2016年4月3日

オートクチュールのはずなのに 44

「凄いわね。最初はギクシャクしていたけれど、今はもう、歩きかたも仕草も、プロのモデル顔負けじゃない?」
 マンションに着き、部室の階まで昇るエレベーターホールで、やっとお姉さまと向き合いました。
「後ろから見ていて、惚れ惚れしちゃった。すれ違う人のほとんど、男も女も、みんな直子に見蕩れていたわよ」

「そ、そうですか?」
 お姉さまのおやさしいお声に、フッと我に返るような感覚があり、同時に、過剰なほど張りつめていた背筋と心の緊張が解けていくのがわかりました。
 
 やがてエレベーターが到着。
 降りる人はなく、乗り込むのもお姉さまと私だけ。

 エレベーターの箱内に足を一歩踏み出したとき、とんでもないものが視界に飛び込んできました。
 私の真正面に、等身大以上の大きな鏡、そして、そこに映った自分の姿・・・

 鏡に映った私は、胸のVゾーンが乳首寸前まで大きくはだけ、裾もワレメギリギリまでせり上がった、目のやり場に困り過ぎるほど破廉恥な、裸コート姿でした。
 
 こんな姿で自信満々で前から歩いてこられたら、注目するのはあたりまえです。
 心の片隅に無理やり追いやっていた羞恥心が一気によみがえり、火照りとなって全身を駆け巡りました。

「わ、私・・・私、こんな姿でモールやお外を歩いてきたのですね・・・」
「そうよ。みんなの注目の的だったじゃない。でも直子もひるまずに堂々と歩き切って、偉かったわ」
 それって単に、驚いていたのか、呆れていたのだと思います。

「でもでも私、よく行くお店もあるし、知っている店員さんもたくさんいるし、どうしよう・・・もう恥ずかしくてお店に行けない・・・」
 やってしまったことの重大さに今更、からだが震えてきました。

「ううん。その点は大丈夫と思うな。注目の的は首から下だったし」
 お姉さまのからかうようなお声。

「まず服装に目が行って、それからあわてて顔を確認する、って具合だったわ」
「こんな格好したがる女って、どんな顔なんだろう、って感じでね。だけど、そのド派手なメガネでしょ?顔が半分以上隠れているから、知り合いだってわかりゃしなかったわよ」
 今度は真面目に、諭すみたいにおっしゃいました。

「それを貸してくれたアヤに感謝しなくちゃ、ね?」
 最後はおやさしくおっしゃり、不意にギュッと抱きしめてくださいました。
「あんっ!?」

「だから、さっきの感じでいいの。さっきの感じでイベントもしっかり頑張って。やっぱり直子はやれば出来る子なのよ。あたしのパートナーが直子で、本当に良かった」
 耳元でそうささやかれ、唇に甘いキス。
 
 それだけでさっきまでの不安が、綺麗サッパリ吹き飛んでしまうのですから不思議です。
 お姉さまが悦んでくださっているのだから、これでいいんだ・・・
 唇が離れたとき、タイミング良くエレベーターのドアが開きました。

 手をつないでエレベーターを降りました。
 目の前には、ホテルみたいな間接照明のオシャレな廊下が、シンと静まり返っています。
 エレベーターのドアが完全に閉まるのを待って、お姉さまがおっしゃいました。

「ここまで来たら、そのコートももう、脱いじゃって大丈夫でしょう」
「えっ!?」
「さっきのあたしのキスで気が緩んじゃった?直子には今日一日、でも、や、だって、は許されていないはずよ」
「あ、はい・・・ごめんなさい・・・」

 お姉さまからのキスで引っ込んだはずの羞恥心が、まだ少し、心のどこかでくすぶっていました。
 私にはイベントまで服は一切着せない、って、オフィスでお姉さまも断言されたじゃない?
 むしろ、ここまでコートを着せていただけたことに、感謝しなくちゃダメ。
 自分に叱るように言い聞かせ、コートの残りのボタン3つを、思い切るように手早く外しました。

