2014年9月23日

就職祝いは柘榴石 02

「へー、いいお部屋じゃない?」
 お姉さまをリビングにご案内して、私はお紅茶の用意。

「ずいぶんと落ち着いた感じなのね。直子のイメージだと、大きなクマさんのぬいぐるみとか、もっとメルヘンチックなお部屋を想像していたけれど」
 お姉さまは、リビング内をゆっくりと歩き回りながらスーツの上着を脱ぎ、テレビ周りやサイドボードの中を興味深げに眺めています。
「モノトーンにブラウンとグリーンが基調なのね?いいセンスだと思うわ」

「これは、地元にいた頃におじゃました、やよい先生、あ、いえ、百合草先生のお部屋の真似をしただけなんです」
 L字に並べたソファーの前のガラステーブルにティーカップを置いて、お姉さまの上着を預かりハンガーに吊るしました。
 
 上着を脱いだお姉さまは、シャープな白ブラウスと濃茶のタイトスカートにベージュのストッキング。
 ソファーに腰掛けると、膝上丈のタイトスカートから伸びたピカピカ光る美しいお膝とスラッとしたおみ足がすごくなまめかしい。
 そこばかりじーっと見入ってしまうほど。

「ふーん、百合草女史のねえ・・・」
 お姉さまがティカップに唇をつけてから、隣に座った私の顔を覗き込むように見つめてきました。

「こんなシックなお部屋で、いつもひとりで裸になって暮らしているんだ?全裸家政婦ごっこで」
「い、いつも、というわけではないですけれど・・・」
 お姉さまのいたずらっぽい瞳に悩ましく見つめられて、急激にドギマギしてしまいます。

「このお部屋に入ったら、裸にならなければいけないルールなのでしょう?ムラムラ期のときは」
「直子、このあいだ教えてくれたじゃない。今はどう?ムラムラしていないの?」
「あの、えっと・・・」
 お姉さまの隣でモジモジする私を、お姉さまが薄い笑みと共に見つめてきます。
 不意にお姉さまのお顔が動き、私の唇にチュッと軽くキスをくださいました。

「遠慮しなくいいのよ?ルール通りに裸におなりなさい。あたしは気にしないから」
「あ、は、はい・・・」
 これはお姉さまからのご命令、と理解した私は、ソファーに腰掛けたままブラウスのボタンをはずし始めました。

「百合草女史とシーナさんにお会いしたとき、直子のえっちな性癖をいろいろたくさん、詳しく教えてもらったのよ」
「どういう悪戯が好みか、とか、どんなことをされると悦ぶのか、とか」
 お姉さまは、私がブラウスのボタンをはずしていくのを至近距離でじーっと見つめながら、ささやくように語りかけてきます。
「直子って、えっちな妄想物語とかも、ずいぶん書いているのね。愉しく読ませてもらったわ。面白かった」
「テキストデータを全部もらったわ」

 えっ!そんなものまで見られちゃったの!?
 ハイソックスを脱ごうとしていた私の手が、思わず止まりました。
 恥ずかしさで全身の血液が逆流しそう。

「今日はその下着を着けていたのね?ちょっと立ってみてくれる?」
 お姉さまに促され、両方の靴下を脱いでから立ち上がりました。
 すべてのボタンがはずれたブラウスと、ホックとジッパーをはずしていたので、立ち上がった途端に足元に落ちたスカート。
 お姉さまも立ち上がり、私の両腕からブラウスを抜いてくださいました。
 ランジェリーだけの姿で、自然とマゾの服従ポーズになる私。

「このブルーの上下も、あたしが見立てたやつだったわよね。やっぱりすごく似合っている」
 フロントホックでストラップレスのブラと、両サイドを紐で結ぶ式のハイレグフルバックショーツ。
 ソファーの前で、両足は、やすめ、両手は後頭部で組んでいる私の全身を、お姉さまがまじまじと見つめてきます。

