2010年7月3日

グノシエンヌなトルコ石 04

そこは、やよい先生のプライベートルームみたいでした。
机の上にラップトップのパソコン。
りっぱなオーディオセットと、CDやDVDや本がぎっしり詰まったラックが4つ。
それにクロゼットが2つ置いてあります。

ワンピースを脱いでハンガーに掛けてから、渡された紙袋を覗いてみました。
入っていたのは、白いレオタードと、白いシュシュだけ。
「えっ?」
私は、ドアを少し開けて、顔だけ薄暗いリビングに出しました。

やよい先生も着替えをしているようで、かがんだ裸の背中が見えます。
その背中に問いかけます。
「やよい先生。このレオタ、バストカップやタイツが無いんですけど・・・」
やよい先生は、振り向きもせずに冷たい声で言います。
「奴隷にそんなもの必要ないでしょ?あなたは恥ずかしい姿を見られて喜ぶ、いやらしい女の子なんでしょ?」
「そう言えば、あなた、ずっと前に一度、タイツ忘れたって言って、穿かないであたしのレッスン受けたことあったわね」
「グリーンのレオタだからわからないと思ったんでしょうけど、あたしちゃんと見てたわよ」
「スジ食い込ませて、股のとこ濡らして。恥ずかしい娘」
「あなた、忘れたなんて嘘だったんでしょ?わざとだったんでしょ?」
「ほら、さっさと着替えないと、もっと恥ずかしいめにあわせるわよっ!」

私は、首を引っ込めて、そっとドアを閉じました。
やよい先生が言ったことは、全部本当でした。
バレていた恥ずかしさにクラクラしながら、ブラをはずしました。
両方の乳首がすでに痛いほど尖っています。
ショーツを脱ぐと、アソコにも今にも垂れそうなほどに、すけべなお汁が溢れています。
近くにあったティッシュを数枚抜いて、アソコにあてがいました。
ティッシュがみるみる湿っていきます。

「もりしたさん。まだなの?早くしなさいっ!」
やよい先生の大きな声がドア越しに聞こえました。

私は、あわてて濡れたティッシュをハンガーにかけたワンピースのポケットに隠してから、レオタードに両脚を入れました。
その白いレオタードは、私が今まで着たこともない極端なハイレグでした。
そして・・・
私のからだより、なんか全体的に、微妙に大きいんです。

レオタードというのは、伸縮性に優れた生地で作ってありますから、本来はからだにピタっと吸い付くフィット感が快適なのですが、やよい先生が用意してくれたレオタードは、全体に5~10ミリくらい、私のからだには大きくて、その分、布があちこちで、だぶついています。
ユルユルなんです。
ですからたとえば、上半身を大きく動かしたら肩紐がはずれてしまい、それでなくても大きく開いている胸元の布地を巻き添えに、おっぱいがぺろんと露出しちゃいそう。
下半身ならば、仮に大きく脚を広げたならば、アソコを隠すべき布地に摩擦がなくて、本来隠すべき場所から置いてきぼりをくらってしまいそうな、そんなユルさです。
レオタードは、きつきつ食い込みパッツンが、とっても恥ずかしいものとして知られていますが、ユルユルでもそれはそれで恥ずかしいんですね。
おまけに、私の胸の先端部分だけは、ぴったりと布に密着して、白い布地に二つの突起を露骨に見せびらかせています。
一方、アソコ部分はピッタリ密着しているときと違って、動くたびにユルんだ布がアソコにくっついたり、離れたりするので、逆に刺激が増しています。

私は、急いで髪を後ろにまとめ、シュシュで留めました。
とりあえず、片腕で胸を、片腕で腿の間を隠しながら、着替えの部屋を出ました。

リビングは、カーテンは閉められたままでしたが、煌々と電気が点いていました。
さっきの薄暗さが嘘みたいに、明るくなっています。
小さく低く、どこからかサティの「グノシエンヌ」の3番が流れてきます。

「遅いわよ、もりしたさん。もうとっくにレッスンは始まってるわよ」
相変わらず冷たい声のやよい先生は、あざやかなレモンイエローの超ハイレグなレオタードを着ています。
私と違って、きつきつパッツンで、やっぱり素肌の上からじかに着ているようです。
胸元には、小さな突起が二つ浮き、腿の間も、布地がくっきり食い込んでいます。
ただ、さっき見えたはずの、日焼け跡の白い肌の部分が見えないのがちょっと不自然でした。

