2014年1月13日

コートを脱いで昼食を 27

 籐椅子に腰掛けた私の真正面に、桜子さまが座っています。
 ふたりのあいだにテーブルはありません。
 両内腿をピッタリ合わせて揃えている私の両膝を、黒いスリムジーンズな桜子さまの両膝が左右から挟みこむくらいの至近距離。
 背筋を伸ばし、胸を張るように指示された私と、前のめりな桜子さま。
 自分でたくしあげているTシャツの裾から零れた私の左おっぱいのすぐ前に、桜子さまのお顔があります。

 桜子さまがそのおっぱいの表面を、ウエットティッシュみたいなもので丁寧に拭い始めました。
「んっ・・・」
 ひんやりとした感触に思わずからだがヒクっと震えてしまいます。
「ずいぶん火照っているのねえ?直じゃなくても指先に体温が伝わってくるわよ?」
 上目遣いに私を見つつ、桜子さまがフフンて笑いました。
 乳首を中心として満遍なく、おっぱいが撫ぜ回されます。
「ぷにぷに。やわらかいのね」
「んんっ!」
 桜子さまの手首の辺りが、尖った乳首に引っかかりました。
 私は口を真一文字に結んで、悦びの声を必死に堪えます。

「ナオの乳首、本当にカチンコチンね?よくもまあこんな長い間、尖らせっぱなしに出来るものだわ」
 そんなイジワルをおっしゃりながらも、桜子さまはテキパキと両手を動かしています。
 3~4センチ四方くらいの百合のお花のシールが乳首の右上に貼られ、軽くポンポンと叩かれてから、ゆっくり台紙が剥がされました。
 白地に黄色い筋と赤い斑点の入った綺麗な山百合が一輪、私のおっぱいの乳首脇に咲きました。

「うん。いい感じね」
 満足そうにうなずいた桜子さまが、パフでシールの上をポンポンと叩きます。
 私の左おっぱい全体がプルンプルンと弾みました。
「ナオのおっぱいの揺れ方って、なんて言うか、ぽってり重そうで、すごくいやらしい」
 薄い笑みを浮かべた桜子さまがそうおっしゃってから、傍らに置いたデスク上のお道具に右手を伸ばしました。

 細いブラシを手にした桜子さまのお顔が、再び私のおっぱいにグイッと近づいてきました。
 そして、肌を這う微かな感触。
 アイラインブラシくらいのか細い筆先で、百合のお花に茎部分が緑色で描き加えられていきます。
 そのコショコショとしたもどかしい愛撫。
「ふぅぅん・・・」
 思わず鼻息が洩れてしまい、恥ずかしさに目をつぶってしまいます。

 まるで、すっごく小さな虫に乳首の周りを這いずりまわられているような、じれったい愛撫がしばらくつづきました。
 その虫は、少し動いては止まり、また少し動いては止まり。
 虫の愛撫とは別に、ブラシを持つ桜子さまの人肌の掌も、ときどき乳首周辺の肌に触れたり触れなかったり。
 目をつぶっていると、どうしてもその感触に全神経が集中してしまい、からだがモヤモヤ疼いてきてしまいます。
 あまりにももどかしくて、あまりにもじれったくて、このままだとヘンになっちゃう。
 気を散らさなきゃ。
 そっと目を開けると、至近距離に桜子さまの真剣な目つき。
 私のおっぱいに絶え間なくブラシを走らせ、ときどき、ご自身の指で肌の染料を伸ばしたりもされています。

 お道具を変えるのか、ブラシが肌から離れ、桜子さまが傍らのデスクに手を伸ばしたとき、お店のドアチャイムが突然鳴りました。
 カランカラン・・・いらっしゃいませー。
 ドッキーン!
 上半身がビクンと跳ねて、反射的に入口ドアのほうへ振り向く私。
「動かないの!」
 桜子さまの鋭いお声。

「何をそんなにビクビクしているの?ナオは、みんなに裸を視られたくて、そんな格好してきたんでしょう?そういうのが好きなんでしょう?」
「だったら視てもらえばいいじゃない?ワタシもお金をもらう以上、中途半端な仕事はしたくないの」
「お客様が来るたびにビクビク動かれたら作業が進まないわよ?平気な顔していれば、お客様も、そういうものかな、って思うから、終わるまで何があってもじっとしていなさい」
 桜子さまのお顔に薄ら笑いはもはや無く、ご自分の作品に没頭している精悍なアーティストの面持ちでした。
 カッコイイ。
「は、はい。わかりました・・・ごめんなさい」
 またまた見蕩れてしまう私。
 桜子さまのお顔が私の左おっぱいに覆いかぶさるように前のめりになり、再びブラシが肌を撫ぜ始めました。

「あ、それはね、今週入ってきた新柄なの。色違いもありますよ」
 純さまが接客されるお声が聞こえてきます。
 そう言えばシーナさまは?
 顔は動かさず、視線だけで周りを見渡してみましたが、私の視界内にシーナさまの姿はありませんでした。
 私の背後で、桜子さまの作業を見ていらっしゃるのかな?
 なんて考えているとまた、カランカラン・・・いらっしゃいませー。

 やっぱりけっこう、お客様いらっしゃるんだ。
 思った途端に体温が上がり始めました。
 こんな調子なら、いつか絶対、誰かに視られちゃう・・・
 こっちの売り場まで、誰も来ませんように・・・
 両脚の付け根がヌルッってきたのを感じて、内股にギュッといっそう力が入ってしまいました。

「なんだかまた肌が上気してきたわね?他のお客様が来たから興奮しているの?」
 桜子さまがブラシを動かす手は止めず、くぐもったお声で尋ねてきます。
「あともう少しだから、がまんしてじっとしててね。ナオが動いて失敗したら、ワタシ、あーあ、って大きな声出して、ナオのことみんなに注目させちゃうからね」
「は、はい・・・」
 心を落ち着けるために再び目を閉じて、ひたすら終わりを待つことにしました。

 カランカラン・・・ありがとうございましたー。
 カランカラン・・・いらっしゃいませー。
 カランカラン・・・いらっしゃいませー。
 カランカラン・・・ありがとうございましたー。
 カランカラン・・・いらっしゃいませー。

 頻繁にお客様が訪れては帰られているようです。
「今日は何をお探しですか?ゆっくり見ていってくださいねー」
 店内に響く桜子さまの快活な接客のお声を聞きつつ、店内を歩き回る複数の足音にも真剣に耳を澄ませていました。
 幸い今のところ、こちらのほうへ近づいて来る足音はありません。
 でも心臓は、爆発しちゃいそうなくらいハラハラドキドキ。

