2015年9月23日

オートクチュールのはずなのに 20

 左側は長くまっすぐにつづくフェンス、右側はマンションなのかオフィスビルなのか低めのビルが立ち並ぶ、ひと気の無い直線道路。
 その突き当たり曲がり角から現われた、微妙にお揃いっぽい白と青系統のカジュアルなコーディネートで寄り添うラブラブカップルさん。
 
 そのカップルさんと私たちとの距離は、だいたい30メートルくらい。
 ひと足進むごとに、その距離がどんどん縮まっていきます。

 肩をぶつけるように歩きながら、仲睦まじくおしゃべりされていたおふたりのうち、男性のほうが先に、私たちに気づきました。
 お顔を上げて何気なく私たちのほうを見た後、いったん視線をお相手に戻し、またすぐ、今度はじーっと私だけに注目してきました。
 男性の視線が、私の首輪から胸元に移り、下半身を舐めた後、再び胸元に固定されたのがわかりました。
 男性の異変に気づいたらしい女性のかたからの視線も、私に釘付けになりました。

 お姉さまに手を引かれ車道側を歩いている私は、極力何でもないフリで無表情に努めました。
 だけど心の中は大騒ぎ。
 視ている・・・しっかり視られちゃっている・・・
 自分に対するカップルさんのご様子が気になって仕方なく、目線を動かさないようにチラチラ窺がわざるをえません。

 みぞおちの辺りを基点にして首周りのほうへとV字に大きくはだけた私の胸元。
 おっぱいの大部分がお外に露になっているはずです。
 うつむいた自分の視点では、浮き上がった布地の隙間から乳首も何もかも丸見えなのですが、布地が乳首を擦る感触もするので、乳首までは出ていないのかもしれません。
 だけど大きめの乳輪は、確実にお外にはみ出ているはず。

 包み込むものを失くしたふたつの乳房は、ひと足歩くごとにプルプル小刻みに暴れています。
 とくにビニールトートを提げている左肩のほうは、バッグの提げ手でワンピースの肩口の布が袖側に引っ張られ、右に比べて大きくはだけていて、歩くたびにそれがジリジリ広がっている感じなので、いずれ左乳首は出しっぱなしになっちゃうことでしょう。

 あと10メートルくらいでカップルさんとすれ違う、というときに、お姉さまの手が離れました。
「ちょっとそこに立ち止まっていて。撮影したいから」
 おっしゃるなりタッタッタと私の前方に駆け出すお姉さま。

「はい、こっちに目線向けて歩いてきて」
 私の5メートル先くらいで振り返ったお姉さまがハンディカメラを構え、しんと静まり返った道路に大きめのお声が響きました。
 まるでカップルさんに私の存在をあらためてアピールするような、わざとらしくもイジワルな仕打ち。
 案の定、お姉さまの背中の数メートル手前まで迫っていたカップルさんたちも、そのお声に一瞬ビクッとされましたが、それからはもう遠慮無しに興味津々な感じで、私にだけ注目して歩を進めてきました。

 お言いつけ通りトボトボ近づいていく私の姿をレンズとカップルさんがずっと見つめています。
 ふと自分の胸元に視線を落とすと、尖りきった左乳首が完全にお外へ飛び出していました。
 カップルさんがお姉さまの横を通り過ぎ、私に近づき、すれ違いました。

 すれ違いざまのおふたりの表情を、忘れることは出来ません。
 男性の、なんだか嬉しそうで好奇心丸出しの子供みたいな笑顔。
 女性の、汚らわしいものでも見るような軽蔑しきった冷たいお顔。

「なにあれ?アダルトビデオの撮影か何か?」
 私たちをみつけてからすれ違うまで、まったく会話されていなかったカップルさんのヒシヒソ声が、背後から聞こえてきました。
「かもね・・・」
「こんなところで胸出しちゃって、恥ずかしく・・・」

 その後は聞き取れませんでしたが、首輪、とか、エスエムチョーキョー、という言葉が断片的に聞こえた気がしました。
 私のマゾマンコはヒクヒク震え、お姉さまの傍までたどり着いたときには、立っているのもやっと、みたいな状態でした。

「バッチリ注目浴びちゃったわね?嬉しいでしょ?」
 お姉さまに再び手を握られ、そのまま歩きつづけます。
「すれ違った後も、何度もこっちを振り返っていたわよ。それはそうよね、こんなところにおっぱい丸出しの女がいたのだから」
 お姉さまの視線は、痛々しく尖って宙空を突いている、私の剥き出しの左乳首に注がれています。