「何ジロジロあたしのからだ見てるの?いやらしい。レッスン始めるわよっ!」
やよい先生にピシャっと言われ、私は反射的に、
「はいっ!」
と答え、姿勢を正しました。

「なんかだらしないレオタードね。おまけにえっちなハイレグ」
「でも、それだけハイレグでも毛がはみださないのね。ひょっとして剃ってるの?」
私は、ぶんぶんと力を込めて首を左右に振ります。
「あらそう。じゃあ薄いのね。まあ、いいわ」

「はい、プリエっ」
やよい先生が手拍子をしながら、いつものレッスンみたいな口調で命令します。
私は、両腕を左右に開き、両脚のかかとが付くくらいに足先を開いから、軽く両膝を左右に曲げ開いて屈伸します。
「グランプリエっ」
プリエの格好から、腰だけ深く落として屈伸します。
思った通り、内腿の間の布が余っててしまい、アソコと布の間に隙間ができています。
油断していると肩紐は肩から腕のほうへどんどんはずれてきてしまいます。
大きく開いている胸元の布もゆるゆるで、目線を下げると、私には自分の両方のおっぱいが乳首まで丸見えです。

「はい。立ち上がったところから、グランバットマン」
私は立ち上がり、背筋を伸ばして、腕は軽く上に上げて、左脚をまっすぐ前に伸ばします。
そのまま、左脚を顔のほうまで上げて、次は後ろ、横と上げ下げをくりかえします。
レオタードのアソコを隠すべき布地は、すっかりユルんでしまい、本来の仕事を放棄して私の右内腿に貼りついています。
正面から見れば、布のたるんだ隙間から、私の両内腿の上にある薄い毛とその下の亀裂が丸見えのはずです。
脚を上げるたびに、アソコの口もパクパクと開いたり閉じたりしているはずです。
私は、自分がしている恥ずかしい格好に、どんどん感じてきてしまいます。
動くにつれて、アソコを満たしていたえっち液が溢れ出し、右内腿をツツツーっと幾筋も滑り落ちていきます。

「それじゃあ、横を向いて、アラベスクをキープして」
私は、右脚を軸にして、左脚を後ろに水平に上げ、上半身を反らして胸を張り、右腕は前に水平に、左腕は上げている左脚の膝のあたりを軽く押さえます。
「はい、そのまま」
やよい先生は、私をそのままの格好にさせて、ゆっくり私の背後に回りました。
「乳首はつんつんに勃てちゃってるのに、お股の布はゆるゆるなのね」
背後から、私が精一杯張っている胸を両手で鷲づかみします。
「あらあ、やわらかいおっぱい。でも、なんでここだけ硬いの?」
そう言って、私の尖っている両乳首を布の上からつまみます。
「あ~んっ、や、やよい先生~・・・」
「ほら、ぐらぐらしないっ!」
お尻をパチンと叩かれました。
「それから、あたしを呼ぶときは、先生、だけ。わかった?」
またお尻をパチン。
「あんっ。は、はいっ、先生・・・」
「で、なんで、ここだけ、硬いの?」
「そ、それは・・・、先生に苛められるのを、き、期待してるから・・・」
やよい先生は私の顔をじっと見つめて、やがてにこっと小さく笑いました。

「そう。でもなおちゃん、あなた自身が、固いわよ。もっとリラックスして」
やよい先生はそう言いながら、私のあごに手をかけて互いの鼻がくっつくくらい自分の顔を近づけてきます。
「それじゃあ、やっぱり最初はまったりと普通にレズろうか?」
やよい先生が私の顔をじっと見ながら、やさしく誘います。
「こっちのソファーに座って」
私のウエストを取ってソファーのところへ連れてゆき、またピッタリと並んで座って、顔だけ向き合いました。


グノシエンヌなトルコ石 05

グノシエンヌなトルコ石 03

「それじゃあ、少し質問していい?」
「・・・はい・・・」

カーテンを閉めて戻って来たやよい先生は、私の隣には座らず、キャスター付きの椅子をひっぱってきて私の正面にガラスのテーブルをはさんで座りました。
やよい先生のほうが私より、上半身分くらい高い位置です。
私はさっきから、やよい先生のノーブラ、タンクトップな胸が気になって仕方ありませんでした。
今は、目の前にある、短パンの裾から奥のほうでチラチラ見え隠れしている、日焼けしていない白い肌が気になって、気になって・・・