「おっけー。こっち側は完成よ。我ながらなかなかの出来栄えだわ!」
 少し大きめな桜子さまのお声に、反射的に目を開けました。
 私の左おっぱいからお顔を離した桜子さまが、対面からじーっと私の左おっぱいを凝視していました。
「へー。いいじゃない。さすがだわ、桜子さん」
 いつの間にかシーナさまも桜子さまの傍らに立ち、私の左おっぱいを見つめています。

 視線を自分の左胸に落としました。
 左乳房の乳首右斜め上に、乳暈よりひと回り大きいくらいの綺麗な山百合の花が一輪、咲いていました。
 そのお花の下から緑色の茎が、乳暈の円周を廻りこむように左側へ流れています。
 茎は途中から英語の筆記体になっていて、小さな葉っぱをちりばめた草のような装飾書体で、Masochist Naoko、と読めました。
 文字は、乳暈の円周に沿って乳首を囲むように描かれていて、Naoko の最後の o の字がちょうど乳首の左側まで来ていました。

 確かにデザイン的には、とってもシャレていて格調高いアートな感じでした。
 山百合の白と黄色と赤、茎と葉の緑と薄茶、そして乳首と乳暈の濃いめなピンク。
 それらがまあるいおっぱいの肌色の上で、鮮やかなコントラストを描いていました。
 だけど、描いてある文字の意味は、私のアブノーマルな性癖のこと。
 マゾヒスト直子。
 これからしばらくのあいだ、私はおっぱいにこんなことを描かれたまま、暮らさなくてはいけないんだ・・・
 そんなふうに思うとたちまち、股間がキュンキュン盛大にざわめいてしまいました。

「ふぅーーっ。染料が乾くまで2、3分、休憩させてね。次は薔薇だったわよね?」
「んーーーっ!」
 桜子さまが座ったまま、両手を思い切り上にあげて伸びをされました。
「よかったじゃない直子。すっごくステキに仕上がって。今日、純ちゃんのお店に来た甲斐があったわね」
 シーナさまがケータイを向けてカシャッと写真を撮りつつ、嬉しそうに笑いました。

「あ、ご試着ですか?でしたらこちらへどうぞー」
 小休止で緊張が少し緩まったのも束の間、緊急非常事態発生みたい。
「そのデザインなら絶対、お客さまにお似合いですよ。もしサイズが合わなかったら同じお色で他のサイズもありますから・・・」
 純さまのお声が近づいてきたと思ったら、私から見て右奥のハンガーラックの陰から、何かお洋服を手にした純さまが現われました。
 純さまはそのまま、スタスタと桜子さまの背後を歩いていかれます。
 つづいて現われたのは見知らぬお客様。
 私の視界に入ったと同時に、そのお客様も私の姿に気づいたようでした。
 そのお客様は私を見て、ギョッとしたように一瞬立ち止まってから、うつむいて小走りで、私のほうを見ないようにしながら純さまに追いすがりました。

 純さまが現われたとき、私もドキッとしつつその方向を凝視していましたから、つづいて現われたそのお客様ともバッチリ視線が合って、しばし見つめ合う形になりました。
 驚きでまんまるに見開かれたそのお客さまのふたつの瞳。
 たぶん同い年くらいの学生さんぽい、可愛らしい感じのスレンダーな女性でした。
 あまりの恥ずかしさに、からだ中の血液が闇雲にグルグル駆け巡りました。
 しかしながら、今さっき染料で描かれて乾ききっていない作品を、Tシャツをずり下げて覆い隠すわけにはいきません。
 剥き出しのおっぱいを見せつけるように自分でTシャツをめくりあげたまま、全身が羞恥に染まるに任せるしかありませんでした。

「ああ、あれはスキンアートのサービスなんです。スキンアートってほら、タトゥシールとかペイントタトゥとかの・・・」
 おそらく、そのお客様が純さまに尋ねたのでしょう、純さまがご説明されるお声が、今度は左側から聞こえてきました。
 って、え?試着室って、そこなの!?

 私が腰掛けている籐椅子の左横、3メートルくらい向こうの壁際。
 そこには濃い緑色のカーテンがかかっているだけで、お洋服類は何もディスプレイされていませんでした。
 最初ここに座ったとき、左側を見て、その周辺だけ妙に片付いているな、とは思ったのですが、お店の一番奥だし、まったく気にしていませんでした。
 今は、そのカーテンの前で純さまとお客様が、私のほうをチラチラ見ながらお話されています。
 間の空間を遮るものは桜子さまの低めなデスクひとつきりなので、横向きな私の姿が余裕で丸見えのはずです。

「バストにして欲しい、っておっしゃるので、ああいう格好なの。ほら、ウチはほとんど女性のお客様しか来ないから、お客様がよろしいのならかまいませんよ、って」
 そのお客様が何か答えたようでしたが、お声が小さくて聞こえませんでした。
「そうですね。大胆て言えば大胆だけれど、人それぞれ、いろんなご趣味があるから・・・」
 その後、純さまもヒソヒソ声になって、おふたりでクスクス笑っているようです。
 ああん、なんていう恥ずかしさ。
 私は真っ赤になってうつむきます。
 だけどやっぱり気になって、上目遣いに周囲を見回します。
 桜子さまとシーナさまは立ったまま私を見下ろし、お顔を見合わせてニヤニヤ笑い。

 シャーッ!
 桜子さまが試着室のカーテンを開いたようです。
 その音につられて左側を見ると・・・
「あっ!」
 試着室の奥一面の大きな鏡に、横向きな私の姿がクッキリと映っていました。
 自らTシャツをまくりあげておっぱいを丸出しにしているショートボブな女の横顔。
 それはまぎれもなく私でした。
 籐椅子のアームレストで下半身こそ見えませんが、お腹から上、まあるい乳房とツンと尖った乳首は鮮明に丸見えでした。
 私に背を向けていたそのお客様が鏡の中の私に気づいたのでしょう、その華奢な両肩がビクンと震えました。

 鏡によって客観的に自分の姿をつきつけられると、今更ながら我がことながら、その格好と状況があまりにアブノーマルだと実感させられます。
 カラフルなお洋服や雑貨に囲まれた営業中のお洒落なブティック店内で、ファッショナブルに着飾った人たちの中、ひとりだけおっぱい丸出しの私。
 私の数メートル向こうにいる試着のお客様は、まるっきり見ず知らずの女性。
 賑わう店内のハンガーラックの向こうには、あと数人、見知らぬお客様がいらっしゃるのです。
 そんな中で、ひとりだけ、ほぼ全裸な私・・・

