2010年6月6日

ランジェリーショップ 03

 おめあてのランジェリーショップは、フロアのつきあたり、一番奥まったとこにありました。
 
 下着売り場ということで、なんとなくこじんまりとしたショップを想像していたのですが、パッと見た感じ、けっこう売り場面積広くて品数多そう。
 色とりどりのブラやショーツが通路側にまでたくさん並べられています。

 通路側にディスプレイされているカラフルなポップやポスターを眺めて気持ちを落ち着かせた後、なるべくさりげなくお店に入りました。
 店内にも、棚やショーケース、ラックを使って、さまざまな下着が飾られています。
 奥行きがあって広々した、余裕のあるレイアウト。
 背の高いディスプレイ什器で売り場を取り囲むようになっているので、お店の奥のほうは、通路や他の売り場からは見えないようになっていました。
 壁際の一番奥まった隅にレジがあり、その前に立っていた小柄で童顔なマヌカンさんが、いらっしゃいませえ、と迎えてくれました。

 店内には、OLさんぽい女性が一人だけ。
 その人は、レジとは反対側の壁際にハンガー吊るしで飾られているボディスーツを真剣に眺めています。
 あともう一人、20代中頃くらいに見えるマヌカンさんらしきスラッとした女の人が、OLさんのそばで平台のショーツを並べ直していました。
 
 スカートの裾をなるべく気にしないようにしながら、目の前に広がる女性下着の山を眺めました。
 ファッションビルに入っているお店だし、そんなに過激なのは無いだろう、と予想していたのですが、甘くみていたみたい。
 レジのそばに飾ってあるマネキンたちが着けているそれが強力でした。

 一体には、全体が目の粗いメッシュで、どう考えてもスケスケにならざるをえないベージュのブラとお揃いのビキニパンツ。
 もう一体には、いわゆるティアドロップ。
 ブラは最低限乳首を隠すだけのごく小さな涙型、ボトムに至っては、最低限ワレメを隠すだけなほとんど紐状、他の部分は全部透明な細い糸っていう、普通に考えれば、こんなの誰がどこでいつ着るんだろう?としか思えない黄色い下着を着せられていました。
 ティアドロップのほうは、柔らかい素材らしく、マネキンのバストに、ご丁寧にも施されている乳首の出っぱりがくっきり浮き出ていて、卑猥さに拍車をかけていました。

 私は、中学生の頃、母の知り合いの女性がこの手の水着を身に着けているのを見て、すっごいショックを受けたことがあったので、多少の免疫はありましたが、こうして明るい店内であらためて見ると、やっぱり強烈です。
 
 今日は思い切って、こういうのを買っちゃう、っていうのもアリかなあ・・・
 なんて、ぞのマネキンを見ながら考えていたら、
 「今日はどんなのをお探しですか?」
 と、声をかけられました。

 あわてて声のしたほうに顔を向けると、私のすぐ左隣にスラッとした女性が来て居ました。
 さっき、平台のショーツを並べ直していた女性です。
 近くで見ると短かめなワンレングスがよく似合う、目鼻立ちのクッキリしたオトナな感じの美人さんでした。
 背は私よりちょっと高く、からだの線にフィットとした青いニットのシンプルなワンピースがすっごく似合っています。
 ニットがたおやかに曲線を描いている胸は、綺麗だけれどちょっぴり硬そうな感じ。
 ウエストのラインはキュッと締まっていて、腰はやや細め、腰から足先までスラッとしなやか。

 なんて綺麗な人なんだろう!
 お顔も、そしてプロポーションも。
 私は、一瞬でときめいてしまいました。
 セクシーって言うよりは、いえ、じゅうぶんセクシーなんですが、何て言うか、エロティックかつクールな感じなんです。

 こういう人は男の人がほっとかないだろうなあ、なんて、その美人さんを見ながら考えていたら、彼女の唇が動きました。
「あのマネキン見てびっくりしていらしたけれど、ひょっとして、セクシーなのをお探しなの?な~に?勝負下着とか?」 
 ニッと笑いながら、そんなことを聞いてきます。
 女性にしてはいくぶん低めの、少し掠れたような艶っぽいお声。

「い、いいえ。そんなのじゃないのですが・・・でも、あの・・・今日はちょっと、えっちなやつを・・・」 
 自分でもびっくりしてしまいました。
 なんで私、こんなに正直に答えちゃったんだろう?

