と憧れの目で、やよい先生を見ていました。

そして、やよい先生は、真性のレズビアンでした。

そんなやよい先生が、バレエの講師の仕事をやめて、パートナーの人と一緒に東京でお酒を飲ませるお店をやることになりました。
やよい先生との最後のレッスン終了後に、私は一人で講師室を訪ね、特別にお願いして、この町を出て行く前に二人だけで逢う約束をもらいました。
その日付は、私が高校二年の夏休みに入ったばかりの、金曜日のことでした。

私は、やよい先生のお部屋に向かうために、電車に乗っています。
良く晴れた、とても蒸し暑い夏の真昼。
冷房は苦手なほうなのですが、効き過ぎな感じもある電車のクーラーが、今は気持ちいいです。
私は、お土産に、と母が用意してくれたアイスクリームの詰め合わせとドライアイスの入ったビニール袋を片手に、一応、着替えなど、お泊りセットを入れた小さなボストンバッグを、もう片方の手に持って、窓際に立っていました。
電車は空いていて、座ろうと思えば座れますが、なんか心臓がどきどきしているので、外の景色を眺めていようと思ったんです。

母もやよい先生には何度も会っているので、今日最後の思い出にお泊りに行く、と告げると、
「ご迷惑おかけしないようにね。バレエがじょーずに踊れるコツを、じっくり教えてもらいなさいね」
って、笑って送り出してくれました。

私が住んでいる家の最寄の駅から3つめの駅が、このあたりでは一番栄えているターミナル駅。
そこの駅前にバレエ教室があります。
その駅を通り越して、二つめの駅が、今私が通っている女子高。
そのまた二つ先の駅が、やよい先生の住んでいる町です。
駅の改札を出たところで、やよい先生と待ち合わせしています。

約束の時間の10分くらい早く着いて、改札を出ます。
照りつけるお日様を避けるために、駅の屋根がある日陰で文庫本を読んでいると、約束の5分前に、やよい先生が私をみつけてくれました。

「今日は、あっついねーっ。相変わらず、なおちゃんは真面目だねえ。まだ5分前だよ」
やよい先生が、明るく声をかけてくれます。
「あっ、先生。今日はよろしくお願いします」
私は、あわてて頭を下げます。
「うん。まあね。それより暑すぎっ。さ、早く車に乗って」
そう言って、やよい先生は、たったったった、と駆け出しました。
私もあわてて後を追います。

迎えに来てくれたやよい先生の格好は、おへそが出てるカラフルな縞柄のピチピチタンクトップ、たぶんノーブラ、に、マラソンの選手が履くような薄手の短パンで、素足にぺったんこのサンダル。
長くて細い手足が軽快かつリズミカルに走っていきます。
少し日焼けしています。
すごくカッコイイです。

今日の私の格好は、濃いブルーのシンプルなデザインでウエストから下がざっくりとした膝丈のノースリーブワンピース。
そして白い綿のつばが広い日除け帽子。
ワンピースは、背中のジッパーを下ろして肩紐を両方はずせば、すぐパサっと下に落ちてしまうでしょう。
これは、脱ぎやすくて、すぐ裸になれるように、と選びました。
下着は、シンプルな白レースのブラとショーツ。
あと、素足にヒール低めな白いサンダル。

やよい先生の愛車は、駅の近くにエンジンをかけたまま路駐していました。
色は真っ赤、小さめで丸っこい、なんだか、かわいい感じの車でした。

クーラーの良く効いた車の中で、やよい先生は、お店を開くことが、いかに急に決まったか、それからお引越し先決めるまで、いかにあたふたしたか、を面白おかしく話してくれました。
私は、大笑いしながら、黙って聞いていました。
車の中ではずっと、レゲエっぽい、ゆったりしたリズムな外国の曲が低く流れていました。

車をマンション地下の駐車場に入れてから、エレベーターでやよい先生の部屋に向かいます。
エレベーターの中で、やよい先生が私に聞きました。

「なおちゃん、なんか無口ね。緊張してるの?」
「は、はい・・・少し・・・」
「怖いの?それとも楽しみで?」
「どっちも・・・です・・・」
「あは。だいじょうぶ。心配しないで。あたしがちゃんとやって、あ・げ・る・っ」

やよい先生の部屋は7階でした。
「このマンションでは一番上。この部屋の窓から見下ろすこの町の景色、すごくキレイで、せつなくて、あたし、かなり気に入ってたんだ」
やよい先生が、ドアに鍵を挿しながら、ぽつんと言いました。

「お掃除しといたから、裸足でどうぞ」
やよい先生のお部屋は、私が根拠もなく予想していた通り、シックな感じの色調でまとめられた、2LDK。
家具や調度品、壁の色、床のマットが、バランス良く純白とグレイと茶と黒、それにシルバーとゴールドでまとめられていて、いかにも大人の女の部屋、って感じです。
フローリングのリビングには、日当たりのいい大きな窓が2箇所あって、そこにかけられているカーテン、今は左右にタッセルでまとめられています、だけ、鮮やかだけれども落ち着いたグリーン、まるで快晴の日に見上げた森の木々の葉っぱの色。
やよい先生、センスいい。
部屋に香っている芳香剤も、ナチュラルな感じのネイチャー系。
リラックスできる香りが、そこはかとなく漂っています。

やよい先生は今月末には、ここを出て行くと聞いていましたから、お引越し準備の真っ最中で、部屋の中もごたごたかな?みたいな予想をしていました。
そんな中に、無理にお願いしてお泊まりにいくのは悪いかな、って思ってました。
そう正直に伝えると、やよい先生は、

「ほんと、なおちゃんはやさしいねえ。あたしも、何もなかったら、さっさと片付け始めるタイプだから、そう考えてたんだけどさ・・・」
「ご、ごめんなさい・・・」
やっぱり、と思い、私はうなだれます。
「そうじゃなくてね。ほんと、なおちゃんは素直だなあ・・・」


グノシエンヌなトルコ石 02

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