2015年10月18日

オートクチュールのはずなのに 24

 フードをかぶり終えると、お姉さまに右手を握られました。
「忘れ物は無いわね?じゃあ、行きましょう」
 半開きだったガラス戸をガラリと全開にされるお姉さま。
「あの傘は・・・悪いけれどここに置き去りにさせてもらいましょう。修理したら置き傘として使えるかもしれないし、ね?」 
 悪戯っ子みたいに笑うお姉さまが、とってもキュート。
 
 すっかり暗くなったお外には、相変わらず雨が降りつづいていました。
 ただし、一時の嵐のような豪雨の勢いはいくぶん弱まり、普通のザーザー降りな感じ。
 赤い庇の軒下に立ち、少しのあいだお空を見上げていたお姉さまが、ガラス戸を閉じながら今度は、私の全身をしげしげと見つめてきました。

「明かりが近くにあると、コートの下が真っ裸って、もろにわかっちゃうわね」
 お姉さまの視線につられて、自分のからだに視線を落としました。

 背後から漏れているコインランドリー内の照明が、薄闇の中、私のボディラインを透明ビニール内にクッキリと浮かび上がらせていました。
 ビニールに吸い付くように擦れる乳首の辺りだけが一際濃い影を作り、存在を誇示するように目立っていて、すっごく卑猥。
 裸を隠せるよう、一刻も早く闇に紛れてしまいたい・・・
 そう思う反面、自分の恥さらしな姿に被虐心が極まって、泣いちゃいたいほど感じてもいました。

「たぶんこっち」
 お姉さまが庇の外へ一歩踏み出しました。
 一歩遅れて、右手を引かれた私も。

 庇を出た途端、頭の中がザザザザザという騒音だけで一杯になりました。
 かぶっているフードを打ちつけてくるエンドレスな雨音。
 鼓笛隊のドラムロールのようなその音が、左右の耳元でやかましく鳴り響きつづけ、まるで激しい耳鳴りのよう。
 脳内を満たすその音が、何の音かもわからなくなるゲシュタルト崩壊状態。

 聴覚を奪われたおかげなのか、代わって触覚がより敏感になっていました。
 ビニール越しにからだを打ちつけてくる雨粒の感触が、もどかしい愛撫のようで超気持ちいい。
 とくに、尖ってビニールを押し上げている乳首の辺りに雨粒が当たると、衣服越しに指の先で撫ぜられる感触とそっくりで、ムズムズ身悶えてしまいます。
 なるべくそこに雨が当たるよう、おっぱいを突き出すようなモデルウォークもどきで、お姉さまにつづきました。

 路地の両端は水が溜まり気味なので真ん中寄りを、お姉さまが歩道側、私が車道側になって手を繋ぎ、ゆっくり歩きます。
 ポツンポツンと立っている外灯の光が近づくと、ビニール内の私の裸身がぼんやり浮き上がります。
 そのたびにビクッとしますが、幸か不幸か人も車も全然通りません。
 警戒心が薄れると共に、こんな姿で街中を歩いているというスリルと興奮がぶり返し、全身の疼きが火照りを呼び戻します。

 コインランドリーから100メートルくらい離れたところに十字路。
 お姉さまが立ち止まり、何かを確認するみたく周囲を見渡しました。
 フードを打つ雨音のうるささに、お姉さまも会話は諦めているらしく、私には何も告げずに右手を引っ張られました。
 どうやらそのまままっすぐ進むようです。

 そのとき、数十メートル前方の右端から、突然光が現われました。
 そこにも曲がり角があるらしく、左折してきた車の眩しいほどのヘッドライトが、あっと思う間も無く私を正面から明るく照らし出していました。
 光を浴びた瞬間から、うつむいた私の目には、自分の裸が透明ビニール越しにクッキリ浮き上がって見えていました。
 思わず、いやんっ!と抗議の声をあげる私。

 一テンポ遅れて、右手をグイッと引っ張られました。
 つんのめるようにお姉さまに引き寄せられ、気がつくとお姉さまに抱きすくめられていました。
 ビニール同士が擦れるガサガサという音の中、私のからだはお姉さまの両腕の中。
 いつの間にかふたりのからだは道路の右端まで寄り、お姉さまの背中がヘッドライトに向いている状態。
 つまり、お姉さまは咄嗟に、ヘッドライトの魔の手から私を救い出してくれたのでした。

「こうしていれば、恋人同士だと思って、たとえ直子の裸に気づいたとしても、ちょっかいは出してこないでしょう」
 フードの隙間から唇を突っ込んだお姉さまの囁きは、雨音の中でもハッキリ聞こえました。
 とてもとても熱くて、官能をくすぐる甘い囁き。
 私も両腕をお姉さまの背中に回し、ギュッと抱きしめると同時に、濡れたビニール越しのお姉さまの胸に顔を押しつけました。

 その車は、白のスポーツタイプ。
 徐行するみたいにゆっくりと、私たちの傍らを通り過ぎて行きました。
 ヘッドライトは、近づくにつれ私たちを照らさなくなり、通り過ぎる寸前の私たちは闇の中。
 光が移動していくのだけ、視界の端に見えていました。

「直子のからだ、ずいぶん熱くなっているのね?こんな冷たい雨なのに」
 耳朶を震わすお姉さまの吐息に、小さくイッてしまったのは内緒です。

「あっ!直子、あれ見て」
 お姉さまの両腕の力が緩み、もっと抱き合っていたい私は不服で顔を上げると、お姉さまの右手が通り過ぎた車の赤いテールランプを指していました。

 車はさっきのコインランドリー手前までさしかかり、ヘッドライトがちょうど、その軒先を照らし出していました。
 庇の下にひとつの人影。
 遠い上に雨にも霞んで性別まではわかりませんが、紛れもない人影が今まさに、コインランドリー内へ入ろうとしていました。

「あたしたち、かなり危機一髪だったみたいね。出るのがあと5分も遅れていたら、直子はあの人に、オールヌードを鑑賞してもらうはめになっていたのよ」
「たぶん、乾燥機に残っていた洗濯物の持ち主でしょう。雨脚が弱まったから出てきたのかな。下着とか置きっ放しは気持ち悪いものね」
 抱きついたままの私の耳元を舐めるみたいに、唇を寄せて囁くお姉さま。

「テーブルは拭いてきたけれど、床のおシオはそのままだから、臭い、気づかれちゃうかもね。若干オシッコも混ざっていたみたいだし」
 イジワルなお姉さまのショッキング暴露で、みるみる顔面に血液が集まっちゃう私。
 そんなこと、わざわざ教えてくださらなくていいのに。

「マゾっ子直ちゃんとのデートって、スリル満点、ドキドキしっぱなしで本当に愉しいわ。次に車が来たら、今度は隠れないで、そのまま歩いてみよっか?」
 からかうように囁いてから、その唇が私の唇にチュッと軽く重なり、すぐに左手を引っ張られました。

 おやさしいお姉さまは、私に歩道側を歩かせることにしたようでした。
 そのまままっすぐ進み、さっき車が出てきた路地を右へ。
 相変わらずゆっくりと、雨音に包まれながら進みました。

