2011年11月6日

ピアノにまつわるエトセトラ 11

「えっ?」
 
 ゆうこ先生の立場を自分に置き換えて想像しながらお話を聞いていたので、今のご質問にはすぐお答え出来たのですが、私は少し考えるフリをしてから、おずおず、という感じで言いました。

「やっぱり下から、ですね。理由は先生がおっしゃったスカートのときのと同じです…それに…」
 
 私は、自分がその状態になったときを想像して、真っ赤になって付け加えました。

「おっぱい、あ、いえ、バスト丸出しで、誰かにそれを見られながらピアノを弾くなんて、は、恥ずかしすぎますっ!」
 
 私の全身の皮膚温度がグングン上昇していました。

「そうよね?わたしもやっぱりそう思ったの」
「だから座ったままショーツのゴムに手をかけて、ちょっと腰を浮かせて、ためらいながら太股の付け根あたりまでずり下げたの」

「そしたら背後にいた先生が突然、わたしのブラの背中のホックをパチッてはずしちゃったのね」
「ブラが緩む感覚がして、間髪を入れずにわたしの膝にブラのカップが落ちてきた」

「肩紐はまだ両腕にひっかかったまま。わたし思わず、いやっ、て叫んで左腕で胸を隠したわ」
「乳首が痛いくらいとんがっちゃっててね、自分の腕に擦れたときにビクンって背中がのけぞっちゃた」

「冷たい声の先生が、立ちなさい大貫さん、って命令するの。わたしがもたもたしていると定規で背中をパチンって」
「仕方ないから背を向けたまま立ち上がったの。左腕で胸を、右手で股間を隠して」

「ブラは両方の肩紐のところがそれぞれ両手首にまだひっかかっていて、カップがお腹を隠してた。ショーツは腿の付け根までずり下げたまんまだったから、後ろから見たらお尻が半分見えていたはず」

「ピアノののほうに前屈みになって立っているわけでしょう?結果的に、先生に自らお尻を突き出すような姿勢になっていたのね」
「すかさず先生が定規でお尻をパチンッ!」
「早くわたくしの前まで出て来なさい、ってお尻を何度も叩きながら言うの。わたし、お尻を叩かれて、お尻が熱くなって、なんだかせつない気持ちになっちゃって」

「それで、そのままの格好で先生の正面に立ったの。前屈みで胸とアソコを隠した格好で」
「そんなの先生が許してくれるはずはなくて、先生の定規が私の両腕を叩いて、隠すことを禁じられて、気をつけ、って言われて、まっすぐに立ったわ。ブラは床に落ちちゃった」

「両方の乳首が自分でも覚えの無いくらい大きくなって、ピンッて尖っているの。ショーツは付け根で留まったまま。視線を下げると陰毛が半分くらい覗いていた」
「先生は、1メートルくらい前のところに立って、わたしのからだをジロジロと見つめているの。右手に持った定規で自分の左手のひらを軽くペシペシ叩きながら」
「後ろを向いて、って言われて、おとなしく従って、また、こっちを向いて、って言われて、従ったの」

「そしたら先生が、こうおっしゃったの」
「思っていた通り。本当に綺麗だわ。大貫さん、あなた、本当にステキよ、って」

「そこで初めて先生がニッコリ微笑んだのね。ゾクッっとするほど綺麗で、それでいて淫靡な笑顔」
「わたし、それまで恥ずかしくて恥ずかしくてしょうがなかったのだけれど、その笑顔見たら、先生がすごく愛おしく思えて」

「先生に、その中途半端なショーツもさっさと脱いじゃいなさい、って言われて自分で脱いだの。クロッチがすごく湿ってた」
「脱いだショーツを差し出された先生の手に乗せた瞬間に、先生がガバッと覆いかぶさってきて、きつく抱きしめられた」

 ゆうこ先生の視線は、遠い過去を慈しんでいるように、宙空の一点を見つめていました。
 少しの沈黙の後、ゆうこ先生の視線が私に戻りました。

「世界中のあらゆる神様に誓って言うけれど、わたし、それまで自分で自分を慰めたこと、一度も無かったのよ」
「性的な意味でね。オナニーのこと。なんだかモヤモヤすると、乳首が尖ったりアソコがヌメヌメすることには気づいていたけれど、わたし、それが何なのか、深く考えたこと無かったの」
 
