2016年3月14日

オートクチュールのはずなのに 41

「・・・はい、お姉さま」
 私がコクンとうなずくと、お姉さまが私のそばまで寄ってこられ、応接テーブルの傍らで向き合うような形になりました。

 お姉さまにじっと見つめられながら、おずおずと両手を動かし始めます。
 まず、スーツの上着から両腕を抜きました。
 お姉さまが無言で右手を差し伸べてくださり、その手に脱いだ上着をお渡ししました。

 次にブラウスの襟元に結んだタイを外し、ブラウスのボタンを外し始めます。
 ひとつ、またひとつとボタンを外して素肌が露わになるにつれ、私は、自分がどこか遠いところへと連れ去られるような感覚に陥っていました。

 今、私はここで裸になろうとしています。
 これまでも、オフィスで裸になったことは幾度かありましたが、それは、お姉さまとふたりきりのときだけでした。
 
 でも今回は、応接ルームの閉じたドアの向こう側に、早乙女部長さまがいらっしゃいます。
 平日のまだ午前中、それに何よりも勤務中なのです。
 私が裸になったら、間違いなくお姉さまは裸の私を、早乙女部長さまの前に連れ出すでしょう。
 そして、やがて他のスタッフのみなさま、更にもっとたくさんのみなさまの前へ。

 今ならまだ引き返せる・・・
 頭ではそう思うのですが、両手の指はためらいながらも義務のようにせっせと動き続け、いつの間にかブラウスのボタンは、全部外れていました。

 ううん、もう引き返せない。
 行けるところまで行くしかないの。
 迷いを断ち切るようにブラウスの両袖から腕を抜くと、スッとお姉さまの右手が私のブラウスを取り上げました。

 自分の胸元に視線を落としてみます。
 上半身で肌色でないのは、お気に入りの淡いピンクレースのブラジャーに包まれた部分だけ。
 固くなった乳首がブラジャーの薄い布を押し上げているのがわかりました
 先にスカートを取ろうと両手をウエストへ伸ばします。

「違うでしょ?」
 ずっと無言だっお姉さまから、低く短く、叱責されました。
「先にブラ」
「は、はい・・・」

 おっぱいが丸出しになることを少しでも先延ばしにしたいという、私の上っ面の羞恥心を見事に粉砕するお姉さま。
 勤務中のオフィスで裸になる、という非日常的な行為に反応しまくりな私のふたつの乳首は、窮屈なブラが外れるのを待っていたかのように勢いよくお外へ飛び出し、その尖り切った切っ先をお姉さまに向けて、媚びるように揺れました。

 上半身丸裸になって、スカートを脱ぎます。
 ホックを外してパンプスを脱ぎ、上半身を屈めると、おっぱいが重力に引かれてだらしなく垂れ下がりました。
 そのとき視界に入ってきたパンティストッキングの股間は、あまりにもはしたないありさまになっていました。
  
 床に落としたスカートを拾うと同時に、それもお姉さまの手によって素早く攫われました。
 上体をゆっくり起こし、そっとお姉さまを盗み見ました。

 お姉さまは、私が脱いだお洋服をすべて、慣れた手つきでたたんでくださっていました。
 上着、タイ、ブラウス、ブラジャー、そして今脱いだスカート。
 
 どれも、これからお店のディスプレイに並べて売り物にするかのように、丁寧に綺麗にたたまれていました。
 その行為を見て、お姉さまが無言の背中で、もはやあなたには、こんな服なんて必要ないものね、とおっしゃっているような気がしました。

 残るはパンストと、その下のショーツだけ。
 ただ、その股間がある意味、裸よりも生々しく破廉恥な状態となっていたので、逆にさっさと脱ぎ捨てたい気分でした。
 お姉さまが背中を向けているうちに、と、パンスト内側のショーツもろとも、思い切って一気にずり下げました。
 
 再び前屈みになり、片膝を上げると内腿も開きます。
 妙に滑りの良い肌同士がヌルヌル擦れ、クチュクチュッという淫靡な音さえ聞こえてきそう。

 まず右足から抜こうと、更に膝を深く曲げたとき、お姉さまが振り向きました。
 膝で引っかかっているショーツの内側と私のマゾマンコのあいだを、透明で粘性のあるか細い糸が数本伸びては切れ、どちらかの端に収束していました。
 そんな私の無様な姿を見て、お姉さまが嬉しそうにニッと笑いました。