 脱いだコートはニヤニヤ顔のお姉さまにお渡しし、今度はマンションの廊下で全裸。
 サングラスも一緒に外されました。
 お部屋へたどり着くまでに通り過ぎる、他所様のドアふたつが開きませんように、とドキドキお祈りしながら、携帯電話のカメラをこちらへ向けているお姉さまを追いました。

 お部屋へ入るとすぐ、お姉さまが着ていたスーツをスルスルと、お脱ぎになり始めました。
 そのとき、きっと私は、不思議そうな顔になっていたのでしょう。
 お姉さまが照れ隠しみたいに微笑みつつ、おっしゃいました。
「言ったじゃない?部室に着いたらご褒美上げる、って」

 ブラジャーも取り、ストッキングもショーツもお脱ぎになって、生まれたままのお姿になられたお姉さまが、そのままギュッと私を抱きすくめてくださいました。
「はぅぁぁー」
 お洋服を着ていらっしゃらなくても、いい匂いなお姉さま。

「これから直子を、シャワー浴びながらとことんイカせてあげる」
 耳元をくすぐる甘いささやき。
「今日は、あたしをイカせようとか、余計なことは考えないで、自分がイクことだけ考えていなさい」
 おっしゃるなり、お姉さまの右手人差し指が私のマゾマンコへズブリ。
「はぅっん!」

「相変わらずグッショグショなのね。スケベな子。モールでの注目がそんなに良かった?」
「イベントでは、それ以上の熱い視線が待っているからね」
「あうっ!あっ、あっ、あーっ}
 しばらくグチョグチョ掻き回されてから、唐突に指が抜かれました。

「おっと、その前にすることがあった。直子、今日のお通じは?」
「あん、えっ・・・お通じ、ですか?えっと、普通ですけれど・・・」
「いつしたの?」
「えっと、起きて、シャワーして、朝ごはん食べて、その後、です」

「朝食は何?」
「あのえっと、レタスとキュウリのサラダにジャムトースト一枚。あとミルクティで、食後にバナナを一本・・・」
「ふーん。ヘルシーね。今日は、イベント終わるまで何も食べられないけれど、我慢してね」
「はい。それは、構いません・・・」

「終わったら何食べてもいいから。あたしが何でもご馳走してあげる。だけど今はお腹の中、すっからかんにしちゃいましょう」
 おっしゃりながら全裸のお姉さまは、ご自分のバッグの中を物色されていらっしゃいました。

 バッグから引っ張りだされたのは、オフィスを出るときに綾音さまから手渡された小さなショッパー。
 その中から出てきたのは、私もお姉さまも見慣れている青地に白十字の箱に入ったあのお薬でした。

「そこに四つん這いになりなさい」
 お姉さまの右手が、ご自分の足元のフローリングの床を指しました。
「は、はい・・・」
 冷たさが戻ったお姉さまのご命令口調に、ゾクゾクっと鳥肌を立たせつつ、床に手を着きました。

 確か綾音さまは、あのショッパーをお姉さまに渡されるとき、絵理奈さまのためにご用意された、とおっしゃっていたっけ・・・
 ということは、本来なら絵理奈さまがイベントの前に、綾音さまの手でお浣腸されるはずだったんだ・・・

 ふと、そんな考えが浮かび、思わずその図を妄想していました。
 絵理奈さまの急病が無かったら今日の綾音さまは、盗聴のときとは打って変わって、絵理奈さまに対してエスのお役目をされていたんだ・・・
 その妄想は、私を凄く興奮させました。

「さっきアヤに診せていたときも思ったのだけれどさ、直子の肛門、確実に拡がっているわよね?少なくとも連休のときよりは」
 ギクッ!
 お姉さまのその一言で、綾音さまと絵理奈さまについての妄想が消し飛びました。

「連休明けからずっと、アヌスばっかり弄ってオナニーしていたんじゃない?凄い開発具合だもの」
 からかうようなお姉さまのあけすけなお言葉に、身を縮こませながらもキュンキュン感じちゃう私。
「・・・は、はい・・・そ、その通りです・・・」
 お姉さまに嘘をつくことは出来ません。