「カレシのほうはニヤニヤしっ放しで、とても嬉しそうだったわね。バッグの中身にもピンときたみたい。カノジョのほうは呆れていた感じ」
「直子のエロい姿に刺激されて、あのおふたりさんのデートが、これから夜にかけて盛り上がるといいわね?」
 お姉さまが歩調を緩め、私の顔を覗き込みながら、からかうみたくおっしゃいました。

 私はと言えば、いつまた前方から歩行者が現われないかと、気が気ではありません。
 道はもうしばらくまっすぐですが、途中に四つ角もいくつかあるみたいなので、不意に現われる可能性は充分にありました。
 でも、幸いその後は、後ろから追い抜いていった自転車が一台あったきり誰も現われず、私は左乳首を外気に晒したまま歩きつづけました。

「ほら、あそこにオマワリサン」
 お姉さまが不意に立ち止まり、長いフェンスが途切れて門のようになっている空間の奥を指さしました。
 
 その指の先を辿ると確かに、門の車止め数メートル先の詰め所みたいな小さな建物の脇で、ひとりのオマワリサンが長い警棒を杖のように前に持ち、こちらを見ていました。
 その奥には広大な敷地。
 どうやら誰か偉い人の公邸のようでした。
 あわてて、からだごと顔をそむける私。

「そんなにあわてなくても平気よ。あの人の仕事はお邸の警備なのだから、よほど怪しげな人物でもなければ、持ち場を離れることはないはずよ」
 お姉さまがその前を平然と通り過ぎながらおっしゃいました。
「直子が全裸だったりすれば、無線で応援呼んで、別のオマワリサンがお相手してくれるかもしれないけれどね。どう?やってみる?」
 笑いながら笑えないご冗談をおっしゃるお姉さま。

「だけど、ここから先はしばらく人通りが増えそうな幹線道路沿いを歩くから、残念ながら、その乳首はしまっておいたほうがよさそうね」
 門の前を通り越して数メートルくらいのところで、お姉さまがまた立ち止まりました。
 私たちの行く手には、久しぶりの信号機と、高速道路の高架、そしてその下の幹線道路らしき幅広い道路が見えていました。

「ボタンひとつ留めて、おっぱいはしまっていいわ」
 お姉さまのお許しを得て、大急ぎで胸元を直しました。
 バストが窮屈になり、ワンピースの布を押し上げるふたつの突起が復活しました。

「だけど、それだけじゃ面白くないから、こうしましょう。その代わりパンティを脱ぐの」
 お姉さまがハンディカメラをこちらに向けながら愉しげにおしゃいました。

「えっ!?こ、ここでですか!?」
 思わず聞き返してしまってからすぐに、しまった!と後悔しました。
 お姉さまの表情が一変して、もの凄く怖いお顔をして私を睨んできます。
 ご命令に反問するなど、マゾドレイの私には、竜の顎の下の鱗に触れることよりも許されないことなのです。

「ご、ごめんなさい・・・す、すぐに脱ぎますから・・・」
 周りを見渡すと、幸いなことに人影はありません。
 でも、今さっき通り過ぎた数メートルのところにはオマワリサンが見張っていて、幹線道路を行き交う車の音もビュンビュン聞こえてくる、沿道のマンションの窓から誰かが覗いていないとも限らない、街中の無防備な一角なのです。
 こんなところでショーツを脱がなくてはいけないなんて・・・
 思った途端にマゾ性がキューッと悲鳴をあげ、快感がブルブルっと全身をつらぬきました。

「何をぐずぐずしているの!?」
 カメラを構えたお姉さまの鋭いお声。
「は、はいっ!」
 覚悟を決めて、ワンピースの裾に潜り込ませた両手を、前屈みになりながら思い切りずり下げました。
 ショーツは膝のところで紐状となり、直に外気が股間に触れて、ヒヤッとしました。

「全部脱いではダメよ。まずパンティを足首まで下ろしなさい」
 カメラを構えたまま、お姉さまからのご命令。
「単純にノーパンにさせるだけのつもりだったけれど、さっきの口答えに対してお仕置きをしなくちゃね。直子には一切の拒否権は無い、って最初に伝えたわよねぇ?」
 お姉さまがカメラを構えたまま、絡みつくようなお声で尋ねてきました。

