2016年4月17日

オートクチュールのはずなのに 46

「ふーん。マゾね。裸を視られるだけで感じちゃうんだ?」
 しほりさまが、私の背後に立たれ、正面の鏡越しに視線を合わせてきました。

「あの、えっと・・・」
「でも、相手が男ならともかく、女同士じゃない?そんなのでいちいち感じていたら、お友達と温泉旅行にも行けないんじゃない?」
 私の頭からウイッグを外しながら、しほりさまがからかうようにおっしゃいました。

「だけど興奮しているのは、本当みたいよね。さっきからあなたの乳首、見ていて痛々しいくらい起き上がっちゃってる」
「そういう反応って、なんだか新鮮だわ。わたしが呼ばれるイメージビデオとかの現場って、羞じらいとか、ほとんどないから」

「場数を踏んだグラビアアイドルなんて、カメラが向いているときこそ、えっちな衣装着せられてハズカシー、なんて顔しているけれど、撮影の合間は、平気でスッポンポンで食事とかケータイ弄ったりしているもの」
「撮影スタッフや裏方なんて、それが男でも女でも、人とも思っていないのじゃないかしら?ビジネスライクと言えば、そうなのだけれど」

 しほりさまが私の髪からウイッグ用のネットを外してくださり、半乾きの髪をブラッシングしつつドライヤーをかけてくださっています。

「絵理奈さまも、そうなのですか?」
 ふと気になって、お尋ねしました。

「彼女も堂々としたものよ。一昨日のゲネプロでも、ずっと裸かガウン一枚羽織っただけで、キワドイ衣装を取っ換え引っ換え、淡々とこなしていたわ」
「まあ、自分のからだに自信があって、それが売り物だっていう自覚もあるからでしょうね。そういう現場にも慣れているし」

「わ、私も、そんなふうにもっと、何て言うか、堂々としなくては、いけないでしょうか?」
 絵理奈さまのお話を聞いて、不安になってきました。
 今だってこんなに恥ずかしくてドキドキしている私に、沢山の人たちを前にしたイベントのモデルなんて務まるのでしょうか・・・

「あなた?あなたには無理なんじゃない?だって、視られるだけで感じちゃうマゾなのでしょう?」
「今だって、鏡の中でわたしと目が合うたびにビクビク感じているみたいじゃない?肌もずいぶんと火照っているみたいだし」

 おしゃべりされながらも、しほりさまの両手はテキパキ動き、乾いた髪を再び頭上にまとめられ、ネットをかぶせられました。
「あなたは、そういう人なのだから、そのままでいいんじゃない?」

「でもでも、モデルするときは、不機嫌なくらいのポーカーフェイスにして、決して表情を出してはダメ、って言われているんです。お姉さまから」
「ああ。それは正論だわね。ショーの最中ずっとモデルがそんなエロい顔してランウェイを行ったり来たりしていたら、見ているお客様のほうが困っちゃうもの」

「安心して。わたしが精一杯、生意気そうな顔に仕立ててあげるから。そんなエロ顔さえ怒っているみたいに見えるくらいにさ。それじゃあ、顔に移るわよ」
 しほりさまが愉快そうにおっしゃり、私の顔にファンデーションを塗り始めました。

 しほりさまの少しひんやりとしたしなやかな指が、私の顔を満遍なく撫ぜ回してきます。
 目尻が引っ張られ、鼻先を押し上げられ、唇をなぞられ、耳の穴を穿られ。
 なんだか、やさしく顔面嬲りをされている気分。

「あなたがさっきしたポーズ、社長さんが顎で指図したら取ったポーズって、よくアメリカのドラマとかで、ポリスがハンザイシャにやらせるポーズよね?抵抗するな、っていう感じで」
 しほりさまが私の顔を撫ぜ回しながら、尋ねてきました。

「はい。そう言われてみれば、そうですね・・・」
「ふたりのあいだで、そういう決まりがあるんだ?ああしたら、あのポーズになる、っていう」

「はい・・・あ、あれは、マゾの服従ポーズ、って呼んでいて、何もかも露わにして言いなりになりますから、このからだをご自由にされてください、っていう服従の気持ちを表わしています」
 お答えするために自分で言葉に置き換えながら、その被虐な内容にキュンとなりました。

「ふーん。マゾの服従ポーズかあ。マゾって言ったら、痛いのとか、縛られたりも好きなの?」
「はい・・・」
「縛られて、鞭とか、ローソクとか?」
「・・・はい」
「社長さんと、そういうことして遊んでいるんだ?」
「はい・・・たまにですけれど」
「ふーん」