 アヌスばっかり、というワケではありませんが、ムラムラがひどくて激しくオナニーするとき、シャワーしながらお浣腸をして、がまんしながらイクこと、イッた後、シーナさまから就職祝いでいただいた柘榴石のアナルビーズを出し挿れすることが、ルーティーンワークとなっていました。
 
 さすがにまだ、直径40ミリの珠が付いたランダムなほうのアナルビーズは無理でしたが、直径10ミリから5ミリづつ大きくなるほうのであれば、8個の珠全部を収められるようにまでなっていました。
 あのなんとも言えない、もどかしい圧迫感がクセになっちゃったみたいなんです。

 そんなことを途切れ途切れに白状しました。

「ほら、もっと高く、お尻突き上げなさい、このヘンタイ女」
「はうっ!」
 ピシャっとお尻を叩かれて、ビクンとお尻が突き上がりました。

 お姉さまの指が私のマゾマンコから愛液をすくい取り、お尻の穴周辺になすりつけられます。
「あっ、はぅぅぅっ」
 お尻の穴が抉じ開けられ、指が内部へと埋没してくるのがわかります。
「ずいぶん挿れやすくなっているわよ?淫乱ケツマンコ」
「あう、あう、あうぅ」

「あたしにも開発の余地、残しておいてよね。一番大きな珠は、あたしの手で挿れるんだから。今度すっごく太いアナルバイブでも、買ってあげるわ。この穴が引き裂かれちゃうくらいのやつ」
 指がしばらくグリグリしてからスポンと抜け、代わりに今度は、何かもっと細いものが奥深く挿入されたのがわかりました。

「あああぁぁ・・・」
 間髪を入れず、直腸の中に冷たい刺激が注ぎ込まれてきます。
「今日は念のため、3つ入れておくわね」
 代わる代わるに細いものを突き立てられ、最後に何か柔らかいもので穴を塞がれました。

「うふふ。アナルプラグまで用意しちゃって、あのふたりも、かなりヘンタイな遊びを日常的にしているみたいね?」
 愉快そうなお姉さまのお声。
「そっか。あたしのプレゼントもアナルプラグにしようっと。これの2倍位太いやつ」

 挿入されたものは、柔らかいのですが中で膨らんでいる感じで、その圧迫感が妙に心地良くムズムズするものでした。
 でも、これの2倍って言ったら・・・
 本当に私の、裂けちゃうかも。

「直子って、マゾマンコにならあるでしょうけれど、ケツマンコに何か挿れっ放しで歩いたことって、あったっけ?」
「あ、いえ、お尻には、ないです・・・」
「今日のアイテムの中には、アナルにプラグ挿れっぱのものもあるから、それならいい練習にもなるわね。さ、バスルームへ行きましょう」

 お姉さまが差し伸べてくださった右手にすがって立ち上がり、手を引かれてバスルームに向かいました。
 お浣腸されたお尻の穴に、プラグを挿し込んだたままで。

 バスルームでのお姉さまとの行為は、いつもとちょっと違ったものになりました。
 ぬるめのシャワーを勢い良く全開にして、まず、その下で抱き合いました。
 髪の毛が顔にベッタリ貼りつくのもおかまいなく、唇を貪り合いました。
 湯気で曇る前の鏡に映った私のお尻には、赤ちゃんのおしゃぶりの先っちょのような輪っかが、滑稽に覗いていました。

 抱き合った胸元にボディソープを垂らし、からだを擦りつけ合います。
 やがて泡立つと、いったんシャワーの雨から避難して、お姉さまが私を愛撫し始めました。
 シャワーは出しっ放しで、相変わらず激しい水音がふたりを包んでいました。
 
 お姉さまは、これからモデルをする私の肌に痕を残してはいけない、と思われたのでしょう。
 いつものように叩いたりつねったり、もちろん縛ったりも無く、マッサージするみたいにやんわりジワジワとした愛撫がつづきました。
 おっぱいが念入りに揉みしだかれ、腋やうなじなど私が弱い場所を集中的に弄られたり。
 