「それでね、あたし考えたのよ。あ、さっきの話のつづきね」
 お姉さまが前屈みになり、私の左腰のショーツの紐をスルスルっと解きました。
 アソコに密着していた狭めな布がアソコを離れ、ダランとだらしなく右内腿のほうに垂れ下がりました。

「あらあら、もう濡らしちゃっているの?ほんと、いやらしい子」
 アソコの裂け目から布の内側へとか細く透明な糸が伸びて、切れました。
 奥はもう、キュンキュン疼いています。

「百合草女史もシーナさんも、今までずいぶんエグイ悪戯を直子にしてきたじゃない?それに直子が書いた妄想物語もすごくえげつなかったし」
「だから、あたしが直子のマゾ気質を満足させて、女史やシーナさんを忘れさせて、あたしだけの直子にするためには、かなりいろいろがんばらなければいけないぞ、って」
 
 おっしゃりつつお姉さまの手で右腰の紐も解かれ、ショーツが足元にパサリと落ちました。
 これで下半身は剥き出し。
 お姉さまからの嬉しい、がんばる宣言、にゾクゾク感じてしまい、右内腿を歓喜の涙がダラダラ滑り落ちていきます。

「だから今夜は、あたしも未知の領域までチャレンジして、自分がどのくらいサディスティックになれるか、試してみようと思っているの」
「直子が妄想物語で書いているようなことは、して欲しいことなのよね?あたしにとっては、けっこうエグイと思っちゃうことばかりなのだけれど、直子はそのぐらいでは、音を上げないのよね?真性マゾだから」
「あ、えっと、は、はい・・・だ、大丈夫です・・・」

 お姉さまの手でフロントホックもはずされた私は、全裸になってゾクゾク震えています。
 乳首が痛々しいほどの超背伸び。
「あたしもかなりワクワクしているの。新しい自分に出会えそうな気がして」
 うふふ、と笑ったお姉さまの瞳に妖しい官能の炎がユラユラと揺れていました。
 Mだけがわかる、Sな舌なめずりの音と共に。

 私が脱ぎ捨てたブラウスや下着を全部綺麗にたたんで、お部屋の片隅に片付けてくださったお姉さま。
 つづいてご自分のバッグの中をがさごそされていました。

「手始めにこれ、着けてくれる?」
 お姉さまがテーブルの上に並べられたのは、レザーらしき質感の短いベルト状のものたちでした。
「あたし、ロープはうまく扱えないから、手っ取り早く拘束するなら、こういうの使ったほうが早いと思ってね」
「これが首輪。そっちが手枷でこっちが足枷ね」

 鈍い赤色をしたそれらは、それぞれに大小のリングがいくつかぶら下がっていて、見るからに禍々しい感じでした。
 きっとこのリングに鎖をあれこれ繋いで、あられもない格好で拘束されてしまうのでしょう。
 やよい先生もシーナさまもロープの達人で、拘束はもっぱらローブでしたから、こういう器具での拘束は逆に新鮮、ワクワクウズウズです。

「手枷と足枷着け終わったら言って。首輪はあたしが着けてあげる」
「は、はい・・・」
 
 その場でしゃがんで足枷から着け始めます。
 裏地がフワフワしているので、きつく締めても想像していたより痛くはありません。
 両足首に赤いレザーを巻きつけたら、立ち上がって両手首。
 左手を終えて右手に移ったとき、お姉さまが私の背後に立ち、おもむろに首輪を巻きつけてくださいました。

 首輪の裏地が首に触れた瞬間、背筋を被虐的な官能がゾクゾクっと駆け上がりました。
 シーナさまからいただいたチョーカーより倍も太い無骨な首輪。
 この首輪を着けたら、私は一生お姉さまのペット。
 痛くない?とお姉さまに聞かれつつ、ギュッと首を締め上げられるだけで、アソコの中がヒクヒク騒ぎました。