 そう言えば、あの試着のお客様が桜子さまの背後を通ったとき、私の下半身まで見えちゃったのかしら?
 たぶん、桜子さまやシーナさまの背中で隠れていたとは思うけれど・・・いいえ、そう思いたい・・・
 おっぱいだけじゃなくて、お尻もアソコも実は丸出しだなんて知られちゃったら・・・
 異常過ぎ、破廉恥過ぎ、ヘンタイ過ぎ・・・

 その試着のお客さまは、今は、鏡の中の私をジーッと視ているご様子。
 私の中の被虐願望がグングン燃え上がり、奥がグジュグジュ騒ぎ始めていました。
 ああん、そんなに視ないで・・・だけどもっと視てぇ・・・
 今すぐ立ち上がって、下半身まですべてを視せてしまいたい・・・
 ハンガーラックの向こうのお客様に、こっちに来て私を視てください、ってお願いしたい・・・
 そんなアブナイ衝動をなんとか抑えつけながらも、今、自分が感じている羞恥と恥辱がもたらす甘美な興奮にたまらず、ウットリと目を閉じました。

「あら純ちゃん、ご試着のお客様?それならわたしがお手伝いしよっか。あちらには他にもお客様がいらっしゃっているのでしょう?」
 シーナさまのお声で渦巻く妄想が途切れ、我に返りました。
 シーナさまが桜子さまの傍らを離れ、試着室のほうへ歩いていきます。
「あ、ほんと?ありがとう。それじゃあお言葉に甘えてお願いします。こちらのワンピース2種類。もしもサイズが合わなかったら言ってください」
 純さまがお洋服をシーナさまに渡し、スタスタとレジのほうに戻っていきます。
 途中、私の前で立ち止まり、二ッて笑いかけてきました。

「さて、そろそろワタシたちも再開しますね。お客さま、先ほどのようにお顔を上げて胸を張ってください」
 桜子さまの私への口調が、突然、とても丁寧になりました。
 おそらく、普通のお客様が試着のために近くにおられるので、さっきまでみたいなエスエムごっこぽい内輪な接し方はマズイと判断されたのでしょう。
 さすが接客のプロな状況判断。
 そのお声に私も、さっきまでの興奮をなだめるべく、籐椅子の中でシャンと背筋を伸ばしました。
 
 試着室前のシーナさまの動向も気になります。。
 左側に寄り目してそちらをうかがうと、そのお客様はまだ試着室に入らず、シーナさまとなにやらコソコソクスクスとお話されているようです。
 試着のお客様は、今ではすっかりこちらを向いて、遠慮無い視線で生の私を視ながら、ときどきクスッと笑ったり、へーって感心したりしつつ、シーナさまのお話にうなずいています。
 シーナさまったら、そのお客様にどんなお話をされているのかしら?
 たぶん、私を辱めるようなことだとは思うけれど・・・

 そうしているあいだに、桜子さまの手で私の右おっぱいに真紅の薔薇が咲かされ、細いブラシが再び肌を這いまわり始めていました。


コートを脱いで昼食を 28


2013年12月29日

コートを脱いで昼食を 26

 シーナさまが指さしたのは、Tシャツの穴から飛び出している私の両乳首の周辺でした。
 正確に言うと、左乳首のすぐ右斜め上と、右乳首のすぐ左斜め下。
 そこにしてもらうとしたら・・・
 つまり、このTシャツさえも脱ぎ去って、この場で文字通りの一糸まとわぬ姿、全裸になっておしまいなさい、というシーナさまのご命令なのでしょうか?
 こんな営業中のおしゃれなブティックの窓際で・・・
 
 いざ脱げと言われると、こんな小さな破廉恥Tシャツと言えども、有ると無いとでは大違いなような気持ちになってきました。
 見知らぬ人がいつやって来るかも分からない場所で完全に全裸なんて、あまりにも非常識、あまりにもアブノーマル。
 いやっ、恥ずかし過ぎます・・・お許しくださいぃ・・・
 からだ中がグングン火照ってきて、すがるようにシーナさまを見上げました。

「あれ?意外ですね」
 桜子さまの驚いたお声。
「ワタシ、てっきり下半身を指定してくるだろう、ってちょっぴりワクワクしていたのですけれど」
 桜子さまは、シーナさまを見てから私に視線を移し、目が合うとイタズラっぽくニッと笑いました。
「それはそうなのだけれどね・・・」
 シーナさまが見本帳のアルバムを開いたまま、デスクの上に置きました。

「まず、お尻だと、直子自身が、そのアートを見ることが出来ないから、つまらないと思ったのよ。普通に生活しているときは忘れちゃいそうじゃない?」
「わたしはね、せっかく桜子さんに描いてもらうのなら、ある種、ヘンタイの烙印、みたいなデザインにしたいの。直子がそれを見るたびに自分の恥ずかしい性癖を思い知る、みたいな」
「だから、直子が着替えやらお風呂で裸になったときとかに、否応無く目に飛び込んできちゃう場所がいいな、って」

 シーナさまは、そうおっしゃりながら、私が座る籐椅子の傍らにいらっしゃいました。
「ここの場合は、また全然違う理由だけどね」
 両膝頭をピッタリと合わせ、両腿をまっすぐにピタッと閉じて座っている私の無毛な下腹部周辺を指さしました。

「直子はね、今日、私に出会ってから今までの出来事で、もう爆発寸前のド淫乱状態になっているはずなのよ」
「そんな状態の直子のこんなところを、桜子さんの繊細な指や筆でなぞったりしたら直子がどうなっちゃうことやら」
 おっしゃりながら、シーナさまが右手の人差し指で、私の両腿の付け根あたりを軽くツツツーッと撫ぜました。
「あふうんっ!」
 背中にゾクゾクッと電流が走り、私の背中が籐椅子の中でビクンと大きく跳ねました。
「ほら!ね?」
 嬉しそうに桜子さまを振り返るシーナさま。

「10数分もの間、ここへ桜子さんからコチョコチョ愛撫を受けて、直子がじっとしていられるワケがないわ」
「結果、この子がなりふりかまわず身悶えし始めちゃったら、お店や他のお客様にたくさん、ご迷惑をおかけしちゃいそうだもの」
「それに・・・」
 今度は右の乳首を、デコピンの要領で軽く弾かれました。
「あうっ!」
 再び背筋に電流が走り、私の奥が盛大に潤んだのがわかりました。