「うっうんっ!」
一つ喉を鳴らしてから、やよい先生がおもむろに尋問を始めます。

「あなた、今まで男の子との経験は・・・?」
そこまで言って、あ、そうだった!って顔になります。
「あるわけないわね。ごめん。あなた、男のアレがだめだったんだよね」
私は、小さくうなずきます。
「じゃあ、こういうのも、だめね?」
やよい先生は、椅子の背もたれにひっかけたビニール袋からなにやら取り出しました。
それは、男の人のアレを模した形の大きなバイブレーターみたいでした。
私の心臓がギュっと縮まります。
キレイなピンク色をしていましたが、私は、見た瞬間に、両目をぎゅっとつむり、顔を背けました。
「そうだよね。ごめんね。これは却下、と」
そう言って、またガサガサしています。
どうやら、椅子の背もたれのもう一方にかけてある、空っぽのビニール袋のほうに入れてくれたみたいです。
「もうだいじょうぶよ。こっち向いて」
私は、恐々と視線をやよい先生に戻します。
「なおちゃんのトラウマ、だいぶ重症みたいね。でもあたしは、それって嬉しいけど」
やよい先生がやさしく微笑みます。
すごくキレイな笑顔です。

「じゃあ、なおちゃん。あなたのアソコに、あなたの指以外、何を入れたことある?」
私は真剣に考えます。
「エンピツと・・・リップクリームの容器と・・・体温計と・・・バ、バターナイフと・・・」
「バターナイフ?」
「は、はい。ひんやりして、気持ちいいかな?って・・・」

「あ。あと小さい楕円形のやつで、電池でぶるぶる震えるやつ・・・」
「ローターね。あなたそんなもの、持ってるの?」
「いいえ・・・」
私は、恥ずかしさに震えながら、中学三年前半に経験した同級生の相原さんとのことを、正直に告げました。
「そっかー・・・なおちゃん、初レズじゃないのね・・・ちょっと残念・・・」
「ご、ごめんなさいっ!」
私はあわてて、またうなだれます。
「だからー、いちいち反応しなくていいからさー」
やよい先生が笑いながら言ってくれます。
「指は何本?」
「さ、三本まで・・・」

少しの間、思案気な顔だったやよい先生は、私に顔を近づけて、ひそひそ話のような声で聞いてきました。
「なおちゃん、SMって、知ってる?」
「は、はい・・・。痛くしたり、恥ずかしい格好したり、させたり、縛ったり、縛られたり・・・」
クーラーは良く効いているのに、私のからだは、ぽかぽかしています。
シャンパンがまわってきたのかも・・・でもぜんぜん眠くはありません。
「なおちゃん、よく知ってるねー。で、なおちゃんは、S?それともM?。苛めたい?苛められたい?」
「えっと・・・。た、たぶん・・・エ、Mじゃ、じゃないかな?・・・」
「そうだよね。良かったー」
やよい先生がにこにこ笑っています。

「あたしの今のパートナー、ドMなのよ」
「だから、あたしも期待に応えられるように日夜勉強してるの」
やよい先生は、おどけるような口調でつづけます。
「秋から冬にかけて、ちょっと寒くなったら、あたしと外で逢うときは、いっつもコートの下は裸なの。見せたがりのクセに恥ずかしがりや・・・」
「自分でおっぱいと、アソコをロープで痛そうに縛ってきて」
「で、コートのポケットは、いつもあたしと腕を組む右側だけ、穴が開いているの。あたしがいつでもアソコをさわれるように、って。全部のコートがだよっ!」
「・・・そういうの見てると、すっごくかわいいなあ、この子、て思うのね・・・」
「あたしもずいぶん、縛るの上手くなったわ・・・」

やよい先生は、愛おしそうに、目をつぶります。
私は、いいなあー、って、うらやましくなります。

「あっ。あたしの話は、まあいいや」
照れているやよい先生の顔が、カワイイです。

「で、なおちゃんは、縛られたいって、思う?」
「は、はいっ!」
「痛いのは、だいじょうぶ?」
私は、洗濯バサミを、自分の腿やおっぱいにはさんでオナニーしてること、でもまだ乳首には、工夫してゆるくした洗濯バサミでしかはさめないこと、ネットでいろいろ読んで妄想してることを、正直に、たどたどしく、告白しました。
「ふ~ん・・・そうやってオナニーしてるんだ・・・」
やよい先生は、ふんふん、とうなずきながら私を見おろしています。

「あと、なおちゃん、お尻は?」
「え、えっと、ちょっと苦手・・・かな?」
「お尻の穴になんか入れたこと、ある?」
「い、いいえ・・・」
「入れてみたいと、思う?」
「えーと、す、すこしだけ・・・」
「ふ~ん・・・」
やよい先生が、少し黙り込みます。
私は、あわててつづけます。