「この拘束具、知り合いに頼んで、一番いいものを選んでもらったのよ。そのスジでは最高級品なんだって」
 お姉さまに手を引かれ、姿見の前に連れていかれました。

 白いブラウスに濃茶のタイトスカートなクールビューティさまの隣に立つ、赤い首輪の全裸女。
 首、と名の付くすべての部位に鈍い赤色のレザーを巻きつけておどおどしている、みじめな裸の女。
 銀色のリングが鏡の中でキラキラ光っています。
「ふふ。だいぶドレイらしくなったじゃない?可愛いわよ」
 鏡の中の私の全身を、お姉さまが舐めるように見つめていました。

「さてと、次は直子のお仕置き部屋とやらを、見せてくれる?」

 お仕置き部屋というのは、我が家のサンルームのことです。
 バルコニーに温室のように張り出した、窓全面がマジックミラー張りの畳6畳分くらいのスペース。
 主にお洗濯物干しに活用しているスペースなのですが、シーナさまが頻繁に訪れるようになって、やがてこのお部屋がメインのプレイルームとなっていました。

 マジックミラーなので夜になると、窓が全面鏡と化すこと。
 お洗濯ものを干すために物干し用パイプやポールが設えてあるので、私を恥ずかしい格好で縛りつけるのに好都合なこと。
 窓脇のドアからすぐにバルコニー、つまりお外に出られること。
 バルコニー側のお隣は広い駐車場なので、近くに建物が無く、バルコニー内を覗かれる危険が少ないこと。
 バルコニーに張り出した部分の床はタイル敷きでお外に排水できるため、汚してもお掃除が楽なこと。
 トイレとバスルームに隣接していること。

 などなどの理由でシーナさまが気に入って、いつしか私を虐めるときはいつも、このサンルームを使うようになっていたのでした。

 そしてシーナさまは、このスペースを、ご自分の好みに合うようにいろいろ改造されました。
 
 まずはパイプ式の簡易ソファーベッドを導入。
 それからインターフォンで使うような監視カメラを設置して、持ち込んだ大きなモニターでリアルタイムにお部屋の様子が映し出されるようにしました。
 もちろん録画も出来ます。
 カメラを何台か繋げて一度にモニターに映す装置まで置いてあります。
 さらに、本格的なバレエバー、バレエの練習のときに手でつかまる手摺りのこと、まで壁際に設えてしまいました。
 もちろん大家さんの許可をいただいて。
 私がバレエをやっていたことは、大家さんもご存知でしたので、お話はスムースだったそうです。

 こうしていつしかお仕置き部屋と呼ばれるようになったこのスペースで、私はシーナさまからさまざまなお仕置きを受けてきました。
 
 パイプとポールに磔のような格好で縛り付けられて全身を鞭打たれたり、タイルの上で蝋責めされたり、全裸のM字縛りでローターをアソコに挿れられたまま深夜のバルコニーに放置されたり、バレエバーに結び付けたコブつきロープで股間を嬲られたり、パイプベッドに大の字のままシーナさまの股間を舌だけでご奉仕したり・・・
 そんな恥ずかしいお仕置きの様子は、監視カメラやシーナさまの手持ちカメラで逐一記録され、シーナさまのライブラリーになっていました。

 サンルームに入って電気を全部点け、下がっていたブラインドをすべて上げました。
「うわー。ここは、すごいわね!」
 煌々と輝く光の中で窓ガラスがすべて鏡となり、着衣の美人さんと全裸に首輪のマゾ女を容赦無く映し出しました。

「こんな鏡張りの部屋でえっちなことしたら、かなり恥ずかしいわよね」
 おっしゃいつつ、窓横にあるバルコニーへの出口ドアを躊躇無く開いたお姉さま。
「見晴らしは広々としているんだ。これなら陽当たりいいわね。あ、ほんとだ、高層ビルがバッチリ見える」
 バルコニーに降りたお姉さまは、夜空を見上げているようです。

「直子、ちょっとこっち来てごらん。ほら、あのへんがあたしのオフィス」
「えっ?」
 全裸に首輪ですから一瞬、躊躇。
 でも、見られちゃう心配はほぼないことがわかっているので、意を決して、それでもやっぱり前屈み気味になって、バルコニーに降り立ちました。