 私はと言えば、完全にオカシナ状態になっていました。
 突然のヘッドライト、お姉さまの抱擁、甘い囁き、コインランドリーの危機一髪、おシオとオシッコ、柔らかい唇の感触・・・
 それらのことが一度に押し寄せて思考が完全に停止し、ただただ、めちゃくちゃになりたいという、マゾの本性だけが荒ぶっていました。

 こんなレインコートなんて脱ぎ捨てて、まっ裸で街を歩きたい。
 その裸を見知らぬ人たちに視られて、ヘンタイ露出女って蔑まれたい。
 そんな蔑みの中でお姉さまに抱きすくめられ、マゾマンコを思い切り掻き回して欲しい。
 お姉さまがお悦びになるのなら、どんなに恥ずかしいことだって出来るから。

 全身を叩く雨粒の愛撫と、左手から伝わってくるお姉さまの体温に、からだ中が淫らに疼きまくり、火照りが止まりません。
 コインランドリーで味わった立てつづけの絶頂感を、全身の細胞が思い出しているみたい。
 くすぶっていた股間の奥が再び急激に昂ぶり、素肌の感度がよみがえり、敏感さが復活していました。

 頭の中は真っ白、雲の上を歩いているようなフワフワした足取りで、握っているお姉さまの手の感触だけを頼りに歩きました。
 胸も背中もお尻も腿も、素肌に擦れるビニールが身悶えするほど気持ち良過ぎて、少しでも気を抜いたら、その場にしゃがみ込んじゃいそうでした。
 
 途中、反対方向から青い傘の人が近づいてきました。
 お姉さまと私は、そのままゆっくり、普通にすれ違いました。
 その人が私の裸に気づいたのか、はっきりはわかりません。
 でも私は、視られている、と確信していました。
 そして、そう考えたと同時に、ビクンと小さくイキました。

 その後も、赤い傘の人、黒い傘の人、そして宅配便のトラックとすれ違いました。
 誰かが現われるたびに、私のマゾ性が悦んでいました。
 視られていること前提で、それらの人影や車が視界から消えるまで、ずっとヒクヒク感じまくっていました。
 握り合った手の感触で気づかれたのでしょう、お姉さまがそんな私を振り返り、意味深な微笑を投げかけてくださいました。

 いくつかの路地を曲がった末、やがて、見覚えのある黄色い看板が、ライトアップされているのが見えてきました。
 露出お散歩出陣前に、ワンピースの前を自らまくり上げ、はしたないおツユで汚れたパンティ丸出しで記念撮影した、コインパーキングの看板でした。
 低いビルに囲まれたパーキング内は、その看板と料金清算機の前だけ煌々と明かりが灯り、路地よりも少し明るめでした。

 お姉さまがまっすぐに、ご自分の愛車に歩み寄ります。
 お姉さまが停めたのは、パーキング入口を入り向かって左側の奥から2番目。
 その右側二台分置いて白いワゴン車。
 駐車場内に停まっている車は、その2台だけでした。

 前向きに停めたお車の左脇から後部へ回り、トランクを開けるお姉さま。
 ほどなくエンジ色のおしゃれな傘が一本、取り出されました。
「ちょっとこれ、さしておいて」
 お姉さまから渡された傘を開くと、お姉さまはその下で、まず頭のフードを外し、つづいてレインコートを脱ぎ始めました。

「ふうー。雨音って、思った以上にうるさいものなのね。耳がヘンになりそうだったわ」
 確かに、傘をさした途端に耳元の轟音が頭上へと消え、お姉さまのお声もハッキリ聞こえてきました。
 お姉さまは、脱いだレインコートをその場でバサバサと振っています。

「レインコートは丸めて車のトランクに入れておけばいいわ。あとであたしが干してたたむから。でも入れる前に一応、軽く水気は払っておいてね」
 お姉さまがトランクのほうへ進まれたので、私も傘をさしかけつつお供します。

「ほら、今度はあたしが傘さしててあげるから、直子も脱ぎなさい」
 脱ぎなさい、というご命令口調にマゾマンコがヒクヒク。
「はい・・・」
 覚悟は出来ていたので、ゆっくりフードを外しました。

「直子ったら、からだが相当火照っているでしょう?ビニールが内側から曇っているじゃない」
 そんなお声に視線を落とすと、おっしゃる通り、透明なはずのビニールが沸きたてのバスルームの窓ガラスのように、内側からどんより曇って半透明になっていました。

 行きは、裾をまくってパンティ丸出しまでだったけれど、帰りはとうとう全裸になるんだ、こんな街中の駐車場で・・・
 マゾの昂ぶりがピークを超えそうでした。
 行きのときみたいに、前の通りを誰か通ってくれないかな・・・
 ヘンタイ露出狂そのものな願望が頭に浮かんだとき、あっさり望みが叶いました。

 コインパーキングの入口付近にカラフルな傘の花が三本、開いていました。
 大きな青い傘と赤い傘、そしてネコさんのキャラが描かれたピンクっぽい小さな傘一本。
「わざわざ雨の中、出て来た甲斐があったわね」
「ああ、いいものが買えたな。驚くほど安かったし・・・」

 そんな会話と共に、傘の群れがどんどんこちらに近づいてきました。
 合間には、小さな子供さんがキャッキャはしゃぐお声。
 私は、レインコートのボタンを胸元下まで、すでに外し終えていました。

「子供連れは、ちょっとマズイかな」
 お姉さまが独り言のようにおっしゃいました。
「直子、向こう側に回りましょう」
 お姉さまに手を引かれ、トランクの側を通ってお姉さまの愛車の右側面側、オフィスビル際で一台分の空きスペースがある側、つまり、お姉さまの愛車の陰に避難しました。

 そのご家族連れは、私たちに気がついているのかいないのか、そのままガヤガヤと、さっきまで私たちがいたスペースに集まっていました。

「パパ、早くドア開けてよー」
 可愛らしい女の子のお声。
「ちょっと待ちなさい。まず荷物を入れてから。ほら、カオリの新しいお人形さんも後ろに入れちゃいなさい」
「やだ。持ってる。持ったまま乗るのっ!」
「それなら貸しなさい。ビニールに付いた雨を拭いて上げるから」

 お姉さまのお車の陰に隠れた後も、私はそのままボタンを外しつづけました。
 一刻も早くお姉さまのご命令に従いたかったのです。
 一番下まで外し、両腕を抜き。
 脱いだレインコートをお姉さまに渡して、私は全裸になりました。

「いい度胸じゃない?このまま、あの車が先に出て行くのを待ちましょうか」
 嬉しそうなお姉さまのお声に、黙ってうなずく私。
 お姉さまと並んで相合傘のふたりは、お姉さまの愛車の後部座席の辺りに立ち、白いワゴン車のほうを見守りました。

 敷地の端のほうなので明かりは無く、道路から柵越しに覗いても、私が裸なことはわからないでしょう。
 ただし、背後にそびえるオフィスビルの窓から覗かれたら、裸の背中とお尻で一目瞭然。
 
 チラッと振り向いて見上げると、ビルの二階と三階に電気の灯った窓がありました。
 私は、決して二度とビルを振り返らないと決めた上で、どちらかの窓からふとした弾みで、誰かが裸の私に気づいてくださることを願いました。

 お姉さまは私にピッタリ寄り添い、左手で裸のお尻をスリスリ撫ぜてくださっています。
 ご家族間の他愛も無い会話、ワゴン車のドアがバタンバタン開閉する音。
 それらを聞きながら私は、どうしようもなく疼きまくっていました。

 お姉さまの愛車の屋根のてっぺんが私の鎖骨くらいの高さなので、そこから上はワゴン側からも見えているはずです。
 私の剥き出しの両肩を見て、こんな雨の日なのに、妙に薄着な女だと思われているでしょうか?
 もちろん首に巻かれた赤い首輪と、そこから垂れ下がる鎖だって見えるはず。
 それに気づいたら、どう思われるのでしょうか?

