2015年8月16日

オートクチュールのはずなのに 16

 低めのビルが立ち並ぶ、いかにもオフィス街というたたずまいの一画を、お姉さまとふたり、歩いていきます。
 たまにみつかる飲食店もお休みばかりで、街全体がまさしく、休日、という感じ。
 当然、人通りもとても少ないのですが、まったく無いというわけではありません。
 奥様風のご婦人や子供連れのご家族とすれ違ったり、曲がり角から突然、若い男性が現われたり。
 
 そのたびに私はビクビクしてしまい、寄り添ったお姉さまから、うつむかない、顔を上げて堂々と、って小さなお声で叱られました。
 少し風が出てきたみたいで、向かい風が吹くとワンピースの裾の真正面が完全に左右に割れて、はためきました。

 どうやら先ほど車で走ってきた幹線道路のほうへ戻るようです。
 四つ角を二、三度曲がり、路地から幹線道路が見える頃には、道行く人たちもけっこう増えていました。
 お姉さまに叱られるので一生懸命頑張って、まっすぐ前を向き普通の顔をしているように努めました。
 ミニワンピースの裾からは濡れそぼったショーツの股間が始終チラチラしているはずです。
 リモコンローターはいつの間にか止まっていました。

 うつむかずに歩いていると、行き交う人たちが私を視たときの反応がわかりました。
 最初に視線が注がれるのは、やっぱり首輪。
 一瞬チラッと見てから、たいていの人が二度見してきました。
 首輪をじっと見て、それから視線が上下して顔と全身。

 ただ、私に気づく人は、正面からやって来てすれ違う人たちばかりで、視られている時間もほんの数秒間。
 後ろから追い越して行く人や道幅を隔てた反対側を行く人たちなど、ほとんどの人たちは、私のことなど一瞥もせず、ただ通り過ぎていきました。
 そっか、道を歩いているときって、意外と他人のことなんて見ていないものなんだ。
 それがわかって、気持ちがかなりラクになりました。

 路地が尽きて、幹線道路の歩道に入りました。
 どこかの駅が近いみたいで、開いているお店も並び、賑わっている、というほどではないにしろ、それなりに人通りがありました。
 少し歩くと交差点があり、信号待ちの人波が出来ていました。
 人波と言っても、10数人ほど。
 お姉さまに手を引かれ、その最前列に立ちました。
 幸い、風は弱まっています。

「平日のお昼時とか、この交差点にもかなりの人数が集まるのだけれどね」
 のんびりしたお声で教えてくださるお姉さま。
 つないでいた手をいったん解き、その手をジーンズのポケットに入れました。
 同時に股間のローターが震え始めます。
「んっ!」
 唇を真一文字に結んで、なんでもないフリを装う私。
 お姉さまは、スイッチを入れたり止めたりして遊んでいます。

「あっ、あそこのふたり、直子に注目しているみたいよ?」
 お姉さまが、軽く顎を突き出して示される視線の先を追ってみます。
 片側3車線の幅広い交差点の向こう側には、こちらと同じくらいの数の歩行者の方々が信号の変わるのを待っていました。
 全員の目がすべてこちらに向いているので、最前列で対面している私は、それらの視線にじっと観察されているような錯覚を覚えました。

 お姉さまがおっしゃったおふたりは、すぐにわかりました。
 年齢は私とそう変わらなそうな、学生さん風男性二人連れ。
 おふたりとも中肉中背で、遠いのでお顔まではわかりませんが、ひとりはリュックを、もうひとりはショルダー掛けのバッグを提げていました。
 リュックの人がこちらを指差し、ショルダーの人に何やら耳打ちしていました。

 交差点をまばらに車が通過して、ミニワンピの裾がそよそよと風に揺れます。
「いい?まっすぐ前を見て、絶対裾を押さえては駄目」
 お姉さまのささやきが、私の右耳をくすぐりました。
「ほら、あたしにもっとくっついていいわよ」
 おっしゃると同時にローターが強く震えだし、ポケットに突っ込んだままのお姉さまの左腕に、自分の右腕を絡めてしがみつきました。

 ようやく信号が変わって歩き始めます。
 ローターは止まっています。
 一歩踏み出すたびに裾がヒラヒラ割れています。
 すれ違う人や追い越す人たちが、チラチラと私の首輪に視線をくれるのがわかりました。
 お姉さまにピッタリ寄り添って、視られていることを充分意識しながら、それでも普通のフリで歩きました。