「は、はい・・・」
「人通りが増えそうだから、おっぱいしまっていい、ってせっかく気を遣ってあげたのに、そのすぐ後にあれだもの。命令違反は、それ相応の辱めで償ってもらいます」
 まるで学校の先生みたいな、お姉さまの厳かなお声。

 上半身を屈めてショーツを足首まで下ろしました。
 両足首を結ぶ縄の枷のような状態となったショーツ。
 上体を起こしてお姉さま、つまりカメラのレンズを縋るように見つめました。

「そのまま右脚だけ、抜きなさい」
 もちろん、言いなりな私。
「抜いたら、パンティを左足首に巻きつけて結びなさい。落ちないように」
 心の中では、えーっ!?そんな・・・と大きく悲鳴をあげていたのですが、それを声にすることは、なんとか抑えこみました。

「あと、ローターは抜いちゃっていいわ。電池切れみたいだから」
 お姉さまがコントローラーをこれ見よがしに私に向け、指でスイッチを入れました。
 んっ、と身構えましたが、いつまでたっても震えを感じません。
「ここに来るまでに何度かスイッチ入れたのに直子が無反応だったから気づいたの。命令を守らない役立たずに用は無いわ」
 私にあてつけるみたいに、ひどく冷たく、吐き捨てるようにおっしゃるお姉さま。

「は、はい、お姉さま・・・」
 泣きたい気持ちでその場にしゃがみ込みました。
 しゃがみ込むと、自分がノーパンになってしまったことが如実にわかりました。
 閉じていたラビアが半開きとなり、股の下をスースーと風が通り過ぎて、熱を持った粘膜をくすぐっていきます。
 自分の股間を覗き込むようにすると、割れたラビアのあいだから、リモコンローターの白いアンテナ部分がタンポンの紐のように飛び出しているのが見えました。

 股間に右手を伸ばし、ローターのアンテナをつまみます。
「はうっ」
 手探りでやったので、指先が不用意にラビアに触れ、思わず甘い吐息が漏れてしまいます。
 私、こんな街中で自分の性器を弄っている・・・
 そう考えると同時に、このままマゾマンコをめちゃくちゃに弄り回して、後先考えずにイってしまいたい、という欲求が急激に湧き上がりました。

 だめ、だめ、そんなの絶対だめ。
 こんな街中で何を考えているの?
 欲求を懸命になだめつつ、ゆっくりとアンテナを引っ張り始めました。

「んん、ぬぐぅぅ・・・」
 ローターが膣壁を滑り、膣口を内側から抉じ開けてきます。
 ああんっ、もどかしい・・・
 すぐにヌルンとローターが出てきました。
 ポタポタポタッと路上におツユの雫が数滴垂れました。

「それは口に頬張ってキレイにしてからバッグにしまいなさい」
 私の葛藤を知ってか知らずか、お姉さまからの軽蔑しきったような冷ややかなご命令。
「ほら何しているの?いわれた通りにして、早くパンティ結ぶのっ!」
 
 自分のおツユにまみれたピンク色のローターを口に入れました。
 自分のどうしようもないヘンタイマゾぶりが味覚となって、しょっぱ苦酸っぱく口中に広がりました。

 ほっぺを膨らませたまま、紐状になったショーツをぐるりと左足首に巻きつけます。
 クロッチ周辺はグズグズで、つかんだ手のひらがヌルヌルベトベト。
 濡れていない銀色部分と濡れて黒くなったシミ部分がまだらになっています。
 
 両端をキュッと結んでから、急いで立ち上がりました。
 口の端からよだれが零れそう。
 ローターは、お姉さまが渡してくださったティッシュに包み、ビニールトートに入れました。

「直子、以前シーナさんに、脱いだパンティを手首に巻いておくように命令された、て言っていたでしょう?それを思い出したのよ」
 私がショーツを脱いで足首に巻くまでの一部始終を撮影されていたお姉さまがハンディカメラを下ろし、愉しそうにおっしゃいました。

 私も同じことを思い出していました。
 あれは東京で、シーナさまと初対面のとき。
 デパートの屋上でショーツを脱ぐように命令され、脱いだショーツを手首に巻いて放置されたあの日。
 それを下着だと見破った年下の女の子がくださった、軽蔑しきった憐れみの視線は、私が生涯忘れられない恥辱のひとつとなっていました。

「手首だったら、シュシュだと思わせることも出来るかもしれないけれど、足首だと言い逃れは出来ないわよね?そんなアクセなんて世界中探してもたぶん、ないもの」
 お姉さまが私の手を握り、再びゆっくり歩き始めました。