 傘をさしているせいか、しばらくはこちらに目もくれず、ドタバタワイワイやっていたご家族。
 それぞれドアを開けて乗り込もう、となったとき、買ってもらったばかりのお人形なのであろう包みを大事そうに抱えた女の子が、唐突にこちらに視線を向けてきました。
 雨の薄暗闇の中でもそこに誰かいるのがわかったようで、人懐っこい笑顔を浮かべ、無邪気に手を振ってきました。

「オネーサンたち、バイバーイ」
 傍らにいたママさんが子供さんの挙動に気づき、つられて視線をこちらに向けてきました。

 そのとき私とお姉さまは、女の子に向けて笑顔で小さく手を振っていました。
 ママさんは、そんな私たちを見て愛想笑いのようなものを浮かべ、軽く会釈をしてくれました。
 ただ、会釈し終えてもう一度こちらへ向けたそのお顔には、何か不思議なものでも見たような、怪訝な表情が浮かんでいるように見えました。

 女の子に傘をさしかけつつ後部座席のドアを開け、女の子を先にして乗り込んだママさん。
 きっと運転席のパパさんに、私のことを教えていることでしょう。
 私はずっと笑顔を作り、白いワゴン車が駐車場を出て行くまで見送りました。
 首輪にリードだけの全裸で、お姉さまにいやらしくお尻を愛撫されながら。

「やれやれ。直子ったら、もはや本当に、立派なヘンタイ露出狂女になっちゃったのね。こんな街中で全裸のクセに、平然と笑っていられるのだもの」
 お姉さまが呆れたようにおっしゃり、私の剥き出しの右乳首をチョンとつつきました。

「あんっ!お、お姉さま・・・私・・・、私もう、がまんが・・・」
「わかっているわよ。直子は後部座席に乗りなさい。そこに寝そべったらもう、オナニーでもなんでも好きにすればいいわ。あたしはそこの清算機で清算してくるから」
 後部座席のドアが開かれ、お姉さまの手で少し乱暴に、そこへ押し込まれました。

 バタンとドアが閉じ、レザーシートに寝そべった途端、私の右手は一直線に股間の洞窟へと潜り込んでいました。
 洞窟には熱い粘液が充満し、逸る指先を奥へ奥へと誘いました。
 左手は乳房を鷲掴み、尖る乳首の側面へ乱暴に爪を立て始めます。
 たちまちのうちに、ほんの数十分前にコインランドリーで味わったあの、めくるめく立てつづけの絶頂感の陶酔が戻ってきました。

 次に気づいたとき、車はどこか薄暗い場所に停車していました。
 エンジンも切られ周囲はしんと静まり返り、車内にも他の人の気配は無く私だけ、後部座席に寝かされていました。


オートクチュールのはずなのに 25


2015年10月12日

オートクチュールのはずなのに 23

 私が上がるべきテーブルの大きさは、広さも高さも一般的な事務机と同じくらい。
 テーブルの上にあったビニールトートとお姉さまのレインコートは、椅子の上に移動され、表面を飾る合板の木目模様の片隅に、真四角に折りたたんだ白いバスタオルだけが置いてありました。

「四つん這いでも寝そべっても、好きな格好でやっていいわよ」
 ビニールトートの中身を物色しながら、お姉さまがおっしゃいました。
「これとか、これも使えそうね」
 私のオナニー用お道具をチョイスされているようです。
「状況が状況だから縛ったりするヒマがないのが残念ね。ほら、早くテーブルの上にお乗りなさい!」
 首輪のリードをグイッと引っ張られ、テーブルの縁につんのめりました。

 テーブルに背を向けて立ち、後ろ手の両手をテーブルの表面につきました。
 ミュールから両足を浮かせると同時に、テーブルについた両腕を踏ん張って腰を持ち上げ、お尻をテーブル上に乗せました。
 
 それから、お尻を奥へ滑らせつつ両脚を折りたたみ、テーブル中央付近へと移動しました。
 からだの動きに合わせて、両乳首を噛んでいる洗濯バサミがフルフルと揺れます。
 テーブル上に上げた両脚は、期せずしてM字開脚の形となり、はしたなく割れた股間から恥ずかしいおツユが内腿をトロトロ零れました。

 いざテーブルの上に乗ってしまうと、そこは思っていたよりも狭くて高い感じ。
 少し暴れたら床に落っこちてしまいそうな恐怖感を覚えました。
 更に、蛍光灯が近くなったためでしょう、からだに当たる光が強くなって、からだの隅々までより鮮明に照らし出されている感じがします。
 後ろ手をついたM字開脚状態な私の真正面で、お姉さまがカメラのレンズを向けてきました。

「一段高く上がったおかげで、とても撮影しやすくなったわ。これなら明るいまま、余裕で全身を映せるもの」
 カメラのモニターを覗きこみながらおっしゃいます。
「もっと脚を開いて、マゾマンコをこっちへ突き出しなさい。そこを一番視て欲しいのでしょう?」
「は、はい・・・」

 私は素直に、両腿を150度くらいまでに開き、その中心部分をレンズに突き出すように向けました。
「うわーっ、凄い眺め。こんなところで素っ裸になっているだけでもオカシイのに、その上、そんな大股開き」
 股間にまっすぐ向けられたレンズに陵辱されているような気がして、からだがムズムズ疼きました。

「自分でマゾマンコ開いてみせてよ。奥の奥まで撮ってあげるから」
 カメラのレンズが私の顔に移っていました。
「はい・・・」
 テーブルについていた両手を離し、うつむきがちの前屈みになります。
「うつむかないのっ!顔はずっと、カメラを視ていることっ!」
 すかさずお姉さまから、叩きつけるような叱責。
「あ、はいっ!」

 顔はカメラに向けたまま、両手を性器の左右にそれぞれ添え、ラビアを左右に押し広げました。
「んーっ!」
「もっと開くでしょ?」
「んんーっ!」
「もっと!」

 ラビアに触れた指先に伝わる熱で、そこがどんなにか熱く火照っているのがわかります。
「ピンクの粘膜がウネウネうねってる。それに見るからにホカホカで湯気まで出ているみたい」
「あぁんっ!」
「いつ見ても大きなクリトリスだこと。テラテラに膨れて、今にも弾けそうじゃない」
「いやんっ!」
 お姉さまのイジワル声に反応して、粘膜がヒクヒクっと痙攣したのがわかりました。