 ゆうこ先生の瞳を見れば、それが真実だと信じられました。

「その日、先生はいろんなことをしてくれたの。丸裸のわたしのからだのいろんなところをさわって、愛撫して、舐めてくれた」
「尖った乳首を軽く噛まれたときのしびれるような快感とか、ぬるんだアソコにもぐりこんだ指がやさしく掻き回す感触とか、一番敏感な場所をそっと撫でる疼痛とか」

「耳や首筋にキスされて、脇腹や内腿を爪で軽くひっかかれたり、手の指や足の指をしゃぶられたり」
「何もかもがすごく気持ち良くて、これは後から思えばのことだけれど、5回以上はイっちゃったみたい」

「その日、先生は服を脱がなかったの。ノーブラでTシャツとジーンズのショートパンツ。たぶん最初だから、わたしを悦ばせることだけに専念したのでしょうね」
「でも、わたしも先生の乳房をTシャツの上から揉んだりもしたわ。学校でときどき友達とふざけてさわりっことかはしていたけれど、女性のおっぱいの感触があんなに気持ちいいと思ったのは、あのときが初めてだった」
 
 ゆうこ先生の視線がまた、宙空の一点に固定されました。

 お水を一口含んで席を立ち、ゆうこ先生は食器のお片づけを始めました。
 私もつられて立ち上がり、食器を持ってキッチンのほうまでゆうこ先生の後をついていきながら、お話を聞きつづけます。

「それからはもう、ピアノのレッスンなんて虹の彼方へさようなら。会うたびにえっちな遊びばっかりしていたわ」
「レッスンルームに入ったら服を脱ぐのがあたりまえのような関係。あっ、それはシンクに置いてくれればいいわ」
「おかげでその後もしばらくは、わたし、オナニーしなくてすんでたもの。先生がしてくれるから、する必要ないの」

「それで、そのうち先生が提案する遊びがどんどんSMのほうに向いていったのね。手錠かけたり、洗濯バサミで挟んだり、丸いボールギャグを口に押し込まれたままピアノ弾いたり、柱に縛り付けられたり」
「わたし、そういうのにも自然に順応していたの。先生から痛いことされるの、好きだった」
「その頃になると、SMっていう概念もちゃんと勉強して理解していたから。わたしはやっぱりマゾのほうだなあ、ってわかっていた。ひどい仕打ちをされて耐えている自分に酔っていたの」

「先生はめったに裸にならなかったけれど、たまに私に先生のアソコを舐めるようにいいつけるのね。先生のオマンコはビラビラが派手だったわ」
「あ、ごめん直子ちゃん。ついお下品な言葉使っちゃった」
 
 ゆうこ先生が私を振り向き、テヘッっていうお顔をしました。
 その可愛らしい仕草に思わず頬がゆるみます。

「だいじょうぶです。私もヘンタイですからそういう言葉、嫌いじゃないです。つづけてください」
 
 そんなことより、お話のつづきが聞きたくてたまりません。

「わたしのとずいぶん違うんだなー、なんて思いながら一所懸命ご奉仕したわ。先生はご機嫌が良くなると、わたしをヘンな道具でいっぱい虐めてくれるから」
「それでね、ある日先生が、こんなことをおっしゃったの」
 
 お片づけが一通り終わり、ゆうこ先生と私はリビングのソファーに並んで腰掛けました。
 ゆうこ先生は私に、相変わらず20センチほどの距離を保っています。

「ゆっこは、あ、その頃はわたし、先生にそう呼ばれていたのね。ゆっこはもちろん、男との関係はまだ無いだろう。出来ればわたくしとつきあっている内は、男と関係はしないで欲しい、って」
「男っていうのは、女を見ればセックスのことしか考えていないし、いざしてみても文字通りひとりヨガリで、たいして気持ち良くも無い。ゆっこのこんなに素晴らしいからだを、バカな男どもに味あわせるのは絶対もったいない、って」

「わたしは、ようやくその頃になって、セックス全般に興味が湧き出した頃だったから、機会があれば男ともシてみたいかな、くらいは思っていたの」
「でもこちらから積極的に、っていうほどの欲求じゃなかった。先生との関係で充分満足出来ていたからね。でもつまり、レズビアン一筋、っていうワケでも無かったの」
「なにしろ、そういう関係になったのは先生がワンアンドオンリーなわけだから。情報量も経験値も絶対的に不足していたのね」