「直子の中でがんばっていたタンポンも、決壊寸前、そろそろ役立たずになっているはずなのよ」
「ただでさえ濡れやすい淫乱女が、自分の性癖的に夢のようなシチュエーションにいるのですもの、少しでも両腿開いたら、トロトロ垂れてくるはずよ」
「ここに描いてもらうとしたら、桜子さん、ソコにお顔を近づけなきゃいけないでしょう?」
「きっと至近距離だと、すんごくいやらしい匂いがするはずよ。そんなもの嗅がせるの、桜子さんに申し訳ないわ」
「だから、まあ、おっぱいが無難かな、と思ったのよ」

「なるほどです。お気遣い、ありがとうございます。でもまあ、ワタシはお客様のご希望通り、どこであれ、無心で描くだけですけどね」
「まあ、プロフェッショナルな発言ね。ステキだわ。もしも、下半身、て指定したら、直子を立たせてお描きになる?それとも寝そべらせる?」
「そうですね・・・お尻なら、立ってもらってお尻向けてもらえば、ワタシは座ったままで出来そうですけど・・・」
「前の場合はやっぱり、寝そべってもらったほうが良さそうですね。脚も少し開いてもらったほうが描きやすそうだし」
「それだと、このスペースだと窮屈そうね?」
「ご希望ならレジ裏のお部屋、使っていただいても結構ですよ?あ、でもそれだと、他のお客様に見てもらえないか?」
 純さまがイジワルくお口をはさんできました。

 私は、お3人の私に対する言葉責めのような会話にいたたまれない気持ちになりながらも、一方では、ずっとこの会話がつづけばいいのに、って祈っていました。
 だって、この会話が終わって、さあスキンアート開始、ってなれば、私はおそらくこの場で、全裸にさせられちゃうのですから。

「桜子さんは、スキンアートをおやりになるなら、いわゆるボディペインティングもしたことあるの?」
「ああ、全身に塗りたくるやつですね。興味があって少し研究したことはありますが、まだ実際にしたことはありませんね。今までニーズも無かったし」
「海外のネットによく、服そっくりに描いたり、水着やレオタっぽくして街中とか歩いている写真があるじゃない?わたしもリオで本物見たことあるけれど。あれも一度、直子にやらせてみたいのよね」
「ワタシが研究した限りでは、染料にいろいろあって、塗ってからペロンて剥がせるラバーと言うかラテックス素材の染料が面白そうですよ」
「ああ。それ見たことある。薄皮みたいに剥がれちゃうやつでしょ。剥がすと肌が覗いて、なんだかフェティッシュで良かったわ」
「水性の染料で描いて、きちんと描いたビキニとかが汗で滲んで崩れていく様子も、かなりエロティックですけれどね」
「どっちにしても、されたほうは、肌に何か描いてあるとは言え、全裸は全裸だからね。それで人前に出るのは、直子みたいな女にとっては、たまらない快感なんだろうなー」

「ワタシ、一度やってみたかったんです、誰かにボディペインティング。もしもご希望であれば、ぜひご用命くださいませ」
 桜子さまがシーナさまに丁寧にお辞儀をしてから、言いにくそうにつづけました。
「でも、からだ全体を染めることになりますから、使う染料の量もハンパじゃなくて、お値段もそれなりになっちゃいそうです」
「まあ、だけどワタシの練習みたいないなものですから、やらせていただけるなら、お値段も材料費プラスちょこっとで抑えます。約束します」
 桜子さまったら、ヤル気マンマン。
 私、近いうちにボディペインティング、されちゃいそうです。

「12月にね、直子がまたエステへ行くのよ。ヘアの処理でね。その後にまたここに来て、直子のからだをえっちに飾ってもらおうかな、って考えているの」
「暮れ近くに身内のパーティがあるから、そこで直子を披露したいのよ。いかにも直子らしい姿で」
「うわー。なんだかすごくいやらしそうなパーティですね。時間が合ったらあたしもぜひ、誘ってください!」
 純さまが高く手を上げて、シーナさまにアピールしました。
「いいけれど、そのパーティ、女性しか来ないわよ?」
「大丈夫です。あたし、そっちもイけますから!ナオコも虐めたいし」
 純さまったら、すっごく嬉しそう。
「桜子さんもいらっしゃる?」
「うーん、後学のために覗いてみようかなあ・・・」

 そこで会話が一段落しました。
「さてと・・・」
 シーナさまのお声に、私はドキン!
 いよいよです。

「それで、今日の直子のスキンアートだけれど、この山百合のシールをこっちの胸に。それから・・・」
 シーナさまが桜子さまにご説明を始めたとき、傍らの純さまが大きくお声をあげました。
「いっけなーい!休憩中のプレート、出しッぱだったー!」
「もう2時半近くよね?あーあ、お客様、けっこう逃がしちゃったかなー?」
 あわててドアのほうへ行こうとして、純さまの足がピタッと止まりました。

「えっと、これからナオコはそこで、おっぱい出すのですよね?」
 シーナさまに向けて尋ねます。
「そうよ。出さなきゃ桜子さんが施術出来ないもの」
「店内でお客様がおっぱい出しちゃってても、それはお客様の意志で、そこにサービスを受けたいって言うのだから仕方ないじゃない?そんな理由でなんとかごまかせますよね?何かあったら」
「そうね。なんとかなるんじゃない?スキンアートって、そういうサービスなのだから」
「そうですよね。あ、でも、その位置だと、お店に入って来て左向いたら、すぐに見えちゃうわね・・・」
 純さまが思案顔です。

「入ってきた人が気味悪がって、回れ右しちゃったら問題だわ」
「一応、入ってから奥へ進まないと見えないようにしておこう・・・どうすればいっかなー」
 純さまが独り言をブツブツおっしゃってから、壁際にあった大きめのハンガーラックをすべらせて、私の位置から入口ドアが見えなくなる位置に、目隠しとして置きました。
 それからもハンガースタンドやマネキンの位置をあちこちいじり、その後、タッタッタと入口ドアへ駆け寄りました。
 目隠しに使ったハンガーラックには、カラフル原色系で光沢のある生地がピカピカ光る、レースやリボンが派手めなドレスみたいなお洋服がたくさん吊るされていました。
 このドレスたちがおそらく、ここに来たときにシーナさまと純さまがお話されていた、夜のお勤めのかたたち用のお手頃セクシードレス、なのでしょう。