「そのまま、こっち向いて笑ってみせなさい」
 ご命令に、マゾマンコを両手で押し開いたまま、お姉さまに媚びるような笑みを作りました。
「いい笑顔よ。ヘンタイ女そのものって感じで。直子、もしもあたしの会社クビになったら、ストリッパーになるといいわ」
 お姉さまの蔑みきった冷たいお言葉がマゾの官能をザラザラ撫で上げ、ゾクゾクが全身の鳥肌へと変換されました。

「あたしがいいと言うまで、そのままマゾマンコ開きっぱなしにしておきなさい」
 そうおっしゃると、お姉さまはいったんテーブルを離れ、私の背後に隠れました。
「いつ誰が来るかもわからないコインランドリーで、素っ裸になって自分のマゾマンコ開いて笑ってる女なんて、世界中探しても直子くらいしかいないわよね?」
 背後から、呆れ果てたようなお姉さまのお声。

 ひょっとしたらお姉さま、あらためてこのコインランドリーの内部を撮影されているのかしら?
 後からビデオを見るとき、その状況がよくわかるように。
 ラビアを押し開いて半笑いを浮かべたまま、そんなことを考えていたら、目の前にお姉さまが戻られました。

「ほら、これを使うといいわ」
 おっしゃるなり、突き出している私のマゾマンコに太いものがズブリと突き挿さりました。
 膣内を満たしていたおツユが、ジュブジュブ内腿へと溢れ出しました。
 一瞬置いて、膣内全体を震わせてくる激しい振動。
 同時に、パンパンに腫れ上がった肉芽を捻り潰される激痛。

「ぅあっ!うぁーぁぅーーーっ!!!」
 何をされたのか考える暇もなく、本能的な歓喜の悲鳴が私の喉奥からほとばしりました。
 頭の中が真っ白になって、からだがフワッと浮き上がりました。
 イッた、と頭で理解した後、すかさず今度は自分でその太いものを握り、猛烈に膣内を蹂躙し始めていました。
 お姉さまが私から離れた後も、肉芽の痛みは去りませんでした。

 両手で握り、滅茶苦茶に抜き挿ししているのは、私が持っている中で一番太い、銀色の円錐形バイブレーター。
 ヴーンという低い振動音が下半身全体に行き渡り、腰から下が自分のものではないような感覚。
 クリトリスを潰しているのは、木製の洗濯バサミ。
 激痛は疼痛に変わり、その周辺をジンジン痺れさせています。

「あんっ、あんっ、あんっ・・・」
 両手で持った銀色バイブレーターで、一心不乱に抜き挿しをくりかえす私。
 膣口が陸揚げされたお魚のお口のように、パクパク開け閉めをくりかえしています。
 滲み出るおツユは完全に白濁しています。

「いくら雨音が凄いからって、ヨガリ声はもうちょっとがまんしたほうがいいかもよ?入口が開けっ放しなのも忘れないでね。えっちな声を聞きつけて誰かが見に来ても、それは自業自得よ?」
 カメラを私に向けたまま、お姉さまの嘲笑含みなイジワル声。
 
 そのお声が耳に届き、さっきから私の両耳に響いているザザーッという音は雨音なのだと、ここは誰もが出入り自由なコインランドリーなのだと、今更ながらに理解しました。
 入口のガラス戸が開け放したままだったことも。

 すべてわかった上で、それでも手を動かすのを止めることは出来ませんでした。
 一度イって敏感になり過ぎているからだは、どこもかしこもが性感帯と化していました。
 右手でバイブレーターを抜き挿ししつつ、左手は洗濯バサミに噛み付かれた三箇所をでたらめに虐め苛んでいました。

 声を押し殺す気遣いも、まったく失くしていました。
「あ、あんっ!だめ、だめぇ、イク、イクぅぅ!」
 お部屋中にやかましく充満する雨音に煽られ、それに負けないくらいの喘ぎ声を出したくてたまりません。

「いや、だめっ、あぁぁんっ、イッちゃう、イッちゃううぅぅぅ!」
 もう一度頭を真っ白にしたくて、より高く長く舞い上がりたくて、マゾマンコを執拗に陵辱し、洗濯バサミを捻りつづけました。

 たてつづけに数回、たぶん4、5回くらい昇りつめ、やっと手が止まりました。
 マゾマンコに半挿しになったバイブレーターは相変わらずヴーンと振動しています。
 荒い息に両肩が上下し、お尻をついたあたりのテーブルはヌルヌルのビチャビチャでした。
 下半身はまだウズウズ疼いて責め苦を欲しているようでしたが、もはや責める体力のほうが残っていないような状態。
 大開脚の体育座りみたいな格好で、ぐったりうなだれる私。

「たいしたイキっぷりね。何回くらいイッた?」
「はぁ、はぁ、あの、えっと、4回か、5回くらい・・・」
「ふーん。満足出来た?」
「えっと、はい・・・」
「本当に?」
 お姉さまがエスの瞳のまま、艶然と微笑まれました。

「だって、オナニー始めてからまだ5分も経っていないのよ?今日、直子はさんざん恥ずかしい体験をしてきたのだもの、その昂ぶりがたった5分のオナニーで鎮まっちゃうなんて、あたしには信じられないわ」
 お姉さまは、イジワルなお顔でそうおっしゃりながら、ご自分の背後にある洗濯機の上に、ハンディカメラを置きました。
 
 いくつかの洗濯バサミをあいだにかませて向きと高さを調整すると、こちらに向けた液晶モニターの中央に、テーブル上の私のはしたない姿がクッキリ映し出されるようになりました。
 首輪に鎖だけの汗まみれの全裸で、両脚を大股開きに投げ出したまま顔を歪め、肩で息をしている浅ましい私の姿。

「幸い雨も相変わらずで、まだここで遊んでいても大丈夫そうだし、今度はあたしが、この手でイカせてあげる」
 お姉さまが私のもとへ近づいてきました。
「そうね、あの時計が5時になるまで、あたしがそのバイブで直子のマゾマンコをかき回してあげるわよ。嬉しいでしょ?」
「は、はい・・・お姉さま・・・う、嬉しいです」

 カメラを置いた洗濯機の上の壁に掛けてある、よく学校にあるみたいな丸いアナログ時計。
 その針は、4時52分を指していました。
 ここに来たのが4時ちょっと過ぎでしたから、もう一時間近く、私は全裸でこのコインランドリーにいることになります。
 お外もかなり暗くなっていました。

「そのあいだ、あと何回イケるかしらね?もちろん5時になるまで、私はやめないから。直子が、もう許して、勘弁して、って言ってもイカせつづけるからね」
 ゾクッとするような冷たい微笑を投げかけてくるお姉さま。

「あたしが見た感じだと、直子は今、中イキのトランス状態に入っているみたいだから、面白いくらい何度もイケると思うわ」
 一歩私に近づいたお姉さまが、私の股間のバイブレターに右手を伸ばしてきました。
「あっ!お姉さまっ!」
 グイッと奥まで突かれて、瞬く間に頭の中が真っ白になりました。