 学生さん風の二人連れも、向こう側から歩き始めていました。   
 時折何かおしゃべりしては、おふたりともずーっと私たちのほうを向いたまま。
 近づくにつれて、その視線がとくに下のほう、すなわち私の股間周辺に集中して注がれているのがわかりました。
 一歩先を歩くイジワルなお姉さまは、横断歩道を斜めに誘導し、わざとその人たちに近づくように仕向けています。
 その人たちとの距離がみるみる縮まってきました。

 その人たちと絶対目を合わせないように前を見つつも、その視線の行方がすっごく気になって仕方ありません。
 ヒシヒソ話しているのは、お姉さまがおっしゃった通り、股間にチラチラ見え隠れしている黒いものが、陰毛だと思っているからかもしれない。
 そんなふうに考えるともう、いてもたってもいられない気持ちになります。
 あと2メートルくらいですれ違う、というときに、股間のローターが突然震え始めました。
「ぁふぅっ」
 小さく喘いでお姉さまの左腕にギュッとしがみつく私。
 同時に目もつぶってしまったので、すれ違いざまの彼らのリアクションを知ることは出来ませんでした。

 彼らとすれ違った後も、首輪に他の人たちから、いくつかの視線を感じながら、交差点を渡り終えました。
 渡りきった後、お姉さまが一度背後を振り向き、それから再び手をつないできました。

 そこからは、車がすれ違えるくらいの道幅の下り坂になっていました。
 交差点を渡る前の路地よりは、人通りが若干多い感じ。
 お店は開いていたり閉まっていたり。
 ローターは止まっています。

「さっきの二人組、直子のことガン見していたわね」
 お姉さまが少し歩調を緩めて、耳打ちしてきました。
「すれ違うとき、背の低いほうがニヤニヤ笑っていて気持ち悪かった。すれ違った後も振り返って、まだあたしたちのこと見ていたのよ」
 背の低いほうというと、リュックの人のほうです。
 でも、私はと言えば今の体験にドキドキし過ぎて何も考えられず、お姉さまのお言葉にお返事出来ません。

「ずーっと直子の股間ばかり視ていたわよね?たぶんあいつら、直子がノーパンで、マン毛が見えていると思ったのよ」
 お姉さまも私と同じことを考えていたようです。

「いでたちからいってオタクぽかったわよね?あの手の人種は知識だけは豊富だから、あたしたちが何をしているのか、わかっちゃったでしょうね」
「女同士で腕組んで、片方が首輪なんか着けてエロい格好していて、もう片方はそ知らぬ顔で先に立って歩いている・・・」
「すなわち、レズビアンのエスとエムの野外露出調教羞恥プレイ。まあ、あたしたちが今やっていることって、実際その通りなのだけれどね」
「オトコのオタクって、そういう妄想ばっかりしているらしいじゃない。現実で目の当たりにしちゃったから、あの子たち今夜、いろいろと捗っちゃうでしょうね」
 愉快そうなお姉さまの弾んだお声。

 そんなお話をしながら歩いているあいだも、いくつもの通り過ぎる視線を自分の首に感じていました。
 そうです。
 少しでもその手の知識がある人なら、首輪をしている女イコール、マゾ性癖を持つ女、とみなすのです。
 そして、そのマゾ性癖の女がきわどくエロっぽい格好をしていれば、露出願望を持つ視られたがりマゾ女なのだな、とも理解するでしょう。
 自分からしているのか、強制されてイヤイヤしているのかまではわからないでしょうけれど。
 今現在、私がそういう格好、つまり、自分のヘンタイ性癖を赤裸々に露にした格好で、公衆の面前を歩いているという現実に、今更ながら全身の血液がカーッと萌え上がってしまいます。

「見えた見えた、あれね」
 一歩先を歩くお姉さまが指さす先には、地下鉄の駅があることを示すマークがありました。
「あたしもここから乗ったことはないのよね。って直子、なんだか目がトロンとしちゃってる。さてはまた、えっちな妄想をふくらませていたでしょ?」
 お姉さまの冷やかすようなお声。
 私を振り向いてくださったお姉さまを、すがるように見つめました。

「あの、いえ・・・私、あの、さっきから感じっぱなしなんです・・・」
 思い切って正直に告白しました。
「ふーん。視られることが恥ずかしいっていう気持ちより、気持ちいいっていう感覚が勝ってきたのね。いい傾向よ。それこそ直子の本性なのだから。でもまだまだこんなものでは終わらないからね」
 握っていた手を解くお姉さまと、股間の振動に備えて身構える私。

