2010年6月7日

ランジェリーショップ 05

 するとお姉さんは、完全に予想外なことを聞いてきました。

「あなた、このパンツ、新宿の○○で買ったでしょう?」
「は?はい?」
 私は両手で頬を押さえ、ドクン、ドクンって動揺しています。
 お姉さんがようやく私のスカートから手を離してつづけました。

「やっぱりそうなのね?あたし去年の暮れは、あのお店にいたのよ。それで、そのパンツ売ったときのこと、すごくよく憶えているの」 
「あなたたち、かなり酔っぱらっていたわよね?確かあなたの他にあと3人・・・」 
「あなたが他の子たちから、そのパンツ買いなさーい、って囃されていて、あなたもまんざらじゃないような顔してて」 
「それであたしが、うちのお店は試着もできますよ、ってあなたたちに声をかけてみたの」 
「そしたらあなたたち、キャーキャー喜んじゃって、お友達があなたの背中を押して試着室に押し込めたの」
「あなたたちみんな、本当にうるさくって、まわりのお客さんたちまで、何事?って、うちのお店覗き込んでいたくらいだったわ」

 お姉さんが小さく笑いました。
 私もなんとなく思い出しました。

 さっきお姉さんから、ボトムの試着もできるから、って声をかけられたときにひっかかったのは、このときのデジャヴなのかな?
 でも私は、お姉さんのお顔をぜんぜん憶えていませんでした。
 買った経緯はおぼろげながら憶えていましたが、そのお店の雰囲気さえ思い出せませんでした。

「あのとき、あなたはジーンズだったわよね?それで、あなたが試着室でゴソゴソしだすと、お友達が試着室のカーテンを揺らしたり、ちょっと開けたりイタズラし始めたの」
「あなたはそのたびに、キャッ、とか、ヤメテー、とか、呂律のまわらない声で言ってた」 
「あたしはそれを少しうんざりしながら見ていて、紙ショーツをあなたに渡すのもあきらめた。どうせ言っても無駄だろうって」
「でも、あなたたちの傍メーワクな振る舞いを黙ってスルーしていたのは、なぜだかあたしに確信があったの。あなたを見たとき、あなたは絶対そのパンツを買って帰る、っていう確信が」 
 そこで、お姉さんは私の顔をじっと見つめました。

「しばらくみんなでキャーキャーやってたわ。お友達が、どんな感じー?、早く見せてよぉー、とか聞いていて」 
「そしたら、あなたが、開けていいよー、って明るく答えて、お友達がカーテン開けたら、あなたがそのパンツ穿いて、片脚だけ、く、 の字に曲げたポーズで気取ってた」 
「しばらくそのポーズのままで、数秒したら、モデルさんみたいにクルッと一回転して、はーいっ、おしまいーっ! って」 
「そのときあたしもあなたを見ていたの。で、気づいたの。あれっ?この子、パイパン? って」 
「あなたが試着室に入ってからの間も、お友達がカーテンをイタズラしていたおかげで、外からけっこう見えちゃっていたのよ?あなたの白いお尻とか、試着室内の鏡に映った、その反対側とかも、チラチラっと・・・」

 ショックでした。
 初めて、あの夜の真相を知りました。
 私、無防備に、私の性癖を知らない大学の友人たちの前で、そんな恥ずかしいことしていたなんて・・・
 そして、それを私がほとんど憶えていないなんて・・・

 その夜、女子会をした彼女たちとは、大学一年生のとき、語学のクラスで知り合いました。
 初対面のときから、なんだかお互い波長が合って、それからもキャンパス内では、ほとんどいつもその4人でしゃべったり、遊んだり。
 私の短大生活をとても楽しいものにしてくれた、大切で大好きなお友達たちです。

 ただ、彼女たちから、私の特殊な性癖を理解してもらえそうな雰囲気、たとえば、やよい先生やしーちゃんに感じたそれ、は感じられませんでした。
 そちらの面での彼女たちは、普通に気になる男の子を探して追いかけて、好きなお相手との好いた別れた、セックスも含めた恋愛のあれこれに一喜一憂する、極めてノーマルな女の子たちでした。
 そういう人たちの前では、私は、ごく普通の、むしろ、そういうことには奥手な女の子を演じていました。

 私が私の性癖を開放するのは、私のことをわかっていてくれる人たちがいる世界でだけ。
 もしくは、独り遊びの妄想をこっそり実行できる、誰も私の素性を知らない場所。
 だから、私がひとりでえっちな冒険をするときは、今日のように、私の日常テリトリー外の場所で、と決めていました。