 それからのことは、ほとんど憶えていません。
 どんどん気持ち良くなって頭の中が真っ白になり、もの凄い快感の中で気を失いかけると再び全身に快感が押し寄せてきて・・・
 それを何度も何度もくりかえした気がします。

 あとは、私を責める合間合間に、お姉さまがおっしゃったお言葉の断片。
「・・・うわー、こんなに奥まで咥え込んじゃって・・・」
「・・・こんなところで、またイッちゃうの?とんだヘンタイ女ね・・・」
「・・・全部出しちゃっていいのよ・・・」
「・・・ほら、今ここの前を車が通り過ぎた・・・」

 耳の中にザザーッという音がフェードインしてきて気がつくと、いつの間にか私のからだはテーブルから下り、椅子に座らされていました。
 洗濯バサミも全部外されています。
「んーっ、あっ!、あれ?お、お姉さま?」
 目を開いて自分の裸のからだを見、どこにいるのかを思い出し、次に探したのはお姉さまのお姿でした。

「気がついたのね。よかった。直子、結局、気を失っちゃったのよ」
 お姉さまは、水道のところで何か洗い物をされているようでした。

「5時になって、あたしがバイブを動かすのをやめた途端、ガクンて、動かなくなっちゃったの」
「一瞬焦ったけれど、直子がオナニーで気を失うの、以前にも見ていたからね。仕方ないからテーブルから下ろして、あたしはせっせと後片付け」
「ご、ごめんなさい!お手伝いします」
 壁の丸時計を見ると、5時15分になっていました。

 あわてて立ち上がろうとすると、腰が抜けたみたいにからだが重い感じ。
 全身に力が入らないのです。
 どうしても立ち上がれず、やむなく諦めました。

「いいのよ。もう終わるから。フェイスタオル一枚で、あのビシャビシャになったテーブルを拭き取るのは骨が折れたけれどね。バスタオルを一枚しか持ってこなかったのは、失敗だったわ」
 確かに、私のおツユでヌルヌルグジュグジュだったはずのテーブル上は、キレイに拭き取られ、ビニールトートとバスタオルが端っこのほうに置いてありました。
 
「それに今、直子のからだは普通の状態ではないと思うわ。あたしの読みが正しければ、ね?」
 水道から振り返り、謎な笑みを投げかけてくるお姉さま。
 
「何回くらいイッたか、憶えている?」
 振り向いたままのお姉さまに尋ねられ、力なく首を左右に振る私。
「直子、あたしに責められているあいだ中、ずーっと、イッちゃうイッちゃう、イクぅ、またイクぅ、しか言わなかったのよ?」
「見た感じ、たてつづけに十数回はイッていたわね。途中まで数えていたのだけれど、バカらしくなってやめちゃった」

「シオ吹いたのは?」
「あ、えっと・・・いいえ・・・」
「途中からピューピュー垂れ流し状態。あたし、からだひねって避けまくっていたんだから」
 苦笑いを向けてくるお姉さま。
 テーブル下のコンクリートの床が、打ち水をしたみたいに濡れているのは、きっとそのせいなのでしょう。

「雨も少し弱まってきたみたいだし、いつまでもこうしてはいられないから、バスタオルでからだを拭って、そろそろ帰る準備をしましょう。お腹も空いてきたし」
 お姉さまがおやさしげな笑顔で私に近づき、膝の上にそっと、バスタオルを置いてくださいました。

「あはっ、いやぁんっ!」
 バスタオルが太腿に触れた瞬間、自分でも思いがけない喘ぎ声が洩れてしまいました。
 事実、その瞬間、全身に電気みたいな快感が駆け巡ったのです。

「やっぱりね。直子はまだトランスから抜け切っていないの。今の直子は、どんなことされても全部快感になっちゃう、全身性器のトランスオーガズム状態なのよ」
 私の目前で嬉しそうに唇をほころばせるお姉さま。
「短時間で許容量を超える快感に責め立てられたおかげで、敏感になり過ぎた全身が外部からの刺激の何もかもを、性感、快楽として受け取ってしまう状態なわけ」

「たとえば・・・」
 お姉さまが私の膝からバスタオルを取り上げ開いてから、私の背中に掛けてくださいました。
「あふうぅっ!」
 タオル地が背中に触れた途端に全身を快感が駆け巡り、身悶えてしまいました。
 そのタオルでうなじを拭かれて、あうっ!鎖骨をなぞられ、あうっ!乳房を撫ぜられ、あうっ!お腹をさすられ、あうっ!・・・

「うふふ。可愛いわよ・・・」
 とどめに右耳にハスキーな囁きを熱い吐息と共に注ぎ込まれ、ビクンビクンと全身が痙攣し、呆気なくイってしまいました。

「時間が経つにつれて薄れていくはずだから、今はがんばって、自分でからだを拭きなさい」
 お姉さまが私から離れ、私はなんとか踏ん張って、ヨロヨロ立ち上がりました。
 絶頂感の余韻が、からだのあちこちにウズウズくすぶっています。
 バスタオルで恐る恐る、自分の胸元を押さえてみました。
 タオル地が素肌を撫ぜるたびにハアハア喘ぎ、ビクンビクン震えてクネクネ身悶えてしまいました。

 乳首や性器に触れなくても、肌を撫ぜ回すだけで下半身へと快感がつらぬき、小さく何度かイキました。
 と言うか、イッている状態がずーっとつづいているような感覚。
 こんなの、生まれて初めてのことでした。
 自分のからだに触れるのが怖くなり、拭うのもそこそこにバスタオルをテーブルに置いてボーっと突っ立っていると、お姉さまが近づいてきました。

 お姉さまは、もうとっくに停止していた乾燥機から私たちの衣服を取り出してきたようで、それらをテーブルの上に置きました。
「ほんのりだけれど、まだ温かいわよ」
 おっしゃりながら、ご自分のタンガリーシャツの袖に腕を通すお姉さま。
「直子はどうしようかしら?そんな状態でワンピ着ても、衣擦れだけでイっちゃいそうよね?」
 愉しそうにクスクス笑うお姉さま。

「雨もまだ降っているし、そんな状態の直子が転んだりして、また全身水浸しなんていうのも、めんどくさい話だわね。そう言えば、ビニール傘も壊しちゃったんだっけ」
「いっそ、裸のまま車に戻る?あたしの土地勘だと、ここから駐車場までは近いはず。たぶん歩いて5分くらい。ずっと路地だけ通って行けるはずよ」
「もう暗いし、こんな雨だし、意外と誰にも会わずに行けるかもよ。あ、でも裸だと雨に打たれてまた感じちゃって、直子がイっちゃうかも」

 どこまで冗談でおっしゃっているのかわからない、お姉さまのイジワル声。
 私も、疼きまくるからだをもてあまし気味に、それも面白いかも、なんて考えていたりいなかったり。