 しほりさまの両手が私の顔から離れ、あらためて私の顔を鏡越しに、じーっと見つめてきました。

「決めた。やっぱりわたしもあなたのこと、呼び捨てることにするわ。いいわよね?」
「は、はい・・・もちろんです」
「そのほうがあなたも嬉しいみたいだし。本当に根っからのマゾなのね、ナオコって」
「は、はい。ありがとうございます」
 しほりさまから初めて、ナオコ、って呼び捨てにされて、ゾクゾクッとしちゃいました。

 しほりさまの手で、テーブルの上のさまざまなお道具が取っ換え引っ換え選ばれ、本格的なメイクアップが始まりました。
 至近距離にお顔を近づけられ、真剣な眼差しが私の顔面を刺してきます。
 私はずっとされるがまま、鏡の中の自分を見つめていました。

 眉はいつもよりクッキリ太めに。
 マスカラをフル盛りして、更に目尻に毛足の長いつけまつげ。
 アイラインもハッキリ、目尻を上げてシャドウも濃いめ。
 ノーズシャドウにチークも強め。
 リップは濡れたようにぽってりなチェリーレッド。

「はい。こんな感じで、どう?」
 鏡の中の私は、確かに別人になっていました。
 
 連休のとき、オフィス街での露出遊び用にお姉さまがしてくださったメイクより、もっともっと生意気風。
 小生意気じゃなくて、大生意気。
 試しにウイッグをかぶせてもらったら、顔の輪郭まで変わって、本当に別人。
 そして、自分で言うのもはしたないのですが、すいぶんキリッとした美人さんに見えました。

「我ながらうまくいったと思うわ。ほら、こうしても・・・」
 唐突に、しほりさまの両手が背後から、私のおっぱいを両方鷲掴みにしてきました。

「あぁんっ!そんなぁ!」
 生おっぱいを乱暴にギュッと掴まれ、思わずいやらしい声をあげてしまいました。

「ね?悶えてるっていうより、イヤがってるみたいな顔に見えるでしょう?」
 両手をニギニギ動かして私のおっぱいを揉みしだきながら、しほりさまが嬉しそうにおっしゃいました。

 確かに、眉間にシワを寄せて半眼になって身悶える自分の顔が、いつもなら媚びるようなだらしないアヘ顔になってしまうのですが、このメイクだと不快そうにジトッと睨むような顔になっていました。

「それにしてもナオコの乳首、すごい尖りよう。コリッコリに硬くなってる」
「あっ、あっ、あっ・・・」
 指と指のあいだで乳首を挟まれ、ギュギュッと絞られると、もうダメ・・・
 強く弱くおっぱいをもてあそばれ、瞬く間に下半身がムズムズ熱くなってきました。

「会ったときからずっと気になっていたのだけれど、ナオコって、見事に綺麗なパイパンよね?ひょっとしてそれって、生まれつき?」
 私のおっぱいを虐める手は止めず、しほりさまが尋ねてきました。
 鏡に映るしほりさまの視線が、両腿をピッタリ閉じて座った私の、その逆Yの字の部分を凝視しているのがわかりました。

「あんっ、い、いえ、あの、生まれつきではないです・・うぅぅ、薄かったけれど・・・」
「処理しているんだ。でも剃った感じじゃないわよね?抜いたの?永久脱毛?」
「あんっ、あっ、あっ、はいぃ、一年くらい前から、えっ、エステサロンに何度か通って、や、やんっ、やっていただきましたぁ・・・」

「へー。本格的なのね。グラドルにだってそんな子、なかなかいないわよ?ずっと一生パイパンでいいんだ?」
「あぁ・・・は、はいぃぃ・・・」
 しほりさまがおっしゃった、一生パイパン、というお言葉に、私のマゾ性が盛大に疼きました。
 始まったときと同じように、しほりさまの両手が私のおっぱいを、唐突に開放してくださいました。

「ねえ、ちょっと脚、開いてみてよ」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「あ、そっか。ナオコには、こういう言いかたじゃダメなんだ。こうかな?ナオコ、脚を開きなさい」
 しほりさまが、後半は学校の先生のような無表情になって、ご命令口調でおっしゃいました。

「はぁ、はいぃ・・・」
 お答えしたものの、今、脚を広げるのはすごく恥ずかしい。
 だって、今のおっぱい嬲りで私の下半身にはジンジン血液が集まり、ヌルヌルなことは明白でしたから。
 それでもご命令には逆らえません。
 揃えていた両足を左右に滑らせ、ゆっくりと両腿を開き始めました。