「ほら、真ん中より少し上の左端のほう、電気の点いているフロアが縦に3つあるでしょう?その上の暗い窓があたしたちのオフィスよ」
「えっ?あ、あの、えっと・・・」
 
 お姉さまの背中から一歩下がった位置で、胸と股間を両腕で隠した中腰のまま、おずおずとお姉さまが指さす方向に目を向けました。
「シーナさんに教えてもらったのよ。直子んちのベランダからオフィスが見えるはずよ、って」
 遠くに見える高層ビルの一角に、ご指摘通りの箇所がありました。

「この感じなら、うちのオフィスからもここが覗けるかもね。オフィスの開業祝に天体望遠鏡いただいたのよ。とある業者さんから」
「高層ビルの窓からなら、きっと夜空が綺麗でしょうから、って。最初は面白がってみんなで覗いていたけれど、最近はぜんぜん使わずに埃かぶっているわ」
「今度ヒマなときに試してみるわね。あ、でも知ってる?天体望遠鏡って、景色が逆さまに見えるのよ・・・」
 
 ハイテンションでおしゃべりされていたお姉さまが、私のほうを振り向いた途端にお口をつぐみました。
 薄暗闇の中、今更のように私の全身をしげしげと見てきます。

「直子ってすごいのね。自分ちのベランダに、まっ裸で出ちゃうんだ?」
「あ、こ、これはその、よ、夜ですし、周りからは覗けない、って知っていますから・・・」
「だとしたって、ヘンタイよ。ここだってれっきとした外、パブリックプレイスなのよ?見上げた露出狂っぷりだわ」
「そ、それに、今はお姉さまと一緒ですから・・・い、いつもより大胆になれる、って言うか・・・」

 私の本心でした。
 お姉さまが一緒にいてくださるなら、どんどん大胆になれる気がしていました。
 それを聞いたお姉さまは、ニコッと笑って裸の私をその場でギュッと抱き寄せ、唇を重ねてくださいました。
「んぐっ」
 少しだけ舌を絡め合います。
 お外の風がやさしく私の素肌にまとわりついてきます。

「そう言ってくれると、なんだか嬉しいわ。あたし、直子にそんなに信頼されているのね」
 唇を離してから、お姉さまが照れたように微笑みました。
 それからちょっとイジワルなお顔になって、
「もしもあたしのオフィスからここを覗けるようだったら、そのときは直子に、ここでオナニーしてもらうからね」
「それをあたしは、遠く離れたオフィスの窓から望遠鏡で覗き見るの」
 冗談ぽくそんなふうにつづけて、私の手を引いてお部屋の中に戻りました。

「そうそう、直子って、えっちなオモチャ箱を隠し持っているのでしょう?宝箱だっけ?それも見せてよ」
 ソファーベッドに腰掛けたお姉さまが、そんなことをおっしゃりながら、手許にあったリモコンのボタンを何気なく押しました。

 壁際の大画面モニターに一瞬閃光が走り、モニターに窓際の一帯が、右斜め後ろからのアングルで映し出されました。

「なるほどね。鏡の前でえっちなことをしていると、鏡に映った正面からの姿が横のモニターにも大画面で映るっていうしかけなのね」
「あ、はい。何台かカメラを繋げられるので、モニター画面を4分割にしてそれぞれを全部一度に映すことも出来ます」
「ふーん。それは愉しそう。録画も出来る?」
「はい。SDカードで」
「あたしちょうど未使用のカード持っているわ。今夜の様子が残せるわね」
 お姉さまが再び、ご自分のバッグをがさごそし始めました。
 
 そのあいだに私はお姉さまのお言いつけ通り、寝室にしている自分の部屋から、海外旅行に使うような大きなスーツケースを運び出しました。
 この中には、私のからだを虐めるために、自分で買ったり、やよい先生やシーナさまからいただいたえっちなお道具がぎっしり詰まっています。

「うわー。これまたすごいわね!」
 スーツケースを開くと、お姉さまが感嘆のお声をあげられました。


就職祝いは柘榴石 03

0 件のコメント:

コメントを投稿