「なーんてね。さすがに全裸で街中歩くのは、発覚リスクがあり過ぎるから、こうしましょう」
 お姉さまがバッグから何かを取り出しました。
「雨宿りのとき話したレインコートよ。スケスケの。それを素肌に羽織って車まで行くの」
 目の前に無色透明ビニールのレインコートが広げられました。
「幸い外もかなり暗くなったから、ちょっと見じゃ中身が裸だなんてわからないわよ。雨も弱まったとは言え相変わらずだし、人通りも無いでしょう。たぶん大丈夫」

「ワンピに着替えるのは、車の中でゆっくりすればいいわ。池袋へ戻りがてら、どこかレストランで、全裸家政婦直子のお疲れ打ち上げディナーをしましょう」
 お姉さまがバスタオルと、乾きたての私のミニワンピースと下着類をさっさとビニールトートに仕舞い込み、左肩に提げます。
 その上から白濁半透明のポンチョ風レインコートを羽織りました。

「あら、リード付けたままだったわね。まあ、いいわ。それはレインコートの中に仕舞っておきなさい。引っ張って歩いてもいいけれど、誰かに見られたらハンザイ臭過ぎて通報されそうだから」
 笑いながらおっしゃるお姉さまに促され、スケスケレインコートに腕を通しました。
 素肌に当たるビニールの感触に、懲りもせずビクビクンと心地良い快感が全身を駆け巡ります。

 パチンと留める式のボタンを全部嵌め終えて、私のからだが透明ビニールに包まれました。
 コインランドリーの明るい蛍光灯の下では、レインコートの中身が全裸だということが一目瞭然です。

 それも、おっぱいの谷間のあいだに鈍い銀色の鎖を垂らした、見るからにマゾ丸出しの淫靡な全裸。
 透き通ったビニールの奥で卑猥に浮き出るボディライン。
 その白っぽい肌色のシルエットの中で、茶色がかった乳輪と乳首、そして銀色の鎖は、中身が裸であることを教える目印のように、一際目立っていました。

 私、これからこんな姿で、街中を5分くらい歩くんだ・・・
 近くで視られたら、明るいところで視られたら、おっぱいもお尻もマゾマンコも丸出しに等しい、こんな姿で・・・

 鎮まりかけていた性的高揚ががグングン昂ぶり、一歩からだを動かすだけでイッてしまいそうでした。


オートクチュールのはずなのに 24


2015年10月4日

オートクチュールのはずなのに 22

 全開のシャワーみたいな激しい雨。
 大きな雨粒がとめどなく、顔やはだけた胸をバチバチたたきつけてきました。
 
 走っても歩いてもどうせずぶ濡れなのにやっぱり走って、剥き出しのおっぱいをプルプル揺らしながら赤い庇を目指しました。
 一足先に到着していたお姉さまは、赤い庇の下でレインコートのボタンを外し始めていました。

「ひどい降りになっちゃったわね。空一杯雨雲だし、当分やまなそう」
 脱いだレインコートの水気を払った後、ビニールトートからバスタオルを引っ張り出して渡してくださるお姉さま。

「だけどおかげで、面白い経験が出来そうよ。思った通り、誰もいないようだし」
 お姉さまが背後のガラス戸を、私にも促すみたいに振り返りました。
 バスタオルを濡れた肌に当てつつ、私も振り向きました。

 全面素通しガラス2枚の引き戸の向こう側には、煌々と電気が灯っていました。
 私の真後ろのガラス戸中央に横書きの赤い文字で、コインランドリー。
 その下には白い文字で営業時間のご案内が書かれていました。
 お姉さまがガラガラッと、その引き戸を開けました。

 八畳間くらいのスペース壁際に、洗濯機らしき物体が整然と並んでいます。
 空いたスペースにはデコラ張りの長方形テーブルが置かれ、折りたたみ椅子が二脚。
 テーブルの上には何も置いてなく、床はコンクリート、壁に手書きで、禁煙、の大きな張り紙。
 小じんまりと古くからやっていらしたような、渋めのコインランドリーでした。

「さあ、その濡れたワンピ脱いで、そこの乾燥機で乾かしてもらうといいわ。もちろん下着もね」
 さも当然のことのように、お姉さまがおっしゃいました。
 
 濡れた髪をバスタオルで丁寧に拭いながら室内を見渡していた私は、ギョッと固まります。
 思わず出かかった反問の言葉を何とか飲み込みつつ、お姉さまのほうを見ましたが、えっ!?ここでですか?という私の心からの叫びが、顔に書いてあったと思います。

「大丈夫よ。こんな土砂降りの中、わざわざ洗濯しようって外に出て来る人なんて、いるわけないでしょ?」
 私の顔を見てクスリと笑ったお姉さまが、愉しそうにおっしゃいました。
「少なくとも土砂降りがつづいているうちは大丈夫なはず。小降りになったら、わからないけれどね?」
 イタズラっぽくおっしゃってワザとらしく動かしたお姉さまの視線を追っていくと、一台の乾燥機。

 その乾燥機は、作動終了のランプが点灯していて、丸いガラス窓の奥には、女性ものらしき下着を含む衣類がいくつか横たわっていました。
 そのまま視線を横にずらしていくと、ここのコインランドリーは洗濯機三台、乾燥機三台という陣容。
 作動中の機械はひとつもなく、使用中ランプが点灯しているのは、その乾燥機一台だけでした。

「あとはまあ、さっきのあたしたちみたいに、そこの庇に雨宿りに来る人がいるかもしれないけれど、ここって最寄り駅からけっこう離れているから、可能性は低いはず」
「だから、さっさと脱いで乾燥機動かして、雨がやまないうちにさっさと立ち去ったほうが、あたしは得策だと思うけれどね」
 お姉さまのイジワル声が、本当に愉しそう。

「わ、わかりました・・・」
 お姉さまのおっしゃることが、もっともだと思いました。
 ここでグズグズしていたら、誰かがやって来るリスクが増すばかりです。
 びしょ濡れで素肌にべったり貼り付いているワンピースも気持ち悪いし。

 バスタオルをお姉さまにお返ししました。
 お姉さまは、そのバスタオルをテーブルの上に置くと、再び私を見つめてきます。
 テーブルの上には、ビニールトートとお姉さまが脱いだレインコートが無造作に置いてありました。

 ガラス戸に背を向けて、自分の胸元を見ました。
 おっぱいは左右とも完全にお外に出ていて、痛々しい先っちょがふたつ、宙を突いています。
 右手でその下に位置するボタンを外すと残りはひとつ。
 前屈みになって裾の下のほうに手を伸ばします。

 私、こんなところで今、裸になろうとしている・・・
 今日初めて訪れた街の、明るいコインランドリーの中で・・・
 大雨とは言え、いつ誰が来てもおかしくない公共の場所で・・・

 全身を被虐の血が駆け巡り、その血がどんどん下半身に集まってきて、疼いて疼いておかしくなっちゃいそう。
 でも表情はたぶんきっと、泣きそうな顔になっていると思います。
 テーブルの端にもたれたお姉さまが左側から、そんな私にカメラを向けていました。