 今日のお姉さまは、かなり本気。
 お部屋を出てから今までのあれこれで、それがはっきりわかりました。
 本気で、公衆の面前で私を辱めようとしている。
 それで私が悦ぶから、私がそれを望んでいるから。
 自分のマゾ性を何に臆することなく、さらけ出せる喜び。
 それを与えてくださるお姉さまに、精一杯お応えしなければ。
 そう考えるようになっていました。

 地下鉄の駅へ降りる階段は狭く、傾斜も急でした。
 そして何よりも風がすごい勢いで吹き上げていました。
 
 その前に立ったとき突風を浴び、私のミニワンピの裾はあっさり大げさにひるがえり、ちょうど上がって来たご中年の男性にパンモロをバッチリ視られてしまいました。
 さすがの私もあわてて前を押さえるほど。
 それでも風に煽られてふくらみつづけるスカート。
 歩道を歩いていた人たちには、丸出しショーツのお尻をしっかり見られちゃったことでしょう。

「まあ仕方ないわね。この風でミニスカの裾を押さえない女性なんて、それこそ頭がヘンだと思われちゃうもの」
 お姉さまも苦笑いで、いったん階段入口の脇にふたりで避難しました。

「おーけー。あたしが先を歩くから、直子は後ろに着いてきなさい」
 愉しそうにおっしゃるお姉さま。
「前も押さえていいわ。ただし、一番下を押さえるのは駄目。そうね、下腹部の、その留まっている一番下のボタンのとこらへんを押さえて、クロッチ前は、はためくようにしておくこと」
「もちろん直子は、完全に隠しきれていると思って余裕の表情をしていること。常にあたしの二段後ろね、それ以上詰めちゃ駄目」
「・・・はい、わかりました」
 お姉さまのイジワル声が一段と愉しげです。

「これからこの階段を上がってくる、とくに男性にはご褒美タイムね。もれなく直子の愛液が滲み出たシミつきパンティのクロッチがバッチリ拝めるの。それをマン毛だと思い込むのも自由」
「何人とすれ違うかは、日頃の直子の行ない次第かしら。あ、それと、前屈み気味に歩けば、すれ違うときおっぱいも覗いてもらえるかもよ?」

 そうなのです。
 強い風を孕んだワンピースは上半身の布も浮かせ、さっきの突風であわてて前を押さえて前屈みになった私の視界には、風を孕んで浮き上がったVゾーンからブラジャーも丸見えだったのでした。
「さあ、行きましょう」
 お姉さまに右腕を引っ張られ、再び階段の入口に立ちました。

 人がやっとすれ違えるくらい狭く、普通の膝丈スカートだったとしても一番下から一番上を見たらスカートの中が覗けちゃいそうな、長くて急勾配な階段。
 その左側をゆっくり下りていくお姉さまの背中を追って、私も下り始めました。
 強い風が正面から、絶えず吹きつけて来ます。
 お言いつけ通り、裾の少し上を押さえ、急勾配なので幾分前屈みになって。
 風が内腿のあいだを吹き抜けて行くのがわかりました。

 三段も下りないうちに、一番下に人影が現われました。
 スーツ姿のご中年サラリーマン風男性。
 休日出勤なのかな。
 通路をうつむきがちに歩いてきて、階段一段目の前でおもむろに上を見上げました。

 まず、前を行くお姉さまに目を留め、つづいてその背後の私にも。
 そこで、おやっ?、というお顔になり、上を見上げたまま、階段の向かって右端の一段に、ゆっくりと右足を踏み出しました。

 距離と勾配と私のミニワンピの裾丈を考えれば、風が吹いていようがいまいが、前を押さえていようがいまいが、あの位置からなら、裾の中身は丸見えでしょう。
 本来であれば、バッグなどを前に持って防御するべき、ミニスカ女性の天敵のような階段でした。

 必要以上にゆっくりと階段を下りていくお姉さま。
 お言いつけ通り、その二段後ろを、少し前屈み気味に着いていく私。
 風を孕むミニワンピース。
 始終左右に割れっぱなしの裾で、剥き出しとなっているクロッチ。
 その男性は私とすれ違うとき、なぜだか少し申し訳無さそうなお顔をされていました。