「おっけーみたいでーす。これなら店内をぐるっと回らないと、そこにはたどり着けないわ」
「こうしておけばほぼ安心。だからもうそこでナオコは、おっぱいだろうがパイパンだろうが、どんどん出しちゃっていいから」
「じゃあ、お店開けるわね。まあ、この時間帯に来るのは近くの大学の女の子とかだし、カワイイものよ。ナオコのお知り合いとかだったら面白いけれどね」
 純さまの大きなお声にかぶって、ドアが開くカランカランという音が店内に響きました。
 店内BGMの軽快なヒップホップ音楽のボリュームも少し上がりました。

 ああん、ついにお店に誰でも入って来れるようになっちゃった・・・
 途端に、ギュッと閉じている内股がヌルんできました。
 シーナさまがおっしゃっていた通り、とうとうタンポンがお役目を果たせなくなったようでした。

「それで、山百合を左胸、こっちの赤い薔薇を右胸ね」
 純さまが落ち着いたのを見計らって、シーナさまが桜子さまへのご説明を再開しました。
「メインはシールでいいのですね?」
「うん。それで、それぞれの周りにこう書いて欲しいの」
 シーナさまがデスクの上のメモ用紙に、何やらサラサラと横文字をお書きになり、桜子さまに渡しました。
「えと、マゾ・・・。あはは。なるほどです。こっちはエクス・・・、ああ、そういうことですね。こっちはちょっとスペルが長いな」
「字体っていうかレタリング?と色使いは、桜子さんにお任せするわ。なるべくえっちぽく、直子ぽくしてね」
「了解しました」
 うふふ、って愉快そうに含み笑うおふたり。

「ほら、何ボーッとしているの直子!さっさと胸を出しなさい」
 シーナさまが私の右肩を軽くはたきました。
 ついにそのときが来てしまいました。
 昼間のお店でスッポンポン。
 だけど、今やもはや、それを待ち望んでいる自分がいました。
 私の全身を、淫乱な露出願望マゾの血が熱く滾ってムラムラ駆け巡っていました。

 座ったまま半袖から腕を抜こうとからだをモゾモゾさせていると、シーナさまのお声。
「何しているの?直子。別に脱がなくていいわよ?それともなあに?脱いで素っ裸になりたいの?こんなところで?」
「え?あ、そ、そうなのですか?」
 脱ぐ気マンマンだった私は拍子抜け。
 うろたえつつシーナさまを見上げました。

「シャツを裾から上にまくって、おっぱいを出せばいいだけじゃない?それでそのまま、自分でシャツ掴んでいなさい」
「あ、は、はい・・・」
 ご指示通り、あらためてTシャツの裾を両手で掴み、上にまくりあげていきました。
 Tシャツの布に押し付けられていた二つの乳房が抑圧から逃れ、生き返ったようにプルンと勢い良く跳ねました。
 汗ばんだおっぱいに外気が直接触れてひんやり。
 喉元までまくりあげたシャツを両手で持ったまま、シーナさまを見ました。

「いい格好よ、直子。ほら、もっとおっぱい前に突き出して。桜子さんがやりやすいように、もっと気を遣いなさい」
 桜子さまは、膝と膝が触れそうなくらい至近距離の真正面にお座りになっています。
 少し身を屈めた桜子さまのお顔の数センチ先に、私のおっぱい。
「この格好だとなんだか、モリタさんが私に自慢のおっぱいを見せつけているみたいですね」
「そうよね。露出狂の面目躍如って感じ。心の中じゃ絶対、見て見てもっと見て、って叫んでいるわよ」

 そう言われると、この格好が全裸よりも数段恥ずかしく思えてきました。
 確かにこのポーズは、自らシャツをめくりあげて、これ見よがしに見せつけている感がハンパありません。
 まさしく見せたがりの露出狂そのもの。
 中途半端脱ぎかけフェチな私の性癖にもジャストフィットなほぼ全裸で、被虐感がグングン昂ぶりました。

「おっぱい全体がうっすら汗ばんで上気しているわね?これって視られて興奮しているからなの?モリタさん?」
 桜子さまがお声のトーンを下げて聞いてきました。
「あ、それは・・・」
「桜子さんも直子のご主人さまなのだから、モリタさんなんてご丁寧に呼ばなくていいわよ。直子はこのお店全員のドレイなんだから」
 シーナさまが桜子さまにアドバイス。

「それならワタシは、ナオって呼ぶことにしますね。ねえナオ?ワタシに視られて感じているの?」
「あら、桜子さん、その冷たい言い方、いい感じね。素質あるわよ。ほら直子、お答えなさい」
「あ、それは、桜子さまにおっぱいを視られて、とても恥ずかしく感じています・・・」
「ふーん。嘘つきね、ヘンタイナオは」
 桜子さまがさっきのシーナさまみたく、デコピンで左乳首を軽く弾きました。
「ぅうんぐっ!」
 その予期せぬ桜子さまからの責めに、私のアソコがヒクっとヒートアップ、あからさまに蜜が内腿に洩れました。
「さっきからここ、ずっと尖りッぱじゃない?誰に視られても感じちゃうんでしょ。ふんっ、いやらしいオンナ!」
 桜子さまったら、お見事なエスっぷりです。

 カランカラン・・・いらっしゃいませー。
 ドキン!
 誰かお客様がお店に入ってきたようです。
 純さまが丁寧に接客されるお声が聞こえてきます。
 シーナさまと桜子さまは、おふたりでお顔を見合わせてニヤリと笑い合いました。

「それでは、この山百合のシールはこのへんに配置すればよろしいですか?」
「そうね、もうちょっとチクビに近いほうがいいかな?このへんで」
 シーナ様と桜子さまが私の剥き出しの左おっぱいを指さしつつ、お芝居っぽい調子で打ち合わせを再開しました。
 そんな大きなお声で、チクビ、だなんて、いらっしゃっているお客様に聞こえてしまう・・・
 私は真っ赤になってうつむいています。

「で、この紅薔薇のシールはここですね?」
「うーん、それはもう少しチクビから離したほうがいいかな。オッパイのここらへんで」
「わかりました。それでこの文字をチクビを囲むようにこう入れる、と」
「そう。エキシヒビショニスト、ナオコって」
 ああん、もう、お許しください、おやめくださいぃ・・・

 ありがとうございましたー・・・カランカラン。
「残念。こっちまで来なかったわね」
「けっこう大きな声、出したつもりだったんですけどねー」
「次に誰か来たら、もう少しロコツな言葉も使ってみましょう」
 またおふたりでニヤニヤ笑い。

「それじゃあそろそろ始めるわね。ナオ、おっぱいさわられてもモジモジ動かないでよね?」
「まくっているシャツから手を離しちゃだめよ。自分でおっぱいを見せびらかしている感じをキープすること」
 シーナさまがケータイをかざしてパシャッと写真を撮った後、私の背中側のショーウインドウのほうへゆっくり歩いて行かれました。