 濡れそぼったワンピースを素肌から剥ぎ取るみたいに、両袖を抜きました。
 現われたのは、まるでカップレスブラのようにおっぱいを下から持ち上げている銀色、今や湿って黒ですが、のブラジャーと、何にも覆われていない下半身。
 脱いだワンピースを左腕に提げて両手を後ろに回し、お役目を果たしていないブラジャーを外しました。
 それから左足のミュールを脱ぎ、足首のショーツも外します。
 すべてを終えて、お姉さまのほうを向きました。

 今、私は、全裸。
 正確に言うと、首に巻かれたマゾのシルシである赤い首輪と両足の白いミュール以外、一糸纏わぬ、全裸。
 眩しいくらいの蛍光灯の光が、コインランドリーの狭い空間に情け容赦なく、生まれたままの私の姿を鮮明に浮き上がらせていました。
 その恥ずかし過ぎる光景はしっかりと、お姉さまのカメラで記録されていました。
 意識しなくても自然に両腕が、胸と股間を隠すように動いて、全身が縮こまっていました。

「あそこに水道があるから、ワンピは軽く絞っておくといいわ。直子のおツユだらけのパンティは手洗いしてからのほうがいいわね。ブラは湿っただけっぽいから、そのままでもよさそう」
 カメラを向けたまま、お姉さまが近づいてきました。

「すっごくエロいわよ、直子。こんなところに真っ裸の女の子がいるのって。それも赤い首輪なんかしちゃってるし」
「シュールとか言うより、やっぱりエロティックね。その恥ずかしがっているところがたまらない。思わず襲い掛かりたくなっちゃう」
 カメラを下ろして、お姉さまが私の目の前に立ちました。

 前を隠すように両手で素肌に押し付けていた衣類を、少し強引に引き剥がしてご自身の左手に持ち、右手で私の左手を引くお姉さま。
 洗濯機と乾燥機の隙間に設えられた、小さな受け皿が付いた水道の蛇口まで引っ張られました。
 
 衣類をその受け皿に置くと、私の手を離しました。
「ほら、早くやっちゃいなさい。もたもたしていると、雨、やんじゃうわよ?誰か来ちゃうわよ?」
 私の後方に退いたお姉さまが、再びカメラを向けてきました。

 水道の前に立ちました。
 最初に、たっぷり雨を含んだワンピースを軽く絞り、広げてからあらためて水道水で軽く水洗い。
 それから入念に絞りました。

 次にショーツ。
 手に持ったときから全体がヌルヌルしていました。
 水を流しながら手洗いしていると、だんだんとヌルヌルが消えていきます。
 お出かけ中に、こんなに汚していたんだ・・・
 今更ながらの恥ずかしさに全身がカーッ。
 ブラジャーも軽く水にくぐらせて、軽く絞りました。

「ずいぶんご丁寧なお仕事ぶりだこと。さすが、全裸家政婦を自認するだけのことはあるわね」
 お姉さまのお芝居っぽいからかい声が背後から聞こえてきました。
 
 お姉さま、今の私は家政婦ではありません。
 だって今洗ったのは、自分で汚した自分のお洋服なのですから。
 ただのヘンタイ女の全裸お洗濯です。
 こんな場所で全裸になっていることで自分のマゾ性がどんどん膨張し、より強烈な辱めをからだが欲しているのがわかりました。

「洗濯機も乾燥機もかなり年季が入った古い型みたいね。この手だと、どのくらい回せばいいのかしら?」
 独り言みたくおっしゃって、機械に貼られた取り扱い説明文を読むお姉さま。
「まあ、ブツは少ないし、20分も回せば乾くでしょう」
 お姉さまがランプの点灯している乾燥機のすぐ横の一台に手をかけ、扉を開けました。
 私も絞り終えた衣類を持って、そちらへ移動しました。

 お姉さまに開けていただいた乾燥機の中に、衣類を入れます。
 ワンピースとブラジャーとショーツ。
 大きな円形ドラムの中に小さな布片が三つだけ。
 なんだか間の抜けた光景に見えました。

「これっぽっちだと、ちょっともったいないような気にならない?」
 お姉さまも私と同じことを思われたみたいです。
 少し考えるようなそぶりをされた後、おもむろに着ていたタンガリーシャツのボタンを外し始めました。

「このシャツも少し湿っちゃったし、汗もかいたからさ、この際一緒に乾かしちゃおう。直子、これも水洗いお願い」
 お姉さまから手渡されたタンガリーシャツは、確かに全体に薄っすら湿っていました。
 お姉さまの体温で薄っすら生温かく、お姉さまの香りが薄っすらしていました。

 そして何よりも驚いたこと。
 それは、シャツを脱いだお姉さまがノーブラだったことでした。
 黒無地の半袖ボートネックでピッタリフィットなTシャツ。
 そのバスト部分先端が左右ともクッキリと浮き上がっていました。

「あたしもあんまり外出でノーブラはしないのだけれどね。今日は直子に影響されちゃったみたい。たまにはいいかなと思ってさ」
 私の視線の先に気づかれたお姉さまは、少し照れたみたいにお顔をほころばせ、そうおっしゃいました。

「だけどあたしはノーブラでも、直子みたいに無駄に恥ずかしがったりはしないわよ。それもひとつのファッションと思っているから、照れずに堂々と出来るの」
「直子みたいに、すぐにいやらしい妄想が広がらないからね」
 言い訳っぽくつづけるお姉さまが、なんだか可愛らしい。
 すっごく嬉しい気持ちで水道まで行き、タンガリーシャツを丁寧に手洗いしました。

 乾燥機の中の布片が四つになりました。
 お姉さまが扉を閉め、コインを投入。
 タイマーは30分を示していました。
 
 ということは、私は泣いても笑っても、この場にあと最低30分間は、全裸のままいなければならないわけです。
 そのあいだ私に出来ることと言えば、このまま雨が激しく降りつづけることを祈ることぐらいしかありません。

 乾燥機を離れたお姉さまは、いったんテーブルのほうへ戻り、折りたたみ椅子をひとつ、入口のガラス戸のまん前に置きました。
「ずっとさっきから気になっていたのよ、直子のその濡れた髪。ほら、こっち来て座って」
 なるべくお外から見えないよう、ガラス戸前を避けて隅っこへ隅っこへと逃げていた私を、容赦なく呼びつけるお声。
「肌にあちこち貼りついてエレガントじゃないから、あたしが軽くセットしてあげる」

 ご命令に逆らえるはずもなく、とぼとぼ置かれた椅子のほうへ。
 椅子は、さっき入ってきたガラス戸に向けて置いてありました。
 そこへ座ると、ガラス戸に書かれたコインランドリーというカタカナが鏡文字になって目前にありました。
 ガラス戸の向こうが相変わらず、滝のように降り注ぐ大雨なことだけが、唯一の心の拠りどころ。
 狭い室内に響くザザァーッというこもったような騒音が、いつまでもつづくことを願うばかりです。

「なかなかスリリングでしょ?もしも誰かがここに入ってこようとそのガラス戸を開けたら、最初に目に入るのが直子の裸なの」
「まあ、入ってくることは無いと思うけれど。誰かが道を通ったら、ガラス越しに見えるのかな?この雨じゃガラスも曇って見えないかな?」
 