 もし私の性癖を、それを理解しない、もっと言えば、嫌悪するような人に感づかれて、面白おかしく、私が日常接している人たちに言いふらされてしまったら・・・
 私は、大多数の人がノーマルと思い込んでいる世界の異端、アブノーマルのレッテルを貼られてしまうでしょう。
 それを私は、一番恐れていました。

 バレちゃっていたのかな?彼女たちに・・・

 でも、その翌日からも彼女たちは、そんなそぶりを見せず、普通に接してくれていました。
 百合な嗜好なことは、それとなく匂わせていたし、M系なのも気づかれちゃっていて、彼女たち、それを面白がっていました。
 露出好き、という性癖だけは、極力隠していたつもりです。
 ただ、みんな女子大暮らしですから、普段から肌の露出に無防備になっちゃっていたところもあったので、たぶんその夜の私の行動も、彼女たちの想定内だったのでしょう。
 もっと楽天的に考えれば、きっとお酒のせいで、彼女たちは、私がそんな下着を買ったっていうことさえ、憶えていないのかも。
 みんな、ものすごーく飲んでいたし。
 翌朝起きたとき、その現物を穿いて寝ていた私でさえ、なぜ今こんな下着を着けているのか、しばらく思い出せなかったほどでしたから。
 とりあえずそう、自分に言い聞かせました。

「それで、あなたが試着室から元のジーンズ姿で、手ぶらで出てきて、この下着買います、穿いて帰りまっす!って、嬉しそうにあたしに言ったの」 
「あたしはホッとしたわ。自分のカンも捨てたものじゃないな、って」
 お姉さんがまた小さく笑いました。
「でね、あなたたちを見送ってから、なんだかおかしいな・・・って感じたの」
 お姉さんがいっそう小声になって、お話をつづけます。

「お友達がカーテンをめくっていたときとか、あたしも気になってチラチラ見ていたのね」
「あなた、几帳面な性格よね?脱いだジーンズがきちんとハンガーに吊るされていたわ。それ見てあたしは、この子、けっこう育ち良さそう?とか思ったもの」  
「何がおかしいのか、すぐにはわからなかったけれど、ずっと考えていたら、不意に気づいたの」
「穿き替えるときに脱いだはずの、今まで穿いていたはずの下着が、試着室に見当たらなかったな、って」

 私の心臓が、ドキン!って脈打ちました。

「たいていの人は、それまで着けていた下着はハンガー掛けの下のトレイの中に置くわ。普通の目線で見れば見えるはずなのに、無かった」 
「あなたのバッグは、お友達が持っていてくれたみたいだったから、あなた手ぶらだったわよね?試着室で」
「ジーンズのポケットにでも押し込んだのかしら?とも思ったのだけれど、几帳面そうなあなただから、そんなことしなそう。帰るときもジーンズのポッケはふくらんでいなかったし・・・
「あっ、仕事柄、試着しながら万引きとか、たまにあるから、お客さんのポッケとか自然にチェックしちゃう習慣があるのね、あたし」 

「そんなふうに考えてきて、導き出されたあたしの結論。最初から穿いていなかった・・・」
「ねえ?あなた、あのとき、わざとノーパンだったんでしょう?」 

 お姉さんが私の右耳にくっつくくらい唇を寄せて、低くささやいてきました。
「・・・は、はい・・・」 
 私は、声とともに吹きかかるお姉さんの熱い吐息にゾクゾクっと感じてしまい、恥ずかしいけれど正直に、小さくお答えしました。

 お姉さんの右手が再び私のスカートの裾に伸びて、ゆっくりとめくりあげられました。
 私は、されるがまま。
 お姉さんは、少し首をかしげて私の股間を覗きこむようにしながら、お話をつづけます。

「で、あたしもいろいろ想像しちゃったのよ。パイパンでノーパン。見ためは育ちの良さそうなお嬢様風。でも酔っていると、自分の裸を見られちゃうこともあんまり気にしていないようで、って言うより、むしろ喜んでるみたいで・・・」 

「あの子、ひょっとしたら、M系な露出願望女子じゃないかな?って・・・」

 そのお言葉を聞いた途端、アソコがヒクヒクッときて、お姉さんが見ている前なのに、ヌルっとした液体がパンティのクロッチ部分から滲み出て、左内腿、左ふくらはぎを伝って裸足のかかとまで、ゆっくりと一筋、流れ落ちていきました。


ランジェリーショップ 06

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