「でもでも、今日ここに来る前に、お家のトイレで小さいお浣腸してきました。だ、だからキレイだと、お、思いますっ!」
「なおちゃんて、マゾの鏡ね。すごくいい心がけっ!」
「でもでも私、あんまりお浣腸とか好きじゃないんです。がんばってがまんしてるときとか、がまんしてがまんして、やっと出すのは気持ちいいんだけど、なんか後に、あのにおいがお部屋にこもっちゃって・・・」
私は、初めて自分のお部屋でお浣腸をして、がまんできずに、ビニールシートの上に漏らしてしまった日を思い出していました。
「じゃあ、なおちゃん、自分でときどきやってるんだ」
「は、はい、誰かの前でやったことはないですけど・・・」

「お家に一人のとき、お風呂場でやることは、たまにあります。すごく気持ちいいんだけど、やった後のにおいがイヤで・・・なんかえっちな心が萎えちゃうんです。だから最近はぜんぜんしてません・・・」
「なるほどね。確かにそれはあるよね。下手にこぼしちゃうと、現状復帰するの大変だし・・・」
「でもね、あんまりにおい残さないやり方も、あるには、あるんだけどね」
「でも確かにあたしも最近は、家のバスルームか、どっかのラブホでしか、そういうプレイ、してないなあ・・・。ねだられなきゃ、やんないし・・・ほんと、後始末が萎えるんだよねー」

「じゃあ、お尻にちょっと何か挿れるのくらいは、おっけー?」
「は、はい・・・」
私は真赤になって、モジモジしながら、答えました。

「わかった。だいたいのプランがまとまったわ」
やよい先生が言いました。
「じゃあ、あっちの部屋でこれに着替えて」
何か柔らかいものが入った小さな紙袋を渡されました。
「本当は、あたしの目の前で一枚ずつ脱いでもらおうかと思ってたんだけど、なおちゃんの、そのきれいな私服、汚しちゃったら悪いからね」
私はちょっとがっかり。

「それからね」
やよい先生が私の目を見ながら、つづけます。
「これから、なおちゃんといろいろするんだけど、その途中であたしが、怖いこととか、乱暴な言葉とか、下品な言葉を使うと思うの」
「あと、なおちゃんがイヤがっても、かまわずに痛くしたり、乱暴に扱ったりもするかもしれない・・・」
「でもね、それは、あたしがなおちゃんのこと大好きだからなの」
「だから、なおちゃん。あたしの言葉とか、いちいち真に受けて考え込んだりしないでね。なおちゃん、素直だから・・・」
「これからやることは、全部ゲーム。二人で気持ち良くなるためのゲームなの」
「SMってね、お互いにしっかりした信頼関係がないと、成り立たないの。SとMの信頼関係がなかったら、それはただのイジメ」
「それで、これから今日一日、あたしはご主人様で、なおちゃんは、なんでも言うことをきかなきゃいけない奴隷ね」
「だいじょうぶ。なおちゃんが本当にイヤがることは絶対しないから。あたしがするのは、なおちゃんがして欲しがってることだけ」
「わかった?」

私は、真剣に大きくうなずきました。

「そう。じゃあさっさとあっちの部屋で、着替えなさい」


グノシエンヌなトルコ石 04

グノシエンヌなトルコ石 02

私に汗を拭くためのタオルを渡しながら、やよい先生がつづけます。

「せっかく、なおちゃんが来るんだから、いつもの部屋のままにしておこうって思ったんだ」
「ってゆーか、この大好きだった部屋の最後の思い出が、なおちゃんと、ってことが、すっごく嬉しいんだ」
「もちろん、あたしのパートナーは、明日からもしょっちゅう来るけど、ね」

「つまりね、あたしもなおちゃんのこと、ずっと前から、気になってたんだ・・・うん。本当に」
「いつか、二人きりで、その、遊びたいな、って思ってた・・・」
「片付けなんて、来週の頭から、ささっとやれば、ぜんぜん間に合うし・・・」
やよい先生は、言葉を選びながら丁寧に説明してくれました。
私は、すっごく嬉しい気持ちになりました。

「ふー。クーラーつけっぱなしで出かけて良かった。このクーラー、一回消すとなかなか仕事再開しないから・・・ちょっとそのへんに座ってて」
やよい先生は、ダイニングのほうに大股で歩いて行きます。
そのへんと言われて、きょろきょろすると、前にガラスのテーブルが置いてある柔らかそうな黒い大きなソファーがあったので、そこに失礼して、端っこに浅く腰掛けました。
「お腹は空いていない?」
遠くから声がします。
「はい。食べてきましたから」
私も、大きな声で返事をします。
遅い朝食を食べてから出てきたので、本当のことです。