「もっと」
「もっともっと」
「もっともっともっと」
 しほりさまのお声に煽られて、私の両腿は180度近くまで開いていました。

「ここから見ても、中がヌレヌレなのが一目瞭然じゃない?鏡の中で粘膜がキラキラ光ってる」
「ラビアが開ききって、中がヒクヒク蠢いているわよ?いやらしい子」
「わたしに視られて、触られて、そんなに濡らしてくれちゃっていたんだ。なんだか嬉しい」
 しほりさまの恥ずかしすぎるご指摘に、私はビクンビクン震えてしまいます。

「ナオコの反応見ていると、社長さんがナオコを虐めたくなる気持ちがわかる気がする。人の嗜虐欲を絶妙にくすぐる、いちいちエロい反応なのよね。虐め甲斐があるって言うか」
 鏡に映った私の開ききったマゾマンコをじっと見つめながら、しほりさまが愉しそうにおっしゃいました。

 ふと鏡の中で目が合うと、しほりさまはニッとイタズラっぽく笑ってから、軽く顎を上に向けられました。
 それを合図に、もちろん私の両手は頭の後ろへ。
 ご満足そうなしほりさまの笑顔。

「おーけー。それじゃあ立って。今度は全身にファンデーションするから」
 しほりさまから次は、どんなご命令が下されるのか、とドキドキしていた私は肩透かし。
 でもすぐに、そのお言葉の意味に、えっ!?となりました。

「からだにも、ですか?」
「あたりまえじゃない。モデルのからだっていうのは、ショーで身に着けるアイテムを最大限に引き立てるためにあるのだから」

「とくに今回のイベントは、あえて裸を見せる方向のアイテムが多いのだから、からだも綺麗に見せるように、メイクするのはあたりまえなの」
「まあ、ナオコは、素肌も綺麗なほうではあるけれどね。でも、しておけば、汗を抑える効果もあるし。知らないでしょうけれど、舞台照明、とくにスポットライトって、浴びると、かなり暑いのよ」

 両手を後頭部に当てたまま、姿見の前で立ち上がりました。

「わたししかいないのに、そのポーズをしてくれるということは、わたしにもマゾとして絶対服従するつもり、ということよね?」
「はい。その通りです」
「うふふ。嬉しいわ。なんだかすごくいい気分。手、下ろしていいわよ」

「これからわたしがナオコのからだを隅々まで撫ぜ回すけれど、ナオコは絶対、感じてはいけない、ということにしましょう。声を出したり、顔をしかめるのもダメ」
「ショーのときの、社長さんから言われているポーカーフェースのいい練習になるでしょ?どんなに気持ちよくても我慢すること。いい?」
「・・・はい」
 ドキドキしながら、しほりさまの手の感触を待ちました。

 最初にウイッグが外され、すぐに背中にひんやりとした感触がきました。
 クリーミーな粘液が肌を滑るのがわかります。
 しほりさまの手のひらが背中を満遍なく滑っていきます。

 一度首筋まで登った手のひらは、やがて脇腹までいったん下がり、腋の下から右腕へ。
 こそばゆい感覚でやんわり愛撫され、そのもどかしい感触に思わずトロンとしちゃいそう。
 左腕も終わると今度は正面へ。
 鎖骨から胸元、そしておっぱいへと。

 うなじや脇腹、背骨の上など、私が弱いところを優しく撫ぜられるたびに、淫らな声が出そうになって、必死で耐えました。
 全身がポカポカ火照って、クネクネ身悶えたくて仕方ありませんでした。
 でも、我慢するようにとのご命令。
 鏡の中の自分の顔を睨みつけながら、一生懸命堪えました。

 だけど、おっぱいを両手でやさしく包み込まれたとき、とうとう唇が開いてしまいました。
 さっきのような、強く揉みしだくような感じではなく、ふうわりと慈しむような絶妙なタッチ。
 しほりさまの手のひらに、尖った乳首がやさしく押し潰されます。
 それがすっごく気持ち良かったんです。

「あふうぅ・・・」
 喉の奥が鳴ってしまってから、しまった、とあわてて口をつぐみました。
「こらあ。感じちゃダメだって言ったでしょ?」
 そうおっしゃるしほりさまの口調は、怒っているというより、面白がっている感じでした。