コートを脱いで昼食を 27


2013年12月23日

コートを脱いで昼食を 25

「あっ、おはよー。って、あれ?今日、予約入っていたっけ?あたしすっかり忘れてた。ぜんぜん準備してないや!」
 少し慌てたご様子の純さま。
「もう聞いてよっ、それがさー」
 その女性は、レジカウンター内に入るなり、うんざりしたご様子で純さまにしゃべり始めました。

「2時半からの約束でネイルの予約が入っていたんだけどさ、家を出てここに着く寸前に、急用が出来た、ってキャンセルの電話よ?信じられない。絵に描いたようなドタキャンていうやつね」
「今日のその次の予約は夕方の6時からだから、どうしようかって迷ったのだけれど、もうお店も目の前だったし、暇つぶしに行くところも無いから来ちゃったってわけ」
「6時までサービスで、お店番でもお手伝いするわ」
「まったく、あっちの人たちって約束とか、本当にルーズよね!だけど彼女、いいお得意さんで遅かれ早かれリピート確実だからキャンセル料とかも言えないし」
 そこまで一気にまくしたててから、ふっと私のほうを向きました。

 私はランチタイムのときと同じように、カウンターに対面するベンチに座っていました。
 その女性が現われたとき、あまりに突然だったので、しばしキョトンとしてしまいましたが、ハッと我に返ると同時に反射的に、両手で胸をかばうようにして二つの乳首を隠していました。
 幸いその女性が立っていらっしゃる位置からだと、私の下半身はテーブルで隠れているはずです。
 そのままの姿勢でその女性と見つめ合いました。
 顔がどんどん火照ってきて、先にうつむいてしまいました。

「あ、お客様がいらしてたのね。ごめんなさい。お騒がせしてしまいました」
 その女性が今度はシーナさまのほうを向き、ペコリとお辞儀をしました。
「大丈夫よ。こちらのかたたちは、言わば身内のようなものだから。紹介するわ。こちらが、あたしがいつも言っている、凄腕バイヤーのシーナさん」
「ああ、このかたがそうなんだ。紹介してくださるものが悉くどんどん売れちゃう、超目利きのバイヤーさんて!純がいつもお世話になってまーす」
 その女性がシーナさまに、今度はずいぶん丁寧にお辞儀しました。
 
 つづいて純さまがシーナさまのほうへ向きました。
「こっちは、あたしの学生時代からの親友で、小野沢桜子。ここでネイルアートのコーナーを受け持ってもらっているんです」
「へー。純ちゃん、ネイルアートも始めたんだ?いいところに目をつけたわね」
「常連のお水の子何人かから要望があったんです。ちょうど桜子がやっていたから、すんなりラッキーでした」
 シーナさまが桜子さまから名刺を受け取り、シーナさまもお返ししています。

「それでこちらが・・・」
 純さまが右手のひらを上へ向け、バスガイドさんみたく私を指しました。
「シーナさんの・・・連れのモリタナオコ・・・さん」
「連れって言うか、ペットみたいなものね」
 シーナさまが訂正して、純さまが笑いを押し殺すみたいにクックッと喉を震わせ、桜子さまの表情には?が浮かんでいます。
 私はおずおずと顔を上げ、桜子さまと視線を合わせてから深々とお辞儀をしました。

 桜子さまは、全体に細身でモノトーンのお洋服が良く似合う美人さんでした。
 細面に毛先の跳ねたウルフぽいショートカット、黒目がちの大きな瞳がクルクル動いて、いかにも好奇心旺盛なアーティストっぽい雰囲気。
 カッコイイ。
 私は、下げた頭をもう一度ゆっくりと上げ、桜子さまのお顔に見蕩れていました。

「ちょっと直子?そんなご挨拶の仕方は無いでしょう?初対面なんだから、きちんとしなさいっ!」
「あ、はい・・・」
「はい、じゃないわよ。早くちゃんと立って。直子がどんな女なのか、桜子さんによーくお見せしなさい」
「それにその両手!ドレイの両手はそこじゃないでしょう?」
 シーナさまから矢継ぎ早に、厳しいお言葉を浴びせかけられました。

「はい・・・」
 シーナさまのご命令は絶対です。
 私がこの格好でシーナさまとこのお店にいる限り、お店に入ってきた人すべてに、私の性癖をご披露することになるでしょう。
 それに、こんなにカッコイイ桜子さまになら、むしろ視てもらいたい、っていう気持ちが湧いていたのも事実でした。
 今日何度目かの甘酸っぱい被虐感を感じながら、両腕でまだ胸をかばったまま、ゆっくりと腰を浮かせていきました。

 丈の短いTシャツは、おへそさえも隠せていません。
 立ち上がりつつある私の膝が伸びるごとに、桜子さまの大きな瞳がさらに大きく開かれました。
 桜子さまの立たれている位置からだと、テーブルの向こう側でTシャツの白い布地が途切れ、その視界に私の肌色が徐々にどんどん、現われているはずです。
 完全に立ち上がってから、ゆっくりと両腕を頭の後ろに回しました。
 ピンッと天を衝く二つの大きな乳首が恥ずかし過ぎます。

「なんて言うか・・・スゴイ格好ですね・・・これって・・・罰ゲームか何かですか?」
 しばし呆然とされていた桜子さまが、訝しげにシーナさまに問いかけました。
「違うの。この子は、この子の意志で、こんな場所でこんな格好をしているの」
「まあ、話せば長くなっちゃうのだけれど、簡単に言えば、この子はこういう子なのよ」
「こういう子、って・・・つまり、よく言う露出狂、みたいなものですか?」
 私の剥き出しの下半身をじっと見つめたまま、桜子さまが、信じられない、っていう面持ちで聞いています。
「今日はね、その格好に、このコートを一枚だけ羽織って、このお店にいらしたのよ、ナオコは。あたしたちにその中身を見てもらいたくて、ね?」
 純さまが、レジ裏の壁に掛けられた私のコートを指さし、私に向けてニヤニヤ笑い。
「は、はい。その通りです・・・」
 アソコがムズムズして身悶えそうになるのをガマンしつつ、なんとかお答えしました。

「へー。いるところにはいるんですね、本当にそんな人が。そういう格好をしていると、感じちゃうんだ?そのつまり、性的に?」
 最初の衝撃が去って、桜子さまは、がぜん興味津々になられたようでした。
 渦巻く好奇心を隠せないお顔で、身を乗り出して私に尋ねてきました。
「あ、はい・・・」
 マゾの服従ポーズで、小さく答えます。