 最初の階段を下り終えると、少し平地を歩いてまた次の長い階段。
 運が良いのか悪いのか、ちょうど電車が到着した後だったようで、最初の男性につづいて、十数人の人たちと次々にすれ違いました。

 女性にはあまり関心を示されませんでしたが、男性は老いも若きもみな一様に、私を視界に認めたときから歩調が緩くなり、首輪と股間へ交互にチラチラ視線を送ってくださいました。
 その視線を感じるたびに、全身がゾクゾク疼きました。
 すれ違った後にも振り返ってくる気配を感じ、更に前屈みになって胸元を覗き込みやすいような姿勢になってあげたりもしました。

 お姉さまは、ときどき振り向いてはカメラを向けてきました。
 そんなふたりを呆気にとられたお顔でまじまじと見てくるご婦人もいらっしゃいました。
 階段を降りているあいだ中、注がれる視線のすべてが心地良く私を陵辱してくださいました。
 ローターが震えてもいないのに、膣内がヒクヒクしっぱなしでした。

 階段を下りきると風も弱まり、電車が行ったすぐ後なので、数メートル先の切符券売機近くにも人影は無く、私たちの後から階段を下りてきた人たちがちらほら、私たちを追い越して改札を通っていきました。

「かなり注目を集めちゃったわね?」
「お姉さまがお綺麗で、人目を惹いてしまうからだと思います」
「あら、嬉しいこと言ってくれるのね。おだてても、直子への命令が甘くなることはないわよ?」
「はい。わかっています」
「たくさん視てもらって、どう?濡れちゃった?」
「あ、はい・・・」
 はしたないけれど真実だから仕方ありません。

「あの階段、下りだったからまだマシだったかもね。上りだったら、下りてくる人からは直子の谷間覗き放題、直子の後ろに着いた人には、パンティのお尻ずっと丸出し状態だもの」
 私の手を取ってゆっくりと、券売機方向へ向かうお姉さま。
 お姉さまのお言葉に、どうせならそれもやってみたいかも、なんて思っちゃう、ふしだらな私。

「あっ!この駅にもあるんだ」
 もうすぐで券売機というところで、お姉さまが立ち止まりました。
 お姉さまがご覧になっている方向にあるのは、駅や街角にたまに設置してある、証明写真の撮影ブースでした。
「ちょうどいいわ。ちょっとここで練習していきましょう」
 お姉さまが謎なことをおっしゃり、私の手を引いてブースに近づきました。

「直子、入って」
「はい・・・」
 開きっ放しのカーテンの向こうに、作り付けの小さな椅子がひとつだけ。
「直子も使ったことあるでしょう?こういう証明写真機」
「あ、はい。学生の頃、何度か・・・」
「お金はあたしが出してあげるからバッグをちょうだい」
「あ、はい」
 肩に提げたビニールトートをお姉さまに差し出して、椅子に腰を下ろしました。

「それじゃあ、閉めるわよ」
「えっ?お姉さまは?」
「そんな狭いところに二人で入っていたらヘンに思われるでしょ?プリクラじゃあるまいし」
 苦笑しながらカーテンが閉じられたと思ったら、ブースの壁とカーテンの隙間から、お姉さまがニュッとお顔だけ入れてきました。

「もうわかっているとは思うけれど、そこでカメラに向かって、おっぱい出しなさい」
 隙間から顔だけお姉さまの、抑えた声でのご命令。
 もちろん、えっ?とは思ったのですが、ご命令には絶対服従なので、一度うなずいてから、胸元のボタンを外し始めました。
 だけど、お姉さまが覗いて撓んでいるカーテンに隙間が出来ていないか、内心気が気ではありません。
 ドキドキしながらおへそ近くまでボタンを外し終えました。

 これからどうすればいいのでしょう。
 ブラジャーも外すのかな?
 考えながら、お姉さまをすがるように見ました。
「ブラを下にずらして、おっぱいを出しなさい。カップを下乳まで下げて」

 お姉さまに促され、ブラジャーのハーフカップ全体をお腹のほうへ引き下げました。
 尖った乳首がプルンと跳ねて、おっぱい全体が露になりました。
 下げたハーフカップに下乳が持ち上げられ、いつもよりひと回り大きく見えます。
「ちゃんとおっぱいまで写るように背筋を伸ばしてね。あと、そのおっぱいの出し方、しっかり憶えておいて」
 そうおっしゃって、お姉さまのお顔が一度引っ込みました。