 彼女は、ふーーん?って、少し首をかしげてから、私と向かい合うように立ちました。
 私の全身を正面から舐めるように見つめてきます。
 切れ長の目がとっても綺麗・・・
 文字通り頭のてっぺんからつま先まで、ゆっくりと彼女の視線が動いていくのが肌で感じました。

 彼女は、視線を再び私の顔に戻し、
「だいじょうぶ。あたしのお店なら、きっとあなたが満足できるインナーがみつかるはず」
「あと、バッグとかはレジの横のあのベンチに置いておいていいわよ」
「盗まれないように、スタッフがしっかり見張っててあげるから」
 とつづけました。

「あ、はい。ありがとうございます」 
 私は、少しドギマギしながらそう答えて彼女から離れ、レジ横のベンチに向かいました。
 レジ前の童顔なマヌカンさんも、ゆっくり見ていってくださいねー、って微笑んでくれます。

 ベンチにバッグを置いて一呼吸。
 どうしよう・・・でも、そうするために来たのだし・・・
 少しの躊躇の後覚悟を決め、カーディガンをササッと脱ぎ、バッグの上に置きました。
 ああん、とうとう自ら透けブラ姿になっちゃった。
 こんな営業中のお店の中で。
 
 さっき声をかけてくれた綺麗なマヌカンさんは、さっきと同じ場所で、私の一連の行動をずっと見ていたようでした。
 彼女、私のこんな姿、どう思うだろう?

 私がゆっくりと彼女のいるところまで戻るとまた、ニッコリ笑いかけながら、
「ごゆっくり、ね?」
 と言い残し、お店の入口のほうへ歩きかけました。
 でも、すぐに私のほうを振り向き、こうつづけました。
「あたしのお店は、ボトムも試着できるから、いいのがあったら遠慮せずに言って、ね?」

 その言葉を聞いた瞬間、私の心に何かがひっかかりました。
 以前、その言葉をどこかで聞いたような、デジャヴのような、それとも違うような・・・
 それが何かはわからないのですが、ウズウズするような不思議なざわめきに、私のからだと心が囚われました。

 彼女がすっごく魅力的でしたから、そのせいで頭が混乱しているのかもしれません。
 私の脳はすでに、素敵な彼女とのえっちな妄想を紡ぎ始めていました。

 彼女に私の恥ずかしい姿をもっと見せてみたい・・・ 
 軽蔑されちゃうかもしれないけど、でも見て欲しい・・・ 
 もしも嫌われちゃったら、もうここには来なければいいだけだもの・・・
 思い切ってやってしまおうかな・・・
 このスカートでしゃがみ込んだら、お尻を見てもらえるな・・・

 妄想を膨らませつつ彼女の姿を探すと、お店の入口近くで別のお客さまのお相手をされていました。
 何か熱心にそのお客さまとお話されている彼女の姿を、なぜだか熱く見入ってしまいます。
 この時間帯は客足もまばらで、私が来てからはまだ、レジのある奥のほうまでは誰も入って来ていません。
 ときどき、お店の外に飾ってある下着を見てはしゃいでいるのか、女子学生っぽい、かん高い嬌声が聞こえていました。

 しばらく待っても綺麗なマヌカンさんが戻って来てくれる気配が無さそうなので、がっかり気味な私はとりあえず、今日ここに来た本来の目的に戻ることにしました。
 
 えっちな下着・・・
 さて、どんな下着を買おうか?
 
 さっきのメッシュやティアドロップみたいなのは、出来れば一着くらい欲しいし、あればこっそり着てコーフン出来ることは間違いありません。
 でもいざ、これ買います、って、あの綺麗なマヌカンさんに告げることを想像すると、抵抗感がありました。
 そんなキワドイ下着を購入する女。
 それはそれで私の大好きな羞恥プレイにもなるのだけれど、あの綺麗なマヌカンさんをお相手とするのは、いきなり過ぎる気がするのです。
 ついさっきまで、嫌われてもいいから恥ずかしい姿を見せてみたい、なんて妄想していたクセに、イザとなったらビビリな私。

 お相手が私にとってどうでもいいマヌカンさんであれば、そんな羞恥プレイをひとり楽しんで、蔑まれたとしても、もう二度とこのお店に来なければいい、その場だけの関係で問題無いのだけれど、あの魅力的なマヌカンさんには、下手なことをしてあっさり嫌われたくない、という気持ちが芽生えたようでした。
 
 そうなると、彼女と仲良くなるために、とりあえずあまり強烈じゃないのを探しつつ相談しながら会話して、彼女の出方を見てみるのがいいのかな。
 強烈じゃないけれどえっちぽい下着・・・
 Tバックとかはありふれているし、フリルやレースとかはいっぱい持っているし、うーん・・・と悩んでいたら、ひとつ思いつきました。

 お洋服を着たままでも脱げちゃう下着ってないかしら?
 どこかで急にムラムラして、ノーパンノーブラアソビをしたくなったとき、周囲の人に悟られず、お洋服を着たままでもはずせる下着・・・
 シャツを脱がずにはずせるブラ、ジーンズを穿いていてもはずせるパンツ・・・

 しばらく真剣に考えて閃いたのは、上はストラップレスでフロントホックのブラ。
 下は両サイドを紐で結ぶ式のパンツ。
 そういう仕様の下着は、まだ私、持っていません。
 その線で行こう!

 探す目標が決まったので、手近なレジ付近の棚から、真剣に見てまわることにしました。


ランジェリーショップ 04

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