 しほりさまの両手は休むことなく下半身へ。
 私の足元にひざまずかれ、左足首からふくらはぎ、そして太腿。
 同じように右脚も太腿途中まで撫ぜてから、唐突にお尻へ。
 お尻の割れスジを抉じ開けるようにして隅々にまで、クリーミーな粘液に覆われました。

 おへそから下に塗るときは、いったんタオルで股間を拭かれました。
 溢れ出しそうな私の愛液を拭ってくださったのでしょう。
 それは、とても恥ずかしいことでした。

 しほりさまの真正面、目と鼻の先に私の股間。
 その部分に右手をあてがい、私の股間を撫でさするしほりさま。
 私は歯を食いしばって、湧き上がる快感に抵抗しました。

「こんなところでいいでしょう」
 立ち上がられたしほりさまが濡れタオルで両手を拭い、私にまたウイッグをかぶせてくださいました。

「うん。なかなかの仕上がりだわ」
 私の全身をしげしげと眺め、ご満悦な表情のしほりさま。
 鏡の中の私は、全身がツヤツヤ、テラテラと輝いていました。

「ナオコって、肌スベスベなのね。ずいぶん念入りにお手入れしているのでしょう?」
「あ、いえ、そんなには・・・」
「それって謙遜にならないわよ?本当だったら、ほとんどの女性を敵に回す発言ね」
 ご冗談ぽくおっしゃるしほりさま。

「そんなことを言うから虐めたくなるのよね。ナオコのクリトリスって、ずいぶんご立派だこと、とか」
 笑いながらおっしゃるしほりさまに、私は全身がたちまちカーーッ。

「テカテカになって爆ぜちゃいそうなくらいに飛び出ていたわよ?ずいぶん感じてくれちゃったみたいね」
「そ、それは・・・」
「今、すごくウズウズしているんじゃない?いっそのこと、ここでわたしが弄って、一度発散してあげようか?」
「あ、あの、えっと・・・」

「なんてね。期待した?でももう、あんまり時間がないから、ちゃっちゃと最後の仕上げをしなくちゃなのよね。残念ながら」
 相変わらずの笑顔で、テーブルの上の他のお道具を物色し始めました。

「でも今のは本心よ。時間があったら、ナオコが乱れるところ、この目で視てみたいと本心から思ったの」
「イベントが無事終わったら、機会作ってよ。社長さんも一緒でいいからさ。ナオコが社長さんに虐められてイッチャウとこ、すごく視てみたいのよ」
 背中を向けたまま、しほりさまがおっしゃいました。

「約束して。わたしからも社長さんにお願いしておくから」
「・・・はい・・・」
 
 そうお答えする他ありません。
 そしてきっとお姉さまも、しほりさまのご提案にご同意されると思いました。
 あたしじゃなくて、しほりさんが存分に虐めちゃっていいわよ、なんておっしゃって。

 私の性癖がみなさまに知られ、これからどんどん、私はそういう扱いの、みなさまの慰み者マゾドレイになっていく・・・
 そんな予感がありました。

「最後は、ペディキュアとマニキュアね。腰掛けていいわよ」
「あ、はい」

 私が座ろうと腰を落としかけたとき、玄関のほうで鍵を開けようとする、ガチャガチャという音がしました。
「えっ?」
 反射的に時計を見ると、午後1時を少し回ったところ。

 社員のかたたちがいらっしゃったんだ!
 開場が2時、開演は3時。
 時間的に、そろそろ集合して会場へ向かうべき頃合いとなっていました。

 とうとう社のスタッフ全員に、私の全裸姿を視られてしまう・・・
 ほのかさまに、リンコさまに、ミサさまに、そして雅部長さまに。

 今すぐどこかへ逃げ出したい、という羞恥と、遂にそのときがきてしまった、という被虐が、恥辱という塊になって全身を駆け巡り、それらは結局、ほろ苦くも甘酸っぱい、ある種の性的快感に姿を変えて全身を麻痺させ、座るのも忘れて立ち尽くしました。

 やがて、玄関のドアが開いて閉じるバタンという音につづき、女性声の華やかなガヤガヤという喧騒が、こちらへと近づいてきました。


オートクチュールのはずなのに 47


1 件のコメント:

  1. このたびの大地震で被災されたみなさまに、心よりお見舞い申し上げます。

    亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げると共に、行方不明になられている方々のご無事と負傷されたみなさまのご快癒、そして被災地の一日も早い復興を、心からお祈りいたします。

    余震がまだつづくようですので、みなさまくれぐれもご自愛くださいませ。

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