「へー。でもさ、それなら、そういうのってむしろ、男の前でやったほうが気持ちいいんじゃない?同性の前じゃ、あんまり意味無いような気がするけれど」
「それがこの直子はね、いろいろあって男性はまるでダメなの。女性とでしか発情しないのよ」
 シーナさまが私の代わりに答えてくださいました。
「ああ、そっちのほうの人でしたか。なるほどなるほどー」
 桜子さま、しきりに感心されています。

「でもなー。ワタシには生憎そっちのケはないし、見ても、なんだかみっともないなー、変態なんだなー、なんて思うくらいで」
 おっしゃってから、しまった、というお顔になる桜子さま。
 あわてたご様子でフォローしようと、お言葉をつづけました。
「あ、ごめんなさい!モリタさんのご趣味をとやかく言うつもりはないのよ。むしろモリタさんの裸は綺麗だと思うわ。肌も綺麗だしプロポーションもいいし・・・」
 桜子さまの焦ったお顔も、なんだか色っぽくてお綺麗でした。

「あはは。いいのよ。ぜんぜんお気になさらないで」
 今度はシーナさまが笑いながら、桜子さまをフォロー。
「この直子はね、そういう同性からの蔑みの言葉も大好物なの。どんどん思ったまま言っちゃっていいわよ。辱められるほどいっそう感じちゃうヘンタイ女なんだから」
「それって、つまり、エスとエムで言うところのエム。虐められて悦ぶっていう、いわゆるマゾ、っていうことですか?」
「そう。直子は女性に虐められて悦ぶドヘンタイ淫乱マゾ女なのよ」
「そっかー。露出狂でレズでマゾなんだ。三拍子揃っちゃった。ワタシ今、スゴイ人とお会いしてるんですね」
 幾分の侮蔑を混ぜつつの冗談めいた桜子さまのお言葉に、私のマゾ性は大騒ぎ、アソコの奥がヒクヒク蠢きました。

「まあ直子についての詳しいことは後でゆっくり純ちゃんに聞いてもらうとして、桜子さんがおヒマなら、せっかくだから直子にネイルアートしていただこうかしら?」
「あ、それはぜんぜんかまいませんよ。ってそっか。その格好でお店の中をウロウロするのが、今日のモリタさんのヘンタイプレイなんですね?それでシーナさんはモリタさんのご主人さま、と」
「ピンポーン。まあそういうことね。さっき純ちゃんも、ご主人さま2号になったけれど」
「桜子さんは、ご主人さま3号ね。どんどん直子を虐めちゃっていいわよ」
 この先、誰が現われたとしても、このお店の中で一番身分が下なのは、私です。

「そう言えばあっちの奥に机が置いてあるコーナーがもうひとつあったけれど、あそこで施術されるの?ショーウインドウの脇の」
「施術っていうほどのものでもないですけれどね。基本、対面で事足りますから小さなスペース借りて、そこでやってます」
「窓際にしたのは純のアイデアで、何かやっているな、って外から見えていると、興味持ったフリーのお客さんも呼び込めるかもしれない、って」

 窓際、というお言葉に、私の心臓がドキンと跳ねました。
 ネイルアートって、けっこう時間がかかるはず。
 そのあいだずっと、この格好をショーウインドウ越しにお外に向けて晒さなくちゃいけなくなっちゃうの?
 そんなことして大丈夫なのかしら・・・

「まあ、窓際って言っても、外向きに座るのは桜子で、お客様は窓に背中を向ける配置だから」
 純さまの補足説明に少しホッとした私。
「お客様用の椅子には背もたれもあるし、外から見えるのは後頭部、肩から上くらいでしょう。もちろんお店の中に入ったら、横から丸見えだけれど」
「あたしも、いくらなんでも乳首と下半身丸出しの女を、外から見えちゃう場所にずっと放置させておくほどの勇気はないですよ。通報されたら確実に営業停止になっちゃうし」
 純さまが笑いながら立ち上がりました。

「ネイルをしていってくださるのなら、そちらへご案内しますね」
 純さまを先頭に4人でゾロゾロとお店内を移動しました。
 私は、敷いていたバスタオルを当てて前の下を隠し、もう片方の腕で乳首を隠しながら小さく身を屈め、なるべくぶら下がっているお洋服たちの陰に隠れるようにして、一番最後をビクビクついていきました。

 ちょうどレジ側とは正反対の隅、お洋服や雑貨の棚が途切れた窓際の一画に、お食事したテーブルより一回り小さいデスクが置かれていました。
 その部分のショーウインドウは、高さが2メートル以上はありそうな大きなガラス窓の下半分くらい、内部からだと私のおへそのあたりの高さまでは、木製の横長な棚でガラス部分が目隠しされていて、その蜂の巣状の区割りの中や棚の上に、シューズやぬいぐるみ、帽子など、こまごまとした雑貨が飾られていました。
 この感じなら、お外から覗かれても多分、ショーウインドウにピッタリ近づかない限り、中にいる人の上半身くらいしか見えなそうです。
 
 ただし、それより上部分は全面透明ガラス。
 1メートル数十センチ四方くらいの曇りひとつ無いガラス窓の向こうに、お外の通りの様子がクッキリと見えていました。
 お店の前を通り過ぎる人のお顔まで、ハッキリと見えます。
 それに気づいて、私はあわてて窓に背中を向けました。
 背を向ける直前に、ガラスに映った自分の顔を見て、そうだった、今はおかっぱのウイッグ着けていたんだ、って思い出しました。
 確かに妙に似合っていて、我が事ながら普段よりずいぶんエロっぽい感じがしました。

 ショーウインドウから1メートルくらい離れたところに、洒落た籐製の椅子が窓を背にして置かれていました。
 施術を受ける人がそこに座るのでしょう。
 確かに背もたれも大きく、籐製なのでたくさん隙間はありますが、肩先まですっぽり隠れそうです。
 その脇にデスクがあって、籐椅子の対面にもう一つ、背もたれのない椅子が置いてありました。
 純さまが、そのデスク近辺に飾ってあったお洋服や雑貨をせっせとあちこちに移動されています。
 きっと、桜子さまが快適に施術出来るだけのスペースを作られているのでしょう。