「あらあら。ずいぶんと濡らしちゃったのねえ。パンストの表面にまでたっぷり愛液が滲み出ちゃってる」
 お渡ししたくなかったショーツ入りパンストを私の手から奪い取ったお姉さまは、わざわざそれらを大きく広げ、私のマゾマンコが包まれていた部分を私の鼻先に突き付けてきました。

「ショーツなんて、前のほとんどがヌルヌルベチョベチョ。モデルの話で、そんなにサカっちゃったんだ?」
「いえ・・・そ、それは・・・」
「それにすごい匂いよ?サカった牝の臭い。あーあ。あたしの指もベットベト」

 ついに全裸になってしまった上に、自分が汚した下着類を見せつけられ、その臭いにまで言及されてしまった私は、ますます被虐的に興奮し、すがるようにお姉さまを見つめました。

「いいのよ。どんどん感じちゃって。どんどん感じて、どんどんエロくなりなさい」
 汚れたパンストとショーツも丁寧にたたんでテーブルに並べ終えたお姉さまは、ウエットティッシュで指を拭ってから、私にまた一歩、近づいてきました。
 間髪を入れず、お姉さまの右手が私の下腹部へ。

「あっ!お姉さまっ!な、何を?・・・」
「うわっ、お尻のほうまでぐっしょぐしょ。それに熱もって、ほっかほか」
 お姉さまの人差し指と中指が無造作に、ズブリと私の膣に突き挿さりました。

「はぁうぅっ!!」
 思わず淫らな声が出て、あわてて口をつぐみました。
 お姉さまの指たちが膣内でウネウネと動き回り、私の官能をいたぶってきます。

「あぅ、お姉さま・・・ダメです、ダメですってば・・・む、向こうには、ぶ、部長さまも・・・」
 喘ぎ喘ぎの掠れ声で赦しを乞いましたが、お姉さまは知らん顔。
 指の動きがどんどん激しくなってきました。

「アヤのことなら気にしなくていいわ。あたしと直子の関係、もう知っているもの。それより今は、直子のサカったからだを鎮めるのが先決。ほら、イッていいのよ」
「ほらほら、いつもみたいにいやらしい声あげてイキなさい。中だけじゃダメ?ならここも」

 ずっと腫れっぱなしだったクリトリスを擦られ、ぐぐっと頂上に近づきました。
 それでも早乙女部長さまに気が引けて、悦びの声を洩らすまいと唇を真一文字に結び、必死に我慢します。
「んーーっ、んーーっ、んんーーっ、んんんーっ!!」

「喘ぎ声、我慢しているんだ?ふーん。アヤに聞かれるのが恥ずかしいの?ま、好きにすればいいわ。ほら、もう一度イク?」
「直子のマゾマンコが、あたしの指を逃がしたくないって、すごい力で締め付けてるわよ?」
「ほら、ほら、何度でもイッていいから。もっと?もっと?」
「んんーーーーーっ!!!」

 お姉さまが、絵理奈さまの代わりを私にやらせるおつもりらしい、とわかったときから、被虐と恥辱の予感に打ち震え、疼きっ放しだった私のからだは、お姉さまの本気の指技の前に呆気なく、ほんの数分のあいだに立て続けに5回、昇りつめました。

「はあ、はあ、はぁ、はぁ・・・・」
 崩れ落ちそうになる腰を、なんとか両脚を踏ん張って支え、荒い吐息の中、私の股間から離れていくお姉さまの右手を見送りました。
 いつの間にか両手は、後頭部で組んでいました。

「見て、あたしの指。マゾマンコの熱気とよだれのせいで、フニャフニャにふやけちゃった」
 お風呂上りみたいな指先を、私の鼻先に突き付けてくるお姉さま。
 紛れもない私の臭いが、プーンと漂ってきました。
 自分の臭いなのだもの、顔をそむける訳にもいきません。

「うん。ますますいい顔になった。今日は、イベントのショー本番まで、直子を好きなだけイカせてあげるわ。イジワルな焦らしとか、一切なしでね」
 お姉さまがウエットティッシュで私の股間を拭いてくださりながら、おっしゃいました。
 ティッシュがまだ腫れの引かないクリトリスにちょっとでも触れると、途端にビクンと性懲りも無くまた感じてしまいます。

 お姉さまにオフィスでイカせていただいちゃった・・・
 この後も好きなだけイカせてくださるって・・・
 それは何て、夢のようなお言葉・・・

「ショーまでに、直子のムラムラを出来るだけ解消しておいたほうがいいと思ってさ。溜め込んだまま本番になって、とうとう我慢出来なくなってお客様におねだりなんてし始めたら、目も当てられないから」
 ご冗談めかして、そんなことをおっしゃるお姉さま。