「はい。あらためて、いらっしゃいませー」
やよい先生が、お盆に何か飲み物とグラスとお菓子を乗せて、戻ってきました。
「もっと真ん中に座りなさい」
私のウエストに手をやってソファーの中央までずるずるひきずってから、私のすぐ横に座りました。
「お、おじゃましてまーす。 あ、これ、母からよろしくと」
私は、ウエストに手をかけたままピッタリと寄り添ってくるやよい先生にどぎまぎしながら、アイスクリームの袋を渡しました。
「わ。これアイスじゃん。うれしー。開けてみよう!」

ワイワイ言いながら、やよい先生はチョコ味、私はヨーグルト味を選びました。
やよい先生が持ってきた飲み物を手に聞いてきます。

「えーと、なおちゃん。あなた、お酒は飲んだことは?」
「・・・たぶん、すごく弱いと、思います」
パっと浮かんだ、昔の思い出を振り払いながら、答えました。
「ってことは、飲んだことはあるのね。じゃ、だいじょうぶね」
「・・・」
「これはシャンパン。うーんと・・・ワインを炭酸で割ったようなもの。ほら、よく外国の映画で、なんかいいことあると、スポーンって栓が飛ぶお酒でカンパイしてるでしょ?あーれ」
「そんなにアルコール分強くないから、たぶん、なおちゃんもだいじょうぶ。飲もっ!」

やよい先生がシャンパンの瓶を持って、慎重に栓を止めているワイヤーをゆるめていきます。
「じゃあ、いくよ、なおちゃんっ!」
言うや否や、瓶の栓のところを二人が座っている場所から一番長い距離がある、玄関のドアの上ほうに向けました。
栓を抑えていたやよい先生の指がはずれると同時に、シャンパンの栓は、ポンって、すごく大きな音をたててヒュンって飛んでゆき、玄関ドアの上のほうにコツンと当たって落ちました。
同時にシャンパンの飲み口からシュワシュワと泡が溢れ出てきて、やよい先生があわてて唇で塞ぎます。
「きゃはははは~」
私は、なんだかすごくそれがおかしくて、大きな声で笑ってしまいました。

やよい先生が、小さなグラスにシャンパンを注いでくれます。
二人でグラスを持って高く掲げます。
「それでは、あたしとなおちゃんの初めてのお泊りデートに、カンパーイ!」
おどけた大きな声で言います。
「カンパーイッ!」
私も負けずに大きな声で言いました。

美味しいーっ。
ずっと前に飲んだ白ワインより甘くてシュワシュワしてて、すごく美味しい。

二人でアイスをスプーンで舐めながら、さっき車の中でしていたお話のつづきを、また面白おかしくやよい先生がしてくれます。
私は、声を出して笑いながら、聞いています。
やよい先生は、カンパイの後は冷蔵庫から出してきた白ワインに切り替えて、ちびちび飲んでいます。
私のグラスが空くたびに、シャンパンを私のグラスに注いでくれます。
小さな瓶でしたが、とうとう私が全部飲んでしまいました。
でも眠くなる気配もないし、なんだかどんどん楽しい気分になっています。

「ねえ、なおちゃん。そのシャンパン、すっごく高いの、知ってる?」
「えっ!?」
私はまた、不安そうな顔になったんだと思います。
「あ。違うの、そういう意味じゃなくて・・・」
やよい先生があわてて言いました。
「つまり、そのシャンパンを開けるのは、あたしがすごく好きな人が来たときだけ・・・」
「今日、なおちゃんが部屋に来てくれて、あたし、すごくワクワクしてるの。ね。わかるでしょ?」
私は、なんて答えればいいか、どぎまぎしてわかりませんでした。

「それで、どうする?もうちょっと暗くなるまで、まったりする?映画でも見よっか?」
「・・・」
「それとも・・・すぐ、はじめて、みる?」
私は、コクンとうなずきました。

「そうね。早く始めれば、いっぱいできるもんね。暗くなきゃ、暗くしましょう、ほととぎす・・・」
やよい先生は、なんだかヘンなことを言ってソファーを立ち、部屋中のカーテンを全部閉めてから、お部屋の電気を夏の夕方くらいの暗さに調整しました。


グノシエンヌなトルコ石 03