 私の前にはレモンジュース、先生の前には白ワインのグラスとお水が入ったコップが置かれています。
 ゆうこ先生は、あまり酔ってはいけない、と思っているのか、お水のコップにばかり唇をあてていました。

「高校生活のほうでは、お勉強のほうはさすがにトップクラスは維持出来なかったけれど、相変わらずしっかりものの勝気な女生徒として、楽しく過ごしていたの」
「1年のときに同じクラスになった、ちょっと派手めなグループの子たちがいてね。その子たちは、高校生になったらバンド組もうと思っていたんだって。自己紹介のときにわたしが、特技はピアノです、って言ったら目をつけられちゃって、早速アプローチされて」

「やりたいのはハードロックだって言われて、生まれて初めてそういう種類の音楽を聴いたわ。すごいわよね、あれ」
「でも、中にはヨーロッパ中世のバロック音楽の影響を受けているようなメロディもあって、わたしもちょうどシンセを買ったばかりだったから、引き受けちゃったの」

「軽音部に入って、その子たちとバンドを始めて。その子たちがまた面白い子ばっかりで」
「全体的に、男?ふざけんな!みたいなノりの威勢のいい子ばかりで。実際話してみると可愛らしいところもあったりするのだけれど」
「みんな真剣に練習したし、ヴォーカルの子の声も良かったから、2年生の頃には校内でも有名なバンドになっていたの」

「実際、贔屓目ナシにしても先輩を含めた男子たちのバンドとかより断然上手かったし、華もあったし、いいバンドだったと思うわ」
「それでほら、ステージ衣装って、普段着れないような大胆でセクシー系の衣装でも許されちゃうじゃない?わたしにとって、それがすごく魅力的で」

「これも自分で言うのはどうかとは思うけれど、わたし、その頃から自分のからだにかなり自信があったのね。ほら、セクシーでしょ?見て!っていう感じで」
「2年の文化祭のとき、胸の部分が大きく割れて谷間が見えているコケティッシュなタンクトップに、見せパン穿いて超ミニスカ。普段なら恥ずかしくてとても着れないような衣装で出たの」

「ステージ上ではキーボードはドラムの隣あたりの奥で立ったままだから、超ミニスカもあんまり意味無いのだけれど、最後のほうではショルダーのキーボード抱えてステージ前に出れるのね。ワザと脚を大きく上げたりすると男子からもうヤンヤの喝采」
「そんなとき、わたしは心の中でこう思っているの。どう?タマンナイでしょ?わたしとヤりたい?ボケッ!おまえらなんか百年はえーんだよ!」
 
 ゆうこ先生がご愉快そうに笑いました。

「でも、楽屋代わりの体育館の倉庫で、その衣装を着て出番を待っているときは、めちゃくちゃに恥ずかしいの」
「進行係の女生徒とか、次の出番らしい男の子とかの視線がチラチラとだけどピンポイントで、私の胸元と太股に、それこそ吸い付くように注がれるのがわかるの」

「わたしは、あーーん、そんなに見ないでー、でももっと見てー、みたいな露出狂の心境。他のメンバーたちも似たような格好だったけれど、彼女たちはあんまり気にしていなかったみたい」
「それよりも演奏へのプレッシャーでそれどころじゃなかったのね。彼女たちは」
「わたしは演奏面は余裕ありすぎて、煩悩のほうばっかり気にしてた」

「そんな格好で出たものだから、文化祭後、あのバンドのメンバーならヤらせてくれるんじゃないか、なんて一部男子の間で噂になって、ヘラヘラ笑いながらからかいにくる男子もいたけれど、私たちは、フザンケンナ!私らの衣装は純粋に音楽の表現の一環なんだよ。誰がおまえらみたいな下衆と寝るかよ!なんて、めいっぱい突っ張っていたな」

「私も衣装着ていなければ勝気に戻るからね。実際は、バンドメンバー5人のうち2人はまだ処女だったのだけれど」
「わたしは一応、処女膜は先生の指に破られていたから、ね?」
 
 ゆうこ先生がまた、愉快そうに笑いました。


ピアノにまつわるエトセトラ 12

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