 私の大好きな、痛い、という刺激は皆無なものの、お姉さまのおやさしいマッサージは執拗につづき、私が人肌に飢えていたこともあって、どんどん高揚してきました。
 焦らされていた乳首への責めで、最後はあっという間に昇りつめました。

 一度私がイッてからは、お姉さまの右手が、ずっと私の股間に吸い付きっ放し。
 最初から私の腫れた肉芽を執拗にいたぶってきました。
「んぐっ、んぐぅーーーっ!!!」
 お姉さまの唇で塞がれた自分の喉奥から、くぐもったような歓喜の嗚咽。
 それをかき消すような、激しいシャワーの水音。

 私がビクンビクンとイクたびに、お姉さまは攻撃の仕方を変えてきました。
 指が2本、マゾマンコ奥まで潜り込んで掻き回され、尖った乳首が噛み切られるくらい歯を立てられました。
「あああーーっ、あんあんっ、いぃぃーーーっ!!!」

 私の両手もお姉さまの乳房や秘唇をまさぐってはいるのですが、お姉さまは気にも留めていらっしゃらないご様子。
 ひたすら私を責め立てて、そして私はどんどん、お腹が痛くなってきました。

「あん、お姉さま、そ、そろそろダメです・・・出、出ちゃいそうですぅ・・・」
「うん、知っているわ。さっきから直子のお腹、グルグルゴロゴロ、煩いくらい鳴っているもの」
「だ、だから、あんっ、いったん離れてくださいぃ・・・でないと、お姉さまのおからだまで、わ、私の汚いもので汚してしまいますぅ・・・」

 私の膣壁をしたい放題いたぶってくる、お姉さまの指が与えてくださる快楽に飲み込まれそうになりながらも、なんとか必死に訴えました。
 そのあいだ下半身はずっと、プルプル震えっ放し。

「大丈夫よ、お尻に栓をしているのだから。直子の意志や諦めだけでは、派手に漏れだしたりしないはず」
「それに、出してもシャワーがすぐに流しれくれるから、あたしのことも気にしなくていいわよ」
 お姉さまが激しいシャワーの下で私のマゾマンコを責める手は止めず、クールにおっしゃいました。

 おっしゃる通りでした。
 一生懸命ガマンはしているのですが、お姉さまがくださる快感に気を許すと、どうしてもガマンのほうの力が緩んでしまうのです。
 栓をしていなかったら、もはやとっくに垂れ流してしまっていたはずでした。

「それに、もうちょっとがんばってみなさい。ほら、アヌスに力を入れて」
 ご命令通り、キュッと肛門を締め上げると、同時にお姉さまの指に陵辱されている穴の方も締め上げることになります。

「そう、その調子。あたしの指が奥へ奥へと咥え込まれていくわ。もう一本挿れちゃおうかしら、ほら締めて」
「んんーーっ!」
 膣壁がパンパンに圧迫され、尿意みたいなものまで催してきました。
 耐え難いお腹の痛みさえ、快感に変換されています。
 もちろん昂りも、頂上まであと一息のところまで。

「あうっ!お、お姉さま・・・もう、もうダメです・・・もう、もう・・・いやぁーー」
「なあに?イキそうなの?いいわよ、イっちゃいなさい、ヘンタイ直子らしく、あたしの目の前でウンチ垂れ流しながら、イっちゃいなさい」
 
 お姉さまの左手でグイッと抱き寄せられると同時に、膣内への摩擦も最高潮になりました。

「いやーーーっ、あっ、あっ、いや、いや、だめ、はぁっ、はぁっ、でちゃう、イッちゃぅぅぅ」
 膣内への刺激が一瞬途切れ、同時に肛門に筆舌に尽くし難い爽快な開放感が訪れました。
 栓を抜かれた瞬間、スポンという音さえ聞こえたような気がしました。
 間髪を入れず膣内への摩擦が戻り、昂りが何十倍にも増幅して戻ってきました。