 カーテンの端が意地悪するみたいにユラユラ揺れて、お外がチラチラ覗けます。
 目の前の鏡に映る、赤い首輪を嵌めて不自然な形に両乳房を露出した不安げな女の上半身。
 カーテン越しに駅のアナウンスや電車が走り去る轟音、人々のざわめきが聞こえてきて、私のドキドキは最高潮。
 どんどん心細くなっているとき、お姉さまのお顔がニュッと、再び現われました。

「はい。お金」
 小銭を渡され、投入口に入れました。
「顔は隠していいから、おっぱいはバッチリ写るようにね。顔は、右の手のひらをカメラに向けて、目と鼻だけ隠しなさい」
「こう、ですか?」
 試しにお言いつけ通りの方法で顔を隠すと、お姉さまからおーけーをいただきました。
「写真撮ったらさっさとおっぱいしまって、元通りに服装直して出てきなさい」
 それだけおっしゃると、お顔がまたひっこみました。

 操作盤の説明に従って、写真を撮りました。
 ストロボが光ったとき、かなりびっくりしてしまいました。
 それから大急ぎでブラジャーを直し、胸元のボタンも留め直しました。
 出来上がった写真は、お外の取り出し口から出てくるということなので、自らカーテンを開けてお外へ出ました。
 写真はすでに出来ていたみたいで、お姉さまがお手に取ってニヤニヤされていました。

「なんだか、どこかの風俗嬢の紹介写真みたいね」
 お姉さまが差し出してきた紙には、両目と鼻付近だけを手のひらで隠したおっぱい丸出し女のバストアップ写真が、無機質な青色をバックにまったく同じ構図で4枚、鮮明に印刷されていました。
 赤い首輪と尖った乳首が淫猥で、ひと目でこの女はマゾだとわかっちゃうように感じました。
 それよりも何よりも、こんな自分の恥ずかし過ぎる写真を、すぐ横を見知らぬ人たちがたくさん行き交う駅の改札近くで見せられていることに、アブノーマルな興奮を感じていました。

「この写真は、あたしが記念にいただくわ。お金を出したの、あたしだもの」
 お姉さまがイタズラっぽく微笑み、ビニールトートをガサゴソし始めました。
「それで、あたしのものっていうことは、あたしがどうしようが勝手っていうことよね?」
 お裁縫セットから取り出したちいさなハサミで、写真を上下2枚づつの二分割にチョキンと切り離しました。

「こっちは、バッグに仕舞って・・・」
 ビニールトートのバスタオル側ではないほうに、写真が透けて見えるようにわざわざ表を向けた形で無造作に突っ込むお姉さま。
「そして、残りのこっちは・・・」
 お姉さまがニッと微笑み、証明写真ブースの中に入り込んで、操作盤の下の狭い台になったところの隅っこに、裏を向けて置きました。

「散歩の帰りにもう一度ここに立ち寄って、この写真が残っているか確認するの。賭けみたいなもの。面白いと思わない?」
 お姉さまの超愉しそうな笑顔。
「つ、つまり、もしかしたらこの写真が、誰かに視られちゃう、ということですよね?」
 自分で尋ねながら、誰かがこの写真をみつけたときの光景を想像して、キュンキュン感じてしまう私。

「この時期に証明写真を撮ろうなんていう人は少ないとは思うけれど、中に入ったら絶対に気づくわよね?それで写真見れば、まあ、オトコなら絶対持って帰るでしょうね」
「直子はどう思う?残っているか、誰かが持っていっちゃうか」
「うーん・・・やっぱりこの時期だと、誰もここを使わなくて、そのままのような気も・・・」
「おーけー。それじゃあ、もしなくなっていたら直子の負け、ということで、特別なお仕置き。それで決まりね。ちょっとここで待ってて」
 お姉さまは、ビニールトートの提げ手を私の左肩まで強引に通した後、お財布だけ持って券売機のほうへと向かいました。

 その背中を見送りながら、私は帰りに再び、あの階段を下りなくてはいけない、ということに、ふと気づきました。
 帰りの頃の私は、いったいどんな姿にされているのだろう・・・
 変わらず下着を着けているとは、到底考えられませんでした。
 
 そして、あの写真があるかどうかを確認したら、今度は電車に乗るのではなく、下りてきたあの急階段を上がって戻らなければならないのです。
 ノーパンノーブラにされていたら・・・
 そのときの自分を思うだけで、頭がクラクラするほどムラムラ疼いてしまいました。


オートクチュールのはずなのに 17


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