 お姉さまが背後に立ち、私の濡れた髪をバスタオルで拭いながら、世間話でもするように語りかけてきました。
 なんだかヘアサロンのオネーサンみたい。

「一番来そうなのは、あの乾燥機に残っている洗濯物の持ち主よね。女性みたいだけれど」
 お姉さまが私の髪を指で梳き始めました。

「女性なら、なんとかごまかせるかもしれないわよね。突然の雨でびしょ濡れになっちゃったんですぅ、って」
「だけど、オトコだったら、いろいろややこしくなりそう」
 そこでクスッと笑うお姉さまのご様子は、まったくの他人事のよう。

「でもまあ、あんまり大事になってもアレだから、もしも誰か来る気配があったら、そこのバスタオルをからだに巻くことだけ、許してあげる」
 お姉さまが私の後ろ髪をいくつかに分けているのがわかります。
 どうやら軽く結ってくださるみたい。

「もっとも、巻いていいか決めるのはあたしだけれどね。こんなところでバスタオル一枚っていうのも、考えようによってはかえってエロいかも」
「若い男の子だったら、かなりコーフンしちゃうでしょうね?襲い掛かってきたら、どうする?」
 からかい声のお姉さまですが、両手はテキパキと動いていました。

「はい出来た。ヘアゴム無いから応急処置だけれど。立って、こっち向いてみて」
 お声に促され、うつむきがちに立ち上がりました。
 椅子の赤いビニールレザーに、直径2センチくらいの水溜りが出来ていて、股間とのあいだに短い糸が引きました。
 思わずそれから顔をそむけると、顔の左右に毛先が揺れました。
 どうやらツインに分けて、それぞれを緩く編んでくださったようでした。

「うわー。こういう髪型にすると、直子って幼くなるのね?」
 本当に驚いたお顔で、私の顔をまじまじと見つめてきました。
「そ、そうなのですか?」
 ガラス戸にぼんやり映っていた自分の顔を見た限りでは、そんなに変わったようには見えなかったのですが。
「うん。雨でメイクも落ちちゃったから、ほとんどスッピンなせいもあるのかしら。なんだか頼りなげで、でもどこか生意気そうで、すごく虐めたくなる顔」

 なおもじっと見つめてくるお姉さまの目力に負けて目をそらすと、視線は自然とお姉さまのTシャツ胸元で目立つ突起に貼りついてしまいます。
 お姉さまもずっと私といて、ずっと感じていらっしゃるんだ・・・
 なんとも言えない甘酸っぱいものがこみ上げました。

「生意気顔の原因はそのアイラインね。こんな雨でも落ちないなんて、大したウォータープルーフぶりだこと」
「そのアイラインも落としたら、もっと幼く見えるのでしょうね。それもそれでそそるものはあるけれど」
 お姉さまの口調が早口気味になっていて、それはなんだか興奮されているようにも思えました。
 興奮というのはもちろん、性的に、と言うか、エス的に。

「締め切っているせいか、この部屋ネットリ蒸しちゃってちょっと不快。換気しましょう」
 おっしゃるや否や、ツカツカとガラス戸に歩み寄り、ガラガラっと50センチほど開けてしまいました。
 
 途端に盛大にボリュームが上がる雨音。
 室内よりも少しひんやりとした空気と、ザザザーッという嵐そのものな雨音が、狭いコインランドリーの中を満たしました。

「この調子なら、まだまだ邪魔は入らなそうだから、思い切ってもっと冒険しちゃいましょうか」
 雨音の騒音に負けないよう、大きめになったお姉さまのお声。
 開けた戸はそのままに、テーブルのほうへと戻っていかれました。

「直子、こっちに来なさい」
 開けたままの引き戸がすごく気になるのですが、呼ばれたからには仕方ありません。
 お姉さまは、テーブルの上のビニールトートの中をガサゴソされています。
「これ、着けて」
 差し出されたのは、首輪に繋ぐ鎖のリードでした。

「は、はい・・・」
 差し出されたリードの金具を、首輪のリングに嵌めました。
 重い鎖が垂れ下がり、胸元からお腹にかけての素肌にぴったり触れます。
 そのひんやりとした金属の感触に、背筋がゾクゾクッと震えました。

「ねえ?こういう激しい雨の音って、心を昂ぶらせる何かがあると思わない?」
 リードを着けた私を至近距離で、まっすぐ見つめてくるお姉さま。
「えっと、それは・・・」
「あたしはそうなの。台風の日とか、なぜだかワクワクしちゃうタイプ。雨の音とか風の音とかに」
 お姉さまは、私の返事なんてハナから聞く気はないようでした。
 私を見つめてくるそのふたつの瞳に、エスの炎がメラメラ燃え盛っているのがわかりました。

「そこ開けて、降りしきる雨の音を直に聞いたら、あたしもう、どうにも我慢出来なくなっちゃった」
 お姉さまの右手がリードの途中を掴み、グイッと引っ張られました。
「あうっ!」
 顔が首ごと、お姉さまのお顔にぶつかりそうなほど、引き寄せられました。

「あたし今、直子をめちゃくちゃマゾ扱いしたくて仕方ないの。虐めたくて虐めたくて」
「はうっ!」
 いつの間に手にされていたのか、木製の洗濯バサミで尖った右乳首を素早く噛まれました。
「ああんっ!」
 つづけざまに左も。

「直子、イっていいわよ。今日はずーっとイキたかったのでしょう?あたしが許すわ。ここで思う存分、イキなさい」
 ここ、とおっしゃったとき、右手の人差し指がテーブルの上をコツコツと叩きました。
「えっ?」
「だからここよ。このテーブルの上でオナニーしなさい」
 
 お姉さまのお顔が少しだけ離れ、その唇の端が少しだけクイッと上がりました。
 おそらく微笑まれたのだと思います。

「出来るわよね?」
 テーブルの上でオナニー?でもその最中に雨がやんじゃって誰か来たら・・・
 そんな思いが頭の中をグルグル駆け巡り、お返事出来ないでいると、またグイッとリードが引っ張られました。
 今度は実際に、私とお姉さまのお顔がぶつかりました。
 唇同士で。

 間髪を入れず、お姉さまの熱い舌先が私の腔中にねじ込まれました。
「んぐぅぅ」
 どちらの喉から出た音なのか、なんとも卑猥な吐息が聞こえ、その後、ヌチュヌチュピチャピチャという音に変わりました。
 その他に聞こえるのは、ただ単調でうるさいお外の雨音だけ。

 お姉さまの両手が私の背中に回り、お姉さまのTシャツ越しのおっぱいが私の洗濯バサミ付きおっぱいを押し潰します。
 噛み付いた洗濯バサミが暴れ、捻られ、食い込み、乳首がちぎれそうなほどの痛みが走りました。
「ぬぅぐぅぅぅ・・・」
 塞がれた唇からくぐもって漏れた小さな悲鳴。
 お姉さまが唇を離されたとき、私は小さくイっていました。

 バスタオルでご自分の唇を優雅に拭ったお姉さま。
 その唇が動きました。

「やりなさい」
「はい、お姉さま」
 私は、きちんとイキたくて仕方なくなっていました。


オートクチュールのはずなのに 23