「でも逆に、何度イッたとしても、直子の淫欲の泉が枯れることは無いとも思っているの。今だって乳首もクリトリスも相変わらずビンビンだものね」
 クスッと微笑んでから、不意に真面目なお顔に変わったお姉さま。

「直子って、イクたびにエロくなるから、それが狙いかな。今だってからだじゅう、ものすごく敏感になっているでしょう?その、ひとの嗜虐性を煽るような妙な色気が、ひとの目を惹きつけるのよね」
「その感じで今日のモデルをしてくれれば、今回のアイテムの特徴もより引き立ちそうだし、お客様の心が掴めるような気がするのよ」

「今日のイベントで直子が体験することは、あたしが知っているヘンタイドマゾな直子の妄想をも、軽く超えるものになると思うの。何て言うか、露出マゾとしての新しい扉を開く、みたいな?」
「だから、直子も自分の性癖に素直になって、さらけ出して、愉しみながら頑張って、って言いたいかな?お姉さまとしては」
 この場をまとめるみたいなお言葉をおっしゃりながら、私が脱いだ衣服をひとまとめにして小脇に抱えました。

「さあ、次は早乙女部長に、そのからだを隅々まで、存分に視てもらおっか。彼女、きっとお待ちかねよ」
 さも当然のことのように、イタズラっぽくおっしゃるお姉さま。
 お姉さまがイジワルでワザとおっしゃったのであろう、早乙女部長、というお堅い呼びかたで、私は性的快感の余韻から現実へと、一気に引き戻されました。

 ここは現実のオフィス。
 早乙女部長さまがいらっしゃるのも現実。
 私が今、全裸なことも現実。
 そして今日、キワドイ衣装を着てショーのモデルをしなくてはいけないのは、紛れもなく現実の私でした。
 
「おっけーお待たせーっ。交渉成立。イベント決行よ!」
 私の衣服一切を持ったお姉さまだけ、スタスタと応接ルームのドアへ向かわれ、何の躊躇無く開け放つと、大きなお声でメインルームに向けて宣言されました。
 そのままメインルームへと消えるお姉さまのお背中。

 取り残された私には、開け放たれたままのドアの向こう側が、前人未到の奥深いジャングルのように思えました。
 出来ることなら出たくない。
 今更ながら、急に怖気ついてしまいました。
 あのドアからメインルームへと一歩踏み出したとき、現実の私の、この会社での立場がガラッと変わってしまう・・・
 それがわかっていたからでしょう。

 あらためて自分のからだを見下ろしました。
 今日はチョーカーも着けてこなかったので、文字通りの一糸纏わぬ姿。
 私が着てきたお洋服は全部、お姉さまに没収されていました。
 そして、当然のことながら、お姉さまとお約束した私は、いつまでもここに隠れている訳にはいかないのです。

 唯一床に残されていたベージュのパンプスを裸足に履き直し、ゆっくりとドアに近づいていきました。
 なんだか慣れない感じがする。
 考えてみると、全裸にハイヒールだけで歩くの、って初めてかも。
 
 そんなどうでもいいようなことを考えて現実から目を逸らしつつ、おずおずとドアの外へと足を踏み出しました。
 早乙女部長さまがいらっしゃるということで、さすがに、堂々と、とは出来ず、左腕で胸を、右手で股間を隠しながらしずしずと歩みました。

 あらま、というお顔になってお口を軽く押さえていらっしゃる早乙女部長さまのお姿が、視界に飛び込んできました。
 お隣には、薄くニヤニヤ笑いを浮かべたお姉さまのお姿。
 おふたりとも応接ルームのドアすぐ近くまでいらっしゃっていました。
 私が近づくたびに早乙女部長さまは、一歩一歩後ずさりされました。

「ほら直子、こっちのもっと明るいところまで来なさい」
 お姉さまに窓際の、たまに私がメインルームでお仕事するときに使っているデスクのほうへと誘導されました。
 左腕で胸を右手で股間を押さえた姿の私は、そのデスクの前に立たされました。
 
「森下さん、イベントのモデル、引き受けて、くださったのね?」
 ドアのところでお見せになった、あれま、のお顔は引っ込んだものの、それでもまだ、信じられない、という雰囲気のままの早乙女部長さまが、ゆっくりとワンセンテンスごと区切って、お声をかけてくださいました。
 区切りの合間には、ゴクリと唾を飲み込まれる音が聞こえてきそうでした。