 すさまじい快感が全身を駆け巡っていました。
 私の肛門は、自分でも制御不能。
 からだ中の穴という穴から、何かしらの液体が放出されているような感じでした。
 自分自身が液体となって、溶け出しているような絶頂感でした。

 集中豪雨のようにけたたましいシャワーの水音の中でも、自分の下半身から断続的に発せられた、はしたない破裂音は聞こえていました。
 そして、そこはかとなく香ってくる、懐かしくも不穏な臭い。
 それらの恥ずかしささえ、そのときの私には快感の増幅を呼ぶスパイスに過ぎませんでした。

「ああああーーーごめんなさいぃ、イキます、イキます、もうイキますうぅぅぅぅ!!!」
 お姉さまのおっぱいに顔を擦りつけ、シャワーの音に負けないくらいに叫びました。
 シオなのかオシッコなのか、マゾマンコからも何らかの液体がほとばしる感覚がありました。

 いつの間にか両膝が崩れ、シャワーの下で四つん這いに力尽きたまま、それでもたてつづけに何度もイキました。
 シャワーが背中に、お尻に当たる、その打擲の刺激だけで、果てしなくイッちゃいそう。
 そのくらい全身の肌がビンカンになっていました。

 シャワーの勢いがだんだん弱まり、やがて止まりました。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
 水音が消えたバスルームに、自分の荒い息遣いだけがエコーしていました。

「どうだった?あたしからのご褒美」
 裸のお姉さまがしゃがみ込んで、四つん這いでうなだれている私の顔を覗き込んできました。
「は、い・・・ありがとう、ございます・・・さ、サイコーでした・・・」
「これで底無しな直子のムラムラも、いくらかは落ち着いたでしょう。からだ拭いちゃって、イベントの準備に移りましょう」
「は、はい・・・」

 ぐったり疲れきったからだをお姉さまに助け起こされ、フラフラたどり着いた脱衣場では、ただ立ち尽くす小さな子供状態。
 お姉さまにからだの隅々まで丁寧に拭いていただきました。
 ブラジャーの跡もパンストのゴム跡も、跡形もなく消え去り、両手の指なんてもうシワシワ。

 頭にタオルを巻いてもらい、私は裸、お姉さまは真っ白なバスローブ姿で部室のメインルームであるリビングルームに移動しました。
 お姉さまがグラスに冷たいスポーツドリンクをたっぷり注いで、持ってきてくださいました。
 
 お部屋壁際のソファーにタオルを敷いて裸のお尻で腰掛け、最初はそれをグイッと、残りはゆっくりといただきました。
 お姉さまは、脱ぎ散らかしたご自分のスーツ類を拾い集めてはハンガーやトルソーに掛け、それからバスローブのまま和室に入られました。

 バスルームで、何回くらいイッたのかしら?
 さすがに今は大人しくなっている自分の乳首を見下ろしながら考えました。
 数えてみようか、とも思いましたが、イキグセがついてからはずっと、頭の中が真っ白に吹っ飛んでいて正確には思い出せないことに、すぐ気づきました。
 そのぐらいたくさんイッたはずです。

 だんだん冷静になるとともに、この場でまだ自分が全裸であることを恥ずかしく思い始めた頃、ご来客を告げるチャイムが室内に鳴り響きました。
 すぐにバスローブ姿のお姉さまが和室から出てこられ、インターフォンの受話器を取られました。

「はい。あ、どうも。わざわざありがとうございます・・・」
 その後、フロア階数とルームナンバーを告げられ、受話器を置かれました。

「メイクのしほりさんがみえたわ。今エントランスだから、ほどなく上がってこられるはず」
「あたし今、手を離せないから、次にチャイムが鳴ったら、直子、玄関でお迎えしてあげて」

 それだけ告げて、再び和室に戻られるお姉さま。
 和室の引き戸がピシャリと閉じられます。

 私、どうやら全裸のまま、見知らぬお客様をひとりで、お出迎えしなくてはいけないみたいです。


オートクチュールのはずなのに 45


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