2010年7月17日

グノシエンヌなトルコ石 21

「去年の春頃、あたしにもっと女王様的な振る舞いを覚えて貰いたいって、ミーチャンに無理やり連れていかれたの」
「東京のSM専用ホテル。彼女が全部セッティングして、彼女を苛めているのはプロの女王様。その筋では有名な百合専の人らしいわ」
「で、このビデオ撮ったのがあたし。食事の後だから、お浣腸の場面とかは出て来ないのにしたから安心して」
「ミーチャンは、本当に自分のからだを苛められるのが好きみたい。いつも新しい遊びを考えてくるの」
「でも、あたしは切ったり刺したりって、実際に血が出てくるようなのは好きじゃないの。ムチとかローソクとかなら大好きなんだけどね」
「あの乳首のピアスもそんなに好きじゃないんだけど、あたしに忠誠を誓うためと思ってした、って言うから許してあげた」

「ミーチャンも昔は男とも遊んでたの。それこそマワされたりとか。しばらくは自分でも楽しんでるらしいけど、そのうちすごくひどいことされて、あたしの胸に泣きついてくるの」
「それを何度も何度もくりかえすから、あたしもとうとう呆れ果てちゃってさ。遂にこの部屋から追い出したの。預けてた合鍵取り上げて、着の身着のままで放り出した」
「ちょうどなおちゃんの相談に乗っていた頃だったな。もう4年前?だからなおちゃんの相談に親身になれたのもあったかな。もうミーチャンみたいな子を作っちゃいけない、って本気で思ってた」

「ミーチャン、2、3日帰って来なかったんだけど。ある日の朝から、あたしのドアの前に座り込んで、廊下の壁にもたれて、くすんくすん小さく泣いてたの。汚れたワンピース着て、ずっと・・・。ドアを叩くでもなし、大きな声であたしを呼ぶでもなし・・・」
「鍵は取り上げたけど、エントランスの暗証番号は知ってたから、ドアの前までは来れたのね」

「あたし、朝ゴミを出すときに気づいたの。ミーチャンがドアの前で泣いてるの。最初は無視してた。あたしもすごく怒ってたからね。なにまた同情ひこうと思ってるの?くらい本気で思ってた」
「でも気になるから、ときどきドアをそっと開けて、様子見てたのね。その日はお仕事休みだったし。で、あたしと目が合うと、小さい声で、ごめんなさい、ごめんなさいって座り込んだまま言ってるの・・・でもあたしに抱きつこうとかしたり、部屋に入ろうとかはぜんぜんしないの。座り込んだまま」

「あたしはだいたい12時間くらいで根負けしちゃった。お隣さんや同じ階の人の目もあるしね」
「座り込んでるミーチャンのそばにしゃがんで、頭撫ぜながら、わかったよ、今回だけは許してあげるよ、って」
「そしたら、あの子私に飛びついてきて、ワンワン泣きじゃくりはじめたの、ごめんなさい、ごめんなさいって言いながら・・・」
「あたしは、なだめながら部屋に入れて、このソファーに寝かせようとしたの。何か美味しいもの作ってあげるからね、って」
「でも、ミーチャンあたしにしがみついて離れないの。2時間くらいずっと、ごめんなさい、しか言わないの・・・」
「2時間くらいして、泣き疲れたのかほっとしたのか眠っちゃったのね。あたしにしがみついたまま。そのとき思ったの、この子とはずっと離れられないかもなあって・・・」

そう言うと缶ビールをごくごくごくっと飲み干しました。
「あ、ビールなくなっちゃった。今度はワインにしようっと」
やよい先生は陽気に言って、逃げるようにダイニングに向かいました。
やよい先生の目が潤んでいたように、私には見えました。
ビデオの中のミーチャンさんは、女王様のおっぱいを一生懸命舐めています。

やよい先生がワインのボトルとグラスを二つ、もう一つ小さい瓶を器用に両手に持って戻ってきました。
まず自分のボトルに白ワインを注いでから、もう一つのグラスにもう一つの瓶の液体を注いでくれました。
シュワシュワしています。
来た時に飲ませてくれたシャンパンでした。
栓は抜いてありました。
「なおちゃんだけだよ。この部屋でこのシャンパン2本も飲めるの。VIP待遇。それじゃあカンパーイ」
チンっとグラスを合わせます。
やっぱり美味しいーっ。

やよい先生がグラスを置いて、おもむろに話のつづきを語り始めます。

「それで、次の日に聞いたの。なんで、あたしが出てきたとき飛びついてきて、部屋に入っちゃわなかったの?って。そうすればあたしが、結局許しちゃうのはわかってたでしょ?って」
「そしたらミーチャンはこう言ったの。あたしの口から、許す、って言葉が出ないうちは、ゆり様に、あっ、あたしこう呼ばれてるのね」
やよい先生が照れました。
「許す、って言葉があたしの口から出ないうちは、ゆり様のからだに絶対さわらないって、決めてたんですって。いつまでも同じことしてたら、自分が変われないってつくづくわかったって」
「朝からずっと、一晩座ってても許してくれなかったら、どっか高い所から飛び降りて死んじゃうつもりだったって・・・」
「そこまで言われたら、もうどうしようもないわよね。本当にそれからヘンな男遊び、ぴたっとやめたし」
やよい先生はおどけて言いましたが、私は黙っていました。

少しの沈黙の後、私は思い切って言いました。
「私は、ミーチャンさんのことすごくうらやましいです。だって、やよい先生に心から愛されているんだもの・・・」
そして、やよい先生のはだけたバスローブの胸にゆっくりと抱きつきました。
やわらかくて温かい、やよい先生のおっぱいが気持ちいいです。
「そう言ってくれると、あたしも嬉しいわ」
私の頭を撫でながら、やよい先生がしみじみ言います。

「・・・ゆり様あ~んっ・・・」
私はわざと、おどけた声で言ってみます。
「あっ!なお子っ!あんた、茶化してるでしょっ!」
やよい先生が私のからだをじゃけんに突き放します。
私の乳首のトルコ石が激しく揺れて、その刺激で、これを付けていたこと、アソコにもローターが入ったままなことを、今更ながら思い出しました。

きゃははははーっ。
私は、意味もなく笑い始めました。
つられてやよい先生も笑い始めました。
二人の笑いが止まらなくなりました。
私の目尻に涙が溜まっているのは、笑いすぎたせいです。
きっとそうです。

いつのまにかミーチャンさんのDVDは終わっていました。
また、小さく低く、どこからかサティの 『グノシエンヌ』 3番が聞こえています。
時計は8時半過ぎを示しています。


グノシエンヌなトルコ石 22

0 件のコメント:

コメントを投稿