「あら?そこに書いてある、スキンアート、って?」
 デスク横の壁に貼られた手書きポップを指さして、シーナさまが誰ともなしに尋ねました。
「ああ、それは、簡単に言うと彫らないタトゥっていうか、お好きな絵柄やデザインをお肌に、タトゥみたいに描いて差し上げるサービスです」
 桜子さまが答えました。
「へー。そういうのもやるんだ?それ、面白そうね」
「はい。ネイルをマスターして、なんとなく物足りなかったので、同じスクールで開講していたそっちのコースにもひきつづき通ってモノにしました」
「あと、お望みであればケータイのデコレーションだって、やりますよ」
「桜子は昔から絵が上手かったんですよ。その上、手先は器用だし、デザインセンスも良くて、さらに努力家なんです。あたしみたいなぶきっちょにとっては、その才能が羨ましい限りよ」
 純さまが我が事のように嬉しそうにおっしゃいました。

「そのスキンアートっていうのは、からだのどこにでも描いてくださるの?」
「はい。お客様のご要望であればどこにでも。一般的なのは、肩や二の腕、太股とかかな?」
 そこまでおっしゃって、桜子さまがチラッと私を見ました。
「うふふ。ワタシ、シーナさんの考えていらっしゃること、わかっちゃいました」
 桜子さまがシーナさまを見て、それからまた私をじっと見て、ニヤッと笑いました。

「今までに描いた一番キワドイ場所は、内腿でしたね。右脚の付け根近くだったな」
 桜子さまがお道具をいくつかデスクに並べながらつづけます。
「アパレル業界の大手がいくつか集まったイベントで、とあるコンベンションセンターにブース出店したことがあったんです」
「展示即売会みたいな感じの大きなイベントで、若い女性客がたくさん集まりました」
「そのときは、ネイルだと他の出店者とかぶっちゃうので、スキンアート一本に絞ったんです」
「主催者側からの助成金も出るイベントだったので、施術料金を少し安めに設定して。そうしたらけっこうお客さん押し寄せちゃって」

「それで、暑い盛りのイベントだったから来場者はみんな薄着で、それも若い女性ばかりでしょ?お買物の熱気で興奮しちゃうのか、みんななぜだか大胆になっちゃうんですよ」
「ブースはオープンで通路からも丸見え、引っ切り無しに人が行き来して、ワタシのブースにも行列まで出来ているんですけれど、ぜんぜん臆せずにみんな、当然のように肌や下着を出していましたね」
「Tシャツまくって、おへその横に描いてくれとか、ジーンズちょっと下げて尾骶骨のあたりに描けとか」
「前の人が描いてもらっているのを見て、私も、ってなっちゃうのでしょうね。躊躇無く服をめくってましたから。二の腕とか肩とかの、普通な人はあんまりいなかったな」

「中でも一番大胆だったのが、ミニスカートたくし上げて、パンツ丸出しで内腿に描いて、って」
「二十歳そこそこくらいの見た目派手だけれどけっこう可愛い子でした。パンツは普通のフルバックで、描いてくれって指定された場所がパンツぎりぎりで、ちょっと毛がはみ出てましたね」
「なんだか女子高時代を思い出しちゃいましたよ。着替えのときとか。男の目が無いと恥らいの概念無くなりますからね、女は」
「あれだけ大っぴらにやられちゃうと、男も怖気づいちゃうんでしょうね。数少ない運営の男性スタッフが、ワタシのブースには一切近寄らないようにしていましたもん」
 桜子さまが愉快そうに笑って、シーナさまと純さまがつづきました。

 笑いが収まった後、シーナさまが切り出しました。
「それで、スキンアートって、ひとつ仕上げるのにどのくらいの時間がかかるものなの?」
「うーん。全部手描きだと30分以上はかかっちゃうかな。デザインにもよりますけれど。それに、それなりのお値段にもなります」
「ワンポイントにシールを使って、周りをチョコチョコっと装飾するのなら15分くらいですね。そっちはお値段もリーズナブルです」
「これがデザイン集とお値段表です」
 桜子さまがシーナさまに分厚いアルバムみたいなものを手渡しました。

「へー。シールでも可愛いの、たくさんあるじゃない?」
 シーナさまがアルバムをゆっくりとめくっていきます。
「それで、これってどのくらい保つの?」
「耐水性の染料を使いますから、普通にお風呂やプールにも入れますし、擦って落とそうとしなければ10日くらいは余裕で保つはずです」
「もちろん、消したくなったらクレンジングでサクッと落とせますし、シールも簡単に剥がせます」
「そうなの。ネイルよりこっちのほうが、断然、直子向きだわね」
 シーナさまが私を手招きしました。

「バスタオル敷いて、その椅子に座りなさい」
「あ、はい・・・」
 みなさまがデスクの周りでお話しているとき、私は窓から死角になりそうなハンガースタンドのお洋服の陰でお話を聞いていました。
 シーナさまのお声で素早く移動し、籐椅子の背もたれの陰に身を滑り込ませました。
 至近距離の対面の椅子には、桜子さまがお座りになっています。
 デスクは桜子さまの斜め右脇にあり、桜子さまの目から私の剥き出しな下半身を隠すものは、何もありませんでした。

「ところで直子、この先2週間位の間に、人前で服を脱ぐ予定はある?」
「えっ?そんな予定は別に・・・」
「あら?学校の体育の授業で着替えたりしないの?」
「あっ、そういうことでしたか・・・」
「どうせ直子は、服を脱ぐ、って聞いて、えっちなことしか思い浮かばなかったのでしょう?」
「ごめんなさい。そういうことでしたら、来週の水曜日に体育の授業があります。それと・・・」
「それと?」
「お友達にコスプレのイベントに出てくれないか、って頼まれていまして、出ることになったらそれの衣装合わせを来週、するかもしれません」
「へー。初耳ね。それは面白そう。ぜひ出なさい。時間が合えばわたしも見に行くから」
 ああん、まだ迷っていたのに、出なさい、ってご命令されちゃった。
 言わないほうが良かったかも・・・

「そういうことだとやっぱり、服脱いで目立つ場所はNGだわね。腕とか背中はやめておいたほうがよさそうだわ」
「たとえシールでも肌にタトゥだなんて、学校のお仲間内での直子の清楚なお嬢様イメージが崩れちゃうもの、ね?」
 シーナさまがお芝居がかった調子で、イジワルそうにおっしゃいました。
「となると、人前で着替えても下着で隠れて見つからない場所にしてもらうのが無難だわね。そう思うでしょ、直子も?」
 シーナさまの嬉しそうなお顔が私に迫ってきました。
「は、はい・・・」
 下着で隠れている場所って言ったら・・・アソコとアソコとアソコしかありません。
 
「決めたわ!」
 シーナさまが桜子さまを振り向きました。
「直子の、ここと、ここに、やっていただけるかしら?そのスキンアートっていうのを」


コートを脱いで昼食を 26