 それはそうでしょう。
 お仕事柄、女性の素肌には慣れていらっしゃるでしょうが、昨日まで普通にオフィスで顔を合わせていた社員のひとりが、パンプスだけの全裸姿で目の前にいるのですから。
 それも、チーフとの応接ルームでの話し合いの後、ひとりだけ全裸で出てきたのです。

 私も、部長さまのお顔をまともに見ることは出来ませんでした。
 全裸ということに加えて、私の顔は今さっき、お姉さまの指で立てつづけにイカされた直後、という、ふしだらなオマケ付きなのです。

「はい・・・わ、私しか、身代わりになれないとお聞きしましたので、僭越ながら、やらせていただきます・・・」
 胸と股間を押さえたまま視線を合わさずに、ペコリとお辞儀をしました。
 
「そう、ありがとう・・・このイベントの責任者のひとりとして、お礼を言わせてもらうわ」
 瞳を宙空に泳がせたままそうおっしゃり、私にひとつお辞儀を返してくださった部長さまを、お姉さまが嬉しそうに見ていました。

「さあ、そういうことだから、いつまでもグズグズしていないで、イベントに集中しましょう」
 なかなか本来のお姿にお戻りになれない部長さまに焦れたのか、お姉さまがワザとらしいくらい明るいお声でそう宣言され、早乙女部長さまの肩を励ますように軽くポンとお叩きになりました。
 それで部長さまも我に返られたのか、何か呪縛が解けたようなため息を、小さくホッとつかれました。

「そうね。集中しましょう。せっかくイベントが中止にならずに済むのだから」
 ご自分に言い聞かせるようにおっしゃった部長さま。
「それにしても、森下さんて、本当にそういう、女の子だったのね・・・」
 心の中のお気持ちがついお口から出てしまったようにポツリとつぶやかれ、あらためて私を見てくる部長さまの呆れたような瞳。
 部長さまの頭の中で、私という人物に対する認識が、ギュンギュン書き換えられているのが、手に取るようにわかりました。

「まずは早乙女部長に、モデルのからだを確認してもらわないと・・・」
 おっしゃりながら、私の顔を睨みつけてくるお姉さま。
「直子?あなたの両手は、そこではないでしょう?あなたのすべき、あなたも大好きなポーズが、あるのじゃなくて?」
 お姉さまったら、急なエスモード全開で、私はビクン!

「は、はい・・・ごめんなさい・・・」
 いずれは注意されると覚悟はしていたものの、見知った部長さまに初めてすべてをお見せすることは、気恥ずかしさの上に肉体的な恥ずかしさ、更に自分の性癖をお披露目する恥ずかしさまで重なって、普通の何倍もの恥ずかしさでした。

 両足は、休め、の広さに開き、両手は重ねて後頭部へ。
 両腋の下からおっぱい、そして両腿の付け根まで、すべてが露わになって隠せない、マゾの服従ポーズ。
 部長さまがグイッと身を乗り出してくるのがわかりました。

 早乙女部長さまの射るようなプロの視線が、私の全身を隅々まで舐めるように、吟味していくのがわかりました。
 頭の天辺から爪先まで、5度6度と往復して、最後は下半身に留まりました。

「ずいぶんと綺麗なハイジニーナなのね?永久脱毛かしら?」
 部長さまの口調は、いつものお仕事のときと変わらない、クールな感じに戻っていました。
 私のからだをプロの目で吟味することで、いつものペースを思い出されたのでしょう。

「あ、あの、えっと・・・」
 私が、どうお答えしようか、と口ごもっていたら、お姉さまがお口を挟んできました。
「この子、エンヴィでやってもらったのよ」

「エンヴィって、あのアンジェラさんのところ?それはまたずいぶんと、お金がかかっているのねえ」
 部長さまが呆れたようなお声でおっしゃいました。

「この子は、シーナさんのお気に入りだったからね。あたしのモノになる前に、シーナさんからいろいろと仕込まれているのよ」
「高校生の頃から、自分で剃ってパイパンにしては、学校や街でこっそりノーパン遊びして悦に入っていたっていうから」
 きっとワザとなのでしょうが、お姉さまが思い切り蔑み切った口調でおっしゃいました。