「その足首の飾りに気づいた人は、それを何だと思うかしら?勘のいい人ならピンとくるかもしれないわね?あれってひょっとして、下着じゃないか?って」
「脱いだパンティを足首に巻いて、ノーパンなことを世間様に知らしめながら散歩するの。それがあたしへの命令違反に対するお仕置き」
「乳首のポッチと足首のパンティで、ノーブラノーパンをアピールしながら歩くなんて、すっごく直子、あなたらしいと思わない?」

 イジワル声に磨きがかかり、お姉さまってば、とっても愉しそう。
 私の内腿をツツツッと、粘性の液体が滑り落ちていくのがわかりました。

 幹線道路まで突き当たると、広い舗道に人影も多め。
 そこを右に折れるお姉さまと私。
 さっき降りた地下鉄の駅へとつづくらしい階段の入口も見えました。
 
 見るからにオフィスビル街という佇まいの高架下を、車がビュンビュン走り過ぎていきます。
 一時は少し明るくなっていた空が再び暗くなり、風も少し出てきて、いよいよひと雨きそうな雰囲気を醸し出していました。
 そんな中を私は、今度はワンピースの裾を意識しながら歩かなければいけないことになりました。

 歩くたびに腿が裾を蹴り、ヒラヒラ割れるワンピースの裾。
 そこから覗くのは、さっきまでは黒っぽい布地、イコール私の愛液で汚れたショーツのクロッチ部分でしたが、今はツルンとした肌色、イコール私の抜き出しマゾマンコそのもの、になっていました。
 ただ、昨夜お姉さまもおっしゃった通り、黒っぽい股間より肌色のほうが、かえって目立たないような気もしていました。

 今の私は、ヘンタイ的な見所満載の姿になっています。
 赤い首輪、Vラインの胸のクッキリ谷間、ノーブラ一目瞭然の乳首の突起、左足首のショーツ、ビニールトートから覗くお浣腸薬を代表とする淫靡なお道具たち。
 そして新たに加わった、ミニワンピースの裾からチラチラ覗く剥き出しの股間。

 どれかひとつだけでも充分にヘンタイなのに、それらすべてを合わせたら、紛うこと無き露出過多の見せたがり、正真正銘のアブノーマルヘンタイマゾ女。
 都会的でお洒落な高層ビルが立ち並ぶ幹線道路脇の舗道を、そんな姿で歩きつづけました。
 
 時折すれ違う人はみなさま、まず赤い首輪に目を惹かれるようでした。
 一瞥してすぐ興味をなくす人、二度見する人、遠くからすれ違うまでネットリ見つめつづける人。
 さまざまな視線を浴びせかけられました。

 そして私は、そんな視線の中をミニワンピースのノーブラノーパンで、剥き出しの性器をチラチラさせながら歩いているという事実に大興奮していました。
 お姉さまの左手を汗ばむほどギュッと握り、努めて何食わぬ顔を装いつつも、心臓はずっと早鐘のよう。

 幹線道路を向こう側へ渡るための交差点。
 そこで信号待ちをしているときに、とうとうパラパラと雨が降ってきました。
 信号待ちをしている人は10人くらいで、私のすぐ横に立った40代くらいのおじさまが、私の胸元にチラチラ視線を送ってきています。
 その横のOLさんぽい女性は、私が提げたバッグの中身に目を凝らしているご様子。

「やっぱり傘買っておいて正解だったわね」
 おもむろにビニール傘を開くお姉さま。
 信号待ちの人たちのうち何人かも傘を開き、信号が青に変わると、傘を持っていない人たちが駆け出して行きました。

「ほら、もっとあたしにくっつかないと、濡れちゃうわよ?」
 横断歩道をゆっくり渡りながら、お姉さまからの思いがけないおやさしいお言葉。

 いったん手を解いてお姉さまが傘を左手に持ち替え、私はその腕に右腕をしっかり絡めました。
 私の右半身をお姉さまの左半身になすりつけるみたいにピッタリ寄り添って歩きます。
 お姉さまの体温、お姉さまの匂い、お姉さまの息遣いを感じながら。
 不意にさっきのラブラブカップルさんを思い出していました。
 
 お姉さまとの初めての相合傘に、今の自分の恥ずかしい格好のこともすっかり忘れるくらい、幸福感を感じていました。


オートクチュールのはずなのに 21

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