「ふーん。そんなに以前からハイジニーナがお好きだったのね。いったいなぜなのかしら?」
 お姉さまの口調に引きずられるように、部長さまのお言葉にもイジワルな響きが混じり始めていました。
「そう言えば以前、森下さんにここでバレエを踊ってもらったとき、薄いな、とは思ったのだけれど、まさかここまでツルッツルとは思いもよらなかったわ」
 部長さまが薄い笑みを浮かべ、私の顔と股間を不躾に見比べながらおっしゃいました。

「ほら、直子?部長さんに、正直にお答えなさい」
 お姉さまに薄いニヤニヤ笑いで促されます。

「は、はい・・・それは、私が、マ、マゾだからです・・・」
 自分でお答えして、自分でゾクゾク感じていました。

「そう。マゾなの。マゾって、虐められたり、イタい思いをワザとしたがるような人たちのことよね?それと、ハイジニーナと、どうつながるの?」
 わたくしそんなこと、まったく存じません、みたいな感じで、シレッと私に問い返す部長さま。
 
 だけど、これは部長さまからの、私をからかうためのお言葉責め。
 いくら知らないフリをされたって、現に今、部長さまだって絵理奈さまのために、ご自分でヘアを処理されて、そのパンツスーツの奥がパイパンなこと、知っているんですから・・・
 心の中ではそんなふうに、部長さまに反撃してみるのですが、もちろん言える訳ありません。
「そ、それは・・・」

「露出狂のマゾだから、毛なんてジャマで、中身までよーく視てもらいたいのよね?」
 お姉さまの茶化すような合いの手。
「は、はい・・・その通り、です・・・ろ、露出狂マゾには、ヘアはいらないんです・・・」
「あらあら。露出狂でもあるんだ?それはそれは、多趣味だこと」

 おふたりで私を虐めにかかっている雰囲気がありました。
 部長さまから、最初の戸惑ったようなご様子は掻き消えていました。
 おふたりとも嗜虐的な瞳で、私を見下していました。
 それはきっと私が、そうさせるようなオーラを放っているからなのでしょう。

「身が美しいって書いて躾、って言うけれど、本当に良く躾けられた、美しいからだだこと。合格よ。あなたなら今回のモデル、絵理奈と遜色ないわ」
 部長さまが薄く微笑み、それからお姉さまを見ました。

「絵美ったら、いつの間にかこんな面白そうな子と愉しんでいたのね。わたくしに内緒で」
「アヤだって、いつの間にか絵理奈ちゃん、たらしこんでいたんでしょう?お互い様よ」
 束の間のおふたり、学生同士みたいな和気藹々な会話。

「でもまあ、直子の場合は、イベント終わったら本性バレで、うちの社員の共有ペットみたいになっちゃいそうだけれどね。とにかくこの子、恥ずかしがりたくて、虐めてほしくて仕方ないドマゾだから」
「今日のモデルの件は、あたしのプライベート調教ということになっているから、アヤも躊躇せず、どんなことさせてもいいからね。すべて従う約束だから」
 そこまでおっしゃって、お姉さまが私のほうを向きました。

「直子もここからは、アヤも含めてスタッフ全員の言葉は、すべてあたしからの命令だと思うこと。誰のどんな言葉にも絶対服従よ。それでイベントを必ず成功させましょう」
 傍に部長さまがおられて張り切っていらっしゃるせいでしょうか、お姉さまのエス度がいつにも増してストレートに感じられました。
「はい・・・わかりました。精一杯、やらせていただきます・・・」
 
 もはや私は、取り返しのつかない地点まで足を踏み入れたことを、今の一連のお姉さまのお言葉で実感しました。
 会社のスタッフ全員の共有ペット・・・
 ポイント・オブ・ノーリターン、というやつです。
 
「そうそう。どんなことでも、で思い出したけれど、この子、アヌスのほうは、どうなの?使えるの?」
 部長さまが、私の股間から視線を外さず、お姉さまに尋ねました。
 普段の部長さまなら、とてもお使いにならなそうな、お上品とは言い難い単語が、そのお口からスルッと出たので、妙にドキッとしました。

「ああ。プラグを使うアイテム、あったわね、大丈夫よ。直子、お見せしなさい」
「えっ?」
「こちらにお尻向けて前屈しなさい。あっ、その前に、ちょっと待ってて」

 ご命令通りお姉さまたちに背中を向けているあいだに、お姉さまは、社長室のほうにとっとっとっと駆けて行き、すぐに戻られました。
 その右手にはあの、ピンクのブランドもの乗馬鞭が握られていました。


オートクチュールのはずなのに 42


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